ダンポケ   作:れいが

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36話 鍛冶師と再会のともだち

 「...うーん」

 「エ、エイナさん!?」

 「あーらら...やっぱり卒倒しちゃったか」

 「呑気に言ってないで誰か呼んできてよ!?」

 

 翌日、ギルドへ訪れた3人は個室でエイナにランクアップと魔法の発現、発展アビリティの追加など諸々の事を伝えた。

 ヘスティアが言っていたように卒倒し兼ねないため、黒いレックウザの事は伏せて昨日起きた異常事態で黒い龍を倒したからと誤魔化しつつランクアップした理由を話したのだが...

 結局、エイナの頭は理解の範疇を大いに超えてしまい、最後はオーバーヒートして椅子に凭れながら天を仰いで卒倒してしまう。

 

 その後、ルノアがミィシャに救急搬送を手配するまでの間、彼女は目を回しまま呻いて起きる事がなくディアンケヒト・ファミリアへ運ばれてしまうのだった。

 

 「やっぱり無理があったんだよ...エイナお姉ちゃん、大丈夫かなぁ」

 「まっ、仕方ないでしょ。隠したら余計に混乱してもっと悪い状態になってそうだったし」

 「そうですね...では、ラティアスさんを待たせていますので参りましょう」

 「一緒に行くって聞かなかったから連れて来たけど...ナンパされてないわよね」

 

 ルノアの読み通り、ギルドの入口付近で待っているラティアスはどこかの冒険者にナンパされていた。しかし、赤い短髪の藍色の手拭いを首に巻いている青年がそれを止めようとしている様子だった。

 周囲の冒険者達は何事かと見ており、このままでは通報されてしまうと先にベルが間に入って制止を試みる。

 

 だが、それでも引かない冒険者は鬱陶しそうにベルを押し退けようとし...無言でルノアに顔を掴まれて ずつき を顔面に叩き込まれる。

 その場に鼻血を垂らしつつ沈められた冒険者にその仲間は絶句するも、ルノアに慰謝料として請求されたので即座に有り金の詰まった袋を差し出す。

 

 「こいつを連れてとっとと失せなよ。それから、二度と面見せない事」

 「は、はひぃ~~~!」

 「ったく...悪いわね、アンタ。うちのラティアスが迷惑をかけて」

 「怪我はない?ありがとう、ラティアスを庇ってくれて」

 「あ、あぁ、俺は全然...にしてもあの野郎レベル3とか言ってたんだが、頭突きで倒しちまうなんてな」

 

 遅れて春姫も近寄ってくると、周囲の冒険者達も手荒な解決で治まったとわかりその場から解散した。

 

 青年の名はヴェルフ・クロッゾというヘファイストス・ファミリアの眷属で鍛冶師だという。

 ラティアスと一緒に春姫も頭を下げてお礼を言うと、照れ臭そうにしている様子からベル達は好青年だと良い印象を受けた。

 そんな時、何かに気付いたヴェルフはベルの腰に携えている白いナイフを見せてほしいと言った。

 

 「やっぱり兎短刀(ピョンタン)か!そいつは俺が作ったナイフなんだ」

 「え!?そうなの?」

 「ああっ。商人が売り込んで来た時に買った珍しいモンスターの爪でな。

  本人は拾ったとか言ってたが...確かに切れ味が普通じゃないって打ってる時の感触でわかったぜ」

 

 へぇ、と興味津々にヴェルフの話を聞き入るベル。真面目な性格故に春姫も真剣に聞いているが、ルノアはネーミングセンスに少し引いていた。

 その際、ルノアが鍛冶師なら何故ここに居るのかと聞くと...ギルドにどこかのパーティへ加えてもらえないかという相談をしにきたという。

 

 曰く、自身が売り出している商品の扱いが悪い理由に売れるようになれと店側から言われたため、その雪辱を晴らすためランクアップする目標を立てたそうだ。

 より良い武器や防具を制作するためには、どうしても鍛冶アビリティが必要との事でランクアップしなければならない。

 

 しかし、昨日の異常事態でギルドも未だに後処理にてんてこ舞いしており、対応もままならないため...

