スパッ
「今日はあんまり調子が良くないな」
俺はバスケ部に所属しているごく普通の高校生だ。先輩たちが引退し俺たちの代になり、俺は部のキャプテンに任命された。俺なんかでいいのかかなり不安だったが、先輩が後押ししてくれたのもあり引き受けることに決めた。部員を引っ張っていけるか、文武両道を果たせるのかは自分の裁量にかかっている。
「先輩!お疲れ様です!」
「お、おはよう。今日も朝から元気だな。こんな朝早くから毎日手伝ってくれてありがとな」
「もちろんです!」
この子はときのさん。今年俺らのバスケ部にマネージャーとして入部してくれた期待の新人fだ。仕事をテキパキとこなしてくれて覚えも早い。マネージャーに最適な人だ。おまけに容姿も淡麗。しかし天然のせいか少しおっちょこちょいな面もある。部員全員から尊い目で見られているうち自慢のマネージャーだ。
「今は何をしてるんですか?」
「今はゴール下周りのシュートを打ってたんだ」
「じゃあ私が来たのでスリーポイントにしませんか?パスだしますよ!」
「ほんとにいいのか?じゃあお言葉に甘えるよ」
「はい!」
こんな風にいつも献身的にサポートに入ってくれる。おかげでスムーズに朝練をすることができるし、パスも入って実践的な練習にも繋がる。他の部員はというと今日は元々朝練がない日だから来ていない。だから今は俺とときのさんの2人きりだ。
「ごめん!あんまり入ってなくて。リバウンド大変でしょ?」
「いえいえそんなことないです、全然平気ですよ!」
「悪い、今日はなんか思うようにシュートが入らないんだよね」
「先輩、今日肩に力が入ってる気がします」
「ほんとうか?」
「はい、いつもよりも力みを感じます。ちょっと力を抜いて脱力を大事にして打ってみてください!」
「わかった。ありがとう」
ときのさんのアドバイスを元に力を抜いてシュートをすると、いつものようにシュートが入るようになってきた。
「どうですか?」
「なんかいつも通りに戻ったような気がしたよ。ありがとう」
「いえ、私にできるのはこれくらいしかないので」
後はいつも通りにシュート練をし、その日の朝練は終わった。
「今日のスリーポイントは50本中33本ですね」
「うーん。序盤のミスが結構響いてるかな〜」
「後半は結構入ってましたよね!すごいです!」
「でも、安定したものにしないとな」
ときのさんにある質問をしてみることにした。
「ときのさん、俺ってちゃんとキャプテンできてるかな?」
ときのさんは1呼吸置いた後その問いに答えてくれた。
「先輩はすごくいいキャプテンだと思いますよ。前の試合の時だってチームを鼓舞するためにいっぱい声出してましたし、ミスした人のケアだってしてるじゃないですか。同期の話になるんですけど、みんな先輩のこと尊敬してますよ。プレイで引っ張ってくれるのがかっこいいとかミスしても励ましてくれる、とかよく聞きます。あ、これみんなに聞くのは内緒ですよ?恥ずかしがっちゃうので」
そういうと口元に人差し指を立てウィンクをした。あざとかわいいところもあるんだなあ。
「ありがとう、ときのさん。おかげで元気でたよ」
「もしかして、今日力入ってたのってプレッシャーのせいでもありますか?」
「そうかもね、昨日も寝る前に俺で大丈夫かなって考えてた」
「大丈夫ですよ。みんな先輩のこと大好きですから」
【大好き】その言葉にドキッとした。ときのさんじゃない、みんながね、みんなが。ここだけの話、おれはときのさんのことがものすごく気になっている。もちろんマネージャーとしてではなく異性として。でもキャプテンとマネージャー、しかも後輩ときた。チームの輪を乱すのではないかと思い、未だに自分の気持ちに蓋をしたままだ。俺に男気があれば今の2人きりの時に告白でもしてるのだろうか。
「なんかいつもときのさんにお世話になってばっかだな、いつかお礼をしないとな」
「いえいえそんな、気を使わずに」
「いや、でもいつも朝練付き合ってくれるし部員を代表して何かお礼をさせてくれ」
「うーん...。じゃあ私と一緒に勉強してくれませんか?」
「えっ、い、いいよ」
一緒に勉強?しかも2人でか?ってことはもしかしてデート、デートなのか?ほんとに俺がときのさんと?
