ダンポケ   作:れいが

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波動って何気にチートですよね。


17話 さよならバイバイ

 「皆、今日から僕らの仲間になったリオルだよ。仲良くしてあげてね」

 「リオ!」

 「サナ」

 「スピッ!」

 「バース!」

 「バーンギラララ!」

 

 リオルを仲間に迎えた事を帰宅後、サーナイト達に伝えた。

 モンスターボールから出したリオルは元気よく挨拶をしたので、サーナイト達はそれに応じる。

 ベルはリオルがサーナイト達と楽しく話している間に、祖父にリオルを助けてからの経緯を話して自身に宿る波導についても教えた。

 

 波導自体は知っていた祖父だったが、ベルがそれを使いこなせるという事には驚きを隠せずにいた。

 

 「まさか...お前に波導使いの素質があったとは知らなんだ」

 「僕もルカリオから聞いた時はビックリしたけど...

  でも、ルカリオに使い方を教えてもらって、色々出来るようになったんだ」

 「なるほど...なら、その可能性を試して見る価値はあるようじゃな」

 

 祖父にそう言われたベルは力強く頷き、明日から早速特訓を始める事を宣言する。

 それに祖父は肯定して、オラリオでその名がすぐに知れ渡る事になると確信するのだった。

 

 翌日、春姫とルノアにも波導使いになれるかも、と伝えた。当然ながらそんな言葉を知らない2人は首を傾げる。

 それもそうかと、苦笑いを浮かべながらベルはルカリオに教わった事や、波導を使ってどんな事が出来るのかを詳しく説明すると2人は興味深そうに聞いていた。

 簡単に昨日ルノアが夕食で食べた料理は本当か嘘かを当てたり、どこかに隠れている春姫をすぐに見つけたりなどして証明し、2人は信用してくれた。

 

 そうしていつも通りの特訓をベルは始めるのだった。

 

 暖かなそよ風が吹く春が訪れて満開の桜並木の下を。

 夏の照りつけるような太陽で小麦色に肌が焼けようとも。

 空気が澄んでいる秋空の夜に見える三日月と星々の下を。

 冬の雪が降り積もった白い景色の中を...ベルは走り続けた。

 

 

 やがて、また春が訪れた頃...

 

 「...よろしくお願いします」

 「カモ」

 

 カモネギと対峙し、一礼をしたベルは木刀を構える。

 カモネギもまた、向き合っているベルにネギを構えて、いつでも始められる体勢を取った。

 

 この一本勝負は免許皆伝を懸けた真剣勝負であり、ベルが勝てばカモネギから免許皆伝を貰える。

 反対に負けた場合は向こう3年間...再戦を許されないのだ。

 この取り決めは両者同意の上で行われており、ベルもそれを承知した上で挑む事を決めたのだった。

 リューは別として免許皆伝はしてからオラリオに来た方がいい、と幼馴染から手紙を貰ったため、尚更負けられない。

 村人達はもちろん、春姫とルノア、サーナイト達もその勝負を見守っていた。

 

 緊張で鼓動が早くなるのを感じながらもベルは集中力を高める。

 身体に熱は残しながら、心は冷静さを保って開始の合図を待った。

 

 「...始めっ!」

 

 先に動いたのはほぼ同時で、ネギと木刀がぶつかり合う。ベルは踏ん張りを効かせてカモネギのネギを押し返す。

 しかし、押し返したはずの木刀は弾かれてしまいベルの身体は仰け反った。

 その隙を逃さずにカモネギが追撃を仕掛けるも、身体を捻りながら回転しつつ後退する。

 すぐさま立ち上がって呼吸を整えながら木刀を構え直す。

 

 「フッ...!」

 「カモ!」

 

 今度はベルから攻めていき、木刀を縦横に振るう。

 カモネギはネギで防ぎ、また弾き返すが今度はそれを読んでいたのか、ベルはすぐに反撃した。 

 攻防は激しさを増していき、木刀とネギのぶつかり合う音が道場内に響き渡る中...ついに決着の時が訪れる。

 

 カモネギが小柄さを活かして、常人ではまず出来ない姿勢から大きく振りかぶって振り下ろした。

 その一撃にベルは反応出来ずに直撃を受けてしまい、顔を歪ませて怯む。

 それを見逃さずカモネギは胸部を狙ってネギを突き出そうとする。

 

 誰もがベルが負けたと思ったその時、ベルは歯を食いしばって痛みに耐えながら静かに目を瞑り...

