ダンポケ   作:れいが

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14話 風といっしょに

 「皆さん、本当にお世話になりました。どうかお元気で」

 「リューも元気でやりなさいよ」

 「オラリオでの活躍出来るよう応援します」

 

 村の出入り口となるゲートの前でリューは深々とお辞儀をして別れの挨拶を告げる。

 見送りにはベル、春姫、ルノア、村人全員とポケモン達が来ていて別れを惜しみながらも、これからのリューの活躍を期待していた。

 ルノアが代表して別れの言葉を告げると...すぐにベルが前に出てきてリューに抱きついた。

 突然の行動で驚くが、ベルは泣きながら構わず言葉を紡ぎ出す。

 

 「リューお姉ちゃん...僕...僕...」

 「...大丈夫ですよ、ベル。ゆっくり言ってください」

 「...僕...リューお姉ちゃんが居なくなったら寂しい...」

 

 ベルは嗚咽を漏らしながら、涙声でそう告げる。その声を聞いてリューもまた目頭が熱くなりながらも優しく抱き締めた。

 そっと離れると涙を拭ってから微笑んで見せる。それから安心させるように頭を撫でた後に口を開いた。

 

 「私も寂しく思います...ですが、永遠にお別れという訳ではありません。

  サーナイト達や春姫さんとルノアさんと一緒に強くなって...オラリオでまた会いましょう」

 「...うん」

 「ベル君。寂しくなるお気持ちは痛い程わかります。

  でも...ベル君には私達が付いていますから、どうか泣かないでほしいです」

 「そうそう。いつまでも泣き虫のままでなんていられないでしょ?

  リューの言う通り強くなって...また会おうよ、ね?」

 

 春姫とルノアの2人がベルに優しく語りかける。その言葉にリューも頷いて肯定した。

 いつの間にか隣に立っていたサーナイトも肩に手を乗せて、微笑んでいた。

 すると、俯いてから大きく深呼吸したしたベルは涙を拭い、力強く頷く。 

 リューはそれを見てもう大丈夫だろうと思い、立ち上がった時だった。ベル達の背後から近寄って来る複数の影。

 

 デオキシス、ダークライ、ブースター、リーフィア、ニンフィア、イーブイの6匹。

 リューは彼らも別れの挨拶に来たのだろうと思い、近寄ってお世話になりました、と伝えた。

 ところが、次にデオキシス達が見せる行動にリューは驚きを隠せなかった。

 何かを差し出したかと思えば、それはモンスターボールだったからだ。

 

 「え...?ど、どうして、これを...」

 

 リューは困惑しながらも、最初にデオキシスから差し出されたモンスターボールを受け取る。

 お守りか何かとして渡されたのかと思ったが、次の瞬間にデオキシスがボールの金具を指で触れると、赤い光に包まれてボールの中へと収納されてしまった。

 突然の事にリューは驚きと戸惑いが同時に押し寄せて、オロオロと周囲に居る人にどういう事なのか説明を求めようとする。

 それに返答をしたのはダークライだった。

 

 「リュー...我々はお前について行く。お前のパートナーとして...」

 「パートナー...し、しかし、この村を離れる事になるのですよ?ケルディオとの特訓はどうなさるのですか?」

 

 ダークライが淡々とそう告げて、リューがそう答えると今度はブースターがボールを差し出してくる。

 話を聞いていないのか慌てて止めようとしたリューにエーフィが話しかける。

 村を離れるのは百も承知の上で話し合い、ブースター達を貴女のパートナーになる事を認めます、と。

 認めてもらったとはいえ、デオキシス達はどうして付いて行きたいのか、その理由がわからない以上リューも素直に頷けなかった。

 そんな疑問に答えるようにダークライが話し始める。

 

 曰く...ベルやケルディオとの特訓で戦いを見て興味を持った事と、オラリオで更に強くなるだろうと確信を持って、その行く末を見届けたいとの事だ。

 

