ダンポケ   作:れいが

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8話 迷いエルフのてだすけ

 テンガン山の麓には、一面緑に覆われた草原、風に揺れる大木が並ぶ森林、穏やかに流れる小川、平らな岩山が無数に突き出した岩場が広がっている。

 

 そこを駆け抜ける小柄な影。その影を追いかけてる多色の閃光。

 

 森林を抜け出して小川に着地する。水飛沫が舞い散ると、太陽の光を浴びて煌めく。

 着地に伴ってオレンジ色のふわふわした鬣、水色の体毛と尻尾が揺れて、額から生えた剣の様な白い角が水を弾く。

 

 「くっ!やっぱり強い...!」

 

 わかごまポケモン ケルディオ。

 聖剣士の一員...になるべく誰かと戦っているようである。その相手とは...

 

 「ダーク...」

 「...」

 

 あんこくポケモン ダークライ。DNAポケモン デオキシス。

 聖剣士として相応しくなるための特訓に協力してくれているのだ。

 ダークライが影からつくった鋭いツメによるシャドークローを繰り出してくるとケルディオは急いで回避し、目標を外した攻撃は水面から突出した岩を一瞬で砕かれてしまった。

 続いてデオキシスがアタックフォルムにフォルムチェンジして上空からサイコブーストを放つ。

 

 「フッ...!タァアアッ!」

 

 ケルディオは青い蹄の穴から水を勢いよく吹き出しつつ飛び上がると、角からきあいだまを放ってサイコブーストを相殺。

 吹き出す水の量を調整しながら着地し、透かさず嘶く様に両前足を振り上げてハイドロポンプを繰り出す。

 それに対してデオキシスは2対となる触手の先端を合わせると電気エネルギーを収束させて放つ、でんじほうで迎え撃った。

 両者の攻撃が激しくぶつかり合い、空中で大爆発を起こした。

  

 爆風に一瞬怯んだケルディオにダークライが飛ばしたあくうせつだんが、空間だけでなく地面や岩ごと切り裂きながら迫り来る。

 ケルディオはそれに気づいて素早く後ろ足を水面に叩きつけ、水飛沫を上げて飛び上がると間一髪で回避した。 

 しかし、ケルディオは空中にいる状態となり隙を晒してしまって、そこにデオキシスがみずのはどうを撃ち放つ。

  

 「!?。しまっ!...うわぁああ!?」

 

 防御する間もなくみずのはどうが直撃してしまい、ケルディオは地面へ落下していく。

 みずタイプなのでダメージはないが、姿勢制御が出来ずこのままでは地面に墜落するのは必至だ。

 すると、ケルディオの体が青い光に包まれると徐々にゆっくり落下していき、驚きながらも無事に地面に着地した。

 デオキシスがサイコキネシスで落下スピードを遅らせたようだった。

 

 「大丈夫か...?」

 「うん、ありがとう。デオキシス」

 「...」

 

 安否を気遣うダークライにテレパシーで油断すべからず、と伝えてきたデオキシス。

 ケルディオは頷いて、空中に回避した時に気を付ける点を振り返りながら、もう一度特訓を始めようとした時。

 背後から足音が聞こえ、振り返って見てみると3匹のポケモンが居た。

 

 「ケルディオ、熱心なのは構わないが無理をしてはならないぞ」

 

 中央に佇んでケルディオを諭す、てっしんポケモン コバルオン。

 

 「そんなに汚れてしまって...聖剣士となる以上、清潔さも大事ですよ」

 

 そうげんポケモン ビリジオン。泥だらけになっているケルディオを見て半分呆れつつも頑張っているのだと微笑む。

 

 「この後、ベル達が来るんだろ?なら、しんぴの泉で綺麗にするついでに休んで来い」

 

 最後に特訓の疲れを気遣ってか、がんくつポケモン テラキオンがケルディオにそう促す。

 草原や岩場を駆け抜けたケルディオの全身は葉っぱや土塗れとなっていて、確かにこれだけ汚れていてはベルが心配するに違いない。

 それ以前に特訓に夢中になっていたが、ベルが来る事自体を忘れてしまっていたので慌てだす。

 

 「す、すぐ洗ってきまーす!」

 

 でんこうせっかの如くケルディオは森林に沿ってどこかへ向かって行った。

 

 「...デオキシス、ダークライ。ケルディオの特訓に協力してくれて感謝する」 

 「あなた方もしんぴの泉で休まれてはどうですか?」

 「アイツの事だ。尻尾に絡んでる小枝に苦戦してそうだから手伝ってやってくれないか」

 

 クツクツと笑うテラキオンにビリジオンは想像して苦笑いを浮かべ、コバルオンもどこか微笑んでいるように見えた。 

 デオキシスとダークライは顔を見合わせると頷き合い、ケルディオの後を追いかける。

 

 

 ちかいのはやしの奥深くにあるしんぴの泉。

 透き通る様な湖の中央には、木々で覆い茂る小島があり、そこに小さな滝が流れている。

 その滝のすぐ横で、ケルディオはバシャバシャと水を被って葉っぱや土を落していた。

 

 一方、ダークライとデオキシスは泉のほとりで、それぞれリラックスしながらケルディオを待っている。

 しばらくすると、何とか綺麗に洗い終えたケルディオが小島からほとりまで続く道のように突起している石の上を跳びながら戻って来る。

 

 「お待たせ!ベルが来る前に...ん...?」

 

 ケルディオが何かの気配に気付くのは2匹も同時にだった。 

 ガサガサと茂みを掻き分けて近付いて来るその気配はゆっくりと、こちらへ近付いて来ているのは間違いなかった。

 3匹とも得意の技を繰り出せるように身構え、茂みの中からのそりと影が現れて...