 諦めて団長にでも頭を下げるか、悩みながら出ようとした所でラティアスがナンパされているのを見かけて現在に至るという事だった。

 

 話を聞き終えるとベル達は間接的にだが、彼に迷惑をかけてしまっていると意見が一致していた。

 

 「じゃあ、僕達と一緒にダンジョンへ潜ろうよ」

 「いいのか!?いや、けどよ...お前ら、俺の素性を知らないみたいだよな?」

 「あーはいはい、素性なんてどうでもいいって。ラティアスを助けてくれたんだから、それでパーティに加えてあげるには十分でしょ」

 「ええ。ラティアスさんも是非一緒に行きたいそうですから...クロッゾさん、ご遠慮なさらないでください」

 「...そうか。そんじゃ、お前らの力を貸してもらうぜ!」

 

 そうしてヴェルフをパーティに加える事にしたベル達。その際、今日の夕方に行う祝会への招待もした。

 何の祝会かヴェルフは気になったものの、恐らく誕生日か何かだろうとあまり気にせずに了承し...早速ダンジョンへ向かうべく、待ち合わせ場所を決めてから、一度へ武器を取りに戻って行った。

 

 その後、バベルの広場で合流したヴェルフを連れてベル達はダンジョンの入口へと入って行く。

 尚、今回リリルカは珍しくファミリアでの仕事が忙しいため同行せずとなった。必ず、祝会までには終わらせるとの事。

 

 

 

 「...なぁ、今何階層だ?」

 「えっと、15階層くらいだよ」

 「ふざけろ!いきなり中層まで降りるかよ!?俺はまだ下級冒険者なんだぞ!?」

 「でも手っ取り早くランクアップするなら、ここくらいで十分じゃない?」

 「加減してくれって言ってんだよ俺は!」

 

 ヴェルフにとってというよりもレベル1の冒険者にとって、中層は文字通り死線だ。

 エイナの講習で聞いた内容によれば、ギルドが定めている適正基準はレベル2。間違っても踏み入れてはならないのだが...

 

 ヴオォオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 「ほらほら、活きの良い経験値たっぷりなミノタウロスが出てきたわよ。サクッと倒してみなさいって」

 「だからふざけろって!俺に死ねって言ってんだろお前ぇ!?」

 「お、落ち着いてくださいクロッゾさん。ルノアさんは決してそんな人でなしでは...」

 「こっちに来ると危ないから、もう僕が倒すよ?」

 

 といった具合に、ヴェルフにとっては強大な敵を少しずつだがベル達の協力もあって何とか倒していく。

 

 これがレベルの差なのかと、ヴェルフは息を切らしながら平然とモンスターを倒していく3人の姿に自身の力の無さを痛感させられた。

 

 道中、3人のレベルについて絶句していたのは記憶に新しい。

 何より驚いたのは...あの清楚で気品に満ちた春姫が、手にしている小さた球体でモンスターを吹き飛ばしたり、眠らせたり、動きを封じたりと多彩な攻撃で援護してくれている事だった。

 

 聞けば ふしぎだま という1つ1つが別の効果を発揮するという魔道具を使用しており、戦う術や魔法を使えない分を補っているのだとか。

  

 やがて、モンスターの数が減り始めた頃...反応に遅れたヴェルフの背後からヘルハウンドが襲い掛かってくる。

 ベルは危ないと叫びながらナイフを投擲しようとするも、ヘルハウンドが真っ二つに切り裂かれたのを見て別方向から襲い掛かろうとするアルミラージへ投げた。

 

 「な、何だ...?誰がやったんだ...?」

 「ヴェルフお兄ちゃん、大丈夫?さっきのはラティアスが助けてくれたんだよ」

 「そ、そうか、ラティアスが...って、どこにいるんだ?居ないぞ?」

 「えっと...魔法で姿を見えないようにしてるからだよ。あと空も飛んだりできるから、ヴェルフお兄ちゃんが危ないって気付いてくれたんだ」

 

 なるほど、とヴェルフはベルの誤魔化しを素直に受け入れて頷いていた。ホッとするベルだが、また別のモンスターが向かって来ているのに気付くと予備のナイフを取り出す。

 

