ダンポケ   作:れいが

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ミロカロスと接戦でしたが...最後はぶっちぎりでラティアスに決まりました。
ポケスペに登場したあのラティアスによって、自分の中で何かが芽生えたというのは言うまでもありません。

リュー「可愛いは正義ですからね。メロエッタはもちろん、ミロカロスとアブソルはどちらかと言えば美形ですが、可愛いの範囲に該当します」


35話 むげんポケモン

 「ティアー...?」

 

 【ポケモン・フレンダ】によって呼び出されたのは...むげんポケモン ラティアスだった。

 真っ直ぐに伸びた長い首と背中から生えている先端が鋭利な翼、足はヒレ状になっているのが特徴的で全身の羽毛は上半身が白色、下半身からは赤色となっている。

  

 羽ばたいていないのにも関わらず浮遊しており、キョロキョロと不思議そうに周囲を見渡している。

 しかし、人間やポケモンの気配には敏感なためすぐに背後を振り向いた。薄暗いため目を凝らして警戒していたが...

 

 「ラティアス、僕だよ」

 「ティア?...ティア!ティア~!」

 「あははっ!久しぶりだね!ラティアス!」

 

 その声を聴いてすぐにベルだと気付いたラティアスは、再会を喜ぶように抱き着きながら頬ずりをして甘える。

 まるで兄妹がじゃれ合っているその様子にルノアと春姫は微笑ましそうにして、ヘスティアとリリルカはベルとラティアスがとても仲良しなのだと理解した。

 

 しばらくの間、ラティアスの好きなように甘えさせ続けてあげると満足したところで、ベルはラティアスをヘスティアとリリルカに紹介しようと後ろを振り向く。

 

 「ヘスティア様、リリちゃん。この子はラティアスって言ってドラゴンタイプのポケモンだよ」

 「え?こんなに可愛い見た目でドラゴンなのかい?」

 「誰がそう判断したのか知りませんが...そうと定められているのでしたらドラゴンで間違いないのでしょう」

 「そ、そっか...えっと、初めましてラティアス君!ボクはヘスティア、炉の女神さ」

 「リリルカ・アーデと申します。ベル様達からは愛称でリリと呼ばれていますから、そうお呼びして構いませんので」

 「ティアー!」

 「え?...あっ、ラティアスさんも会話が出来るんですか」

 

 ドラゴンタイプの他にエスパータイプでもあるため、自己紹介をしてくれたヘスティアとリリルカに笑みを浮かべながらテレパシーで挨拶をしたのだ。

 

 尤もラティアスは非常に高い知能を有しているので会話が出来たとしても何ら不思議ではない。

 但し、そう思えるのは村に長年住んでいた3人だけであり、リリルカとヘスティアはまだまだポケモンの生態には驚かされる事が多いようだ。

 

 「ティアー」

 「あっ、撫でてほしいと...こ、こうですか?」

 「ティア~」

 

 近寄って来たラティアスに戸惑いつつも、テレパシーでそう伝えられてそっと頭を撫でてあげた。

 目を細めて嬉しそうにしている様子にリリルカは自然と笑みを零している。まだ少しだけ荒んでいる心の傷が癒されている気持ちになったからだ。

 

 「あの、羽ばたいていないのに浮いているのは...そういった能力なのですか?」

 「ううん。例えば陸地を歩けないような水タイプのポケモンは浮遊して移動するから、それと同じなんだと思うよ」

 「というと、魚の姿をしたポケモンがそういった風になると?ものすごくシュールな光景になりますね...」

 「じゃあ、ラティアス君にはどんな能力を使えるのかな?」

 「それは...」

 

 ヘスティアの質問にベルは答えようとするも何かを思いついたのか、撫でてもらえて満足したラティアスにヒソヒソと耳打ちをする。

 伝えられた内容を把握してラティアスは頷くと、少し浮遊したかと思えば...全身が風景に浸透するように姿が消えてしまった。

 