 

 「(...波導は我にあり...!)」

 

 心の中で唱え、波導を呼び覚ます。周囲の波導を感知しながら迫り来るカモネギの刺突を見切ろうとする。

 これまでの特訓で失敗続きだったため、無理だとルノアに言われていたが、この土壇場で行うつもりであった。

 カモネギのネギが直撃する寸前、波導を感知した事でその攻撃を見切り、左腕で強引に軌道を反らせ...

 カウンターに木刀を振るった。

 

 ガラガラ道場の外で仲良く毛繕いをし合っていたチラーミィ達だったが、突然、空気が割れんばかりの歓声と拍手で目を白黒させて驚く。

 

 肩で息をするベルの握っている木刀。それはカモネギが当たる寸前に止めていた。

 勝負であっても無暗に傷つけたくはないという、ベルの優しさが垣間見える瞬間であった。

 カモネギは甘いと思いながらも、彼の性格を理解した上で許す事にした。

 ネギを下ろし、握手を求めるとベルはそれに応じるように翼を握ってありがとうございました、と笑みを浮かべた。 

  

 こうして免許皆伝を懸けた一本勝負に勝利したベルは、正式にガラガラ道場の卒業を認められた。

 門下生から手洗い祝福を受け、最後には胴上げをしてもらった。

 春姫とルノアはその様子を微笑ましく見ていたが、これでいよいよ...と思い、顔を見合わせると静かに頷く。

 

 

 その夜、村を挙げてベルが免許皆伝した記念の祝杯を挙げる事にした。

 どんちゃん騒ぎをする中、用意された料理を堪能していたベルに祖父が近寄ってきて耳打ちをする。

 ベルは少し考えてから頷くと、立ち上がると両手で口元を囲い大声で呼びかけた。

 ピタッと村人やポケモン達は一斉に静かになって、ベルが何かを話すのだと気付く。

 

 「皆、ありがとう。こうしてお祝いをしてもらえて...すごく嬉しい。

  今までも特訓で応援してくれたり、励ましてもらったから頑張ってこれたと思ってるよ。

  ...だから、その思いを忘れずに...僕は春姫お姉ちゃんとルノアお姉ちゃんとオラリオに向かうよ!」

 

 そう言い切った瞬間、ガラガラ道場と同じぐらいの歓声と拍手が送られる。

 ついにこの日が来たか、とうとう行ってしまうのか、と様々な思いが飛び交い、ベル達の門出を祝福する。

 ベルは照れながらも嬉しそうに笑い、ルノアにシャンとしなさいと背中を叩かれ、春姫は苦笑いを浮かべながら心配する。

 一方で祖父は席に戻ると...静かに酒を煽る。

 

 「ベル!いよいよオラリオに行くんだね!寂しくなるけど...

  リューと一緒にオラリオで頑張ってね!」

 「うん、ありがとう。ケルディオ」

 

 ケルディオからの激励にベルは差し出された蹄を握って笑顔で応える。

 

 免許皆伝の祝杯と同時にオラリオへ旅立つベル達の送別会も兼ねた宴は大いに盛り上がり、深夜まで続いた。

 漸く終わったのは日付が変わった時刻で、後片付けはあまり酔っていない村人で行い、酔い潰れて寝てしまった村人はパートナーのポケモンが家まで運んだりしてもらった。

 ベルも手伝おうと思ったが、ゆっくり休んできなさいと気遣ってもらい、それに甘える事にして途中まで春姫とルノアと一緒に祖父と自宅へ帰るのだった。

 

 「それじゃあね、ベル。出発の日取りを決めて、それまでに準備しておかないと」

 「オラリオで作れる時間が限られてしまうと思いますから...

