ちなみに、タグが増えてます。
それと、感想が返せず申し訳ないです。皆様のご指摘やエールのおかげで作者は生きています。
「ふんふんふ~ん♪」
空が明るみ始めて徐々に光が差してくる森の中、たき火を焚いて鍋を煮込んでいる栗色のツインテールの女性の鼻歌が聞こえる。
「さて、こんな感じかしら」
「ただいまー」
「あら、早かったわね」
そこへ、漆黒の髪と琥珀色の瞳の短髪の男性が兎らしき獣を抱えて現れる。
それを見た女性は目を輝かせる。
「朝食にしては、豪勢になるかしら?」
「昼に回すかい?っと、それよりも」
「ええ。……来たわね」
何かの気配を感じたのか、男性は腰に下げた双剣を、女性は身の丈程の棍棒を手に取ると構える。
「チッ!バレちまったらしょうがないな」
二人が見据えた先の木陰から、ニヤニヤと下品な笑みを顔に張り付けた男と、その男を囲むように数人の全身黒タイツの人影が現れる。
「一応聞くけど、素直に投降する気は?」
「無いに決まってるだろ。そっちこそ、俺のハーレムに」
「死ね、クズ!」
女性は男が言い終わる前に、起動させていたアーツで火球を生み出して放った。
「チィ!オリ主に逆らうとどうなるか、教えてやる!!聞いて驚け!そして、慄け!俺は、アルテリア」
「
火球を躱して自慢げに語り出す男の話など、気にすることなく女性は握る棍棒にタロットカードを触れさせると、棍棒が装飾が施された深紅の槍へと変化した。
「
「な、にっ!?」
そして、一瞬で肉薄すると男の心臓に槍を突き立てる。
「Fateの能力、だと!?まさかッ!?」
「残念。アタシも転生者だけど、これはアタシが開発したクラフトよ」
女性が槍を引き抜くと、白い光で包まれると元の棍棒とタロットカードに戻ったが皺が入り、燃え尽きたかのように真っ黒になって手の中からこぼれ落ちる。
「うむむ。まだ改良の余地ありか」
女性は悔しそうに眉を顰めるが、気を取り直して伏兵がいないか警戒する。
しばらくすると、茂みをかき分けて既に帯刀した男性が現れた。
「終わったかい?」
「ええ。そっちは?」
「こっちも問題ないさ。しかし、粗方狩ったとはいえ、まだ生き残りがいたのか」
「これからも増えるかもしれないわよ。何せ、クロスベルとエレボニアで始まったんだから」
「一応、街に着いたら彼等に連絡入れておくか」
「そうしましょ。ご飯冷めてないといいんだけどな~」
二人は得物をしまうと、焚き火の元へ戻って行った。
そして、二人を襲った男達はその場に置き去りにされていたが、体が透き通っていき消えてしまった。
まるで、この世に存在しなかったかのように。
〈……っということがあったのよ〉
「そうですか。わざわざありがとうございます」
〈いいのよ。先輩として、後輩の面倒も見ないとね〉
「痛み入ります。これからクロスベルに向かわれるんですか?」
〈そうよ。原作に巻き込まれるのは面倒なんだけど、レンがいるらしいし〉
「救えなかった俺が言えた義理じゃないですが、頼みます」
〈気にしなさんな、後輩。じゃ、これからクロスベルの彼にも連絡しないといけないから〉
「お疲れ様です。あ、それからヨシュアさんとの結婚式には是非呼んでくださいね。子安も楽しみにしてましたよ」
〈止めて、リィン君!あの子安はただのテラ子安になっちゃうから、絶対に教えないでよ!!〉
「了解です。それでは」
導力通信が切れたのを確認し、アークスを閉じる。
あっちの原作が終わったと思っていたが、まだ狙われてるのか。
思い出すのは、一年前。
リベールで起きた事件の裏側で、何人もの転生者が組織を創って暗躍していることに気付いて殴り込みに行ったんだよな。
その時に組織や国籍、種族関係なしの転生者討伐隊が結成されて、俺も師匠に連れられて参加させられて辛かったわぁ。なんなのあの人達。剣術でどうやって、隕石落としなんてできるんだよ!?
「なーに言ってるのよ?」
「リィか」
声を掛けられて振り向くと、心配そうに覗き込むリィがいた。
おっと、体験した世の中の理不尽さに憤っていることが声に出てたのか。
「何でもない。それより、どうしたんだ?」
「ほら、実技テストが始まっちゃうから移動するわよ」
「待たせたみたいでスマンな」
「べ、別にアンタのためじゃないんだからね!彼女だから、当然のことをしたまでなんだからねっ!」
ツンデレるリィに思わず頬が緩むのを感じながら、アークスをしまってグランドへ向かう。
そこで、サラが呼び出した実技テストの相手がどこかで見たことある代物だったが、リィの反応からして《工房》製かなと考えながらも、無事に倒してテストを終える。
その後、サラより明日から行く特別実習の班分けと実習地の発表がされた。
そう、されたのだ。
俺はアリサ、ラウラ、エリオットの四人で大市などの交易が盛んなことで有名なケルディックへ行くことになったのは、問題ない。
問題なのは、リィ、フィー、エマ、ガイウス、マキアス、ユーシスの班だ。
どう考えても地雷です。過剰な戦力と人員にしたのは、地雷処理を期待していることが目に見えて分かる。
「エクレア様、冗談は二つ名だけにしていただけないでしょうか?」
「サラ、その無駄乳を寄越せ。あと身長も」
「確かにあの二人が、同じ実習地になる組み合わせになったのは私の責任でもあるわ。だが私は謝らない」
キリッとドヤ顔を決めるサラに、蔑む視線を送るリィとフィー。
しかし案の定、サラはそれに動じることなく立ち去り本日の授業はお開きとなった。
それにしても、ケルディックか。
行ったことがない街だから楽しみなのだが、何か嫌な予感がするな。
そして後日、俺はこの時感じた予感がある意味正しかったことを実感するハメになるのだった。
実技テストなのに、なぜ戦闘描写を書かないのかだって?
ぶっちゃけ、ネタ的な戦闘を思いつかなかったためです。
期待してた方、申し訳ない。