ダンポケ   作:れいが

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32話 VS黒いメガレックウザ ②

 「姿が変わった...リリルカ。あれはレックウザと同じような現象と認識していいのかな?」

 「そうだと思います。進化を超えた進化...メガシンカという現象に違いありません」

 「メガシンカ...なるほど。己の限界を超えた先の力を得たという事か」

 

 フィンを始めロキ・ファミリアの面々もサーナイト達のメガシンカを目撃し、リヴェリアは改めて興味深そうに観察する。

 メガシンカした事でサーナイト達はもちろん、絆を直接繋ぎ合ったベル達も体の底から力が全身に漲っているように見えた。

 

 その一方、ティオナは2匹のポケモンと一緒にどこからともなく現れた冒険者にも視線を送っている。

 

 「あの人ってアストレア・ファミリアのリュー・リオンだよね?あの人もポケモンと仲良しなんだ...」

 「あんな小っこくても見た目で判断できないくらい強いんだと思うわ。見るからに戦う気満々だもの」

 「しかし、いつからなんじゃ?全く知らなかったんじゃが...」

 

 ガレスは顎髭を撫でながら出会った頃までの記憶を遡って思い返してみる。

 だが、ポケモンという存在を隠していた素振りを一瞬たりとも見せた事がないため疑問は深まるばかりだった。

 

 すると、今まで口を閉ざしていたアイズが立ち上がりながら、ガレスに答える。

 

 「...多分...オラリオへ来た時から、だと思う...一度だけ、あのボールを見た事があるから...」

 「うーむ、そうか...それなら、あの大惨事の頃からワシらはポケモンに助けられていたのかもしれんなぁ」

 「やっぱりそう思ったかい?僕も彼女の姿が見えて...疑問に思っていた事が漸く晴れたんだ」

 

 フィンが言っている事にアイズを除き、ティオナとティオネは首を傾げる。

 2人がやって来る前、オラリオは秩序が混沌に塗り替えられた暗黒期の真っ只中にあった。  

 

 闇派閥による猛威で街の人々や冒険者達に多大な被害を齎したのだが...僅か2年で終息するという奇跡が起きたのだ。

 

 自爆に巻き込まれそうになったはずのアーディだけでなく、その自爆をしようとした少年が救われた。

 27階層において闇派閥が仕掛けた罠を見抜いたように、向かっていたファミリアが到着した頃には殲滅されていた。

 

 そして、神エレボス及び幾多の邪神が一斉強制送還され、残された闇派閥の使者は傷一つなく何者かによって無力化されていったからである。

 

 どれも偶然にしては出来過ぎている。しかし、誰かがそれを実行するとなれば到底不可能だ。

 

 「あのポケモン以外にも絆を深めた他のポケモンがいるのなら...不可能を可能に出来るはずだ。

  彼女の誰かを助けたいと思う気持ちも合わされば...」

 

 その言葉にベートはふと...ほんの少しだけ思い当たる節があるのに気付く。

 セレニア。数少ない自身に対して対等に話していた...ベートに初めて温もりを与えてくれた異性だ。

 家族の仇を討つため、オラリオを離れている間に彼女はダンジョンで災難に遭い...ベートが戻ってきたその日の夜、生死を彷徨いながらも浮かべていた微笑みを今でも忘れる事は一度も無い。

 

 もはや活動すらままならないと主神のヴィーザルは眷属を連れてオラリオから去る事にしたが...ベートはケジメとして残った。

 彼女の敵討ちでもなく、仲間からの同情されるのが鬱陶しいからという訳でもなく、どうしようにもない現実を受け入れるために。

 

 「...くそったれが...」

 

 悪態をついたのは、その去り際にヴィーザルからこう聞かされていたからだ。

 

 もしもセレニアを助けてくれた者を見つけたのなら、感謝するようにと...

 

 まだ、それがポケモンだとは決まった訳ではない。しかし、もしもそうなのだとしたら...ベートは湧き上がる自身への怒りを抑え込み、握り締めた拳に血を滴らせた。

 それに誰も気づいてはおらず、その場にいる全員がベル達と黒いメガレックウザとの最終決戦の行く末に目を奪われているのだった。

 

 「ベル様、ルノア様、春姫様...頑張って...!」

 

 

 

 「グギャオォオオオオオオオオオオオーーーーッ!!」

 

 「はかいこうせん をぶっ放す気ね!ベル、春姫。撹乱して撃たせないようにして!」

 「わかった!スピアー!かげぶんしん から フラッシュ と こうそくいどうだ!」

 「テッカニンさんはフラッシュの代わりに いやなおと を浴びせてください!」

 

