ダンポケ   作:れいが

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第三章
25話 グリーンサポーターと小人族のサポーター


 「わぁ~!色んな武器とか鎧が飾られてるね」

 「ここはヘファイストス・ファミリアのテナントなの。きっとベル君が気に入る武器もあると思うよ」

 

 怪物祭の騒動が終結してから二日が経った頃、ベルはエイナに連れられてバベルにあるヘファイストス・ファミリアの武具屋に訪れていた。

 理由は逃げ出したモンスターの討伐で使用したナイフが破損したため、新しい物を買う為だった。 

 エイナと一緒なのは、怪物祭でのモンスター討伐に協力して報奨金を受け取りに来た際、その事を話したのが切っ掛けである。

  

 ちなみに私服である事を彼女に問いかけられたベルの返答は...

 すごく可愛いけど大人っぽくて綺麗という、純粋無垢なものでエイナはからかうにからかえなかった。

 

 豪華な内装に展示されている武器はどれも煌びやかに洗礼されており、ベルの目を惹かせる物ばかりだった。

 途中、偶然にも何故か接客をしているヘスティアと鉢合わせをして、個人的な借金返済のためにアルバイトをしているのだと知らされる。

 ベル達の頑張りでそこそこの稼ぎは出来ているのだが、ヘスティアはそれに手を付けまいとこっそり掛け持ちをしていたのだった。

 

 「ヘスティア様、1人で抱え込むのは良くないよ。僕達も手伝ってあげるから」

 「大丈夫さ!借金って言ってもそう大した...事はないし、心配ご無用だよ!」

 「本当に大丈夫なのですか?ファミリアの主神が抱える問題に口出しをするのも何ですが...」

 「だ、大丈夫だってば!あっ、よ、呼ばれたから行くね!ごゆっくりどうぞ~!」

 

 実際には誰の呼びかけも聞こえなかったのだが、ヘスティアはドアをバタンと閉めて逃げる様に去っていった。

 ベルとエイナは困惑していたが、気を取り直して武具屋の上の階へと昇降設備で向かった。

 

 上の階は先程の豪華な内装と打って変わって、少し薄暗い石造りの床や壁や鉄板の天井が剥き出しとなっている。

 そこは新米の鍛冶師が作製した武器を販売しており、下の階よりも格安なので零細ファミリアや駆け出しの冒険者にとってはありがたい場所でもあった。

 

 ベルはエイナの案内を受けて、無造作に陳列された武器を見て回っていると...ライトアーマーが入っている木箱、ではなくその横にあるナイフに目が留まる。

 エイナを呼び止めて、そのナイフを一緒に見てみる事にした。鞘から抜くと、そのナイフは基本的に鈍い銀色か黒色となっているブレード部分が真っ白になっているのがわかった。

 

 エイナは色彩が変わっている以外に性能は至って普通のナイフだと思い、ベルは単純にカッコイイと思って気に入ったようである。

 

 「エイナお姉ちゃん!僕、これにするよ!カッコいいから!」

 「え?あぁ...まぁ、いいと思うよ。使うのは君なんだし、気に入ったのなら...」

 「うん!」

 

 会計を済ませてベルは早速購ナイフを腰に引っ掛け、昇降設備に乗ろうとした。しかし、唐突にエイナから待っているように言われた為、その場に待機をする事に。

 やがて、エイナが戻ってきたので今度こそ昇降設備に乗るとそのまま地上まで降りていった。

 

 「今日は色々教えてくれてありがとう、エイナお姉ちゃん」

 「ううん。担当アドバイザーとして当然だから...あ、そうだ。はい、私からのプレゼント」

 「え?これって...プロテクター?」

 

 包みから取り出してエイナが差し出したのは、腕に装着するグリーンサポーター。

 ベルはこれを自身にプレゼントしてくれるのかが理解出来ず、頭に?を3つ浮かべていた。

 その様子にエイナは微笑みながら、怪物祭での騒動を治めるのに貢献してくれた彼女自身の感謝の気持ちだと述べた。

 

