魔法少女?いえ、ただの吸血kあっあっあっ……   作:妄想の塊

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 【照らされる闇】

 たった2話でお気に入り千以上ってマジ?
 みんな勘違いや曇らせが好きなんだな、私も大好きなので初投稿です。

 誤字報告感謝!

 気づいたら10000字を超えて長文になっていた。

 技名変更
 『黒蝙蝠』→『希釈・濃縮 蝙蝠』



照らされる闇 / 姉耳東風

 【照らされる闇】

 

 魔力無しの捜索が始まって数日。

 

 早朝、魔物対策本部は外の快晴な空と真逆の重く暗い陰鬱な空気に包まれていた。その出所は数日前に赤青緑と黄色が使っていた会議室。

 そこに緊急で今集まれる社員が全員集まり、もしくはリモートで参加している。

 

「全員、集まったな?」

 

 茅が確認するまでもなく、ここにいるのは魔物を駆逐すると覚悟を決めた同じ志を持つ者たちで欠員は居なかった。そして全員緊張した面持ちである。

 その原因は茅の表情が今まで見たことないほど眉間にしわが寄り、今にも爆発しそうなほど怒りを募らせているのが一目で分かる。

 

「今回、皆に集まって貰ったのはここ最近、目撃されている魔力を持たない魔法少女『魔力無し(フィクション)』についてだ。彼女に関して幾つか分かったことがある。また、昨日の放棄された廃ホテルの爆発事件や超大型魔物とも関係がある」

 

 茅の言葉の端々から怒火が伝わり、パソコンの共有画面に映るマウスカーソルは小刻みに震えて怒りのあまり壊さないように理性で抑えてるのが見て取れる。

 

「まず、サイバークラッシュが交戦した場所に残されていた魔力無しの血液検査の結果だが。結論から言えば人の遺伝子ではなく複数の魔物の遺伝子が検出された」

 

 共有画面には、明らかに人間の遺伝子画像と魔物の遺伝子画像の2つが表示されて、一目で分かるほど人どころか地球の生物とも異なる遺伝子構造なのが分かる。

 

「うそっ!?」

「これは……まさかっ」

「人体実験の噂は本当だったのかっ!!」

「じゃあこの子は……」

 

静かに

 

 静かな、それでも力強い言葉に会議室は静まる。

 

「この事から魔力無しは、非人道的な実験の被害者の可能性が高い。さらに昨日に廃ホテルを調査したところ魔物を使った人体実験の記録と他の拠点の位置、それを支援している企業と思しき記録も発見された」

 

 共有画面に次々と表示される数々の闇に葬られていた真っ黒な記録。あまりの悍ましさと力を求める人の醜さに吐きそうになる者や犠牲になった無辜の子供たちを想い義憤に駆られる者。

 いずれもこの様な地獄を作り上げた畜生は絶対に許さないという思いが固まる。

 

「そして、超大型魔物の件については現地にいた魔法少女たちで対処できたが問題は、その魔物も複数の遺伝子を持っていたこと。さらに付近に住んでいた民間人が謎の武装集団に襲われそうになったことだ」

 

「そ、その民間人は無事なのですか?」

 

「無事だ。家が大破していたので保護している。その民間人が気絶する前に見た白い魔法少女が武装集団の股間を蹴り抜いたそうだ。加減しなかったのだろうな、今日になっても失神したままだそうだ」

 

「白い魔法少女……白雪、いや彼女はそんな荒々しいことはしないだろう。ということは」

 

「残留魔力が一切無いため魔力無し、だろうな。そしてこの武装集団が何処のどいつなのかは警察と連携して調べるとして、我々はこの非人道的な行いをする団体、名称《ファルズフ》を徹底的に叩き潰す!そして、その被害者である魔力無しを保護する!」

 

「「「はい!」」」

 

 突如、現れた白き魔法少女により照らされた闇を表舞台に引き摺り出し暴くために、魔物対策本部は本気で動き出した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 とある未登録の魔法少女のお話。

 

「お姉ちゃん!大好きぃ〜!」

 

 歳の離れた私よりも小さな妹の笑顔が好きだった。

 両親は共働きで自然と妹と過ごす時間が長かったのもあるが、何よりも健気に私の後をついてきて真似する姿が愛らしかった。

 

「……お姉ちゃん、パパとママは?」

 

 でもこの世界は普通の幸せも手に入らないみたい。

 

「いじめ……?気のせいだよ。お姉ちゃんは気にしないで」

 

 気づいた時には妹は素っ気なくなっていた。

 それだけならそこまで気にしないけど、いつも妹の持ち物が汚れてたり無くなってたりと心配だから、守らなきゃ。

 

「なん、で、なんであんな事するの!?お姉ちゃんが余計な事をしなかったら、私だけ我慢していたら、ずっと……グスッ…みんなと、友だちでいられたのに!」

 

 違う、待って。お願いだから話を聞いて!

