気づくと、あの出会いから数日がたっていた。
朝のホームルーム。教師が現れたのにも関わらず、信太郎は、窓ガラスの外の遥か遠くを眺めていた。
その時だった。数十キロ離れたビルから点のような光と煙があがったのだ。それと、同時に校内に放送が流れた。
———校内の生徒に連絡します。近隣に不審者が居るとの目撃情報がありました。生徒は先生の指示に従い速やかに避難してください。
信太郎は、その放送よりも目先の何かが気になっていた。
「信太郎!!行くぞ!」
外を眺める信太郎に、多田は慌てて呼びかけた。
隊列を組みながら、ゆっくりと進む土田は思い出したかのように信太郎にたずねた。
「そう言えば、昨日……。」
多田が振り向くと、そこに信太郎の姿はなかった。
「しん……たろう?」
荒れた街中に転がる血肉。武装した兵士たちが拳銃をかまえながら何かに向かって突き進む。向かう先はローブを羽織った男たちの軍勢。
拳銃から放たれた銃弾はローブの男に向かう。しかし、その銃弾は男の手前で何かに阻まれた。それは透明の壁。
その壁に刺さった銃弾は放った兵士に跳ね返り、その兵士の体を貫く。敵は火や氷、雷を放ち、戦力を削って行く。
兵士たちの前線で戦うのは、敵と同じ格好をした少女だった。息を切らしながら魔法を使う少女の背後に敵の男が現れる。
「しね!」
男が使った火の魔法は真っ直ぐ少女へと向かう。一緒の出来事で少女は反応できなかった。
(避けきれない……)
覚悟を決めた少女の体は激しい衝撃の後、地面に倒れこんだ。少女が目を開くと、隣にはあの時の少年の姿があった。
「きみは!?」
「信太郎だ!」
立ち上がると同時に信太郎は自分の名前を叫んだ。
「なんできみが?」
「決めたんだ……。」
「え??」
「俺は……。君と一緒に死ぬって決めたんだ!」
それは少女があの日、信太郎にたずねた答えだった。
ローブを着た男はその空気を打ち破るように話し出す。
「これで終わりだ……」
男は再び火の玉を作り出す。
「シネ!!」
火球は信太郎に直撃する。男は高らかに笑った。燃え盛る信太郎の体。火は信太郎の体に溶け込むように消えていく。気づくと男の笑いは消えていた。
「な、なんなんだ!お前は!!」
「俺は人間だ!あんたらとは違う!」
信太郎は男の方へと走ると拳を握り男の顔面が凹むほどの一撃をくらわせた。地面に倒れこんだ男は信太郎のことを見て笑った。
「なにがおかしい!?」
だが、信太郎は瞬時に気づいた。男は信太郎を見て笑ったのではなく、その奥。少女を見て笑ったのだ。振り向くと、信太郎は少女の背後に立つもう一人の男に気づいた。
その男は鋭いナイフを手に持ち、今にも少女の胸に突き立てようとしていた。
「にげろ!!」
叫ぶと同時に信太郎は走り出していた。その声は少女には届かなかった。信太郎は少女が刺されるその瞬間を見送ることしかできなかったのだ。
その場に立つ男を信太郎は殴り飛ばすと、ぐったりと力を失った少女を抱きかかえた。
「なんでだよ!!」
信太郎の涙は首にぶら下がる青いネックレスに垂れる。
「くそおおおおお!」
まるで、その声に呼応するかのように信太郎と少女の周囲は激しい光と爆発が巻き起こった。