転移したら王鎧武装出来る様になった件   作:仮面大佐

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第6話 狂いゆく歯車

 突然現れた、樹妖精(ドライアド)のトレイニーさんは、俺たちに依頼をする。

 それは、俺たちに豚頭帝(オークロード)を討伐して欲しいとの事だ。

 

「豚頭帝の討伐?」

「ええと………俺たちがですか?」

「ええそうです、リムル=テンペスト様、矢野直也(ナオヤ・ヤノ)様」

 

 俺たちの質問に、そう答えるトレイニーさん。

 すると、紅丸達がが俺たちの前に出て言う。

 

「ん?」

「紅丸?」

「いきなり現れて………随分身勝手な物言いじゃないか。樹妖精のトレイニーとやら」

「なぜ、この町へ来た?ゴブリンよりも強い種族は居るだろう」

 

 紅丸と紅蓮の質問に対して、トレイニーは閉じていた目を開きながら言う。

 

「そうですわね。大鬼族(オーガ)の里が健在でしたら、そちらに出向いていたでしょう」

「おっ………」

「まあ、そうであったとしても……この方々の存在を、無視する事は、できないのですけれど」

「ん?」

「……………」

「我々の集落が豚頭帝に狙われれば、樹妖精だけでは抵抗出来ませんの。………ですから、こうして強き者に助力を願いに来たのです」

 

 なるほどな。

 それにしても、仮説だった豚頭帝が、実際に存在するとはな………。

 

「豚頭帝が居るって事自体、俺たちの中では仮説だったんだけど………」

「よく、豚頭帝が居るって事が、分かりましたね」

「樹妖精は、この森で起きた事ならば、大抵把握しておりますの。……居ますよ、豚頭帝」

 

 トレイニーさんはそう言って、机の上に置いてあったポテチを食べる。

 ということは、ゲルミュッドが言っていた我が子というのは、豚頭帝の事か?

 それを聞いた一同は、騒めき出す。

 

「樹妖精様がお認めに………!」

「ならば、本当に………」

 

 リグルドとカイジンは、そう話す。

 俺たちはそれを聞いて考え、答えを出す。

 

「返事は少し待ってくれ」

「ああ。鬼人達の援護はするが、率先して、藪を突くつもりはないんだ。情報を整理してから、答えを出させてくれ。こう見えても、ここの主なんでな」

「俺は、副主です」

「あっ………フフッ………」

 

 俺とリムルがそう言うと、トレイニーさんは微笑む。

 ちなみに、俺が副主というのは、リムルが居るからだ。

 トレイニーさんも会議に参加する事になった。

 だが、リグルドとカイジンの間に座ったので、その2人が気まずそうにしている。

 

「会議を続けるぞ」

豚頭族(オーク)達の目的について、何か、意見がある人は居ないか?」

 

 俺たちがそう言うと、朱菜が声を出す。

 

「あ………。思い当たる事が一つあります」

「うん」

「何だ?」

 

 俺たちが朱菜にそう問うと、朱菜は蒼影と蜘蛛丸に質問をする。

 

「蒼影、蜘蛛丸。私達の里、調査してきましたか?」

「はい」

「その様子では………やはり、無かったのですね」

「はい」

「ん?」

「同胞の物も、豚頭族の物も、ただの一つもね」

「まさか………死体か?」

「そうです。」

 

 朱菜がそう聞くと、2人はそう答える。

 その言葉に、俺はやはりと思った。

 少し、引っかかっていた事があったのだ。

 オークといえば、食欲旺盛なのがお約束なのだ。

 現に、俺が応戦する中、豚頭族の部隊は、豚頭族や大鬼族の物関係なく、食べていたのだ。

 すると、紅丸と黄巫女が口を開く。

 

「20万もの大軍が食えるだけの食料を、どうやって賄っているのか疑問だったが…………」

「直也から話を聞いて、ようやく腑に落ちたわ」

「それって、まさか……………!?」

「豚頭族も、襲った種族の物も関係なく、食べてるって事だろうな。今、進軍中の豚頭族達は」

 

 紅丸と黄巫女がそう言うと、リムルはそう反応する。

 俺がそう言うと、周囲が驚く。

 そんな中、トレイニーさんが口を開く。

 