 「それに、ベル君って防具を全然着けていないからちょっと心配だし...だから、受け取ってほしいな」

 「そっか...うん、ありがとうエイナお姉ちゃん。なるべく壊れないように使うから」

 「まぁ、防具なんてそんな物だから遠慮せず使い込んでいいよ」

 

 エイナからグリーンサポーターを受け取り、ベルが嬉しそうに笑みを浮かべるとエイナもつられて微笑んだ。

 そうして、改めてエイナにお礼を言って別れたベルは、本拠へと続く帰路に着くのだった。

 

  

 数日が経ち、新たな白いナイフとエイナからのプレゼントであるグリーンサポーターを装備するベル。

 エイナから3人の実力を理解した上で9階層まで降りられる許可を得たので、意気揚々とルノアと春姫と一緒にダンジョンへ向かおうとしていた。

 バベルの広場で持ち物の確認をして、いざ入ろうとした時...

 

 「そこの3人方。ちょっとよろしいでしょうか?」

 「ん?あっ、どうしたの?もしかして迷子になったのかな?」

 「それならアリーゼさんの所かガネーシャ・ファミリアに連れて行かないと」

 「そうですね。あっ、こちらのポロックをどうぞ」 

 「へ?あ、ど、どうも...え、えっと、リリは迷子ではなくてですね...」

 

 自身よりも大きなバックパックを背負っている少女を3人は迷子だと思い、優しく接しながら話しかける。

 少女は3人の対応に少し困惑しながら、ポロックを貰ってからお礼を言って用件を伝える。

 その用件とは、ダンジョンでの荷物持ちの役割となるサポーターを雇ってもらうというものだった。

 

 少女の名前はリリルカ・アーデ。ミアハ・ファミリアに所属する小人族だ。

 

 以前まではソーマ・ファミリアの眷族であったのだが、何かしらの理由でファミリアの改革に乗じて脱退したのだという。

 何かしらというのも、リリルカ自身よくわかっておらず...団長のザニスやカヌゥといった団員達がとてつもない悪夢に苦しみ、結果的に大勢の眷族が失踪してしまい、ファミリアの機能が維持できず解散となってしまったからだ。

 

 尚、両親がつくってしまっていた借金も解散した際に免除となってリリルカは思い切り歓喜の叫びと共にガッツポーズをしたのは内緒である。

 

 「まぁ、いいんじゃない?集めるのを気にしないで動けるなら、相当楽になるんだし」

 「そうだね。じゃあ、リリちゃん。よろしくね」

 「何分、私達も駆け出しですから、ご迷惑をお掛けしないよう気を付けます」

 「いえいえ、ご迷惑だなんて。寧ろリリの方が足を引っ張らないように頑張りますね」

 

 ベル達はリリルカをサポーターとしてパーティに迎え入れ、ダンジョンへ潜って行った。

 難なく8階層まで潜ると、赤黒い硬殻に覆われた蟻型モンスターのキラーアントがゾロゾロと壁や天井の亀裂から湧き出てくるのが見えた。

 ウォーシャドウと並んで新米殺しとも呼ばれ、とにかく硬いために倒すのが難しく同種を呼び寄せる厄介な特性を持っている。

 

 リリルカは駆け出しという3人にその危険性を教えようとしたが、その前に叩き潰してしまって絶句してしまう。

 

 「アイアントよりよっぽど脆いなぁ...あれ?リリちゃん、拾わないでどうしたの?」

 「...あ、いえ。どうぞお気になさらず...」

 

 絶命したキラーアントの腹部に埋まっている魔石を抉り出しながら、リリルカはふと先日から耳にしている3人の冒険者に関する噂を思い出した。

 1人は白い髪に赤い瞳をした少年でモンスターを素早く斬り伏せ、もう1人は一見華奢な雰囲気だが拳の一撃でモンスターの胴体に穴を開け、最後に狐人の美しい少女がその2人を見た事もない魔道具で援護していたというものだ。

 もし、その3人であるなら...この先、危険な目に遭う事は想像に難くないとリリルカは色々と察して、サポーターに雇われてしまった事を後悔し項垂れる。

 

 「リリルカさん!」

 「え?」

 