 リューはカミツルギとカモネギから指導を受けていた傍ら、ベルやケルディオとも特訓をしていたのだ。

 但しケルディオはともかくベルとは数回のみである。理由は手加減しなかったためルノアが激怒したからだ。

 

 それに、とダークライは更に続ける。リューの人柄や性格に好意を抱いている事も打ち明けた。

 その言葉に嘘偽りはなく、本気でそう思っている事が伝わり...決心したリューはわかりました、と頷く。 

 

 ブースターからモンスターボールを受け取り、金具に触れてもらって収納する。

 続けてリーフィア、ニンフィア、イーブイもボールの中へ入れていき、最後にダークライの番となる。

 

 「ダークライ。聞きそびれたのですが、ケルディオとの特訓は...」

 「ケルディオも力を身に着けてきている。我々が居なくなれど、後任のもの達に任せれば問題はない」

 

 後任という言葉を聞いて、リューはホッと胸を撫で下ろす。

 まだ聞きたい事はあるが、これ以上引き留めるのは良くないと思いボールを受け取った。

 同じようにダークライもボールへと入ってもらい、リューは6匹のポケモン達を仲間にした。

 ダークライが入っているモンスターボールを見つめ、振り返るとベル達はリューの仲間となった事に言う事なしといった様子だった。

 リューはそんなベル達に笑いかけると同時に、もう一度頭を下げてお礼の言葉を述べる。

 

 「それじゃあ、リューさん。こいつがオラリオの近くまで運んでくれるから、のんびり空の旅を楽しみなよ」

 「はい。よろしくお願いします、フライゴン」

 「フルァイ!」

 

 ウスバカゲロウとドラゴンを併せ持ったような赤いカバーに守られた目を持つ、せいれいポケモン フライゴン。

 パートナーの郵便配達をする青年と似た性格なようで、任せな!と威勢のいい返事をした。

 リューは失礼します、とがっしりとした体幹の背中に乗って首に装備されたハンドルを握り締める。

 

 「リューお姉ちゃん!頑張ってね!僕も...頑張るから!」

 「はい。またお会いしましょう、ベル」

 

 最後にそう言葉を交わしてリューはフライゴンと共に空へ飛び立つ。

 まだまだ寒い時期とは思えない程、スッキリした青空に向かって上昇するフライゴン。

 ベル達からどんどんと離れて行き、やがて豆粒のように小さくなっても尚、見えなくなるまで村人達も手を振った。

 

 リューはまるで風と一緒に空を駆け抜けていくような気分となっていた。

 オラリオを目指してフライゴンは爽快に飛び、リューもまたしっかりと手綱を握り締めている。

 ふと、横を振り返るとカモネギとカミツルギが並んで飛びながら、見送ってくれている気付く。

 

 やがて山を越えようとした所でカモネギ達は速度を緩め、そこから見送っていた。

 リューは片手で手綱を離さないようにして、大きく手を振るのだった。

 

  

 「...さーて、ベル。次は私達の番になるんだから、それまでにとことん鍛えようね!」

 「リューさんの期待に恥じないよう、頑張りましょう」

 「うん!サーナイトや皆も一緒にどんどん強くなろうね!」

 「サナ...」

 「スピッ!」

 「ミミー!」

 「バンバババンバン!」

 「バースッ!」

 

 斯くして、ベルの決意は固く、オラリオに向かうために更なる高みを目指して特訓に励み始めるのだった。 

 

 そして、リューが旅立ってから数日が経過した頃。

 ガラガラ道場ではいつものように修行に励むベルとポケモン達の姿があった。

 カモネギから剣術を教わりながらマクノシタとガラガラとの組手や体力作りをしたり、休んでいる時は楽しく話したり用意された食事を門下生達と食べたりしていた。

 

 特訓だけでなく村での手伝いも修行の一環としてこなし、重い荷物を運び、裁縫で服を修復したり、食堂では春姫に習った料理を作れるようになっていた。

 余談だが、呼ばれればすぐさま目の前に立っているという事もあり、村一番の俊足と呼ばれるほどになったという。 

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