記憶と世界の交差式   作:ハヤナリ

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出会いは必然①

「___!!」

 

 鎧を纏った青年は愛しき者の名前を叫んだ。だが、その声は周りの雑音にかき消された。爆風の中、一人の少女が青年の元へと走る。刀が人を切り裂き、爆発が人の体を四散させる。

    

    まさにそこは‥‥‥戦場。

 

 駆け寄る少女を青年はゆっくりと包み込む。

 

「なぜ来たんだ!帰れと言ったはず!」

 

「私はずっとあなたの‥‥‥」

 

 少女が言い切る直前、青年は少女の背後に忍び寄る影に気づいた。

 

「避けろ!!」

 

 手に持つ剣を強く握りしめた青年はその剣を頭上へと振り上げる。そして、相手が‘斬る,よりも早く剣を振り降ろした。

 気づくと周りは‘敵,と呼ぶに相応(ふさわ)しい者たちに溢れていた。

 

「君だけには‥‥生きてほしい。」

 振り向いた青年の目から流れた雫。少女はそれを見逃さなかった。

 少年は手に持つ蒼い宝玉を少女の胸に押し当てた。

 

「じゃあな‥‥」

 

 宝玉が光を放つと同時に少女の体は青い光に包まれた。収縮する光に呼応するかのように少女の肉体は消え始める。

 

「再びあなたに合えるまで、私‥‥待ってるから!」

 

 その力強い言葉に青年は生きる事を心に決めたのだ。

 

「俺も、俺も待つよ!お前のこと‥‥‥」

 

 言葉を発した直後、青年の背後が鈍い音が鳴り響く。青年は苦痛の声を上げながら少女に背を向けた。

 少女の目に写ったのは青年の背後に出来た一閃の傷。迫り来る敵を斬りながら青年は消えつつある少女に向かって有りったけの力で叫んだ。

 

 「じゃあな!!」

 

 消える視界の中、少女が最後に見たのは敵に向かって突き進む青年の背後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!!東河(とが)!起きろ!おい!」

 

 

 自分の名を呼ばれた東河(とが)信太朗(しんたろう)はゆっくりと目を開けた。

 目の前に居たのは教科書を持った厳格な顔つきの男。

 

「げ!つ、土田!?」

 

 混乱した信太朗はとっさに教師の名前を呼び捨てにして叫んでしまう。

 それによって、教室は笑いに包まれた。だが土田先生の顔は決して笑ってはいなかった。

 土田先生は拳に力を込めると、信太朗の頭めがけて垂直に振り降ろした。

 

「いってえ~!!!!」

 

 教室は再び笑いに包まれたのだ。

 

 放課後、カバンを背負った信太朗の目の前に相沢(あいざわ)幸助(こうすけ)多田(ただ)(りょう)が現れた。

 

「信太朗?今日ひま!?」

 

「カラオケ行かない?」

 

 信太朗は少し考えた後‥‥。

 

「ごめん!今日、用事があるんだ!」

 

 そう言うと教室を出ていった。

 信太朗の背中を見た幸助は少し思い詰めた表情で(つぶ)やいた。

 

「そうか‥‥。今日、あの日か。」

 

 ‘あの日,の意味が気になった寮は幸助に聞き返す。

 

「あの日って?」

 

「ああ!あいつ、昔に親友を失ってさ‥‥。今日、その命日なんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 全身を被うフードコート着た少女が深い霧の中を走っていた。後ろを確認した少女の足はより加速する。

突然、少女の足元は爆発を起こした。爆発に巻き込まれた少女は地面に倒れこむ。

 少女が振り向くと、霧の中から少女と同じ格好の男が二人現れたのだ。

 

「やっと、見つけた‥‥‥」

 

 男の一人は、不気味に笑った。そう、少女は追われていたのだ。

 男たちは手のひらを開き、腕を少女へと向けた。

 

「死ね‥‥」

 

 自らの死を悟った瞬間、少女は覚悟を決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 高い塀を乗り越えた信太朗は花束を手に、目の前の廃工場に向かって歩いていく。周りは深い霧に包まれていたが、戸惑いもせず進んでいく。

 廃工場の目の前に立った信太朗は、全体を見るかのように見上げる。その場所に花束を静かに置いた。

 

「一年ぶりだな‥‥。」

 

 信太朗は誰もいないその場所で呟いた。

 

「もし、今頃お前が生きてれば‥‥」

 

 それ以上は言えなかった。溢れ出そうとする涙に気づいたからだ。

 その悔しさに、靴びるを噛みしめる。

 その時だった。地面が揺れ、それと同時に激しい爆発音が聞こえた。信太朗は廃工場の裏側から、煙が上がっていることに気がつく。

 

 「え?」

 

 明らかな異変を感じた信太朗はその場所へと向かう。ドラム缶の影に隠れた信太朗は現場を目撃する。

そこには、全身を被うフードを着た少女と、同じ格好をした二人の男たちだった。

 だが、少女は全身にケガを負っていた。男たちは少女に手の平を向けた。手の平から赤い光を放つ。まるで何かを悟ったかのように少女は目を閉じた。

 

「死ね‥‥‥。」

 

 男はその言葉を冷たく言い放つ。

 その瞬間、信太朗の脳裏に‘親友を失った,時の出来事が甦った。

 

「やめろー!!」

 

 信太朗は居ても立っても居られずその場を飛び出した。信太朗は少女を守るようにして体を大の字に広げた。突如、目の前に現れた信太朗に男たちと少女は目を丸くする。

 赤い光の後に放たれた火球は、真っ直ぐ信太朗へと向かう。

  

(もうダメだ!)