 突然の事に驚くヘスティアとリリルカ。どこへ行ってしまったのか、周りを見渡しても見当たらない。

 

 「ベ、ベル君!?ラティアス君はどこに行ったんだい!?」

 「ここに居るよ?」

 「あっ、後ろに...わひゃあっ!?だ、だだ、誰ですか貴女!?」

 「き、君!いつの間に入って来たんだい!?というか不法侵入じゃないか!」

 

 声を掛けられてリリルカが振り向くと...そこに立っていたのはメイド服を着ている赤髪の少女だった。

 ヘスティアとリリルカの反応が余程面白かったのか、口元に手を添えて笑っている。

 

 「ふふふっ...!私だよ。リリちゃん、ヘスティアちゃん」

 「...え?その声は...もしかしてラティアスさんですか!?」

 「え?えぇえ~~!?に、人間の姿にもなれるのかい!?」

 「正確には目の錯覚でそう見えてるだけなの。

  私の羽毛はガラスと似てるから、光を屈折させて人間の姿に見えたり消えたり出来るんだよ」

 

 エッヘンとラティアスは得意気に教えてあげていたが、原理を理解していなければチンプンカンプンなため、リリルカは元より神であるヘスティアでさえも頭が混乱している様子だった。

 

 改めて、少女の姿となっているラティアスをよく見てみると...横髪が耳部分を模したように逆立っており、その後ろから伸びる腰まで長いツインテールも翼と似た形状をしている。

 尚、口を動かしてはいるものの直接的に言葉を発しているのではなく、テレパシーで会話をしているのに変わりなかった。

 

 服装に関しては...春姫が家事のためにメイド服をよく着用していたので、それをラティアス自身も気に入ったからなのだそう。

 

 そうしてラティアスは少女の姿を錯覚させたまま、彼女についての話は続く。

 

 「元の姿からして、とても速く飛べそうだけど...どれぐらい速く飛べるのかな?」

 「ピジョットやオオスバメよりも速いよ!ここから村まであっという間に着くぐらいだもん」 

 「そ、それだけ速ければ、乗せてもらったとしても振り落とされるのは間違いないですね...」

 「そうでもないけど?私やベルも何度か乗せてもらって最高速度で空を飛んでたんだし」

 

 それはお2人の頭がおかしいだけです、とリリルカは反論出来なかった。

 ルノアの気に障ったりでもしたら大変なとばっちりを受けるとわかりきっているからだ。

 

 リリルカがそう思っていた時、ふと春姫はある事を指摘する。呼び出したポケモンはこのまま一緒にいる事になるのかというものだ。

 

 「そういえば、どうなんだろ...?ラティオス、村に戻してあげられるかちょっと試してみていい?」

 「うん、いいよ。でも、少し時間をおいてからまた呼んでね?」

 「わかった。じゃあ...」

 

 ベルは先程と同様に右掌を前に翳し、光の屈折を止めて元の姿となったラティアスを村へ戻そうと念じた。

 少し間を空けて、あの紋章がラティオスの下に出現すると全身を光が包み込む。

 光に包まれたラティアスは笑みを浮かべながら手を振って、そのまま紋章に吸い込まれながら消え去った。

 

 ベルは念じれば戻せると【ポケモン・フレンダ】の要領を理解し、彼女の要望通り時間をおいてから再び魔法名を唱える。

 また紋章が出現して、今度はものの数秒でラティアスを呼び出せた。使い方をすぐに覚えるベルの学習能力にはヘスティアも目を見張っている。

 

 「これなら他の皆も安心して呼ぶ事が出来るね。じゃあ、次は誰を呼んでみようかな...」

 「ベル様。つい数時間前の出来事をお忘れになっていませんか?今回はラティアスさんだけにしましょう」

 「そうだよ。それに魔法を使い過ぎたら、どうなるのか知らない訳じゃないよね?」

 「あ、そっか...そういえばエイナお姉ちゃんから精神疲労になるって教わった事が...」

 

 リリルカは黒いレックウザの件で大変な目に遭ったベルを遠回しに注意をして制止させる。

 続いてヘスティアも精神疲労の危険性を促して、ベルは【ポケモン・フレンダ】を使うのを今日は止めようと考えた。

 

 「春姫ちゃん。はい、これ!」

 「あ、こちらは...?」 

 

 一方、ラティアスは春姫に葉っぱの包み差し出していた。春姫は首を傾げつつ、それをテーブルの上に置いて広げてみると...