 「ヴェルフお兄ちゃん。僕の師匠達が教えてくれた事なんだけど...」

 「お、おう、なんだ...?」

 「人間と同じようにモンスターも予備動作があるんだ。それを見極められるようになれば勝てるはずだよ」

 「...ベル。助言してくれるのはありがたいけどよ...それが出来てたら苦労しねぇって」

 

 ベルの師匠達の教えはヴェルフにとって参考にこそなるが、実践において出来るかと言えばそれとこれとでは話は全く違う。

 結局、最後まで苦戦しながらもヴェルフはモンスターを倒し続けたが、疲労困憊となってその場に座り込んでしまっていた。

 それを心配して、少女の姿を錯覚させつつラティアスは近寄るとヴェルフ にいやしのはどうを浴びせてあげた。ちなみに服装は近くを通りかかった冒険者の少女を模している。

 

 「...ん?あれ?なんか疲れが一気に抜けたような気が...」

 「体力を半分だけ回復させてあげたの。帰り道も疲れてたらいけないでしょ?」

 「お、おう、そりゃそうだな...ありがとよ、ラティアス。やっと普通に会話してくれたな」

 「ごめんね?私、ちょっと人見知りが激しくて...でも、ヴェルフが良い人だってわかったからいっぱい話せるよ!」

 「はははっ、それならよかったぜ」

 

 疲労感が消えた事でヴェルフは立ち上がると汗を拭い、改めてラティアスにお礼を言った。

 そうして、このまま18階層まで潜ろうかとルノアは提案したが...ベルにリリルカも一緒じゃないと申し訳ないという事とダフネとの約束に遅れてはいけないという事で次回に回される事となった。

 内心、冷や汗を掻いていたヴェルフはだったが、それを聞きき安堵した様子でホッとしている。 

 

 「じゃあ、そろそろ地上に戻ろっか。せっかくだし...来た道を戻りながらね」

 「いいぜ。さっきのでちょっとはモンスターの動きにも慣れて来たところだ」

 「おっ?やっとノリが良くなってきたじゃない。じゃあ、先を進んでもらって楽させてもらうわよ」

 「ル、ルノアさん。それは流石に職務怠慢では...」

 

 そんな事を話しながら、地上へ帰ろうと進行方向とは真逆の方へ歩き出す4人とラティアス。

 当然、壁や地面の亀裂からモンスターは出現してくるため、ベルのサポートを受けながらヴェルフは着実に倒していった。

 

 

 

 やがて、中層を抜けて上層の中間辺りまで上ってきたところで...剣戟をしている音が聞こえてきた。

 

 ベル達は顔を見合わせると音のする方へ向かう。やがて通路が途中から膨れているような空洞に着く。

 そこで1人の少女が刀を手に3体のウォーシャドウと戦っている光景を目の当たりにした。

 劣勢に追い込まれていると思い、ベルは手助けをするべくナイフを構えるが...よく見ると少女の方が押している事に気付いた。

 

 その証拠にウォーシャドウ達は彼女に近付くのを躊躇っており、ほんの一瞬の隙を突かれて胴体を斬りされた順に灰と化して消滅する。

 残心を残してから刀を収めると...ふと、ベル達の視線に気付いて礼儀正しく会釈をして踵を返そうとした。 

 閉鎖的なファミリアが多いため、気に障ってはならないと思ったのだろうかとヴェルフが思っていると...

 

 「...命ちゃん...?」

 「...え...?」

 

 ふと春姫がそう名前を呟き、それに反応して背中を向けていた少女はピタリと足を止める。

 ベルとルノアは知り合いなのかと問いかける前に春姫は名前を呼んだ少女へ近寄っていき、彼女もまたゆっくりと後ろを振り返って春姫と見つめ合った。

 

 「...春姫、殿...?」

 「は、はい、春姫です...!あぁ、まさかこんな事が...!」

 「春姫殿!ご無事だったのですね!よかった...本当によかったです...!」

 

 春姫の手を握り、命は大粒の涙を流して感極まってしまっていた。春姫も同様に目尻から一筋の涙が頬を伝う。

 何が起きているのかわからずヴェルフはベル達と春姫達を交互にみて困惑しており、ベルとルノアは以前に教えられた春姫の過去を思い出して色々と察したのか、ひとまず命と春姫が落ち着くまで待つ事にした。