 

「もういい!ほっといて!!」

 

 あれから妹は部屋に篭ってしまった。

 両親は居ないから私にはもう妹しか居ない、妹だけは絶対に失いたくない。どんな手を使っても妹だけは……!

 

「君、妹さんが居るんだったね?」

「安心してくれたまえ、我々の指示に従ってくれたら金も払う」

「だけど、この事を外部に漏らしたら……そうか!契約してくれるのか、嬉しいよ」

 

 魔法少女なんて私には縁のないお伽話だと思ってた。

 でもこれがあれば妹を養える。

 

 だから、だか、ら……許して、ごめんなさい、こんな筈じゃなかった、あの子妹と同い年だった、こんな幼い子どもを、お金がいっぱい、許して、今日も妹は部屋から出なかった、実験の協力、赤子の取り替え、お金いっぱい、許して、逃げた子を、裏切り者を、社長の子どもを、妹の顔しばらく見てないな、許して、リーク者と成功体の捜索。

 

 妹、妹のために、ごめんなさい、せっかく自由を手に入れて悪いけど、許して、死んで、私を恨んで、ください。

 

「任務…完了」

 

 いつも通り、何の罪もない子どもを殺した。

 これで、また妹の好きなご飯を作ろう。それとも、昔一緒に読んだ絵本の方がいいかな。今日こそ妹の顔を見れたら……いい、な。

 

 私は地獄に落ちてもいい、どうか妹だけは、いつか明るい場所で幸せに

 

「……なんで、動いて!?」

 

 首を切ったのに、動くはずが、それとも私の幻覚?違う、現実だ!一手遅れた!

 

「ぐっ!そんな、切断した首が戻って……!?」

 

 これがアイツらが望んでた力なの?

 こんな化け物を作るために、私は、待って、やだ、解放される、死にたくない、せめて妹の顔をみたい。

 

「縺オ縺??√〒?溘♀蜑阪□繧鯉シ」

 

「━ッ!『シュレディンガーの━━」

 

 殺気を感じて反射的に能力を使おうと

 

「『鬲?コ』」

 

「あっ……」

 

 いも、うと?

 間違いない、妹だ!パパとママが居なくなる前の、私の愛しい!最愛の!妹が、目の前に!!!

 

「七瀬ちゃぁぁぁああああんんん!!!!!」

 

「縺舌o縺√=縺√=縺ゅ=縺ゅ≠縺ゑシ?シ?シ」

 

 やっと、やっと妹の顔を見れた!

 ああもうもぅもうもう!!好き好き好きすきすき大好きぃぃぃぃ!!!キスしちゃう!

 

「んまっ!んまっ!んまっ!ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅぅぅぅ!!」

 

「縺翫>繧?a縲√■繧?s繧??√く繧ケ縺ッ螫峨@縺?¢繧薙?縲∝ー代@縺ッ縺??縲√″繧?縺?≦縺?≦??シ?シ」

 

 ああああ!どんなにキスしてもこの愛しい気持ちが止まらないぃぃい!あんっ、突っ張れちゃった、恥ずがしり屋さんな所も変わらないわね!

 

「縺?>縺具シ溘∪縺壹?關ス縺。逹?縺代?√◎縺励※遘√?雉ェ蝠上↓遲斐∴繧搾シ溘♀蜑阪?隱ー縺??」

 

「うん!安心して、お姉ちゃんはもう何処にも行かないから、お金もいっぱいあるから何処か遠い場所に暮らしましょう!」

 

「莠コ縺ョ隧ア繧定◇縺代∴??シ溘♀繧難シ溘♀縺??√い繧、繝?i縺ッ遏・繧雁粋縺?°?」

 

 妹の体、とっても冷たいね。

 すぐに新しいお家を見つけて温めてあげなないと。

 

「おやおや、これはこれは!生捕りは無理と思って抹殺指示を出したが、よもや私の元に連れてくるとは、流石は魔法少女だ!」

 