「ユニークスキル、飢餓者(ウエルモノ)

「飢餓者………」

「それは、具体的には、どんなスキルなんだ?」

 

 俺の質問に、トレイニーさんが答える。

 

「世に混乱を齎す災厄の魔物、豚頭帝が生まれながらにして保有しているスキルで、豚頭帝の支配下にある全ての物に影響を及ぼし、イナゴの様に、周囲の物を食べ尽くす。食らった相手の力や能力までも取り込み、自分の糧とするのですわ。………あなた様の捕食者と似ていますわね」

 

 そう言いながら、俺たちを見る。

 それは、かなり厄介なスキルだな。

 確かに、リムルの捕食者と似ているスキルだな。

 ていうか、俺たちの保有しているスキルの事も知ってるのかよ。

 トレイニーさんは、話を再開する。

 

「飢餓者の代償は、満たされる事のない飢餓感。豚頭族達は、果てしない飢えを満たし、力を得る為だけに進むのですわ。ただそれだけが、彼らの王の望み故に………」

 

 そう言って、お茶を飲む。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

『リムル。豚頭族達の狙いは…………』

『ああ。大鬼族や蜥蜴人族(リザードマン)といった森の上位種族を滅ぼす事ではなく、その力を奪う事………か?』

『そう考えるのが、妥当だろうな』

 

 そうなると、ここも安全ではない。

 何せ、半数の鬼人にシュゴッドも何体か居るのだ。

 リムルが伸びをして、口を開く。

 

「さて…………となるとだな。うちも安全とは言い難いな。嵐牙狼族(テンペストウルフ)に鬼人、ホブゴブリン、シュゴッド」

「確かに、味はともかく、豚頭族達の欲しがりそうな力を持った餌だらけだな」

 

 リムルと俺がそう言うと、紅丸と雀が苦笑しながら言う。

 

「1番、奴らの食いつきそうな餌を、忘れてやいませんか?」

「あ〜?」

「居るでしょう。最強のスライムと、オオクワガタオージャーが」

「……………何の話だ?」

「ハハッ………」

 

 紅丸の指摘に、俺たちは受け流す。

 そりゃあ、俺って、オオクワガタオージャーだけど。

 でも、俺は、味はかなり不味いんじゃないか?

 そんな中、トレイニーさんが口を開く。

 

「それに………豚頭帝誕生のきっかけとして、魔人の存在を確認しております。あなた様方は、放っておけない相手かと思いますけど。」

「魔人か…………」

「いずれかの魔王の手の者ですからね」

「うむ…………」

 

 さっき、トレイニーさんは、森で起きた事は、大抵把握していると言っていたな。

 という事は、大鬼族の里が豚頭族に襲われた際、俺がほぼ1人で豚頭族と戦い、半数の大鬼族を救出した事を把握している事になる。

 食えない姉ちゃんだな。

 すると、トレイニーが立ち上がる。

 

「リムル=テンペスト様。矢野直也(ナオヤ・ヤノ)様。改めて、豚頭帝の討伐を依頼します。暴風竜ヴェルドラの加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護するあなた様方なら、豚頭帝に後れを取ることはないでしょう」

「「う〜ん…………」」

 

 トレイニーさんはそう言う。

 確かに、鬼人を庇護しているのは間違いない。

 だが、戦力差が否めない。

 となると、つい最近獲得した、あれを使う事を考慮に入れるか。

 体の負担があまりにも大きいが、あらゆる状況を加味して、いざという時の奥の手として使うか。

 シュゴッドZEROなども投入する手筈で。

 すると、紫苑の声が聞こえる。

 

「当然です!!」

「うえっ……………!?」

「ん…………?」

「リムル様と直也様ならば、豚頭帝など、敵ではありません!そうです!お二人ならば、豚頭帝を倒してみせるでしょう!」

「うわぁ!やはり、そうですよね」

 

 紫苑は、勝手に………!