 

 暫くして、落ち着きを取り戻した命が自己紹介をしてくれた。

 

 彼女は極東から主神と共にオラリオへやって来た、春姫の同郷であり友達として交流を深めていたそうだ。

 ランクアップしたので肩慣らしに単独でダンジョンへ潜っていると説明していた際、春姫は命の他にも桜花と千草という友達も一緒にいると知ってとても喜んでいた。

 

 ベル達も自己紹介をすると、春姫からこれまでに幾度となくお世話になった経緯を聞いた命は深々とお辞儀をして感謝を述べた。

 最早叶わぬと諦めかけていた友人との再会を果たせてのも、彼らのおかげだと心の底から思ったからだろう。

 

 ベル達も自己紹介をすると、春姫からこれまでに幾度となくお世話になった経緯を聞いた命は深々とお辞儀をして感謝を述べた。

 最早叶わぬと諦めかけていた友人との再会を果たせてのも、彼らのおかげだと心の底から思ったからだろう。

 

 「じゃあ、せっかく感動的な再会したんだし...命お姉ちゃんも友達と一緒に祝会へ参加しようよ!」

 「そうね。ここで会ったのも何かの縁って感じがするもの」

 「い、いえ、そんな畏れ多いです!恩人方の祝い事に部外者が同席などと...」

 「そんなの気にすんなよ。俺も同じようなもんだが、ベル達から誘ってくれたんだからな」

 「命ちゃん、無理にとは言わないけど...私からのお願いとして、ね?」

 「春姫殿...わかりました。では、本拠へ戻り次第、タケミカヅチ様にもお伝えして2人を連れて来ます」

 

 春姫からの要望を命は無下に出来ないと思い、そう約束をした。

 春姫は嬉しそうに尻尾をブンブンと振り回して頷いて、その感情が伝わってくるとラティアスも笑みを浮かべていた。

  

 命も加わって一行は上層を上って行き、地上へ出ると大分日が傾いていて空が若干オレンジに染まりかかっている。

 

 「では、春姫殿。後程、お会いしましょう!」

 「うん...桜花さんや千草ちゃんに、待ってるねって伝えてほしいな」

 「一応、割り勘するって事になった時のために魔石を換金しとくか...」

 「あぁ、いいわよ。祝会の手配をしてくれた友達が払ってくれる事になってるから」

 

 それぞれヴェルフは工房、命は本拠へ戻る事にして、豊饒の女主人の前へ集合すると確認し合うと一時解散となった。

 

 春姫は命の背中を見つめて名残惜しそうにしていたが...ルノアに辛気臭いと頬を引っ張られて涙目になり、苦笑いを浮かべるベルは止めるように言ってラティアスは3人が仲良さそうにしている様子を微笑むのだった。




 ベル「あれ?リューお姉ちゃんだ」
 
 リュー「ベル。ルノアと春姫さんもご一緒という事は...ダフネさんからの祝杯に招待されたのですか?」

 ルノア「ご名答。ついでに今日会ったばかりのパーティに参加した鍛冶師と春姫の数年ぶりに再会した友達も来るわよ」

 春姫「それからリリルカさんもお仕事が終わり次第、こちらへお越しになります」

 リュー「そうですか。かなりの大人数になりそうですが...テーブルや席は足りるでしょうか?」
 
 ルノア「まぁ、その時はアイツがどうにかしてくれるでしょ。主催者なんだし」

 ダフネ「主催者やけんって、急な対応には困るとば気遣うてくれん訳?」

 ベル「ダフネちゃん。え、えっと、もしかしてマズかった...?」

 ダフネ「別に人数が増えるとは構わんばってん...しぇめて教えてくれたら、先に言ってくれたら、人数分増やして予約してあげたとに」
 
 春姫「も、申し訳ございません。その時はそこまでの考えが及ばず...」

 ルノア「まぁまぁ。春姫の友達に関しては誘わない方が思ったんだしさ」

 ダフネ「はいはい...じゃあ、全員が揃ったら入ろっか」
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