 そのためにも、後ろのコイツを

 

「おい、お前たち。あの方からの召集の指示により、ここを放棄するから撤収の準備をしろ」

 

 周りの下衆共も

 

「さて、それを渡してもらおうか。その実験体を開けば、さらに我々は高みに登れる!」

 

 その親玉も

 

「……おい、聞いてるのか?さっさとはなバキッアパッ!?」

 

 全員ぶっ殺してやる。

 

「どいて!私がお姉ちゃんよ!!!」

 

「き、貴様何を!?」

「お、おい!すぐに傭兵を呼べ!」

「馬鹿!魔女に意味なんかねえ!」

「妹がどうなってもいいのか!?」

 

「縺翫>縺翫>縲∽ス輔′縺翫″縺ヲ繧薙□」

 

 弱い、弱すぎる。

 この程度のクズどもなら私だけでも!

 

「全力でお姉ちゃんを遂行する!」

 

 私が裏切るなんて想定してなかったのか、簡単にその場にいたクズどもを全員しばき倒せた。

 あとは憂がないようトドメを刺せば終わる。

 

「こ、ここんなとこで、し、死ぬくらいなら!この、し、しし試作品を、使いたくなかったが!この私をコケにしたことを後悔させてやる!?」

 

 なに、を……!?

 これは、魔力は感じない、でもあの姿は魔物!

 

「くっ、ひひ!そうだ、そうだとも!この力が欲しかったのだ!さらに、実験体を取り込めば、お前なんぞ塵芥同然だ!」

 

 消えっ、妹の背後に!

 

「…ッ!七瀬ちゃっ!?」

 

「クルアァァァアァァッッ!!!」

 

 カッ!ドガアァァァァァン!!!

 

「グワァーーー!!?」

 

「ばくはっ!?ぐっ━━!」

 

 突然の爆発により魔物人間と魔法少女が吹き飛ばされる。少しの間意識を失った魔法少女は誰かに軽く頬を叩かれて目覚める。

 

「…うっ、何が。そうだ、七瀬!怪我はっ……て、七瀬じゃ、ない?」

 

「謔ェ縺?↑縲∝ヲケ縺輔s縺倥c縺ェ縺上※」

 

 目の前には妹ではなく、魔法少女が追っていた実験体がいた。だが先ほどの記憶を振り返ると間違いなく目の前の実験体を妹として認識していた。

 

「…認識の改竄、そんな能力まで」

 

 実験体の能力に恐怖心を抱きながら、さっきまでの自分の奇行を思い出して顔を赤くするが、現状を理解すると顔色が一瞬で青白くなった。

 

 私は組織を裏切った。

 ということは妹の命が無い。

 

 私の希望が……消えて、しまう!

 

「お、お願いします!妹を助けて!あなたを殺そうとしたくせにムシがいいのは分かる!私のことを殺してもいい、でも妹だけは、七瀬だけは絶対に助けて!お願いします!!」

 

「…………」

 

 土下座した私に実験体が冷ややかなで目で見ているのだろう。そうムシが良すぎる、今まで散々大切なモノを奪ってきたくせに、いざ自分の大切なモノを失いそうになるとこんな無様に泣き喚くなんて。

 

「蝣エ謇?縺ッ?」

 

「……えっ?」

 

「縺?縺九i縲∝ヲケ縺輔s縺ョ螳カ縺ッ菴募?縺ォ縺ゅk?」

 

 実験体の言葉は理解できないが、その顔を見ると想像していた負の感情は無かった。

 

「助けて、くれるのですか?」

 

「縺ゅ≠蜉ゥ縺代k縺九i縲√&縺」縺輔→螯ケ縺輔s縺ョ蝣エ謇?繧」

 

 実験体は頷きながら魔法少女に手を伸ばした。

 魔法少女は思わず涙を浮かべながら手をガッシリと掴んだ。

 

「━━本当に、ありがとうございますっ!」

 

「蜉帙▽繧茨シ?シ」

 

「では、付いてきてください!」

 

 その手を掴んだまま走る。

 魔法少女は走るスピードを実験体に合わせようとしたが、実験体はむしろ魔法少女を追い抜きそうなスピードだったため全力で走ると数分もせず一軒家の自宅に到着した。

 

「陦?縺ョ閾ュ縺?シ」

 

「どうしま、えっ!?」

 

 実験体は手を振り解くと真っ直ぐ2階に向かって飛びこんで壁を突き破った。魔法少女もすぐに2階に飛び込むと床に蹲っている妹と股間を押さえて奇声を上げている4人の傭兵。

