「サナ、サナサナ?」
「ううん、自分で歩いて行けるから大丈夫だよ、サーナイト。
ボールに戻ってて?」
「サナ...サナサナ」
テレポートで目的地に瞬間移動する提案をしたサーナイトだったが、素直にベルの言う通りにした。
迷いの森のように複雑な樹海の道を進む訳ではないので、ベルは自分の足で歩こうと思ったのだろう。
ベルが初めに向かったのはハクタイの森だった。
くさタイプのポケモンは殆ど生息しておらず、むしタイプのポケモンが多く棲んでいる。
森の中を進んでいくと山裾の崖にへばり付いている黄色い巨大な壁が見え始めた。
それは、はちのこポケモン ミツハニーの群れが何十匹にも集まって形成するミツハニーウォール。
ベルが近付いて来たのに気付くと、外枠となるミツハニー達が羽を鳴らして嬉しそうにした。
「「「ハニー!」」」
「こんにちは、ミツハニー。ちょっと中に入れてもらえないかな?」
挨拶を交わしてベルにそう頼まれた内側に嵌っていた数匹のミツハニーが壁から抜けると入口をつくってくれた。
ベルはそこから入り、はちみつの甘い香りで充満するはちみつロードを進んで行くとやがて最奥の広々とした空洞に到達する。
そこには屋根から外壁、階段から床まで全てが黄色い蜜を固めて造られた建築物が聳え立っていた。
その名も琥珀の城。
どくばちポケモン スピアーが王、はちのすポケモン ビークインが女王。
そして、配下となるスピアーとミツハニー達の棲む根城なのだ。
スピアーとビークインに仕えるミツハニーは同じ蜂のポケモンであるためか共生関係にあり、群れとしての結束力は高い。
尚、王と女王の関係ではあるが番ではないそう。
ベルが住む村人達とも協力関係にあり、彼らが集める蜜は村人達が育てた花畑から接種してもらっている。
その集めた蜜をビークインを始め、スピアーやミツハニーが貯蓄すると余った分をお裾分けしてくれて、瓶に詰めたそれを商品として隣町に売るという仕組みを確立させているのである。
階段を上がり、城内へ入るとベルは全面黄色ではあるが見慣れた通路順に進んで行く。
広い空間に出ると、そこには数多のスピアーやミツハニー達がせっせと蜜を蜂の巣に貯めたり運んだりしている姿があり、ベルは邪魔にならないよう隅を移動するとまた別の通路を進む。
「あっ、スピアー!こんにちは!」
「スピッ!」
通り過ぎようとした交差している通路で1匹のスピアーと出会い、ベルは挨拶をした。
スピアーも片方の巨大な針を上げて元気よく返事を返してくれた。
このスピアーが知り合いのポケモンである。ちなみにサーナイト同様にメス。
「...そういう訳なんだけど、スピアー。どうかな?」
「スピ...」
スピアーにベルは会いに来た目的を話した。
ポケモンマスターを目指すためにバトルで一緒に戦ってくれる仲間を増やしている事、その仲間が現段階で1匹しか居ないためスピアーを頼りに来た事。
話を終えると、少し考えてからスピアーはベルにここで待つようにと、どこかへ行ってしまった。
壁の蜜を指で掬って舐めながらベル達は待っていると、暫くしてスピアーが戻ってくる。
何故かスピアーの首には、持ち物を包んだ大きな葉っぱを括り付けていた。
どこへ行っていたのか問いかけようとするも、スピアーは有無を言わせずグイグイと引っ張ってそのままベルを琥珀の城から出て外に連れ出した。
「スピッ!」
「え?う、うん...はい」
森に出るや否や、モンスターボールでのゲットを催促してきて、ベルは困惑しながらも取り出してスピアー自らに中央の金具を押させる。
これで2匹目のポケモンを仲間にした訳だが、後になってベルは知った事だが...