 中にはヤドンのしっぽやオレンのみ、モーモーミルクとあまいミツが2つずつ入っている氷のブロック、ラッキーのタマゴ、あじわいキノコ、ほっこりポテト、マメミート、ワカクサコーン、ワカクサ大豆など大量の食材が詰め込まれていたのだった。

 

 氷のブロックについては、恐らくれいとうビームで器用に作った即席のパックといったところか。

 

 「呼び戻される前にヤドンちゃんやミルタンクちゃんとミツハニーちゃんから譲ってもらったの。

  これで春姫ちゃんの美味しい料理を食べたいな」

 「まぁ...それではシチューをメインにお夕食を作りますね。リリルカさんもどうぞ食べていってくださいな」

 「え?あぁ...では、お言葉に甘えましょうか。正直、空腹でもうクタクタですから...」

 

 数時間前までの出来事を思い出すだけでも疲労感が押し寄せてくる。特にルノアがオッタルとぶつかり合った時の記憶が一番緊張したため、リリルカの胃がキリキリと痛んだ。

 

 若干顔を顰めるものの...それに誰も気付かず、春姫が料理を作り始めるとベルとルノアが率先して手伝いを始める。

 

 地下の部屋には台所はなく、もっと言えば魔石製品の発火装置すらもない。。

 辛うじて水道は通っているものの、火気もないのにどうやって調理するのかというと...

 

 「クレセリアさん、そのまま浮遊させてくださいね」

 「ルナーン」

 「水が沸騰し始めましたら、火を離すようお願いします。テールナーさん」

 「テナー」

 

 クレセリアが ねんりき で水を張った鍋を宙に浮かばせた状態にして、その下からテールナーが先端が燃えている木の枝で沸騰させようとしている。

 

 この光景に関しては見慣れているヘスティアだが、リリルカは自分が改宗したファミリアは生活面において十分に充実しているのだなと実感した。

 ただ、人間とポケモンの絆があるからこそ協力して一緒に料理を作ったりしているのだと...リリルカは不思議と羨ましく思えてくる。

 

 「...ラティアスさん。ポケモンが人間と仲良しなのは、ずっと昔からだったんですよね?」

 「うん、そうみたいだよ。とーっても長生きなコータスおじいちゃんやナマズン長老から教わったから」

 「ポケモンにも長老といった方がいらっしゃるんですか...まぁ、それはそれとして、もしもですが...」

 

 少し言葉を詰まらせるリリルカをラティアスは不思議そうに見ていたが、意を決して彼女は言った。

 

 「ベル様達のように、リリも仲良くなれたポケモンをパートナーにしてもいいと思いいますか...?」

 「もちろん!リリちゃんはすごく優しくていい子だもん! だから、すぐに誰とでも仲良くなれるはずだよ」

 「...そ、そうですか。何と言うか...そう面と向かって真っ直ぐに言われると照れちゃいますね」

 

 満面の笑顔で即答するラティアスに、赤面して思わず俯いてしまうリリルカ。

 以前まで所属していたソーマ・ファミリアでは、悪事を働いてきたというのに...ここまで純粋に自分を受け入れてくれるのは、彼女があまりにも素直過ぎるからだろうとリリルカは自己完結していた。

 

 きっと、素性を知れば近寄らなくなると自嘲しているリリルカだが...実はラティアスは人間の心を読めるというのを知らないため、既に彼女自身の悲観的な見通しは逸れているのだ。

