憑依の軌跡   作:雪風冬人 弐式

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 いよいよ、閃Ⅱの発売まで二週間ほど。待ちきれないが、その前に閃Ⅰも周回進めておかないと。
 ちなみに、自分は一回目はフィーをメインでイベント進めてました。


第四話「《Ⅶ》組の設立っぽい」

「疾ッ!!」

 

 手に持つ太刀を袈裟懸けに一閃すると、白銀の軌跡と共に魔獣を切り裂く。

 

「ヤッ!」

「ハアッ!!」

 

 隣では、フィーが牽制で撃ち込んだ銃弾に魔獣が怯んだ隙に、デュバリィが接近して斬り込み、フィーが身軽に動いて追撃している。

 

「ふう。片付いたか」

 

 キン、と納刀した時の鞘と柄が当たった音を耳にしながら、周りの気配を探る。

 

「ん。このぐらいなら、らくしょー」

「そうね。アレは本気で地獄だったものね」

 

 リィの言葉通り、半年前に潜った迷宮は本当に地獄だった。

 認めたくないものだな。若さ故の過ちを。

 あの時は丁度金銭に困ってた時期でもあり、腕を鈍らせないための訓練代わりに最適だったことや、報酬に釣られたこともあってこの学院、当時は知らなかったが、に暇してたリィと来て、学院の下見に偶然来ていたフィーとメイドを誘って、興味を示したライダースーツの女子生徒も巻き込んで潜ったんだっけ。

 結果、想像以上の死闘を繰り広げることになり、お宝発見かと思きや蓋を閉めた方が良さそうな《遺産》を見つけることになって、全員で見てないことにしたんだよな。

 そして地上に出た後は、摩訶不思議なダンジョン内で一週間程過ごしたはずが、外では三時間程しか経っていなかったことにも驚かされた。

 まあでも、「生きてるって素晴らしい!」とか、「太陽ってこんなに綺麗だったんですね」とか、無言で何かを噛み締めて居たりとかして、皆悟りを開いてる状態だったからそれどころじゃなかったけどな。

 

「リィン、リィン!」

「どうしたフィー?」

 

 半年前のことを思い出していると、フィーが制服の袖を引っ張る。

 

「出口っぽい。でも、声が聞こえる。それに、人じゃない気配も」

「苦戦しているみたいね。どうする?」

「行こうか」

 

 フィーが指した先には確かに明かりも漏れていて、階段もあることからこの迷宮の出口なのだろう。

 そして、先に着いた他の面子が、迷宮の最後で定番のボス魔獣と戦っているのだろう。

 案の定、階段を登り切ると、そこではガーゴイルのような堅そうな体表の魔獣を俺ら以外のメンバーが囲んで攻撃していた。

 ただ、数の上では有利だが戦いなれていない人もいるため、膠着状態が続いている感じだ。

 

「加勢するわ」

 

 俺らの中で一番足が速く、最初に合流したリィが前に出て、盾でガーゴイルの振り下した腕を受け止める。

 

「隙あり!」

 

 後ろに回ったフィーが、ガーゴイルの肢の関節の裏を斬りつけて、体勢を崩す。

 

「弧影斬!!」

 

 ガーゴイルの胴体に剣撃が叩き込まれ、ダメージが通った苦痛からか雄叫びを挙げた。

 すると、俺達の体が青白い光で包まれて、まるで以心伝心になったかのように言葉に出さずともラウラが跳び、大剣を喉元に突き立ててガーゴイルの首を跳ねた。

 途端に、ガーゴイルの動きは止まる。

 生物的な体表が、石に変わったからこれで終わったのだろう。

 他の面々はそう判断して武器を仕舞う。

 こうして戦闘が終わり、暫くして俺達はスタート地点の時と同じように輪を作り、さっきの現象について話し合った。

 あの淡い光はなんだったのかと。

 この場に居る誰もが、それを気になっていた。

 俺達がそう不思議がっていると地上へと続いている階段の方から『【ARCUSアークス】の真価ってワケね』と拍手をしながらサラが降りて来た。

 サラが俺達のすぐ手前で止まり、『特別オリエンテーリング』は終了だと言うが、自分たちをこんなところに放り込んで戦わせた張本人が現れたことで10人の殆どが様々な文句を吐き散らす。