 

 バタリとその場に倒れる。えっ、と驚くケルディオ。デオキシスとダークライは警戒は解かないままでいた。

 どうしたのかと目を凝らして見てみると、ケルディオはまた驚いた。

 その正体は人間だったからだ。

 

 「た、大変だっ!」

 

 慌てて駆け寄るケルディオにダークライとデオキシスも続く。

 ケルディオが声をかけてもピクリともしない。角で姿勢を変えさせてみると意識は失っているものの外傷はなく、呼吸も安定していた。

 

 どうするべきかとケルディオが悩んでいると、ダークライが一先ず、コバルオン達の所へ連れて行こう、との提案したのでケルディオはそうしよう、と返事をしてデオキシスに人間の運搬を任せた。

 そうして、3匹はコバルオン達の元へと急ぐのだった。

 

 

 「...う、うーん...あっ...」

 「あ、目が覚めた!よかったぁ...」

 「...白い...兎...?」

 「え?それって、エースバーンの事...?でも白ならヒバニーの方が...」

 

 状況を呑み込めていない少女は、目の前に居るベルの事を見間違えているようだった。

 体を起こすと、陽の光に輝く長い金髪を揺らしながら周囲を見渡してここがどこかのか判断しようとする。

 そこは彼女にとって今まで見た事のない広大で美しい豊かな草原であった。

 驚きながらも立ち上がり、改めてここがどこかベルに尋ねようとするも先にベルから問いかけられる。

 

 「エルフさんはどこから来たの?倒れてる所をケルディオ達が助けたみたいだけど...」

 「...私はリュミルアの森から来ました。オラリオへ向かっていたのですが...その...」 

 

 エルフの少女は目を逸らしながら口籠って、ベルは首を傾げてキョトンとする。

 一向に答えそうにないのでベルは自分で考えると、ものの数秒でエルフの少女が言えなかった答えを出した。

 

 「...ひょっとして迷子になってたの?」

 「うぐっ...そ、そうです...はい...」

 

 図星を突かれてエルフの少女は否定する事なく諦めて迷子だと認めた。

 目元が暗くなる程、落ち込んで俯いてしまったエルフの少女にベルは慌てて話を逸らそうと必死に考える。

 

 穏やかな風が草原を凪いで2人をくすぐる様に吹き抜けていき、同時に揺れる白と金の髪。 

 ベルはうーんうーんと唸りながら、ふと自己紹介をしていない事とエルフの少女の名前も聞いていない事に気付いた。

 

 「僕の名前はベル・クラネルっていうんだけど...エルフさんは?」

 「...私はリュー・リオン。大聖樹を守護する守り人の...いえ、今はもう違いましたね。

  名前だけ知っていただけたら結構です」

 「う、うん...わかった」

 

 自分より年下の少年に迷子であると見抜かれたショックから少しは立ち直ったようで、改めてリューはここがどこなのかベルに尋ねた。

 祖父に旅人から尋ねられた時の返答を思い出しながら、その場所を踏まえて伝えるベル。

 

 「ここはオラリオから何Kも外れにあるテンガン山の麓の草原だよ。村はあそこにあって...」

 「テ、テンガン山!?山々の中でも最高峰を誇る、あの...?」

 「うん。旅人の人が登ろうとしても、すごく大変みたいですぐに下りて来るって言われてる、あのテンガン山」

 

 リューは間違いないと位置を確信しつつ、オラリオとは逆の道を歩いていたのだと自身に呆れ、心の中で罵倒する。

 あれだけ大口を叩いて故郷を飛び出したというのに、迷子になった上にオラリオから遠ざかり続けていたのだから。

 しかし、リューは安堵する。ここがテンガン山ならオラリオからの道は村を通らずに進んで辿り着けるのではと考えたからだ。

 

 その旨を伝えると、ベルは難しそうな表情を浮かべたのでリューは訝った。

 

 「オラリオは遠すぎるから、歩いて行くのは時間が掛かると思うよ?

  せめて馬車に乗って行かないと...あ、でも...」

 「でも、何ですか?何か思い当たる事が?」

 

 最短でオラリオへ向かう手段が他にあるのかと、縋る様にベルに詰め寄った。

 ベルは戸惑いながらも、ダメ元でリューに問いかける。

 

 「その...リューお姉ちゃんはポケモンって知らないよね?」

 「...ポケモン?」

 

 ベルの口から出た聞き慣れない言葉にリューは首を傾げる。

 リュミルアの森で生まれ育った彼女にとっては外の世界の共通する言葉なのかと思ったのだろう。

 やっぱり、といったようにどうしようかと悩み始めるベルだが、意を決してリューに答えた。

 

 「僕らの村はモンスターと仲良く暮らしてるんだ。ずっとずっと昔から...」

 「...何を言っているのですか?モンスターと仲良く...?」

 「う、うん...信じられないと思うけど」

 「ええ、信じられません」

 

 キッパリとベルの言葉をリューは否定した。

 古来より害を齎す存在とされるモンスターが人に友好的になるなどあり得ないと思ったからだ。

 ベルはそう返答されるとわかっていたのか、苦笑いを浮かべながらリューに信じてもらうべく、村へ案内する事を提案した。

 最初こそは戸惑ったが、オラリオへ辿り着くのは無理だとわかってしまった以上、リューもベルの提案を受け入れるしかなかった。

 

 「では、案内をお願いします。ベル・クラネル」

 「うん!...あと、僕の事はベルでいいよ?リューお姉ちゃん!」

 「は、はぁ...では、ベルと呼びましょう」

 

 ベルの言葉にリューは頰を赤くして戸惑いながらも小さな声でよろしくと返した。 

 そして、2人は村を目指して歩き始めるのだった。




この世界戦のリューさんはポンコツマシマシです。
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