ダンポケ   作:れいが

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26話 いつかを信じて

 ここはバベルの最上階。そこでオラリオを見下ろしているフレイヤは憂鬱そうにため息をついていた。

 

 「ねぇ、オッタル」

 「はっ...フレイヤ様、いかがされましたか」

 「あの子の魂...とても勇ましく青白い輝きを宿しているの。あんなにも綺麗な魂を今まで見た事がないわ」

 

 けれど...と、言葉を途切らせる。オッタルは静かに視線を移すと、敬愛する主神がどこか不満そうであるように見えた。

 

 「本気を出せていないから不十分みたいなのよね...モンスターが弱すぎるせいかしら?

  怪物祭でもあまり輝いていなかったもの」

 「...既に恐怖を克服していると見れば、その通りでしょう。並のモンスターでは障害ともならない筈かと...」

 「それなら...どうすればいいかしら?」

 

 チラリと流し目でフレイヤはオッタルに問いかける。何か面白そうな事を考えていないかと要望するように微笑でいた。

 オッタルは無言で頷くと、一礼をしてから後ろへと下がりどこかへ行ってしまった。

 

 「ふふっ...あの子の魂が、どれほど輝くのか見ものね」

 

 

 「いい?今から見せるのはリリルカを信用しているからであって、もし裏切ったら締めるよ」

 「そんな物騒な事を言われたら見たくありませんよ!?」

 「ルノアお姉ちゃん、リリちゃんをイジメないでってば...」

 「申し訳ございません、リリルカさん...」 

 

 場所は変わってヘスティア・ファミリアの本拠である廃教会。それなりに親しい仲となってきたリリルカを招待していた。

 外見こそ変わりないが、ベル達が来てからというものコツコツと掃除をしたり屋根に空いた穴の補修をしたりなど少しずつ綺麗にはなってきているので当人は然程気にしていない様子だった。

 

 ちなみにヘスティアは昨日、リリルカの主神であるミアハと飲み会をしたのだが...羽目を外し過ぎたせいで、二日酔いとなり地下室のベッドに呻き声を上げながら横たわっている。

 

 「じゃあ、いくよ。サーナイト、出てきて!」

 「カイリキー、出ておいで」

 「ゾロアークさん、お出でになられてくださいませ」

 

 3人が頭上に投げたそれぞれのモンスターボールがポンッと開き、地面に向かって光が溢れ出す。

 リリルカはその光景に驚きつつも目を奪われた。ふしぎだまと同じ見た事もない魔道具の機能を見せてくれるのかと思っているからだ。

  

 しかし、その溢れ出した光が段々と形を形成していくと...興味津々だった表情が一変して蒼褪める事となる。

 

 「サナ」

 「カーイリキー!」

 「クルルルッ...」

 

 目の前に現れた3体のポケモン。特に腕が4本もある巨体のカイリキーにリリルカはすっかり怯え切ってしまい、その場にへたり込んでしまう。

 慌ててベルと春姫が駆け寄り、壊れていない綺麗にしてある椅子へ座らせてあげた。

 

 「リリちゃん大丈夫!?」

 「...な、何とか...い、いえ、正直言いますと混乱しています。な、何なんですか、あのモンスター達は...?」 

 「はい、キチンと説明して差し上げます。ゾロアークさん達はポケモンという...」

 

 そこからはサーナイト達が危険な存在ではない事を理解してもらえるよう、リリルカにわかりやすく説明をした。

 当然、簡単には信じてもらえず、しかし彼女なりに心配してくれているようでオラリオ中に知られれば大変な事になると忠告をしてくれた。

 

  ルノアがリューに話した事がある通り、やはりポケモンもダンジョンに潜むモンスターと変わらないという認識を持たれるようである。

 

 リリルカの反応から見ても、近寄りがたい様子だった。しかし、サーナイトがスッと近寄って握手を求めた。

 

 「サナ」

 「...な、何ですか?握手でもしたいとか言うんじゃ...」

 「サナ。サナ」

 「...か、会話ができるとは思っていませんでしたが...あなたの事をリリは信頼できません。

 気を悪くさせてしまうようで申し訳ありませんが...」

 

 サーナイトは素直にそう答えた彼女に対して微笑み、いつかその時が来たら、とテレパシーで伝えた。

 それを聞いて複雑そうな表情ではあるものの、リリルカは頷く。

 

 サーナイト達をそれぞれのボールへ戻し、次はふしぎだまについて教える春姫。

 

 ふしぎだまは春姫が妖術を用いて作成し、様々な効果を発揮する代物だ。

 敵に対するデバフ効果や攻撃、更には味方に対してバフ効果を付与する事も可能である。 

 

 リリルカは並べられた1つを手に取り、どんな効果があるのか問いかけた。

 