「先輩、どうかしました?もしかして嫌でしたか?」ウルン
「いや!なんでもない。全然俺で良ければするよ」
「ありがとうございます!じゃあ私の方からいつやるか連絡しますね」
「わかった。チャイム鳴りそうだし、一旦解散だな」
そう言ってお互いに教室へ向かった。
ピコン
部活が終わり帰宅して寝る準備をしていると、ときのさんから詳細が届いた。
『ちょうど今週の土曜日練習オフなのでその日にしませんか?』
『いいよ。場所はどこにする?』
『その日家族がいないので私の家でもいいですか?』
ってことはお家デートってことか?胸の高まりが止まらない。気づいたら俺は二つ返事で了承していた。
『じゃあ決まりですね!楽しみです』
それからというもの、その日までは練習はおろか学校生活までも上の空で友達にもそして部員にも心配されてしまった。
30分前に集合時間につけばときのさんを待たせることはないだろう。と思っていてた自分の考えはとても浅はかだった。なぜならときのさんは既にいるからだ。
「悪い!待たせちゃった?」
「いえ、私もさっき来たばっかですよ。先輩ちょっと早すぎませんか?」
「そういうときのさんも、まだ30分前じゃん。部活じゃないんだから全然遅くても大丈夫なのに」
「楽しみでいてもたってもいられなかったんです!」
「...!そっか」
ときのさんの無自覚砲が俺の心に直撃した。不意に言われ俺の心はKO寸前だったがなんとか持ちこたえる。
「じゃ、じゃあ行こっか」
「はい!」
ニギッ
「へっ」
「ご、ごめんなさい!その、手を...繋ぎたいなーなんて」
「い、いやいいんだ。じゃあ...はい」
思わず変な声が出てしまったが俺は手を差し伸べた。ときのさんの手と俺の手が絡まる。女子らしい小さな手。こんな小さな手でいつもパスを出してくれたんだな。平静を装っているが全然それどころでは無い。手を、繋いでしまった。ときのさんの、手を。
互いに手を引き合い、家に着いた後は2人で黙々と勉強に励んだ。先輩らしく勉強を教えられる、と意気込んでいたがときのさんは元々勉強ができ要領も良く、先輩らしい姿をあまり見せつけることはできなかった。
「一旦休憩しない?俺お菓子持ってきたんだよね」
「お菓子持ってきてくれたんですか!食べましょ!」
ときのさんのニーズに合うものがあればいいなと思い、チョコ、クッキー、お煎餅など色んな種類のお菓子を買ってきていた。その中でも特にお煎餅が好きみたいだった。なんとなくチョコが好きそうな気がしたため、俺的には意外だった。
休憩を終え、午後も勉強をみっちりとやった。しかし午前とはうってかわり、互いの緊張も解けたのか、話しながら勉強に取り組むことができた。
部活では聞けない普段の学校の話とかプライベートの話、好きなゲームだったり本だったり、ときのさんについて色々知ることができた。
「外も暗くなってきたしそろそろ帰ろうかな」
「...そうですね」
心做しかときのさんの表情が曇ったような気がした。
「先輩、今日はとても楽しかったです!また遊びに来てください」
「ときのさん」
「はい?」
「好きだ」
「えっ」
「えっ」
思わず口から零れてしまった、しかもまだまだ止まらない。
「いつも朝練に付き合ってくれること、部活中もサポートしてくれること、実は意外と天然なところ、ときのさんの全部が好きです」
「だから、俺はときのさんと付き合いたい。先輩とマネージャーっていう関係じゃなくて、彼氏と彼女の関係になりたい」
一世一代の告白だった。緊張で視界がぼやけていた。次の言葉を放とうとしたした瞬間、ときのさんは俺に向かって抱きついてきた。
「その言葉、待ってました、先輩」
ときのさんの華奢な体を抱き締め返す。祝福するかのように茜色の夕日がいつまでも俺達のことを照らし続けていた。
次話、何期生で書けばいいでしょうか?
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