ダンポケ   作:れいが

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28話 ウルトラホール

 アポロン・ファミリアの本拠を出て、ダフネはメインストリートの一角にあるお店に足を運んでいた。

 豊饒の女主人。オラリオの中でとても人気を誇る酒場であり、料理はもちろん店員の良さも好評とされている。

 

 しかし、何故か主神であるアポロンからは絶対に近寄るなと言われており、それを知らなかったダフネはそこで食事をしたために団長であるヒュアキントスから厳しく注意された事がある。

 しかし、そもそも嫌っている相手なのでダフネは無視して機嫌が良い時は必ずと言っていい程通っていて常連となっていた。

 

 無視しているとはいえ、また注意されるのは面倒だと思っているダフネは、知人など誰にもバレないようこっそりと店内へ入った。

 まだ開店前なのでひっくり返された椅子がテーブルの上に乗っており、数人の店員がモップを持って掃除をしているようだった。

 

 「ねぇ、クロエ。ちょっといい?」

 「ん-?あぁ、ダフネかニャ。まだお店は開いてないけど、何か用ニャ?」

 「明日、ウチと故郷の友達で祝会をしたいからテーブルを2つ予約してほしいの。前金は...これぐらいで」

 「かしこまりニャー!特等席を用意しておくニャ!」

 「お願いね。じゃあ、お仕事頑張って」

 

 ヴァリスの詰まった袋をクロエに手渡しして、ダフネは周囲に同じ所属の団員がいないかを確認して豊饒の女主人を後にする。

 

 「さてと...」

 

 行き交う人の合間をすり抜けつつ、チラリと建物の影から感じる視線を頼りに気配を探る。

 実は昨日から執拗に尾行されているのだ。加えて、ダフネからしてみても尾行者はそれなりに実力を持っているらしく本拠へ戻るまで、振り切るのは難しい。

 

 目的が金銭狙いか、暗殺なのか...いい加減鬱陶しく感じているので、今日こそは捕まえようとダフネはスルリと路地裏へと入っていった。

 尾行者も路地裏の入口で一度姿を確認してから、その後を追いかける。建物の外壁や屋根を支える柱に身を隠しつつ、進んで行くと...

 

 「大概にしんしゃいよ。こん不届き者」 

 「っ!?」

 

 曲がり角へ足を踏み入れた瞬間、尾行者の眼前に猛烈な勢いで激しい炎が迫ってきた。

 咄嗟に曲がり角から来た道へ飛び退ける。姿を隠すために羽織っていたローブの端に燃え移ったため、脱ぎ捨てると踏みつけて消火した。

 

 「くそっ...!気付いていやがったのか...」

 「ふーん...まさか、アンタがウチの事を付け回してたなんてね。【女神の戦車】」

 

 名前を呼ばれたアレンは後ろを振り返り、ジト目で自身を見ているダフネが再び魔法を繰り出して来る前に構えた。

 メインストリートから離れているため喧騒は遠くに聞こえ、2人の会話が路地裏に木霊する。

 

 「目的は何なの?場合によってはアストレア・ファミリアに言いつけるよ」

 「...テメェに答える気はサラサラねぇ。だが、警告しておいてやる。今後あの白髪のガキには近付、がっ...!?」

 「あー、ごめんごめん...なんて?ん?ベルがどげんしたと?」

 

 いつの間にかアレンはダフネに踏みつけれていた。【都市最速の】と二つ名を持つ彼が、いとも簡単に。

 何が起きたのか理解するまでもなくアレンは頭に血が上り、起き上がる勢いでダフネを押し退ける。

 銀の長槍に手を掛けるも、こんな狭い所では使える訳もないと冷静さを失いかけている自身に苛立ちつつ、ダフネに機動力を活かした蹴りを放つ。

 

 「死ねぇええっ!」

 「...ほい」

 「なっ...!?」

 「悪か子にはちょいっとお仕置きしぇなね」

 

 しかし、それをみきったダフネは軽々と避けて見せる。驚くアレンの瞳には、彼女の掌から電気が迸っているのが映った。

 次にアレンが瞬きをした時...めのまえがまっくらとなるのだった。

 

