「皆、集まっているわね?...それじゃあ、自己紹介からお願いするわ」
「はい。初めまして、アストレア・ファミリアの皆さん。
私の名はリュー・リオン。故郷のリュミルアの森から、第二の故郷である村を経てオラリオへ来ました。
つきましては皆さんと共に冒険する日を楽しみにしています」
そう告げたリューは深々とお辞儀をする。それに応えるべくアリーゼを筆頭に他の面々も拍手を送った。
念願の求めていた多種族となる仲間が迎え入れてくれたという嬉しさに、顔を上げたリューは頬を綻ばせる。
オラリオに到着したリューは事前に案内を買って出てくれたベルの幼馴染の少女と合流し、まず初めにファミリア探しから始める事を教えられた。
そうしなければ神の恩恵を受けてもらえず、ダンジョンへ挑めないから、と。
オラリオの街を歩きながらベル達や村での近況を話した。
話を聞くに連れて幼馴染の少女は笑い所では微笑み、危険な目に遭ったという話では顔を顰めて、知り合いだったご近所の訃報を聞けば悲しそうにしていた。
そうしてギルドへ向かっているその道中、白装束を着た集団が周囲の人々に危害を加えようとしていたのを目撃。
初対面でありながら2人は息の合った連携で集団を無力化し、被害を最小限に抑える事に成功する。
その際に駆けつけたアリーゼにその腕を見込まれて問答無用で勧誘され、お役目ごめんという事でベルの幼馴染と別れたのだった。
「にしても、恩恵を受けてない奴が何でそんな強いんだ?」
「今日より1年程前から師匠として仰ぐ方に鍛えていただきました。
その剣の腕は正しく絶技...何千本もの木々を一瞬にして斬り倒し、モンスターは細々に斬り伏せる程の実力を持ってる方で...
剣を振るう中で見つける私自身の弱点を克服させてくださった恩師でもあります」
「それはそれは...もし機会があれば是非とも剣を交えてみたいものですなぁ」
「リオンよりも強いって事は確実だから、輝夜でも苦戦はしそうかしら?」
アリーゼはそう予想していると、笑顔ではあるがあからさまに不機嫌そうな雰囲気を漂わせる輝夜を見かねてリューは答える。
以前までの彼女なら気遣うという事が出来ないでいただろうが、ベル達との日々が彼女にも変化をもたらしていたのだ。
「私自身の本心としてはカモネギ師匠もカミツルギ師匠も負けるはずがないという気持ちはあります。
輝夜さんの実力を以てどうなるかという答えは明確に言えませんが...
きっと輝夜さんの力を認めてくださるはずです」
「ほぉ...それなら手合わせするその日までの間、稽古の相手をお願いしても?」
「はい。お役に立つよう、喜んでお相手します!」
そう返答をして握手を求めるリューに輝夜は少し面食らったようだった。
自分では力不足だと謙遜すると思っていたが、そんな事は一切せず自分の力を信じて疑っていない。
その姿勢を実感した輝夜は嬉しそうに笑いつつ、差し出された手をしっかりと握るのであった。
そんな折に、アリーゼがリューの腰に巻かれたベルトに付いている赤と白の球体が目に入る。
魔道具か何かなのかと気になって問いかけながらそれに指を指した。と同時にリューは輝夜の手を離して振り返る。
その2つの行動が重なり合い、運悪くモンスターボールの金具を押してしまう形となってしまった。
膨らむように大きくなったモンスターボールがポンッと開き、中から巻き戻るように光が溢れ出てくる。
しまった、とリューが思う頃には既にその姿が現れていた。
「ブイー!」
元気よく鳴き声をあげるイーブイが。
突然現れたイーブイにアリーゼ達は絶句し、リューは顔中から汗が噴き出てくるのを感じた。
そんな事はお構いなしにイーブイはリューに抱き着くと頬を舐めて甘え始める。
止めさせようとするリューだが、イーブイの悲しむ顔を見れば良心がズタズタになるため、されるがままとなってしまう。
「...リオン。その子...」
「ア、アリーゼ、こ、この子は決して危害を加えるようなモンスターではなくて、その...」
しどろもどろにどう説明すればいいのか考えるリューだが、全く思いつかず頭の中が真っ白となる。
そして、モンスターが魔道具から出現したという前代未聞の事態が目の前で起きている中、アリーゼは...
「可愛い~~!ねぇねぇねぇお願い抱っこさせて!」
「え?あ、はい。どうぞ、優しく撫でてあげると喜びますので」
「待て待て待ておいおいおい!そうじゃないだろ!?」
「そうですねぇ。まずはこのフサフサしてる首元を触らせてもらいましょうか」
「だからそうじゃないって言ってんだろ~~!?」
混乱するライラのツッコミが星屑の庭に響き渡るがアリーゼと輝夜の耳には入っていない。
アストレアやネーゼ達も困惑して状況を飲み込めず、暫くしてやっとリューが説明を始めた。
結果的に言えばポケモンという存在を個々の疑心はあれど全員が受け入れてもらえる形となった。
疑心が残ってしまっているのはダークライとデオキシスが少しだけ怖いという事が致命的だったようだ。
尚、どちらも自覚はあるとの事。
2匹以外のブースター、リーフィア、ニンフィアはイーブイと負けず劣らず可愛らしいため、特に問題はなかった。
リューはとりあえず、アリーゼ達の誤解が解けて一安心する。
やがて諸々の話し合いが佳境に差し掛かった頃、アストレアからこう聞かれた。
「リュー。貴女にとって正義とは何かしら?」
「可愛いは正義です。それ以外にありません」
「...あ、そう...」
「そこはもっと否定してくれませんかねアストレア様!?」
二度目のライラのツッコミさえ届かず、外は夕暮れへと染まっていくのだった。
「...ここが、そうなのでしょうか...」
「...扉が開いていたとはいえ、勝手に入ってくるとは大した度胸だな」
「あっ...あの貴女が...」
「消え失せろ、雑音が。ここは...誰であっても踏み入れてはならない場所だ」
「...知っています。死んでも守り抜くと貴女は約束したのですよね」
「...何?」
「貴女に手紙を預かっています。貴女の大切な方からのものです」
「...寄こせ」