  ふしぎだまを出来る限り多く作っておきますね」

 「うん、わかったよ。じゃあ、おやすみなさい、春姫お姉ちゃん、ルノアお姉ちゃん」

 「気を付けて帰るようにな」

 

 ベルと祖父とリューに見送られながら、春姫達は自宅へと帰っていく。 

 まだ少し肌寒い夜道を歩いていると、不意に祖父がベルに話しかけてきた。

 

 「儂の心配は無用と思って、オラリオで存分に冒険者としての腕を磨くといい。

  それから...ポケモンマスターの夢を叶えるんじゃ。

  その時は、儂が見届け人としてお前の活躍を見届けよう」

 「うん...ありがとう、おじいちゃん。手紙を送るから、それまで待っててね」

 

 祖父は頷いてベルの頭を軽くポンポンと叩く。

 大きくなったのは違いないが、いつまでも祖父にとっては小さいままであると、そうする事で実感しているのかもしれない。

 ベルは気恥ずかしさはあるが、祖父の温もりを感じながら、自宅へと帰るのであった。

 

 

 数日後...ベルは綺麗にした部屋の中を見渡し、ドアを開けて出て行く。

 

 リューが村を後にした時と同じく、村人やポケモン達が見送りに村のゲートへ集まっていた。

 先に待っていた春姫とルノアは手を振って、ベルを迎える。

 村人やポケモン達は餞別以外に役立つであろう道具やきのみをベル達に渡していく。 

 

 「ベル!これ、全部オボンのみが入ってるから危なくなったら食べるんだよ」

 「わぁ...こんなに沢山...ありがとう、ケルディオ!」

 

 ケルディオが集めたオボンのみが詰まった袋をベルは受け取りながらお礼を言う。

 そんな中、カモネギは小袋を差し出してきて、何だろうと中を覗き込む。

 入っていたのは小さな種で、植えるとカモネギが愛用しているネギが育つのだとか。

 

 「カモ。カモカモ」

 「そっか...うん。ここ一番の勝負の時に使ってみるよ」

 

 ネギの種が入った小袋をポケットへ仕舞い込み、ベルはそう伝えた。

 最後に祖父が前に出てきて、ベル達に別れの挨拶を告げ始める。

 

 「春姫、ルノア。ベルの事を頼むぞ」

 「任せときなさいって。ま...もう泣きべそも掻かないだろうから、心配するだけ野暮だと思うけど」

 「おじいさんもお体にお気をつけてくださいね。いつまでも息災で...」

 「もちろんじゃ。まだまだ老いぼれとはおらんからな」

 「その見た目で言われてもなぁ...」

 

 ルノアの返答に村人達はドッと笑い声を上げ、祖父は参ったのうと苦笑いを浮かべた。

 そして、真剣な眼差しでベルに向かい合うと、必要以上の言葉は言わず話した。

 

 「行ってきます、おじいちゃん」

 「行ってこい、ベル。お前には...最高の仲間達が居る。

  いつもいつでもうまくゆく保証などないが、ほんきで生きて頑張るんじゃぞ」

 「うん!」

 

 ベルは力強く頷くと、祖父と固く握手を交わして別れを告げた。

 

 少し離れた所で春姫がゾロアークを出すと、指示に従ってイリュージョンでボーマンダに変化する。

 この巨体なら3人は余裕で乗れるため、背中に乗り込んだ。 

 紅い翼をゆっくり羽ばたかせ、徐々に浮かび上がっていくとベルは振り返って、村人やポケモン達に手を大きく振った。

 

 「皆!バイバイ!行ってくるよ!」

  

 大きく手を振りながら空の彼方へ消えて行くベル達を祖父を始め、その場の全員が同じ様に手を振って見届けた。

 やがて姿が見えなくなると、村人やポケモン達はそれぞれの日常へと戻っていくのであった。

 

 祖父だけは見えなくなっても、ずっと見送っていた。

 

 「さぁーて!オラリオで暴れまくるよ~!」

 「で、出来れば怪我のないようにしていただきたいのですが...その時はサポートします!」

 「うん!春姫お姉ちゃん、ルノアお姉ちゃん、頑張ろう!」

 

 斯くして、ベル、春姫、ルノア達はオラリオへ向かって大空を征くのだった。




次回からベル君達の無双が始まります。
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