 

 

 同じ頃、先行するロキ・ファミリアの第一班に加わっているアイズが、ギルドで公開されたベル達の情報を伝えていた。

 フィンとリヴェリアは疑心となって顔を見合わせ、ティオナは大いに驚き、ティオネとベートはそんなのデタラメだと信じず...アイズも未だに信じられない心境でいる。

 

 「しかし、あのギルド長と神ウラノスが承認となのであれば...事実なのだろうな」

 「んー...もう少し早く情報が公開してくれていたら参加してもらいたかったところだよ」

 「ですが、ダフネはともかく得体の知れないファミリアに協力を申し入れるのはどうかと...」

 

 遠征において優先する目的は未到達階層への進攻だが、その他にも団員達のステイタス強化も重要となる。

 個人でダンジョン探索をするにしても限界はあり、同等か上位の仲間の力を借りる事で危険性も薄れるためフィンはそう考えたのだ。

 

 「はっ...結局はインチキしてやがったってオチに決まってるだろ」

 「えー?でも、ギルドが認めたんだから本当じゃないの?」

 「あのクソデブエルフの事だ、どうせ金でも積まれてウラノスに黙って名前を書いたに違いねぇ」

 「それが本当なら...今度こそ、奴は解任どころかオラリオを追放だな...」

 

 ベートの憶測にはリヴェリアも腑に落ちているらしく、ギルドの豚と軽蔑されるロイマンが絶望して消え去る姿を容易に想像出来ていた。

 しかし、ふとアイズの様子に気付いてすぐに思考を切り替える。どうやら相当堪えたらしく、足取りはしっかりしているものの気落ちしているのが目に見えてわかった。

 

 ウダイオスとの死闘を繰り広げ、命懸けでランクアップしたのを誰よりも近くで見ていたのはリヴェリアだ。

 それなのに...ダフネは元より、名前も知られていない冒険者に追い抜かれてしまったショックは大きかったと察した。

 

 ここで慰めては余計に落ち込むか反発してしまうと、リヴェリアは経験上理解している

 しかし、このままにしておけないとアイズに声を掛けようとした。だが、ティオナの驚きの声にハッとなりながら足を止める。

  

 「これって天井が崩れちゃったのかな?塞がれちゃってるし...ここ、誰かが殴ってたみたいだよ」

 「ちょっと何でこんな事になってるのよ!正規ルートを外れないといけないじゃない」

 「まぁ、これも予定通りにいかないのがダンジョンだからね。ここは...っ!?」

 

 進行を決めるフィンが別ルートから進もうと提案した時、コンコンッとティオナがノックするように叩いた瞬間...殴った跡から岩に亀裂が生じ始めた。

 慌てて離れるティオナとティオネ。フィン達も何者かによる罠かダンジョントラップなのかと警戒する。

 やがて、ガラガラと崩れ落ちていき、進もうとしていたルートが開かれた。

 

 「ビ、ビックリしたぁ~~!どうして急に崩れたんだろ?」

 「どうしても何もテメェが叩いたからだろバカゾネス!ったく...あ?おい、この先で戦り合ってるみてぇだぞ」

 

 獣人は比較的、人間よりも聴覚に優れているので先にベートがその音に気付いた。

 続いてフィン、アイズ達にも聞こえてきた。剣戟特有の金属がぶつかる音と拳打や足蹴りによる打撃音など、把握している広間の距離にしてはハッキリと聞こえる程だ。

 

 「...!。もしかして...!」

 「おい、アイズ!?」

 「ちょ、先に行かないでよー!?」

 

 ベートとティオナの声はアイズの耳に全く入っていなかった。何故なら、彼女の知りたい事がその先にあると思ったからだ。

 やがて...広間へと入った矢先、暗闇でも輝く金眼に白い影が目の前を横切っていくのが映った。

 

 

 

 片角のミノタウロスが振るってきた大剣の腹に着地してから、後方にベルは跳び上がる。

 その際に誰かが見ているのに気付き、すぐさま着地するとその人物へ近寄って行った。

 