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 ちなみに、思念伝達はリムルから教えてもらった。

 持ってた方が何かと便利だしな。

 

『リムル。これは………腹を括るしかないよな』

『だな………』

 

 俺がそう言うと、リムルは諦めた表情になる。

 リムルは、スライムとしての姿に戻り、紫苑がキャッチする。

 

「分かったよ。豚頭帝の件は、俺たちが引き受ける」

「皆も、そのつもりで居てくれ」

「はい!勿論です!直也様、リムル様!」

「どうせ、最初からそのつもりだ」

「任せろ!」

「やってやろうじゃねぇか!」

「ああ」

「そうね。ゲルミュッドが居たなら、報いを与えないと」

「俺たちゃ、旦那達を信じて着いていくだけさ」

「その通りですぞ!我らの力を、見せつけてやりましょう!」

『おう!』

「フフッ」

 

 俺とリムルがそう言うと、朱菜、紅丸、紅蓮、蒼炎、黄巫女、幻夢、カイジン、リグルドがそう言う。

 皆がそう盛り上がっている中、俺とリムルは、話し合っていた。

 

『な〜んて、格好つけて、負けたらどうしよう………』

『もうこの際、腹を括るしかないな』

 

 俺たちは覚悟を決めて、会議を進める。

 

「豚頭族20万の軍勢を相手取るとなると………蜥蜴人族との同盟を前向きに検討したい所だが………」

「使者が、あれじゃなぁ………」

 

 あんなアホじゃあ、不安でしかない。

 どうにか、話が通じるやつと交渉したいところなのだが………。

 すると、蒼影と蜘蛛丸が立ち上がる。

 

「リムル様、直也様」

「ん?」

「どうした、蒼影、蜘蛛丸?」

「蜥蜴人族の首領に、直接話をつけても良いかな?その方が良いだろうし」

「蒼影。出来るのか?」

「はい」

「なら、俺も同行して良いか?」

 

 俺とリムルがそう聞くと、蒼影と蜘蛛丸はそう答える。

 俺がそう言うと、全員が驚く。

 

「直也様もですか?」

「ほう?それはどうしてだい?」

「同盟は、俺かリムルのどちらかを直接見ないと、結ぶのが難しいだろうからな。俺が同行すれば、手っ取り早いだろ?」

「……分かった。直也、蒼影、蜘蛛丸。蜥蜴人族への使者を頼む。決戦は蜥蜴人族の支配領域である湿地帯になるだろう、これは蜥蜴人族との共同戦線が前提条件だ。頼んだぞ!」

「お任せを」

「それじゃあ、行こうか」

「ああ。じゃあ、ちょっくら行ってくるわ!」

 

 俺と蒼影、蜘蛛丸は、影移動で蜥蜴人族が支配している湿地帯へと向かう。

 影移動もまた、教えてもらったのだ。

 一方、気絶していたガビルは、やっと目を覚ました。

 

「んっ………。うわっ!あっ、あ…………」

「わ〜!」

「ん?」

「ガビル様〜!」

「ぐわ〜!」

 

 ガビルが目を覚ますと、部下の1人が泣きながらガビルに飛びつく。

 残りの部下もやって来る。

 

「起きたかよ」

「ガビル様〜!」

「こ………ここは?」

「良かったよ〜ほんと、ううっ………」

 

 ガビルの目の前には、蜥蜴人族の部下達が集まっていた。

 1人、蜥蜴人族ではないのが混じっているが。

 ガビルは、どうしてこうなったのかを思い出した。

 

「そっ、そうだ!我輩は………。あのふざけた顔の男に………!うぬ。すっかり騙されたわ」「ど………どういう事?」

 

 ガビルの言葉に、泣きついていた部下が首を傾げる。

 ガビルは、立ち上がって説明をする。

 

「簡単な事よ。我輩を制したあの者こそ、あの村の本当の主に違いない!」

「「「なんと!」」」

 

 ガビルは、ゴブタが主だと勘違いしていた。

 その言葉に、部下達は集まって話し合う。

 

「あれが?」

「そうじゃないと、ガビル様、負けたりしないよ。」

「然り!」

「汚い!騙してガビル様の油断を誘うだなんて!」

「卑怯なり!」

「ふざけんな!」

 

 ガビルの部下達は、そんな風に話し合う。

 そんな部下達に、ガビルは話す。

 

「まあ、落ち着け。弱者なりの知恵という奴だろう。あっ………ハッ」

「器の大きさ、山の如し!」

「流石、ガビル様!」

「いよっ!次期首領!」

「いや〜かっこええなぁ、ガビルはん」

「いやいや、我輩など、それ程でも……って、誰、なん!?」

「最初から居たよ、この人」

 