 実験体が傭兵の頭部に蹴りを入れて気絶させると外に投げ捨てた。

 

「七瀬!大丈夫!?」

 

「……っ」

 

 脈もある、呼吸も安定している。

 外傷は頭を少し切ったぐらいで気絶しているだけのようだ。

 

「……よかった。うん、やっぱり今の七瀬の方が1番可愛い、ね」

 

 ひとまずの安全を確保できたが、根本的な問題は解決してはない。あの外道共の本拠地を、それに加えて、各地に散っていたメンバーを召集しているこのタイミングで確実に潰さねば妹の未来はない。

単騎なら私の『シュレディンガーの猫』で暗殺できる。でも、あの外道共のことだ、他に私のような魔法少女を集めて手駒にしていてもおかしくない。

 

 だが実験体の認識の改竄があれば味方に付けることもできるだろう。あの子がこれ以上、私に協力してくれるか分からないが、どの道やらねば生き残れない。

 

「そういえば、あの子は何処に……もう、行ってしまったのかな」

 

 崩壊した壁から外を見渡すが、実験体の姿が何処にも見当たらない。妹を助けたから逃げたのか、とあの子の協力を得らないことに残念に思い妹を安全な場所に移そうとした。

 

 その時

 

「ヒュ━━━━ッッッ!!??!!?」

 

 息ができないほどの強烈なプレッシャー、全身の血の気が引き、街中から警報の音が鳴り響く。その重圧に半ば無意識に妹を安全な場所に移動させた魔法少女は全神経を集中させ周囲の警戒をするが、街中を見渡しても出所と思しき魔物の姿がない。

 

(ということは、上?!)

 

 夜空に巨大な肉塊。

 竜、牛、山羊、蛇、と地上から見える限り一つの肉体から複数の魔物の頭部が突き出ており、さらに臓器が肉体に収まりきらず剥き出しで出血による赤い雨が地上に降り続る。

その様はまるで複数の魔物を無理矢理ひとつの箱に押し込んで潰したかのようである。

 

 魔法少女はその肉塊に既視感を感じた。

 まるで

 

(まるで……魔物の血に耐えきれなかった子供たちみたいだ)

 

 実験の犠牲者たちの末路。

 内側から食い破られたかのように肉体が破裂、また変異の過程で命を落とす。何度も見てきた光景だ。

 

(地上から離れすぎている……私の力でもあそこまで飛ぶのは…ッ!まずい魔力が高まって、赤い結界?何を……と思ったらすぐに割れた!?何が起きてるの?!)

 

 結界から出てきた巨大な肉塊は、何というか萎んでいるように見える。ピンク色だった臓器や筋肉が白く乾燥して、複数の魔物の顔は心なしかゲッソリと痩せ細っている。

 ふらふらと地上に向かって下降し始める肉塊。

 

 魔法少女が呆然と見ていると肉塊から小さな影が飛び出した。

魔法少女が目を凝らして見ると満面の笑みを浮かべる実験体だった!

 

(いつの間に!?待って、そのまま落ちると私の家に━━)

 

 ドゴォン!!!

 

(あー……)

 

 ガチャ

 

「………?」

 

 口を開けて何度目かの呆然としている魔法少女を普通に玄関から何事もなかったかのように出てきた実験体が不思議そうに見ている。

 

(……うん、今は気にしない。あの魔物も、他の魔法少女が集まってきてるから大丈夫でしょう。最初に感じたプレッシャーを欠けらも感じない、多分家に大穴開けたこの子が何かしたのかな)

「あの、妹を助けていただき感謝します」

 

 実験体に頭を深く下げる魔法少女。

 

「豌励↓縺吶s縺ェ縲√%縺」縺。縺ッ縺薙▲縺。縺ァ濶イ縲?→隧ヲ縺帙※讌ス縺励°縺」縺溘@縲」

 

 相変わらず何を言ってるのかさっぱりわからないが、何やら楽しげな雰囲気である。

 

(本題はここから…!)