 春姫に呼ばれて振り向くと、別の亀裂からキラーアントが顔を出してリリルカに噛み付こうとしていた。

 

 咄嗟に飛び退けようとするも、バックパックが死骸に引っ掛かってしまい動けなくなってしまう。

 鋭い牙がリリルカの目の前まで迫り、死を覚悟した彼女は目を瞑る。しかし、目の前でガチガチという音が数回程聞こえるだけに留まり、音が鳴り止んでリリルカは恐る恐る目を開けると...キラーアントは動かなくなっていた。

 

 何が起きたのか動揺するリリルカに春姫はバックパックを引っ張って後ろへ引きずる。

 しかし、助けようと引きずったはずが石が尻を擦る激痛に、リリルカは声にならない悲鳴を上げながら数回ピョンピョンと飛び跳ねるのだった。

 

 「も、申し訳ございません!配慮が足りず...」

 「だ、大丈夫ですよ。命があるだけ儲けものですから...それにしても、あれはどういう事なのでしょうか?」 

 「こちらのふしぎだまで動きを封じたのです。ダメージを受けると動くようになりますが...」

 「はぁ...あの、それはどこで入手したのですか?ヘルメス・ファミリアの【万能者】が売っているとは聞いた事が...」

 「いえ、私が妖術で作成した物です。他にも色々ありまして...」

 「ちょっとちょっと。まだ残ってるんだからお話は後にして!」

 

 背後から聞こえるルノアの忠告にハッとなるリリルカと春姫。すぐにそれぞれの役割を果たそうと戦闘に戻る。

 数にして凡そ30匹ものキラーアントを倒したベルとルノア。圧倒的な強さを目の当たりにしたリリルカは改めて異常さに身震いするのだった。

  

 地上へと戻り、集めた魔石やドロップアイテムをギルドで換金を済ませると...その額は130000ヴァリスとなった。

 下級冒険者の5人組パーティにおける5倍もの金額を半日で稼いだのだ。

 ソーマ・ファミリア時代に金銭苦だったリリルカにとっては、あの頃に出会っていればという悔しさや羨望を抱いてしまい自分に嫌気がさしていた。

 

 「では、どうぞ。リリルカさんの報酬となります」

 「あ、どうも...って、えぇえ!?や、山分けなんて...雑用としか役に立たないサポーターが貰っていい報酬では」

 「何言ってんのよ。そんなルールがあるなんて知らないし、文句がある奴がいたらぶん殴ってやるわよ」

 「ルノアお姉ちゃん、やり過ぎだってば...ともかくリリちゃんの働きがあったからこそだし、受け取ってよ」

 「は、はぁ...では、ありがたくいただきます」

 

 ヴァリスの詰まった袋を手に取り、リリルカは複雑そうな面持ちを浮かべていた。

 これまで色々な冒険者のサポーターに雇われていたのだが...その都度、金を独り占めにされて全く借金を返せなかった。

 リリルカにとって冒険者など、化けの皮を被ったモンスターと変わらない存在であるという認識は今でも残っている。

 

 しかし、俯かせていた顔を上げてベルやルノア、そして自身を助けてくれた春姫を見つめる。

 楽し気に話している3人には、今まで感じた事のない温もりがあった。

 雑用としてではなく、冒険者のパーティとして迎え入れてくれたこの3人を信じていいのか...リリルカがそう悩んでいると、ルノアに両手で頬をムニュッとされてしまい慌てる。

 

 「にゃ、にゃにゅひゅるんれひゅは~!」 

 「なーんかつまらない事を考えてそうだからイジワルしてんのよ」

 「どゅ、どゅいうひみれひゅか!?は、はにゃひへふひゃはいぃ~~!」

 「ルノアお姉ちゃん...」

 

 その後、ベル達はリリルカを連れてダンジョンへ行くようになり、彼女の心境も変化していくのかもしれないのだった。




ライラ「なぁ。リュー」

リュー「はい?」

ライラ「お前がこの間助けてやった同族の子が所属してたファミリアのことなんだけどさ」

リュー「ソーマ・ファミリアの団長含めて団員が悪夢に魘されているという件については何も知りません」

ライラ「...あっそ」
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