 ガビルは、やっと蜥蜴人族ではない者の存在に気づいた。

 その道化師の服を着た男は、ガビルを褒め称える。

 

「聞いた通り、偉い男前やないか。わいは、ラプラスという者です」

「ラプラス?」

「ゲルミュッド様の使いで、アンタに警告をしに来たんや」

「おお!ゲルミュッド様の!」

 

 ガビルは、少しラプラスに警戒していたが、ゲルミュッドの使いと聞いて、警戒を解く。

 部下達は、話し合う。

 

「ゲルミュッド様って?」

「ガビル様に名を授けて下さったというお方だ」

 

 部下達は、ゲルミュッドの事について話す中、ガビルは、ラプラスに労いの言葉をかける。

 

「ご足労をおかけしたな。………して、ゲルミュッド様の警告とは?」

「これがまた、偉い事になっとるんですわ!」

「ん?」

 

 ガビルがそう言う中、ラプラスは回転しながら、ある事を伝える。

 

「今回の豚頭族の軍勢、どうやら、本当に豚頭帝が率いてるらしいでっせ。」

『豚頭帝?』

「うっ………」

 

 ラプラスが言った、豚頭帝という単語に、周囲はどよめく。

 ラプラスは、話を再開する。

 

「蜥蜴人族の首領は出来たお人やけど、もうかなりのお年やし………正直なとこ、お父上には、荷が重いんとちゃいます?」

「ん…………」

 

 ラプラスの言葉に、ガビルは考え、答えを出す。

 

「豚頭族軍撃退の後に、首領の座を受け継ごうと思っていたが………それでは、間に合わん様だな!」

「せや、せや」

 

 ガビルがそう叫ぶと、ラプラスはそう頷く。

 ガビル達は、竜に乗り、移動を開始しようとする。

 ガビルは、ラプラスに声をかける。

 

「ラプラス殿。挨拶もそこそこだが、我輩達は…………」

「ええって、ええって。湿地帯に戻りはるんやろ?早、行った方がええで」

「かたじけない!………出発するぞ〜!」

「おお!」

 

 ガビル達は、湿地帯へと出発する。

 それを見ていたラプラスは。

 

「……………せいぜい頑張りや、ガビルはん」

 

 そんな風に言う。

 ラプラスは、何を企んでいるのか。

 一方、豚頭族軍は、湿地帯を進んでいた。

 

「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ」

 

 そんな風に言いながら、湿地帯を進んでいた。

 俺たちは、そんな豚頭族達の気配を感じながら、蜥蜴人族の洞窟に到着する。

 すると、見張りが俺たちに気づく。

 

「貴様ら、何者だ!?」

「何。首領に会わせて欲しいだけさ」

「そこを通してもらおう」

 

 俺たちは、蜥蜴人族達の首領に会うべく、奥へと進んでいく。

 しばらく進んでいくと、開けた場所へと出る。

 俺たちが現れると、首領が声をかける。

 

「失礼。今、取り込んでおりましてな。おもてなしも出来ませぬ。」

「お気になさらず。俺は、あなた方蜥蜴人族と同盟を結びに来た」

「同盟?はて。そちらの事は、わしは知らんのだがね」

「無理もないです。ホブゴブリンと牙狼族と共に住んでは居ますが、街になったばかりですし」

「風の噂で聞いた事がある………。その町は、本当にあるのか?」

「はい。俺は、その街の主の片割れさ。」

 

 どうやら、俺たちの町は、かなり噂になっているみたいだな。

 まあ、ゴブリンと牙狼族が一緒に暮らしているという時点で、噂にはなるだろうが。

 俺の説明の続きを、蒼影が引き受けてくれた。

 

「そしてもう1人の主リムル様とともに、樹妖精より直に要請を受け、豚頭族軍の討伐を確約されている」

 

 蒼影のその言葉に、首領のすぐ横にいる2人の蜥蜴人族が驚く。

 それは、首領も同じだった。

 