 スピアーとテッカニンは黒いメガレックウザに接近していきながら かげぶんしん で分身を数十体作り出す。

 無数のポケモン達が群れを成して向かって来るのに気付いた黒いメガレックウザは狙いをそちらへ定め、エネルギーを顎下の刃へ集めようとする。

 

 「スピッ!」

 「テッカ」

 

 そうはさせまいとスピアーは フラッシュ で全身から眩しい光を発光し、テッカニンは羽ばたかせている羽の動かし方を変えて振動を変える事により いやなおと を発生させて黒いメガレックウザの周囲を飛び交い始めた。

 こうそくいどう の効果により、目にも止まらぬ飛行速度で黒いメガレックウザの眼前を通過し目を眩ませつつ、動きが止まっている隙に いやなおと を耳元で直に聞かせて聴覚も乱していく。

 

 黒いメガレックウザはそれに耐え切れず、集中力が途切れた事で はかいこうせん を放つためのエネルギーは分散してしまった。

 

 「サーナイト!れいとうビームで道を作って れいとうパンチ!」

 「サナ...!」

 「クチートも後に続いて こおりのキバ!」

 「クチッ!」

 「ミュウツーさんは後方から ふぶきでサーナイトさん達の援護を!」

 「はい...!」

 

 掌に冷気を圧縮させた青白い球体から れいとうビームを放ち、地面から空気中の水分を凍らせて空中に続く氷の道を形成していく。

 クネクネと不規則な経路ではあるものの、跳び上がって黒いメガレックウザに接近するには十分な高さとなった。

 

 2匹は完成した氷の道を利用し、駆け上がって行く。更にメガサーナイトはスケートのように、メガクチートは片方の大顎に乗ってスキーヤーのように滑走する事で加速していった。

 

 「ハァッ...!」

 

 一方、メガミュウツーYはサーナイト達から少し離れた位置で背後からどこからともなく激しい ふぶきが黒いメガレックウザに吹き付ける。

 突風に舞う冷たい雪が黒いメガレックウザの視界を遮り、弱点であるため身動きを取れなくさせた。

 氷の道の坂道を登り切った所で途切れている最端からメガサーナイトとメガクチートは跳び上がる。テレパシーでスピアーとテッカニンに退避するよう伝えると、2匹はすぐさま離れて行く。

 

 「サナァッ!」

 「クッチィ~~トッ!」

 

 「グギャオォオオオオオオオオオオオーーーーッ!!」

 

 れいとうビーム を放った時と同じ動作で冷気を掌に込めると、メガサーナイトはそのままギュッと高く拳を握り締めて れいとうパンチを突き出した。

 メガクチートは乗っていた大顎ともう一つの大顎の口内を凍らせてから、背後を向いたまま冷気を秘めた こおりのキバ で黒いメガレックウザの胴体部分に噛み付く。

 

 れいとうパンチの拳打が頭部に直撃し、こおりのキバが胴体に喰い込んで黒いメガレックウザは激痛に悶えている。

 同じメガシンカを遂げたポケモン達の攻撃は確実に通っており、弱点となるタイプのわざによってダメージ量は何倍にもなるのだ。

 

 「よし、効いてるよ!あれが...メガシンカの力...!」

 「やっぱ同じ土俵に立てればこっちのもんよ!」

 「皆さんと一緒なら、負けるはずがありません...!」

 

 頷くベルと、当然と言わんばかりにルノアはサムズアップをする。

 メガサーナイトとメガクチートが別の地点へ着地している間に、ポケモン達へ次の指示を出した。

 

 「エースバーン!かえんボール だ!」

 「バシャーモ!それ掴んだまま ブレイズキック!」

 「ゾロアークさん!キュウコンさん!テールナーさんは かえんほうしゃ です!」

 

 最初にエースバーンが足元に転がっていた小石をリフトアップしながら炎を纏わせる。

 数回リフティングをしていくとサッカーボール大の火球となり、エースバーンは踵で宙に放り上げると落下するタイミングに合わせて かえんボール を蹴り込んだ。

 

 「エ~~~スッ!バァァーーーンッ!」

 「ロアークッ!」

 「コォーーンッ!」

 「テナーッ!」

 

 一直線に飛んで行くかえんボールの後を追うように跳躍したバシャーモは炎を纏った ブレイズキック を繰り出して、足底にある3本の爪でガッチリとかえんボールを掴んだ。

 更に後方から迫りくる 3つのかえんほうしゃ が背中にぶつかるもダメージを受けた様子はなく、凄まじい加速を見せて黒いメガレックウザ目掛けて突撃する。

 

