長時間に渡る説教が終わった頃には夕暮れ時となっていた。
ベル達3人は並んで帰路についており、ヘスティアが待つホームへと向かっている所だった。
「まったくエイナはお堅いんだから...あんなに怒る事ないじゃない」
「まぁ、約束を破っちゃったのは間違いないからね...」
「そうですね...わひゃっ!」
強い風が吹いた途端に春姫の顔が吹き飛ばされてきた紙に覆い隠される。
慌ててベルはそれを引き離し、近日中にイベントが開催するという告知が書かれているのに気付いた。
「怪物祭...?」
「お祭りのようですが...どのような催し物なのでしょうか?」
「さぁね。ヘスティア様に聞いてみて、面白そうだったら行ってみようよ」
「うん。でも、モンスターって...どんな事をするのかな?」
オラリオへ来たばかりでどのようなイベントなのかわからず、それ以上の詳細は書かれていなかったので皆目検討がつかなかった。
ヘスティアが待つホームへ帰ると、早速吹き飛んできた紙を見せながら怪物祭の事について問いかけた。
怪物祭とは一言でいえばサーカスのようなもので、ダンジョンから連れてきたモンスターと格闘して大人しくさせて調教する流れを見世物としているとの事。
それだけでなく様々な屋台などが出店されるそうなので、オラリオに住まう人々が嬉々として集まるそうだ。
「じゃあ、それまでに稼いでおかないと。買い食いできる余裕もないんだから」
「そうだね。ヘスティア様も一緒に行こうよ」
「もちろんさ!その日は運良くバイトもお休みなんだから皆と楽しもうぜ!」
「はい。当日が楽しみですね」
怪物祭が行われるのは数日後。それまでにベル達はダンジョンで魔石とドロップアイテムをかき集める事を決める。
ヘスティアも眷族達だけに苦労はさせまいとバイトを頑張る決意を示すのだった。
「あ、それと今からボクは友神の開くパーティーに顔を出してくるよ。
美味しい料理をなるべく沢山持って帰ってくるから待っててね!」
「いや、ヘスティア様...それ絶対に恥ずかしい目で見られるからやめておいた方が...」
「か、隠れて取るから大丈夫だよ!」
などと言っていたヘスティアだったが、すぐにヘファイストスにその行いが見つかってしまい挙句にはロキと口論になってしまったのは言うまでもない。
翌日、ダンジョンへ潜ったベル達は複数のゴブリン達が襲い掛かってきたので返り討ちにしていた。
ブォアッ!
「セェイッ!」
ゴブリンの乱雑な攻撃を悠々と回避し、隙が生まれて懐が空いた所を狙ってベルはナイフで喉元を切り裂く。
藻掻きながら絶命したのを確認して魔石とドロップアイテムを回収しようとした時、頭上でモゾリと動く影に気付いた。
見上げるとダンジョン・リザードが手足を広げたまま落下してきてベルを押し潰そうとしてきた。
ベルは避ける前にナイフを勢いよく振り下ろし、柄が地面に埋め込むように設置する。そして、後方へ跳んだ。
ドドンッ!という音を立てながら地面に落ちたダンジョン・リザード。
ベルに襲い掛かるべく動こうとするも、ベルが設置していたナイフが腹部に刺さった事で身動きが取れなくなっていた。
ジタバタと手足を動かすだけのダンジョン・リザードは背後から迫り来る影の方を向いて威嚇しようとする。
「シッ!」
だが、それよりも早くルノアの拳が頭部に叩き込まれ、ダンジョン・リザードは顔ごと潰されて最期を迎える。
すうっと引き抜かれた拳は血で真っ赤に染まっており、ルノアはうへーっと不快感に訴える溜息を漏らした。
そんなルノアに春姫は近寄ると袂からふしぎだまを1つ取り出す。それが何なのか察したルノアは手を差し出した。
青白く発光するふしぎだまからサラサラとした水流が噴き出し、付着した血を洗い流してルノアの手は綺麗に洗浄される。
「こういう時にもせんたくだまって凡庸性があるわよね」
「寧ろ、これぐらいしか使い道がありませんので...」
「そんな事ないよ。汚れた物を綺麗にできるんだからとっても役立ってるよ」
「そうそう。だから、もっと春姫は自信を持ちなさいよ」
「ベル君、ルノアさん...はい、ありがとうございます」
ネガティブな意見を言っている最中に、魔石とドロップアイテムを回収して戻ってきたベルはそう励ました。
春姫にお礼を言ったルノアも応援して春姫は笑みを浮かべる。今までの努力は無駄ではない、と自分自身を諭して。
3人はダンジョンの探索を続けようと提案して次の階層へと進むべく歩き出した。
それからもモンスターを倒しては魔石やドロップアイテムを回収し、ホームへ帰って換金する日々を続けた結果...
17万6050ヴァリスという大金を集める事ができた。尚、ヘスティアの給料は以前に壊してしまった魔石焜炉の修理代に差し引かれ、50ヴァリスとなっていたらしい。
悔しがるヘスティアだが、それはともかくとして怪物祭当日は思いっきり楽しもうと明るく笑うベルにヘスティアは頷いてつられるように笑うのだった。