 「危ないから逃げてっ!」

 「え...?あっ、でも...」

 「早く!僕が相手をしている隙に!」

 

 矢継ぎ早に避難するよう指示を出して、片角のミノタウロスを近付けないよう距離を取る。

 片角のミノタウロスは瀕死の状態であり、蓄積されたダメージによって二足歩行でいられるのもやっとの様子だった。

 

 しかし、トドメを刺すにはまだ追撃が必要だと判断して大きく息を吸い込み、走り出すと片角のミノタウロスの鼻目掛けて、とびひざげりを繰り出した。

 顔面が天を仰いで真正面を向いたところへ、からてチョップを叩き込んだ。脳震盪を起こしてフラついている隙にれんぞくぎりで胸部から腹部を斬り付ける。

 

 視線を上げて片角のミノタウロスの目に生気が宿ったのを見計らうと、はっけいで押し退けて距離を取らせた。

 

 「すごい...!あんなに大きいのに押し退けちゃった...」

 「それだけではない。ミノタウロスの意識が戻るのを目視で確認する余裕まで見せていた」

 「ああっ...ひょっとして、彼が話していた冒険者なのかい?アイズ」

 「...うん。そうだよ...」

  

 片角のミノタウロスから視線を逸らせないものの、背後から会話が聞こえてきてまた人が来てしまったのだと気付く。

 今度こそトドメを刺そうと白いナイフを構えた。アイズも最後の一撃を繰り出そうとしているベルから目を離さないでいる。

 

 ところが、一歩踏み込んだと同時に予期せぬ異変が起きる。

 ベルと片角のミノタウロスがいる場所の真上に巨大な穴が出現したのだ。それを見てベルは驚愕する。

 

 「なっ...!?どうしてウルトラホールが...!?」

 

 ウルトラホールの中は赤く光っており、円形の縁は虹色に輝くリングに囲まれていた。

 

 「何なのあれ!?」

 「あの白いガキが何かしてやがるのか!?」

 「違うみたいよ。あの子自身も驚いてるし...それなら」

 「恐らく自然的に起きた現象、と言うべきだろうね。だけど...あんな光景は初めて見るよ」

 

 その光景を目の当たりにしたロキ・ファミリアの面々も、ベルと同じように驚愕しており我が目を疑った。

 ダンジョンであんな現象が起きた事は一度もなく、尤も起きるはずがないようなものだったからだ。

 

 やがて、ウルトラホールの中の赤い光が激しさを増して、徐々に白い光へと変わっていきながら渦巻いていく。

 

 「一体何が起きているというのだ...!?」

 「...!。何か、出て来る...!」

 

 アイズが言った通り、渦巻くウルトラホールから長い影が勢いよく出てきてベル達の上に落下していく。

 ベルはすぐさま後退したが、片角のミノタウロスは長い影が地面に叩き付けられた衝撃で発生した爆風に巻き込まれ、吹き飛ばされてしまう。

 

 「ギャオォオオオオオオオオオオーーッ!!」

 

 ウルトラホールは静かに消えていき、落下地点から土煙が立ち込めていると...それを払うように長い影が飛び出し、首をもたげて大きく広げた口から咆哮を上げる。

 その姿にアイズは目を見開いて、蟀谷から冷や汗を垂らした。

 

 「黒い...龍...!?」

 

 東洋の竜を思わせる長い胴体を持ち、後頭部と下顎の後ろからそれぞれ2本ずつ角が伸びている。

 頭頂部や首筋、胸部から尾にかけて黄色い楕円形の模様が入っており、模様がない3つ分の節には縁が赤い台形の突起がある。

 ベルは薄暗い中でその特徴を的確に見通して、その正体を明かした。

 

 「レックウザ!?」

 

 てんくうポケモン レックウザ。薄暗いため黒く見ているのではなく...黒い体色をしているのだった。




他作品と同様に無双系ベルでは片角のミノタウロスが相手になる訳ないので伝説ポケの登場です。
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