実は王と女王を守る親衛隊のような役割をスピアーは担っており、実力的には相当なもので将来的にリーダーシップを任されていたそうだ。
が、恩人であるベルの頼みとあってはそれを投げ打ってでも、仲間になる事を決意したという。
仲間のスピアー達は当然猛反対したが、真面目な性格のスピアーは折れる事なくスピアー達を説得させてベルの仲間となったのだ。
そんな重大な事を、この時のベルは知る由もなくただ仲間が増えて喜ぶだけだった。
次にやって来たのはハクタイの森にある巨大な逞しい大木が天に向かって伸びている拓けた場所。
大木の枝の間に巨大な蔦を縄代わりにして吊るす様に作られた丸い大きな巣が幾つもあった。
その内の1つにベルは近付き、出入り口から顔を覗かせて呼び掛ける。
「ミミロップー?」
「ミミ~?...ミミッ!」
「こんにちは!ちょっと話したい事があるんだけど...いいかな?」
巣の中で寛いでいたのは、うさぎポケモン ミミロップ。こちらもメス。
ベルの話を聞くために寝転んでいたミミロップは起き上がって座り直し、どうぞと手招きをする。
ミミロップの見た目は色違いなどではないが、代わり奇抜な容姿をしている。
長い耳に色彩豊かな羽根を1つにした髪元い耳止め、その下にはオレンジの綿毛、反対の耳にはきれいなウロコと雫を付けている。
目の周りにも丸や三角など模様を描いている。
巣の中も何を思って集めたのかわからない、様々な物が散乱していた。
中へ招かれたベルはミミロップの目に座り、スピアー同様に会いに来た目的を話した。
最後はミミロップにも仲間になってもらいたい事を素直に伝え、ジッとミミロップを見つめるベル。
「...ミミッ!ミミ、ミミ」
「あ...ありがとう、ミミロップ!じゃあ...ここを押して?」
「ミミ」
ミミロップはベルの言う通りにモンスターボールの金具をクリーム色の綿に覆われた手で押した。
3回揺れて白い光が弾けると3匹目のパートナーとなった事をモンスターボールが告げる。
ベルがミミロップと出会ったのは遡って1年前。サーナイトに出会う前の時期。
巣作りをしていたミミロップだが不器用なせいで他のポケモン達より遅れて、投げ出そうとしていた時だった。
諦めて洞穴で生活をしようかと考えながら散歩をしていると、細長い木の枝を必死に振っているベルを見つける。
何をしているのかとミミロップが問いかけた所、欲しい木の実が高すぎて届かないと涙ぐみながら言うベルに、ミミロップは自慢の脚力で跳躍しその木の実を採ってあげた。
それにベルは目をキラキラさせて、満面の笑みでミミロップにお礼を言った。
やんちゃな性格のミミロップは満更でもなく、得意げにしていた。
お返しにしてあげられる事はないのかと聞かされ、ミミロップは気にしないでいいと答えようとしたが脳裏に巣作りの事が過る。
ダメ元でベルに巣作りを手伝ってほしいと伝えると、二つ返事でベルは承諾してくれたため、ミミロップは諦めるのをやめざるを得ななかった。
材料となる枝集めから始まり、球体状になるまでその枝を曲げて、そこから蔦を使って枝と枝を繋ぎ合わせるように編み込んでいく。
小さな手で必死に組み上げているベルを見たミミロップは、諦めようとしていた自分を情けなく思い、最後までやり遂げようと不器用ながらも蔦を結んだ。
完成するまでにかなり時間がかかり、出来上がった巣はお世辞にもいい出来とは言えなかったが、それでもミミロップにとっては最高の物だった。
完成時の達成感は半端なくベルとミミロップは大いに喜んで抱き締め合った。
そういった経緯があり、恩返しの恩返しとしてベルの3匹目の仲間となったのだ。
「よーし!次は...あそこだね」
ベルの視線の先には...天高く聳え立つ、テンガン山だった。
To Be Continued
サーイエッサー系スピアー と パリピギャル系ミミロップが 仲間に加わりました