「折り合ってお願いがあります。拒否してくれても構いません」

 

 魔法少女は実験体にこれから外道共の本拠地を完全に叩き潰しに行くことと可能であれば協力して欲しいことを伝えた。

 実験体は終始無表情で話を聞き、深く考え込んでいる様子。

 

 恐らく、必死の思いであの悍ましい実験場から逃げ出したのに、また外道共に捕まることを恐れているのだろう。

 無理もない、私がこの子の立場なら迷わず断るだろう。

 

「…………」

 

「…………」

 

 お互い無言の時間が続く。

 実験体は微動だにしない。

 

(……やっぱり、無理、か)

「あの……ぁっ」

 

「繧?k繧医?ゅ≠縺上∪縺ァ菫コ閾ェ霄ォ縺ョ縺溘a縺ォ縺ェ」

 

 実験体が覚悟を決めた表情で白い手を差し出す。

 まるで、今までの鬱憤を晴らせるのを楽しみにしてるかのように。

 

 この奇跡を無駄にする訳にはいかない。絶対に。

 実験体の氷のように冷たいを手を握る。

 

「ありがとうございます。では」

 

「縺ゅ?√〒繧ゅ?∽ケ???↓證エ繧後◆縺九i縺。繧?▲縺ィ縺?縺大ッ昴◆縺」

 

「早速行きましょう!アイツらを1秒でも早く地獄に叩き堕とす!」

 

「縺?d縺?縺九i縲∽ココ縺ョ隧ア繧定◇縺代∴縺医∴縺医∴縺茨シ?シ?シ」

 

 実験体の咆哮が夜の街に響く。

 

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 【姉耳東風】

 

 馬耳東風。

 いやこの場合は、耳東風が相応しいな。

 

 どういう意味かって?それは一言で済む。

 人の話を聞かないってことだ。なんで四字熟語の話をしてるのかはこれからの会話を聞いてくれればよく分かるよ。

 

「『魅了(チャーム)』」

 

 ウ=ス異本などでよく叡智な展開に使われがちの能力だ。

ちなみにこれ、魔法じゃなくてある程度実力ある吸血鬼にデフォルトで備わってる魔眼だ。

 効果は、まあわざわざ説明する必要ないと思うが、魅了した相手の最も好意を抱く人物に見えるようになる。ついでにその好意も倍になる。

 

 なお使う相手を考えないとこうなる。

 

「七瀬ちゃぁぁぁああああんんん!!!!!」

 

「ぐわぁああぁあぁああ!!!」

 

 俺よりもデカく、多分大学生ぐらいの魔法少女、少女?猫耳付いてるから魔法少女だろ、多分、うん。その魔法少女に魅了をかけた瞬間に強烈なタックルをくらった。

俺じゃなかったら肋骨逝ってるぞ。

 

「んまっ!んまっ!んまっ!ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅぅぅぅ!!」

 

「いやうむ!話をきむぅ!キスは嬉しいけあむ!いい加減むうううううう!!!」

 

 裏山けしからんって?

 ハハっ!勘弁してくれ、今にも抱きしめる力が強すぎて背骨が逝きそうになってるんだ。というかほんとにやばい、HA☆NA☆SE!

 

「いいか?まずは落ち着け、そして俺の質問に答えろ。お前は誰だ?」

 

「うん!安心して、お姉ちゃんはもう何処にも行かないから、お金もいっぱいあるから何処か遠い場所に暮らしましょう!」

 

「人の話を聞けえ!?…おん?おい、アイツらは知り合いか?」

 

 ハイライトのないハートの目が怖いのよ。

 んで、ここ廃墟の筈なんだけど、なんか奥からゾロゾロと怪しくて血生臭い奴らが出てきたな。

 

 特にそこのハゲ、お前を見ているだけで700年前にいたキチ司教を思い出すから初対面だが俺はすでにお前が嫌いだ。

 

「おやおや、これはこれは!生捕りは無理と思って抹殺指示を出したが、よもや私の元に連れてくるとは、流石は魔法少女だ!」

 

 ???

 生捕り?抹殺ぅ?なんのこっちゃ?

 

「おい、お前たち。あの方から召集の指示により、ここを放棄するから撤収の準備をしろ」

 

 う〜ん、肩の火傷が消えたから今気づいたが、この廃ホテルを覆うように妙な膜があるな。結界……にしては薄っぺらいな。

 

「さて、それを渡してもらおうか。その実験体を開けば、さらに我々は高みに登れる!」

 

 …ハゲ、今なんつった?

 てめえガチであのキチ司教と同じ目先の力ばかり求めるクソボケじゃないだろうな?この現代の日本で?

 

「……おい、聞いてるのか?さっさとはなバキッアパッ!?」

 

 えっ、ちょ!?まだ俺何も指示出しとらんが?