「森の管理者が、直接………!?」

「そして、樹妖精からの情報によると、豚頭族軍を率いているのは、豚頭帝だ」

「豚頭帝?」

「この意味を踏まえて、よく検討して欲しい。」

「うう………。」

 

 2人の蜥蜴人族が驚く中、蜘蛛丸がそう言う。

 首領は、驚いていた。

 どうやら、首領は豚頭帝が出現しているかもしれないと推測していた様だな。

 すると、首領の部下の1人が、声を出す。

 

「ふ………ふん!リムルだと?聞いた事もない!どうせ、そいつらも、豚頭帝を恐れて、我らに泣きついて来たんだろう?素直に助けてくれと言えばいい物を………」

「やめろ!」

「えっ?」

「口を塞ぐのだ」

「しゅ………首領!その様な態度では、舐められ………!」

 

 そこまで言うと、その部下の首に、糸が巻き付けられていた。

 蒼影と蜘蛛丸だ。

 蒼影と蜘蛛丸は、糸の一本を下ろそうとするが、俺が止める。

 

「蒼影、蜘蛛丸。そこまでやれとは言っていない」

「…………ッ!」

「失礼したね」

 

 蒼影と蜘蛛丸の気持ちは分かる。

 自分の主人を馬鹿にされて、我慢出来なかったのだろう。

 だが、そんな事をしたら、同盟を結ぶのが難しくなる。

 2人は糸を解き、俺は首領に頭を下げる。

 

「申し訳ない。対等な話し合いであるのにも関わらず、配下が無礼をしたな」

「いや、今のは、こちらに非があった。お気遣い済まない」

 

 俺が頭を下げる中、首領はそう言う。

 どうやら、トレイニーさんから頼まれたというのは、効果を発揮している様で、人間だからと言って、舐められている様子はない。

 そんな中、首領が口を開く。

 

「…………ジュラの大森林に暮らす魔物で、森の管理者を騙る愚か者は居ない。見た所、そなた達の妖気(オーラ)は、南西に暮らす大鬼族であろう?」

「今は違う。リムル様より、蒼影の名を賜った折、鬼人となった」

「俺は、直也様から蜘蛛丸の名を賜って、同じく鬼人だよ」

「鬼人?」

「鬼人って………!」

「ええ。大鬼族の中から、稀に生まれるという、上位種族………!」

「それが、あと150人くらいは居る」

「何だと………!?」

 

 首領がそう聞くと、蒼影と蜘蛛丸の2人はそう答える。

 側近と思われる蜥蜴人族が驚く中、俺はそう言う。

 それを聞いた首領は、何かを考え込んでいたが、しばらくすると、顔を上げる。

 

「…………直也とやら。一つ条件がある」

「聞きましょう」

「もう1人の主、リムル=テンペストと会いたい」

 

 首領はそんなふうに言う。

 俺が聞く姿勢をとると、首領はリムルにも会わせて欲しいとの事だ。

 お安いご用だな。

 

「分かった」

「では、我々は準備を整え、七日後にこちらに合流する。その時、御目通りしていただくとしよう」

「うん」

「それまでは、決して先走って、戦を仕掛ける事のないようにね」

「承知した」

 

 俺が了承すると、蒼影と蜘蛛丸はそう言う。

 俺は首領に言う。

 

「それと、一つ忠告があります」

「何だ?」

「背後には気をつけた方がよろしいですよ」

「………?そうしよう」

「では、七日後に」

 

 俺がそう言うと、首領は首を傾げる。

 その後、俺たちは、影移動で村へと戻る。

 ちなみに、先ほどの言葉の意味としては、ガビルは、豚頭帝の事を知らなそうだった。

 それに、次期首領になるとも言っていた。

 つまり、謀反を起こす可能性がある。

 そこまでするアホじゃないと良いんだけどな。

 

「俺は、首領の条件を伝えに行く。蒼影と蜘蛛丸は、豚頭族の動向を見張ってくれ」

「はっ」

「俺に任せな」

 

 蒼影と蜘蛛丸は、再び影移動で移動する。

 俺は、リムルの家へと向かう。

 

「リムル、少し………」

 

 俺は、その光景に絶句した。

 なぜなら、リムルが女装をしていたのだ。

 しかも、周囲には、朱菜に紫苑といった女性陣がいたのだ。

 