 特性の もらいびによってダメージを受けず、逆にほのおタイプの技の威力が1.5倍になっていたのだ。

 

 「バッシャァアアーーーーッ!」

 

 黒いメガレックウザの中央になる胴体へ、かえんボール と同時にブレイズキックが炸裂。

 衝撃によって、胴体はくの字に曲がりながら横へ大きく揺れる。それでも尚、黒いメガレックウザは倒れる事はなく力を振り絞って反撃しようと咆哮を上げた。

 

 「グギャオォオオオオオオオオオオオーーーーッ!!」

 

 地面より刃のように尖った岩をいくつも出現させ、ストーンエッジを繰り出してくる。

 周囲に尖った岩が降り注ぎ、ベルとルノアは春姫を守るように前に出るとそれぞれ前蹴りと正拳突きで打ち砕いた。

 

 「ミミロップとリオルは きあいだま と はどうだん!バンギラスは うちおとす んだ!」

 「カイリキー!コジョンド!マーシャドー!インファイト!グレイシアはアイアンテール!」

 「ユキメノコさん!クレセリアさん!てだすけ!」

 

 ユキメノコとクレセリアが掲げた手に白い光が集まり、放り投げると7つに分散してポケモン達の体へ浸透するようにキラキラと消える。

 

 ミミロップは気合を高める事で球体状の きあいだまを降り注ぐ岩に狙いを定めて放ち、リオルも波導を掌に込めて はどうだんを撃ち放った。

 足踏みをして割れた地面の破片を手に取り、文字通り投げ飛ばして直撃してきそうな岩を防いでいくバンギラス。

 

 かくとうタイプのカイリキー達は守りを捨てて インファイト を繰り出すと向かって来る岩を弾いていった。

 グレイシアは鋼のように硬質化した尻尾の アイアンテール で同じく弾いていく。

 

 てだすけ の効果によってわざの威力を1.5倍強化されているため何とか守り切れているのだ。

 

 

 

 「メガシンカは出来なくても、ベル達を助けるんだ!」

 

 ケルディオは自らを鼓舞すると目を瞑り、精神を統一させる。

 全身が青白い光を纏い始め...リューはケルディオが唱えた言葉にハッとする。

 

 「1匹よりも2匹。2匹よりも3匹。3匹よりも4匹。仲間の力が一つになる時...真の力と誠の勇気が生まれる!」

 「!...その4匹目が貴方という事ですね、ケルディオ」

 「そうだよ。見ててね、リュー!これが僕の...聖剣士としての姿だっ!」

 

 全身に纏った光が激しくなり、一瞬目が眩むリューだが彼から決して目を逸らさなかった。

 ケルディオが嘶き、やがて光が収まっていくと...そこにはフォルムチェンジしたケルディオの姿があった。

 目の上にあった眉毛のような部分が角と一体化して剣の形となり、頭部からは青、橙、緑の3色の羽飾りが生えている。

 

 これこそがケルディオの聖剣士としての姿。かくごのすがたである。

 

 「ケルディオ...立派な剣を携えましたね。正しく聖剣士に相応しい...!」

 「えへへっ...さぁ、僕達の番だよリュー!」 

 「はい!ケルディオ、とっておきのわざを見せてください!」

 「うんっ!」

 

 氷の道を足場にして飛び移って行くと、最上段へ到達すると蹄から水流を勢いよく噴出させて飛翔していった。

 黒いメガレックウザはケルディオが接近して来るのに気付き、長大な胴体を鞭の様に撓らせるとドラゴンタイプ特有の青紫色のエネルギーを纏った尻尾を素早く振るい ドラゴンテールを繰り出してきた。

 

 ケルディオはそのこうげきから決して目を離さず、己の中から恐れを消し去って尻尾の軌道をみきる。

 後脚からの水の噴出のみで前進飛行しつつ、前腕を持ち上げて蹄から噴出させる水の勢いを強めた。

 それによって華麗に後方宙返りを決め...ドラゴンテールを回避する事に成功する。

 

 ケルディオは再び精神を統一させていくと剣状の角が輝きを帯び始め、一直線に伸び始める。その輝きは薄暗かった広間全体を照らす程だ。

 誰もがその輝きに目を奪われてしまっている中、最もアイズが瞳と同色に輝くその剣に惹かれていた。

 

 「しんぴのつるぎっ!」

 

