ああ、どうも初めまして。貴方が軌跡通信の記者の方ですの。
ご存知かと思いますが、デュバリィ・シュバルツァーですわ。
それにしても、長いこと裏に関わっていますが、裏の人間を専門に特集する《軌跡通信》なる物があるとは存じ上げませんでしたわ。
あら、すみません。変なことを言ってしまって。
そうですか。お気遣い痛み入りますわ。
それで、私に取材したいこととは?
リィン・シュバルツァーとの関係?
それはもちろん、彼女ですわ。
馴れ初めを教えて欲しい?
ふむ。貴方も裏をご存じですので、話しても大丈夫ですわね。
そう、リィンと逢ったのは、あれは3年ほど前でしたわね。
貴方も知っての通り、私はアリアンロード様直属部隊である《鉄機隊》のメンバーの一人ですわ。
その日は偶々、他の《鉄機隊》のメンバーであるアイネスとエンネアの三人共任務もなく聖女様からの修行も休みであったため、街に出かけることにしたのですの。
「申し訳ありませんがお客様、相席でも宜しいでしょうか?」
昼食を食べようと、兼ねてから美味しいと評判のレストランに三人で入ったは良かったのですが、店内は予想通り混んでいるため座れる場所が限られていました。
店員が示した座席には、メニュー表で顔は隠れていましたが、一人の少年が座っているのが見えました。
「どうしましょうか?」
「私は問題ない」
「私も」
「それでは、相席で構いませんわ」
二人の了承も得られたので、相席することになりました。
「あ、店員さん丁度いいところに。注文お願いします」
私達が席に着くと同時に、少年は顔を上げたため私達は彼と目を合わせることになりました。
「……タイプ」
アイネスが何か言った気がしましたが、私には聞こえませんでした。
少年は私達を見て驚いた顔をしましたが、すぐに荷物をわきにどけてスペースを作ってくれました。
「相席となって申し訳ないですわ」
「構いませんよ。今の俺にとって、別嬪さんに囲まれるという状況だけでも癒されます」
ハハハ、と疲れた声で笑いながらため息をつく少年。どうやら、年の割りに苦労してそうだなと感じました。
「失礼だが、名前を教えてもらって良いだろうか?私は、アイネスと言う」
「リィン・シュバルツァーです。当てのない、旅の剣客ですよ」
少年、リィンは傍らの納刀した太刀が押し込んであるリュックを指しながら名乗りました。
「剣客か。もし良かったら、手合せを願いたい。……二人っきりで」
「フッ、御嬢さん。男の前でそう言うことを言うもんじゃないぜ。勘違いしちまうだろ」
「べ、別にそんな意図があったわけではない!」
「俺に惚れると火傷するぜ」
「ないわー」
「だな。俺も自分で言っておいてなんだが、鳥肌が立った」
「キャッ。でも火傷程度、この《剛毅》のアイネスにかかれば!」
「「えー……」」
「ところで、貴女は?」
「ああ、すまないわね。私はエンネアよ。で、こっちがデュバリィ」
「短い間だが、よろしくですわ」
「ああ、こちらこそ。一名はそうならない可能性があるが」
「そうね。貴方的にはどう?」
「まずはお友達からで」
「だそうよ。良かったわね」
「そんな。結婚なんて」
「「オイコラ」」
というか、アイネス。普段は無口の貴女が、一番しゃべるなんてどうなさいましたの。
それと、エンネア。貴女はいつの間にリィンと意気投合しましたの。
その後、アイネスが積極的に会話し、エンネアがおちょくる以外にこれといったことはなく、リィンと私達は別れました。正直、私だけ除け者にされた感じがあって少し寂しかったのは内緒ですわ。
この時、私が彼に感じたのは不思議な方といった印象でしょうか。それと、明るい性格のようですが上手く表現できませんが違和感を感じましたわね。
最初の邂逅は、こんな感じでしたわね。
当時、後で分かりましたが、恋に現を抜かすようになったアイネスやアイネスをからかうエンネアを見て、聖女様の修行中でも態度が変わってきましたので、鬱憤が溜まるようになりましたわね。
ええ。私にとって、聖女様のような武の頂点に立つことが何よりの目標でしたので。
次の邂逅は、半年程後の日でしたわね。
その日、私はアイネスとエンネアと合同で任務を達成した夜のことでした。
結社が用意した拠点で休んでいた所、不意に殺気を向けられたのを感じましたの。
視線を合わした私達は、素早く行動に移りました。
エンネアは狙撃手として屋上に、私とアイネスは襲撃者を探るため表に出ました。
ですが、すぐに殺気は消えてしまい、居場所を突き止めるのには骨が折れそうですわね、とアイネスと軽口をたたきながらも、警戒しながら周囲を探っていました。
いつまで経っても襲撃はなく、一旦拠点に戻ろうとした瞬間、轟音と共に拠点としていた建物が崩れました。
戻った私達の目に映ったのは、瓦礫の上で赤く染まったエンネアを地面に降ろす人影でした。
「何者ですの?」
「ククク。《槍の聖女》様の直弟子がこの程度とは。聖女様が泣くぜえ?」
「お前ぇぇえええ!!」
「止しまさい!!」
明らかに挑発と分かる、粉塵で見えないが声音で分かる男の言葉に、エンネアを傷つけられたことなどから冷静さを失ったアイネスが、ハルバートを構えて突進してしまう。
「う……そ……」
アイネスのハルバートを躱した男の顔を至近距離で見たアイネスは、どういうわけか一瞬、動きが止まってしまう。
その隙を逃すはずもなく、男は持っていた太刀を振り抜きアイネスの胸を貫いた。
何もできず、アイネスが倒れるのを私は見ていることしかできませんでした。
「貧弱貧弱ゥゥウウウ!!この分じゃ、聖女様も大したことなさそうだなあ」
「クッ!貴様!!ッ!?」
粉塵の中から現れた男を見て、私はアイネスと同様に驚愕しました。
なぜなら、この半年間ずっと私に鬱憤を与えていた、リィン・シュバルツァーでした。服装のセンスは、《劫炎》の服を真っ黒にしたようなものに変わっていましたが。
なぜか背後に幽霊でも控えてそうな、人体の構造を無視したポーズを取っていたことに気にならず、私はただ目の前の敵を倒すことだけを考えていました。
「アリアンロード様を侮辱したな!死にやがれですわ!!」
「だが断る。ほら、どうした?敵はここにいるぞ。来ないのか?Halley!Halley!ハァァアアアリィィィイイイ!!」
「言われなくとも!」
「はい、ざーんねん」
こちらを苛立たせるような挑発を続ける彼に突撃しようとした瞬間、背後から声が聞こえ、やられた、と気づきましたが、すでに遅かったですわ。
目の前にいたのは、幻術か分け身で作った本物ではなかったことを気づけませんでした。
後頭部に衝撃を感じ、倒れながらも振り返った私には彼の顔が映りました。
「……こんなものか」
その時、私は彼に感じていた違和感の正体に気付きました。
まるで、自身が生きているのを実感してない、主観ではなく客観で見ている、そんなような浮いていると言えばいいのでしょうか?
芯を持たずに、フラフラしていつ倒れても可笑しくない。
彼の態度をそう評価したまま、私は意識を失いました。
ああ、もちろん死んだわけではないですわよ。そうでしたら、今ここでお話なんてできませんもの。
おや、一旦休憩ですの?わかりましたわ。
今更ながら、ファルコム学園の二期決定を知りました。
ファルコム社員はほんとに病院に行くべきだと思う。(褒め言葉)
ゴーファイ!
感想とかは、また空いた時間に返したいと思います。