憑依の軌跡   作:雪風冬人 弐式

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 閃Ⅱの周回進めてたり、同志《V》の活躍でPを拝めると聞いて検証していたり、リアルが忙しかったりして遅くなって申し訳ない。
 今さらだけど、ネタバレ要素もあるので注意されたし!


第七話「初めてのおつかいっぽい」

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 咆哮を上げる天井まで届きそうな背の機械の体を持つグレーの人型の魔獣。

 両腕が変形した鉤爪を振り回し、人の顔を模した頭部は巨大なキャノン塔へと変形して俺達に狙いを定める。

 自分を追いつめた、俺達を消し炭に変えるために。

 

「ごめん、リィン」

「いや、よくやったエリオット。ガイウスとアルティナも下がってろ。ここから先は、俺の戦争(ケンカ)だ」

 

 今までアーツを駆使して防御と回復に専念していたエリオットが、体力の限界が来たのか倒れ込んでしまう。

 それを見て、嫌らしく体を揺らして挑発する魔獣。というか、もう完全に見た目がトランスフォーマーのロックダウンです。実写版の方の。

 

「いいえ、先輩」

 

 鈴とした声が響き、魔獣の頭部付近に漆黒の傀儡と、それに乗る黒衣の少女が現れる。

 

「私達の戦争(ケンカ)です」

 

 その黒衣の少女が乗った漆黒の傀儡が頭部を殴ることで射線がずれ、放たれた砲弾は俺達を外れる。

 

「言った筈だ、戦友(とも)よ。共にゆくぞ、とな」

「そうだよ!僕もまだ戦える!」

「お前ら…」

「先輩の負けですよ。……再度、状況を開始します」

 

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 なぜ俺達四人とトランスフォーマーっぽい魔獣が戦っているのか。

 ことの始まりは、およそ半日前。

 

 

  

 

 

 チュンチュンチュン……

 この十七年間で聞き慣れた小鳥の囀りを耳にしながら、体を起こす。

 

「これでも、解は出したつもりだったんだけどなぁ…」

 

 昨夜のサラの問いを思い出し、思わず口から洩れてしまう言葉。

 脳裏に浮かぶのは、己の手の中で息を引き取ったアイツ(・・・)

 

「やれやれ。どうもセンチメンタルでいかんな」

 

 そう。アイツの分まで、俺は青春を謳歌せねば!そう誓ったじゃないか、リィン・シュバルツァー!!

 と、そこへ、不意に朝日が差し込んでいた窓に影が映る。

 

「……グッドモーニン」

「ヘブゥ!!」

 

 窓を突き破り、金属の光沢を放つ漆黒の腕らしき物が俺の腹部に、シュッゥゥウウウトッ!!

 

「オゥゥウウウ!?」

「お早うございます、先輩。……どうなさったのですか?」

「おまっ、お前がそれを言う、かッ!?」

 

 鈍痛から床に転がって悶える俺を見下ろしながら、ダイレクト訪問をしてきた人物、長い銀髪を両肩の位置で結び、フィーと似たような眠たげな金の眼を持つ少女、アルティナ・オライオンを睨みつける。

 

「モーニングコールを所望されていたので、実行したまでですが。……なるほど。やはり、不埒な目的があったのですね」

「俺はそんなの頼んじゃいねえ!それと、これは不可抗力だし!!」

 

 床に転がっているため、自然と見上げる形となりなぜか士官学院の制服を着ているアルティナのスカートの中が見えてしまう。

 先輩は、黒のレースのパンツなんてまだ早いと思うんだ。

 

「仕方ない先輩ですね。見たいとお望みならば、道具たる私は逆らえません」

「マジで止めてください。ムショに行ったら、嫁き遅れに捕まって一生出られません」

「そうですね。流石の私も鉄道憲兵隊の目を掻い潜っての監視は、骨が折れますし」

 

 スカートをたくし上げるアルティナの相手に頭痛を感じるが、今に始まったことではないので気にしないようにする。

 じゃないと、胃が持たない。

 

「そういや、何で来たんだ?リベールに行ってたんじゃないのか?」

「そちらは片付いたので、本来の任務を遂行するため戻ってきたのです」

「まさか、監視だとか言わないだろうな」

「……いぐざくとりぃ」

「可愛く言っても装っても無駄だかんな!!」

 

 しかし、文句は言ってもアルティナに任務を与えたのは、十中八九ギリーであろうから無駄だろうな。

 ギリーと知り合ったのが運の尽きか。てか、何であんなに俺を気にかけてるんだろうな?