 

 その刹那、信太朗の体は淡い光を放つ。その光は火球を消し去る。

 少女も男たちも、その現状に戸惑いを見せたが信太朗だけは冷静だった。

 

「逃げるぞ!!」

 

 少女の手を掴んだ信太朗はその場から立ち去った。

 

 

 

 二人は、廃工場内にある倉庫の中へと隠れ込んでいた。

 荒い息を整えた信太朗はようやく口を開いた。

 

「おまえ‥‥。何者なんだ?」

 

 だが、少女はその質問には答えなかった。

 

「おなたこそ何者なの?」

 

 逆に信太朗に質問したのだ。

 

「え‥‥。」

 

 質問の意図が分からず戸惑う信太朗に少女は告げる。

 

「君!あの時、何したの!魔法が消えるなんて」

 

「魔法‥‥?消える?」

 

 信太朗には身に覚えのない事だった。その時‥‥。

 

「どこだ!!どこに居やがる!!」

 

 倉庫の入り口から男たちの怒鳴り声が聞こえた。その声を聴いた少女は立ち上がろうとした。

 

「待てよ!」

 

 信太朗は少女の手を掴む。

 

「一つ聞いていいか?あんたが言う魔法ってのを俺が使えば勝てるか?」

 

 予想もしなかった一言に少女は一瞬戸惑った。

 そのとき少女の目には、信太朗の体から溢れ出る大量の魔力が見えた

 

「勝てる‥‥。いや、絶対勝てる!あなたの魔力なら」

 

 

 

 

 

 二人の男は倉庫の中へ入ると片っ端から火球で燃やし始めた。

 

「どこだー!早く出ないと燃えちまうぞ!」

 

 隙間から一人の少年が飛び出した。

 

「ここだ!!」

 

「お前!?さっきの!!」

 

 少年である信太朗は二人の前に立ちはだかる。

 

 

  数分前

 

 「いい!よく聞いて!魔法ってのは血液中の魔力を呼び出して使うの!魔法を使うさい、手で飛ばすイメージよりも、手の平の中から出るイメージの方がしっくりと来るかもしれない」

 

「出るイメージねえ~」

 

 ピンと来ない信太朗は自分の手の平を見た。

 

「あとは、あなたの才能次第よ!」

 

 もし、才能がなければ二人とも死ぬ。そのプレッシャーで信太朗は生唾を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「おい!ガキ!」

 

 男は火球を信太朗に向かって飛ばした。

 

「うおおおお!!」

 

 信太朗は勇気を込めて魔法を使った。しかし魔法は発動しなかった。

 火球は突き進み、信太朗に直撃した。それを見た男たちは笑いだす。

 

「ひゃっはー!バカだぜあいつ!炎の中に突っ込みやがった!」

 

 だが、男たちは違和感を抱いた。信太朗は一切の声を上げないのだ。

 それどころか、炎は少しづつ信太朗の右手に収縮する。収縮した炎は手の平で球体となる。

 

「これが‥‥‥魔法!!」

 

 その球体を押し出すように放つと、球体は真っ直ぐに突き進む。

 球体は一人の男に当たる。その男の体は宙を舞い壁に激突した。悲鳴を上げた男は地面に倒れ込む。

 

「クソー!!」

 

 その光景に困惑するもう一人の男は信太朗に向かって、火炎を連射した。

 無数の炎が信太朗を襲う瞬間、信太朗の瞳は赤く染まった。視界は波を打つように歪む。その空間の中で炎はゆっくりと信太朗に迫りくる。一発一発を確実に回避しながら信太朗は男の前に立ちはだかる。

 

「くたばり‥‥やがれ!!」

 

 全力で握った拳は真っ直ぐ顔面に直撃する。鈍い音と共に男は数メートル吹き飛んだ。

 痛む拳を軽く握った信太朗は、思い出したかのように少女の元へと向かった。

 

「ケガは‥‥無いよな?」

 

 少女は立ち上がると入り口の方へと走っていった。

 

「おい!こいつらどうすんだよ!」

 

「大丈夫。その内、消えるから」

 

 倉庫を出ようとする少女に信太朗はたずねた。

 

「お前‥‥。この後どうするんだ!」

 

 少女はうつむいた後、問いに答えた。

 

「これ以上、あなたを巻きもむ訳には行かないの」

 

「俺にできる事があれば‥‥。」

 

「なら、君は私と‥‥‥死ねる?」

 

 信太朗は答えを出すことができなかった。

 

「覚悟が無いのにかってな事、言わないで!!」

 

 信太朗は立ち去る少女の背中を見送る事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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