「リムル………どういう状況だ?」

「おお!直也!ナイス!着せ替え人形にされてたんだよ!」

 

 俺がそう聞くと、リムルはそう叫ぶ。

 なるほどな……………。

 確かに、女顔だもんな。

 

「なるほどな………。あ、それと、蜥蜴人族の首領と話がついたぞ」

「本当か!?」

「ああ。ただ、同盟を結ぶ際には、お前にも同行して欲しいそうだ」

「良いぜ、どうせ決戦予定は湿地帯なんだし、会っていもいない人物を信用しろってのも無理な話だ」

「会談の日は、七日後に設定したが、大丈夫か?」

「ああ」

 

 俺とリムルはそんな風に話す。

 同盟が成立するまで、何も起こらなければそれで良いんだがな……………。

 戦況によっては、あれ(・・)を使わざるを得ないだろうし。

 すると、朱菜が話しかけてくる。

 

「直也様。頼まれていた服、出来ましたよ」

「ありがとう。早速着替えるよ」

 

 朱菜がそう言って、服を渡してきたので、それを受け取って、着替える為に更衣室へと向かう。

 しばらくすると、俺は戻る。

 俺の服装は、ラクレスの服装になっていた。

 

「どうかな?」

「お似合いですよ!」

 

 俺は朱菜にそう聞くと、朱菜はそう答える。

 それを見ていたリムルはニヤニヤとして、他の女性陣は微笑ましく見守っていた。

 一方、蜥蜴人族達は、首領が仲間を集めていた。

 

「豚頭族軍は既に、この地下大洞窟のそばまで迫ってきている。………だが、恐れる事はない!七日後には、強力な援軍が見込める!それまでは、我々は籠城し、戦力を温存するのだ。間違っても、攻撃に打って出ようなどと思うな!戦死すれば、餌になり、奴らの力が増すと思え!それが、豚頭帝を相手に戦うということだ!………援軍と合流した後、反撃に転じる!その時まで、耐えるのだ!誰1人、死ぬ事は許さん!」

「おお!」

 

 こうして、首領の指示により、蜥蜴人族は俺たちが来るまで、籠城する事になった。

 それから四日後。

 ある蜥蜴人族達は、侵入してきた豚頭族と交戦していた。

 三人でかかり、倒す事が出来た。

 

「これが、本当に豚頭族なのか?まるで、大鬼族とでも戦っている気分だ」

「ゾッとするな………。こんな奴らが20万も居るだなんて………」

「それが、豚頭帝の能力なんだろう。あと、三日も守り通せるだろうか」

「守ってばかりでは、疲弊するだけだ」

「おおっ、あなたは………。」

 

 そこに、ガビルが戻ってきて、首領の元に向かう。

 

「親父殿」

「「「ん?」」」

 

 ガビルの声に、首領、親衛隊長、副隊長がガビルの方を向く。

 

「おお、戻ったか!………して、ゴブリンからの協力は、取り付ける事が出来たのか?」

「はっ!その総数、7千匹。待機させております」

「うん」

「しかし………豚頭族相手に籠城とは、どういうつもりなのです?とても、誇り高き蜥蜴人族の戦い方とは思えませんな」

「お前が居ない間に、同盟の申し出があったのだ。その者達と合流するまでは、防衛に徹するのが最善だ」

 

 首領がそう聞くと、ガビルは答えながら、籠城を行う理由を聞く。

 首領の言葉を聞いたガビルは、呟く。

 

「ハァ…………老いたな、親父」

「何?」

 

 ガビルがそう言うと、立ち上がり、合図を出す。

 すると、ガビルの配下達が一斉に入ってくる。

 

「「「なっ!?」」」

「天然の迷路を利用し、大軍と戦うのは、良い策かもしれん。………だが、それでは数多ある通路に戦力を分散させすぎて、戦力の集中による迎撃が出来ぬ」

 

 そう言いながら、合図を出して、ガビルの部下が首領に槍を向ける。

 

「なっ………!?」

「ガ………ガビル殿!」

「これは、どういうつもりだ!?」

「落ち着け!親衛隊長に副隊長。危害を加えるつもりはない。」

「しかし………うっ!」

「手荒な手段になってしまった事は、後で詫びる。窮屈な思いをさせるが、我輩が豚頭帝を討つまで、辛抱してくれ」

 