 その中で金髪貴族くんが単刀直入に俺達の組、特科クラス《Ⅶ》組は一体何を目的としているのだ?と問い掛けた。

 俺も含めてその問いの答えは全員が聞きたかったので、全員の視線がサラの口に集中する。

 皆の期待に応えて、サラは説明を開始する。

 結局のところ、俺達が《Ⅶ》組に選ばれたのは色々な理由があるそうだが、一番の理由は【ARCUS(アークス)】に有るとのこと。

 この【ARCUS】を持てば、多種多様な魔法アーツが使えるようになったり、通信機能が使えたりと他にも多彩で便利な機能が秘められているらしいが……。

 真価は《戦術リンク》、さっき俺達が体験したお互いの感覚がリンクしたかのような不思議な現象のことだ。

 例えばの話、戦場でその《戦術リンク》が齎す恩恵は絶大だとサラは語る。

 しかし、戦場において革命を起こし得るかもしれないこの機能、現時点では適性が有る者でしか使用出来ず、新入生の中でも特に高い適正を示したのが俺達10人だった為、身分や出身に関係無く、俺達はこの《Ⅶ》組のメンバーに選ばれたとサラは打ち明けた。

 

「さて約束どおり、文句の方を受け付けてあげる。トールズ士官学院はこの【ARCUS】の適合者として君たち10名を見出した。やる気のない者や気の進まない者に参加させるほど予算的な余裕があるわけじゃないわ。それと、本来所属するクラスよりもハードなカリキュラムになるはずよ。それを覚悟してもらった上で《Ⅶ組》に参加するかどうか――改めて聞かせてもらいましょうか?」

 

 全ての説明が終わり、今度はサラが俺達に《Ⅶ》組への参加の意思があるかどうかを訊ねた。

 

「あ、俺は」

「そうそう。こんなの預かってるんだけど」

 

 明らかに面倒事に巻き込まれるフラグがビンビンに立っていたので、断ろうとしたらサラに遮られた。

 そしてサラは、懐からボイスレコーダーもどきを取り出して電源を入れた。

 

〈闇に呑まれて消えろッ!!〉

「グッハァ!!」

「リィン!?しっかりして!傷は、……深いわね」

「えーせーへー!!」

 

 再生された音声に、物凄く聞き覚えがありすぎて蹲ってしまう。具体的には、《蛇》で知り合ったとある炎を操る兄貴のコスチュームに感化されて、自分も同じような衣装を着て口調も真似ていた時代の俺の声だ。

 ぶっちゃけ、黒歴史です。あの頃は若かった。

 リィとフィーが駆け寄って何か言っているが、全く耳に入らない。

 

「な、なぜそれを!?」

「匿名の投稿があってね。断わりそうなら使えって」

「ジブンハ、ヨロコンデサンカイタシマス!」

「宜しい。で、他の皆はどうする?」

 

 その後、また金髪貴族くんとメガネで一悶着あったらしいが、忘れ去っていた過去の記憶を呼び起こされていた俺は、それどころではなかった。

 ク!?静まれ、俺の左腕よ!

 

 気が付いたら、寮の部屋にいて夜になってました。

 ちなみに、あのボイスレコーダーはサラの手元にあり、脅しに使われることになりそうだ。

 こうして、初日からすでに平穏からかけ離れた、俺の青春が始まるのだった。orz




 憑依リィンだけど、他作品の剣術を使わせようか考え中。
 個人的には、るろ剣とか刀語とかムスブギョーの技を使わせたいけど、出番がないなあと悩み中。
どうしたものか。

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