 

 「リリちゃんが良ければ私、パートナーになってあげるよ!あっ、でも...モンスターボールが無いとね...」

 「い、いえ、リリなんかにラティアスさんは勿体ないですから...ベル様のパートナーが適任かと」

 「えぇ~?そんな事ないよ?リリちゃんともっと仲良くしたいって思ったんだもん」

 

 息を吞むリリルカにとって、そんな事を言われたのは生まれて初めての事。

 どう返していいのかわからず、目を泳がせてしまって返事に困ってしまうリリルカの反応を見てラティアスは不思議そうに見つめていた。

 

 そうしていると、春姫特製の料理がテーブルに次々と並べられていく。

 ヤドンのしっぽを使った野菜たっぷりのシチュー、ラッキーのタマゴのオムレツ、オレンのみやワカクサコーンのサラダ。

 どれも美味しそうな香りを漂わせており、腹の虫が鳴いたのにリリルカは空腹だった事を思い出して、今はまだパートナーになるのは控えようという考えで彼女に答える。

 

 「では、少し考えさせてください。ラティアスさんのためにも...色々と用意しなければならない事がありますので」

 「そっか...わかった!じゃあ、いつでも待ってるね」

 「はい...では、いただきましょうか」

 「うん!」

 

 彼女分に用意されたシチューが置かれている席にリリルカは座り、その隣にラティアスも座る。

 

 全員が座って、いただきますと手を合わせた後...リリルカはスプーンでシチューをよく冷ましてから一口頬張る。

 よく煮込まれて柔らかくなったヤドンのしっぽはトロトロになっており、口の中に広がるモーモーミルクの程よい甘さと温かさにリリルカは思わず舌鼓を打った。

 

 「リリルカさん、いかがでしょうか?」

 「とても美味しいですよ。この腕前でしたら、お店を開けますし毎日繁盛しますね」

 「ふふっ...恐れ入ります。おかわりは沢山ありますので、是非食べてくださいな」

 

 春姫に勧められて、それから3杯程おかわりをした腹も心も満たされ、幸せな気持ちになっていた。

 ラティアスも満腹になったようで、むふーと一息ついているのにリリルカは愛おし気に微笑む。

 

 残ったシチューをタッパーに保存してもらい、ミアハとナァーザにもお裾分けしてもらえる事になった。

 せめてお礼にと皿洗いの申し出をしたが、そろそろ夜になるのでファミリアの仲間や主神が心配しているだろうからと丁重に遠慮される。

 リリルカはそれでもと思ったが、確かにシチューが冷めては勿体ないという事で本拠へ戻る事にした。

 

 「またね、リリちゃん!」

 「はい。それでは失礼します」

 

 お辞儀をしてバックパックを背負った彼女の背中を、ベルやラティアス達は見えなくなるまで見送るのだった。

 

 「で、今日はラティアス泊まるんだよね?」

 「うん!久しぶりに皆と会ったんだから、いっぱいお話したいな!」

 「いいよ。今日はすごい事があったんだから、話してあげるね」

 「やったぁー!」




 リリルカ「ただいま戻りましたー」
 
 ミアハ「おぉ、リリルカ。随分と遅かったが、大丈夫なのか?」

 リリルカ「はい。ヘスティア・ファミリアの皆さんからお食事のお誘いをされまして...」

 ナァーザ「すんすん...すごく良い香りがするけど、お店で食べたの?」

 リリルカ「いえいえ。作ってくださったシチューをお裾分けしていただいたので、お2人も食べてください」

 ミアハ「おぉ、それは申し訳ないな。次に会った時は何かお返しをしなければ」
 
 リリルカ「でーすーかーらー!そうやって何かにかこつけてポーションを無償で配るのはやめてください!」

 ミアハ「むぅ、しかし...」

 ナァーザ「...あの子が来てくれて本当によかった」
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