 アルティナという、暗部の一人を監視役として派遣するほどにな。

 ま、まさか!?奴には、そっちの気があるのかッ!?

 仕事とマーボーが恋人だと思っていたが、フェイクだったのか!?

 

「どうしました?急に私に抱き着くなど」

「ゴメン。もう少しこのままでいい?」

「?不埒な行為をしなければ、構いませんよ」

 

 途轍もない寒気を感じたためしばらくアルティナに癒されてると、部屋に来たデュバリィと一悶着あったがユミルにいた頃と変わりない光景だったので割愛しておく。

 ただ単に、『この泥棒猫!!』『チョロリィのクセに!!』等々の不問な罵り合いと軽いキャットファイトがあっただけである。

 全く、ハーレムは辛いZE☆あ、嘘です!冗談だからお願い止めて!!

 その後、朝食を済ませて生徒会からの依頼を確認し、午前はトリスタの街を駆けまわる。

 HEY、YOU!実家行こうぜ!!と、催促してきたアンは、生徒会の依頼を優先するからまた今度、と断る。

 午後になると、本日の依頼の大本命である旧校舎の調査に取り掛かる。

 探索メンバーは俺の他には、ガイウスとエリオット、そしてアルティナだ。

 ちなみに、アルティナは俺が流浪の剣客をしていた時期に偶然知り合った知己であり、偶然にもこの学院で再会したのだと紹介した。

 他のⅦ組メンバーは、部活だったり私用でトリスタを離れてたりしたので参加していない。

 そして、校舎内の構造が変化していたことに驚きつつも探索を進め、終点らしき部屋に着いたらボス的な魔獣が現れたので倒した。

 ここまでは良かったが、問題は魔獣を倒した後だった。

 倒した魔獣の体が、突如分解されて一つに纏まるとトランスフォーマーっぽい姿になって復活したと思ったら再び襲いかかってきたのだった。

 ここで、話は冒頭に戻る。

 

「くらえ!タービュランス!!」

 

 ガイウスが槍を振り回して竜巻を発生されて魔獣の体勢を崩す。

 

「《クラウ=ソラス》!!」

 

 アルティナの指示に従い、傀儡の拳が右足の関節を砕き、アルティナが投擲した槍が左足の間接を貫く。

両足の関節が機能しなくなったことで膝を着く魔獣だが、頭部のキャノン砲から砲弾が発射される。

 

「アマダスシールド!」

 

しかし、それはエリオットが駆動したアーツによって弾かれる。

 

「業炎撃!!」

 

発射後の硬直を逃さず、俺は炎を纏わせた太刀で首を斬ろうとするが、魔獣が顔を反らしたことでキャノン砲を破壊するだけに留まる。

 

「ブリューナク!!」

「ゲイルスティング!!」

 

 だが、確実に隙は生まれ逃すことなくアルティナとガイウスのクラフトが叩き込まれる。

 

「フロストエッジ!」

 

 今まで後衛に徹していたエリオットも、ここぞとばかりに攻撃アーツで畳み掛ける。

 

「これで最後だ!八葉一刀流弐の型、疾風!!」

 

 エリオットのアーツの効果で凍てついた魔獣の体を斬り裂く。

 ゴトリ、と俺の目の前に、魔獣の頭部が落ちる。

 首だけになったソレの双眸は、俺と視線を確実に交わした。

 

『コレデ、終ワリジャナイゾ。巨イナル試シハ、コレカラ始マル』

 

 アイエエェェエエエ!?喋ったよ、コイツ!?

 というか、セリフの内容が典型的な小悪党だよ。

 こうして、一抹の不安と嫌な予感を抱かせて旧校舎の探索が終わった。

 

「いやー、まさか旧校舎にあんなのがいるなんてね」

「全くだ。帝国の建物の地下はあんなのになっているのなら、気が休まる暇がないな。いや、だからこそ鍛練になるのか?」

「「いやいや。そんなことないから」」

 

 ガイウスが間違った帝国観を持ちそうだったので、エリオットと一緒に否定する。

 未だ疑っているようだったが、納得させて学院長室へ探索の報告へ向かう。

 その際、アルティナは上に報告すべきことができてしまったとのことで、離脱する。

 その後、これから月一で俺達、Ⅶ組が旧校舎の謎を調査することが決定してしまった。

 おのれ、サラ・バレスタイイィィィン!!

 

 そんなこんなで、学院生活初の自由行動日は幕を閉じたのだった。




 閃Ⅱをプレイして、敵の女性も自然体で口説くなんて流石リィンお兄様!
 デュバリィちゃんもいいキャラしてたし、次回作はヒロイン入りを期待。
 

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