 先程とは反対に前転宙返りをしながら金色に輝く しんぴのつるぎを繰り出す。弱点ではないはずだが、黒いメガレックウザは上半身の胴体を揺らして明らかに弱っていた。

 どうやら真正面からの一撃が後頭部に直撃し、それがきゅうしょとなったのだ。

 

 「やったぁ!リュー!あと一撃だよ!」

 「わかりました!ベル!これを!」

  

 

 

 黒いメガレックウザがきゅうしょによる大ダメージを受けた事で ストーンエッジ は止まる。

 ベルは長距離からリューが投げ渡してきたを受け取る。祖父お手製のモンスターボールだ。

 故郷の村でポケモンをモンスターボールへゲットするには合意を得てボタンを押してもらうか、自身を認めてもらうためにポケモンバトルで勝利し自らがボタンをポケモンに触れるよう投げての2パターンある。

 

 今回は非常事態という事で強引ではあるが後者だ。ベルはモンスターボールをギュッと握り締め、最後の大技で決着を付けるべく2人にアイコンタクトを取る。

 2人はベルが何を言いたいのかを言わずとも理解して頷いた。

 

 「いくよ、サーナイト!Z技だ!」

 「サナ!」

 

 左腕の手首にZリングを装着。両腕を交差するとZクリスタルと同じ色の光が溢れ、タイプを模した紋章が浮かび上がる。

 その光を介してベルとメガサーナイトの心が一つになり、更に心を共鳴させるゼンリョクポーズを取ると寸分の狂いも無く同じ動きをした。

 

 ベルとサーナイトは両腕を突き出してクロスさせ、両手の人差し指を側頭部に当てる。

 右足を少し後ろへ移動し、Zリングを装着している左腕を前に伸ばしながら左足を右足と交差するように後ろへ移した。

 

 エスパーZのマゼンタ色に光るZパワーを身体に纏った事によってメガサーナイトの有しているわざが変化し、Zワザを発動する。

 メガサーナイトが解き放つ全力のZ技、それは...

 

 「マキシマムサイコレイカー!!」

 「サァァァ!ナァアアアーーーッ!!」

 

 メガサーナイトはZパワーにより強化されたサイコキネシスで、自身よりも10倍の大きさはある黒いメガレックウザを浮かび上がらせた。

 片手で自在に操りながら、広間に展開された紫色の空間に浮かぶ多数の ひかりのかべ に何度も衝突させていき、ダメージを与えていく。

 最後に強く ひかりのかべ から弾かせて紫色の空間の一部にぶつける。黒いメガレックウザの背後で空間は罅割れていき、時間差で突き破った。

 

 「グオオォォオオーーーッ...!」

 

 多大なダメージを負った事でメガシンカが解け、全身から霧のように光の粒子を弾かせて元の姿に戻った黒いレックウザ。

 それを見逃さず、ベルは手にしているボールを構える。

 

 「いっけぇぇええーーーっ!」

 

 勢い良く投球されたモンスターボールは高速回転しながら黒いレックウザに向かっていく。

 胴体にぶつかり、一瞬浮遊すると蓋が開いて同時に赤い光に包み込まれモンスターボールの中へと吸い込まれていく。

 長大な胴体を持っている黒いレックウザはものの数秒で完全に吸い込まれ、蓋が閉じるとそのまま地面へ落下した。

 

 コロコロと転がるのが止まって、揺れながらボタンが赤く発光し続ける。

 

 ベルはもちろんルノアと春姫、リリルカとフィン達も果たしてどうなるのか見守っていた。

 そして...揺れるのが止まり、ボタンの発行も収まるとカチリという音が小さく鳴った。

 

 「...や、やった...やったぁああああ~~~!」

 「だぁぁ~~~!よっくやったわね、ベル!」

 「これでオラリオの危機は何とか脱しましたね...ありがとうございます、ベル」

 「頑張りましたね、ベル君!皆さんもありがとうございました!」

 

 黒いレックウザをゲットしてガッツポーズを取って歓喜するベル。その直後、背中をルノアにバシバシと叩かれて涙目になるも、春姫とリューからの労いの言葉にもう一度喜びを噛み締めた。

 ポケモン達も喜びあって、それぞれのパートナー達に駆け寄ると抱き締めたり甘噛みをしている。

 

 その光景をロキ・ファミリアの一部を除いた面々は危機的状況は免れたと安堵し、リリルカも力が抜けたようにその場で座り込む。




本当はカイリキーとゾロアークにもZ技を使わせたかったけど、ここは主人公の手持ちであるサーナイトのみにしました。
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