 ガビルは部下に指示を出して、首領、親衛隊長、副隊長、そして、首領の側近を拘束した。

 

「息子よ!勝手な真似は許さんぞ!」

「ガビル殿………いえ、兄上!目を覚まして下さい!」

「ガビル君!何を考えているんだ!?」

「ええい!放せい!放さんか!放すのだ!勝手な真似は許さん!」

 

 首領、親衛隊長、副隊長がそう叫ぶ中、彼らは、牢獄へと連れて行かれた。

 ガビルが、顔を俯かせていると、部下の1人がガビルの方にやって来る。

 

「ん?」

「ガビル様、これを。」

「親父殿の………」

 

 ガビルは部下から、首領が持っていた槍を受け取る。

 すると、槍とガビルが光り出す。

 

「こ、この力は………水渦槍(ボルテックススピア)よ。我輩を主と認めてくれるのか!」

 

 水渦槍は、ガビルを主と認めた様だ。

 その背後から、部下達が大勢やって来る。

 

「各部族長の掌握が完了したぜ。若い連中には、この防衛戦に疑問を抱いていた者も多かったからな」

「そうか」

「皆、アンタについていく。頼むぜ、ガビル様」

 

 部下達は、ガビルに跪く。

 ガビルは、口を開きながら移動する。

 

「良いだろう。我輩が、蜥蜴人族の真の戦い方を見せてやろうぞ!時が来たのだ!」

「おお!」

 

 ガビルはそう叫ぶと、部下達は答える。

 こうして、ガビル達は俺たちの合流を待たずして、動き出してしまった。

 

「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ」

 

 湿地帯を埋め尽くす豚頭族の大軍。

 その一角から、ざわめきが生じた。

 

「ううっ………!」

 

 一体の豚頭族が、蜥蜴人族の攻撃を受けて、倒れた。

 

「豚どもを必要以上に恐れる事など無い!湿地帯は我らの領域!素早い動きで豚頭族どもを撹乱するのだ!ぬかるみに足を取られるのろまに後れは取らん!」

「やった!」

「攻撃が効いてるぜ!」

「然り!」

「豚頭族など、我ら蜥蜴人族の敵ではない!よし!一旦離脱!」

 

 ガビルの実力は、仲間達が認める物だった。

 だが。

 

「ああっ………うわぁ!」

「ん?」

 

 ガビルが、部下の悲鳴に、何事かと豚頭族の方を見ると、豚頭族が豚頭族を食べていたのだ。

 

「何だ?」

 

 ただ一つ、誤算があるとすれば、ガビルは知らなかった。

 豚頭帝の恐怖を。

 

「豚頭族が、豚頭族を食っている………!?」

 

 首領は知っていた。

 豚頭帝の恐怖を。

 その違いが今、結果となって、ガビルに牙を剥く。

 

「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。食べた仲間の力を我が物に!食べた獲物の力を我が物に!」

 

 ガビル達が唖然となる中、大鬼族の里にも響いたその声が、湿地帯にこだまする。




今回はここまでです。
今回は、ガビルが戦闘を開始するまでです。
ガビルは、豚頭帝を侮っていた。
その為、窮地に陥る。
直也が言う、あれとは。
ヒントは、キングオージャーの劇中でも登場しました。
体への負担が大きいといえば…………。
次回から、豚頭族との戦闘が始まります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
アンケートは、しばらく続けます。
シズさんは復活させて欲しいというのが多いですね。
シズさんは、超絶怒涛究極完全体キングオージャーの永遠の命の代用みたいにやる予定です。
シズさんも変身出来る様にしようかなと思いますが、考えているのは、キングキョウリュウレッドか、タランチュラアビスのカラーリングのスパイダークモノスの戦士のどちらかですね。
色々とリクエストを送ってくださり、ありがとうございます。
シズさんを直也のヒロインの1人に入れるのか、キングキョウリュウレッドやキョウリュウジャーを転生者や転スラの世界の人間の集まりにするのか、ダグデドの様なキャラを出すのかは、考えていきます。
もし、意見があればお願いします。

シズさんを復活させるか否か

  • 復活させる
  • 復活させない

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