 「そちらはしばりだまと言いまして、フロア中のモンスターをこうちょくじょうたいにさせます。

  人に対して使った事はありませんが...恐らく効果はあるかと」

 「では、こちらは?」

 「しゅんそくだまは私を含め、ベル君やルノアさんといったパーティの移動速度を上げる事が出来ます。

  もちろん、リリルカさんにも付与されますわ」

 「はぁ...こっちは何ですか?」

 「自身の姿をとうめいじょうたいにする、とうめいのたまになります」

 

 一通りふしぎだまの効果を聞き終えて、リリルカは深呼吸をすると...思いの丈叫んだ。

 

 「全部チート級じゃないですかぁぁ~~~!!??」

 「こんっ!?」

 「特にこのあなぬけのたまとたんちのたまなんて10万...いえ、一級冒険者に吹っ掛ければ500万ヴァリスで売れますよ!」

 「そ、そんなご冗談を...確かに優れているとは思いますが、そんなにまで高額とは」

 「何言ってるんですか!?今すぐに商標登録をして売り込みに行くべきです!そうすればこんなボロボロの教会からおさらばも出来ますから!」

 

 内心思っていた本音を張り上げるリリルカと冷静に受け応えしている春姫。慌ててベルが落ち着かせようとするが、リリルカは益々興奮して宥めるに宥められなかった。

 そんな3人を見てルノアは面白そうに笑っており、今後もリリルカとは仲良くなれそうだと確信する。

 

 結局のところ、話し合いの末に春姫が誰にも売り付けたりはしないという事でリリルカは心底勿体ないと思いながらも、彼女の意思を尊重してそれ以上は何も言わなかった。

 

 

  あくる日の朝方、ベルは市壁へ訪れていた。とある人物と待ち合わせをしていたからだ。

 山の影から太陽が段々と顔を覗かせ始めると、コツコツという足音が聞こえてきてベルは後ろを振り向く。

 

 その正体は...ダフネだった。休日という事もあり、淡いピンクのワンピースに黒いジャケットを纏うという私服姿である。

 

 「...背、結構伸びとーね。ウチよりほんの少し高かくらい?」

 「そうかも。ルノアお姉ちゃんや春姫お姉ちゃんは抜いてるから」

 「ふーん。体格も良うなっとーし、故郷でばり鍛えたんやね」

 

 ダフネは市壁の積み上げられた塀に腕組をしながら背中を預け、ベルは両腕を乗せるように凭れ掛かった。

 最初はお互いの変わったところを言い合っていたが、次第に口数が減ってくる。久しぶりに再会したダフネとの会話がこれで終わりというのも何処か心が物悲しく感じた。

 

 ベルは色々と思い浮かべて、話を繋げられそうな話題を持ち掛ける。

 

 「えっと、ダフネちゃんは今レベルいくつなの?僕と春姫お姉ちゃんは5でルノアお姉ちゃんは10だったよ」

 「6。そげんダンジョンへ潜ったりはしとらんけん当たり前ばってん。確か...こん間、【剣姫】も6になったんやっけ」

 「【剣姫】...?」

 「知らんの?ロキ・ファミリアに所属してるアイズ・ヴァレンシュタインっていう女の子の事だよ。

 まぁ...ウチもようは知らんばってん、それなりに強かばいっちゃ」

 「へぇ~、ダフネちゃんが言うならそうなんだろうなぁ」

 

 そう呟くベルとは、ぐるりと半周して反対側の市壁で剣を振るう少女がいた。

 もし、本来なら交流を持つはずだった2人の距離を暗喩しているのであれば...到底出会う事もない距離である。

 

 ダフネは背中を塀から離し、ベルと向き合うように姿勢を正した。それを見てベルも猫背にしていた背中をしっかりと伸ばす。

 お互いに視線を逸らさず、強い意志を持った瞳の輝きを見せていた。

 

 「待っとーけんね、ベル。ポケモンマスターの座を賭けて、君がどれだけ強うなったんか...楽しみにしとーばい」

 「...うん。必ず僕は...ダフネちゃんに勝つよ」

 「上等...まぁ、とりあえず買い物に付き合いんしゃい。何かうまかもんでも奢っちゃるけん」

 「ホント!?やったー!」

 

 幼い頃から変わらない喜びに満ちた笑みを見て、ダフネは懐かしむようにくすりと微笑んだ。

 市壁から降りる階段へ向かおうとした際に頭上から何かを感じて、ダフネは睨むようにバベルを見上げる。

 自分に対して気に食わない、羨ましいといった嫉妬の籠った視線。一体自分が何をしたというのか。

 

 ベルに呼ばれると視線を感じなくなり、ダフネは早足にその場から去るのだった。

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