ダンポケ   作:れいが

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39話 美の女神の謝罪

 「これで今回、ランクアップした子らの二つ名は全員出揃ったな?そんじゃ、何か他にある奴は居るやろか?」

 「...ボクから1つあるよ」

 「私から1つある」

 

 ヘスティアともう1柱の神が同時に挙手をした。

 思わず上げた手を引っ込めようとしたヘスティアだが...ワンテンポ彼女が早かったと、その神は仕方ないと言った様子で先に述べるのを譲った。

 

 「なんやドチビ...まだポケモンについて話さなアカン事があるんか?」

 「いいや、それとは別の問題だよ。レックウザが現れる前の出来事で...」

 

 ヘスティアは一呼吸置いて、フレイヤを見据える。それを見越していたかのよにフレイヤもヘスティアに視線を送っていた。

 

 「探索中、ベル君はルノア君達と落石によって分断させられたんだ。そこに強化種のミノタウロスが襲い掛かってきて...

  ルノア君達はベル君を助けに向かっていたけれど、それを妨害されたんだよ。フレイヤの眷族にね」

 「...そんなん、偶々出会い頭にどっちも道を譲らんかったから喧嘩になったんとちゃうん?」

 「確かにルノア君はちょっと怒りっぽいから最初はそう思ったよ。でも...ミアハの眷族であるリリルカ君も見ていたから間違いないんだ」

 

 唐突に自神の眷族の名前を挙げられてキョトンとするミアハ。リリルカからは何も聞かされていない様子である。

 

 「さっきのアルセウス様の発言からして...そう指示したのならボクは君を絶対に許さない。

  何が目的であんな事をオッタル君にさせたのか、全部話してもらうよ」

 

 天界の腐れ縁であるロキにとっても、ヘスティアが見せる怒りに満ちた表情は初めて見るものであった。

 普段、温厚な性格の彼女から想像も出来ない程の威圧感にミアハとヘファイストスでさえ驚いており、他の神々も息を呑んでしまう。

 その時、先程ヘスティアの発言権を譲った男神が立ち上がった。

 

 「私からもあるぞ~フレイヤ~?」

 

 月桂樹の冠を被った金髪の美男神アポロンだ。ダフネの主神である。

 ねっとりと嫌味たらしい物言いで、自神の眷族に何が起きたのか事細かに説明し始める。

 

 「お前の【女神の戦車】は不埒なストーカー行為を行い、更には【炎金の四戦士】が襲い掛かってきたと私の愛しいダフネから聞かされた。

  ヘスティアの眷族と同じぐらい酷い仕打ちじゃないか...子の責任は主神の責任として、どうしてくれるんだ?」

 

 最後の一言には怒気を孕んでおり、嫌味な雰囲気が一変する。眷族を愛する気持ちは神ならば皆同じ、アポロンも例外ではなかった。

 アポロンが話し終えると神々の視線がフレイヤに集まる。その説明を聞いている間、フレイヤは口を挟む事なく黙って聞いていた。

 

 神会の前日、フレイヤは自神が責められた際の対処法を徹底していた。だが...アルセウスというイレギュラーによって念入りに立てた釈明も弁明も破綻した。

 しかし、それでも彼女は動揺する事なく、この場を切り抜けるためにまず立ち上がって深々と頭を下げる。

  

 「オッタル達からその事については聞いているわ。彼、口下手だから...ごめんなさいね」

 「ど、どういう事だい...?」

 「あのミノタウロスはオッタルが取り逃がした個体なの。だから、自らの責任として排除するために貴女の眷族にはその場で待ってほしかったのよ」

 「そ、そうなのかい?でも、それならなんでそうと言わなかったのさ」

 

 ご尤もなヘスティアの疑問に神々も頷いていた。それに対し、フレイヤは面白おかしそうに微笑みを浮かべる。

 

 「言ったでしょう?口下手だからって...伝える前には彼女が拳を突き出してきたみたいね」

 「うぐ...」

 「まぁ、邪魔をしたと思わせた訳だから...お互いにチャラという事にしましょう?」 

 「...わかったよ。但し!...もしもまたオッタル君が同じような事をしてきたら、君を強制送還させるよ」

 

 無意識にだが神威を漂わせてヘスティアはフレイヤに警告する。

 フレイヤはどこにそんな余裕があるのかという程、それに動じる事はなく同意して頷いた。 

 

 「ええ、それで構わないわ。さて、次はアレンとアルフレッグの件ね...」

 「フレイヤよ。私に下手な言い訳は通用しないぞ?【女神の戦車】と【炎金の四戦士】の行為はあまりに卑劣で最低な目に余るものだ。美の女神と謳われておきながらそんな真似を許すとは片腹痛い!」

 

 アポロンはこれでもかとフレイヤに捲し立てて責め立てる。それには同じ美の女神という名を持つイシュタルも内心ざまぁみろと愉悦感を覚えていた。

 しばらく追及を聞き続けていたフレイヤだったが、乾いた舌を潤すためにアポロンが水を飲んだ隙に弁明する。

 

 「アレンに関しては、私が尾行をさせていたわ。こうも簡単にオッタルの実力を超えられたら...普通は疑うものでしょう?」

 「ふーむ...では、【炎金の四戦士】が襲い掛かってきた理由は?」

 「人聞きが悪いから言い換えさせてもらうと...尾行に気付かれて倒れたアレンを助けるために止む無くアルフレッグ達は奇襲を仕掛けたのよ。

  返り討ちにされつつも必死に助けようとしてね」

 「...なるほど。ダフネを疑ったお前の落ち度だと、そう解釈させてもらうぞ?」

 

 アポロンの質疑にフレイヤは無言で頷き、肯定する。恐らくはお好きにそう思って構わないといった感じだろう。

 あのフレイヤに自らの非を認めさせるという、ある意味では偉業を成し遂げたアポロン。神々はザワつき、イシュタルは机の下でアポロンにガッツポーズを送っていた。

 

 「私はもういい。ヘスティア、君は謝罪だけでいいのかな?」

 「うん。約束はした事だし...ボクもいいよ」

 「ほんなら、これにて第ン千回神会を閉会とさせてもらうで~。って事で解散!ウチはこれから忙しくなるで!」

 

 そう言い残してスタコラサッサとロキは大急ぎで本拠へと帰って行った。

 

 「アポロン、お前の事を少しは見直した。清々した気分だ」

 「我が愛しき眷族に不埒を働いたからにはあれぐらい言わなくてはな」

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