 

「どいて!私がお姉ちゃんよ!!!」

 

 猫耳の魔法少女の突然の暴走により宇宙吸血鬼になる。

 

「き、貴様何を!?」

「お、おい!すぐに傭兵を呼べ!」

「馬鹿!魔女に意味なんかねえ!」

「妹がどうなってもいいのか!?」

 

「おいおい、何がおきてんだ……」

 

「全力でお姉ちゃんを遂行する!」

 

 あー、魔法少女相手に魅了使うのはやめよう。『暗示』か『支配』だな。にしてもあの猫耳、ちょくちょく気配が希薄になるが、いや気配どころか音・匂い・光も透過してるのか半透明と魔法少女の存在自体を極限まで希薄にさせているのか。

 暗殺には持ってこいの能力だな、そりゃ背後を取られるわ。

 

 静かになるまで放っとくとして、少しこの膜を調べよう。

なになに?なんか既視感あるな……あ『魔力隠蔽』じゃん、でもこれ人間が使えるはずがないんだが?

 

 これ俺のオリジナル魔法だもん。

 

「くっ、ひひ!そうだ、そうだとも!この力が欲しかったのだ!さらに、実験体を取り込めば、お前なんぞ塵芥同然だ!」

 

 ん?なんでハゲが魔物もどきになってんの?

 

「…ッ!七瀬ちゃっ!?」

 

「クルアァァァアァァッッ!!!」

 

 カッ!ドガアァァァァァン!!!

 

「グワァーーー!!?」

 

 吸血鬼の背後を取った魔物もどきだが、背中の魔法陣が起動して丸焦げになった。

 

「……出力ミスったな。あー、たく、外に出ていると連続でトラブルに遭遇するから嫌になるわ。おい猫耳、起きて事情を説明してくれ」

 

 猫耳の頬をペチペチと叩くと起きた。

 あら、さっきので魅了が外れてるな。

 

「…うっ、何が。そうだ、七瀬!怪我はっ……て、七瀬じゃ、ない?」

 

「悪いな、妹さんじゃなくて」

 

 魅了した時よりも会話が出来そうだな。

というか魅了って、相手が自分から餌になるよう誘導するためものだったわ。使い方間違えたな。

 

「お、お願いします!妹を助けて!あなたを殺そうとしたくせにムシがいいのは分かる!私のことを殺してもいい、でも妹だけは、七瀬だけは絶対に助けて!お願いします!!」

 

「…………」

 

 おう、殺し云々はいつものことだから頼むはいいけど、出来ればそこに至るまでの経緯と事情を説明してくれ何も分からんのよ。

と言いたいけど、その顔を見るに時間は無さそうだな。

 

「場所は?」

 

「……えっ?」

 

「妹さんが住んでる家の場所は?」

 

「助けて、くれるのですか?」

 

「助けるからさっさと場所を言ってくれ」

 

 ほれ、手を貸してやるから立って案内してくれ。

 

「━━本当に、ありがとうございますっ!」

 

「いや力つよ!?」

 

「では、付いてきてください!」

 

 おい馬鹿てめえ!?そんな力で引っ張られたら腕が千切れるだろ!ぬおおおおお!スピードを緩めたら腕が千切れるぅぅぅ!!!

 

 腕を死守していたらいつの間にか妹さんの家に着いたみたいだ。イマノハ、アブナカッタ。

 

「血の臭い?」

 

 一軒家の2階から新鮮な血の臭いを嗅ぎ取り、食欲を刺激された吸血鬼は2階の壁を突き破った。

 

「なんだ!?」

「こ、こいつ例の実験体っ!」

「麻酔弾だ!特注の麻酔弾を使え!」

「クソッ、喰らえ!?」

 

「食事の邪魔だ」

 

 何の力も持ってない肉袋を蹴飛ばして、横たわっている餌に近づき牙を━━━━━何してんだオレェエェエエ!!!

っっぶねえ!?救助対象を食ったらダメでしょ!

 

 ガタガタな理性が食欲に負ける前にさっき蹴飛ばした奴にもう一度蹴りを入れてさっさと2階から逃げた。

 

(アカン、口から涎が出るの止まんない。何か啜らないと、これ、理性が、飛ぶ!)

 

 吸血鬼が口から涎を垂らしながら周囲に餌がないか血眼になって探していると

 

「ミツケタゾ!サッキハ下ラン小細工ニヤラレタガ、ミロ!同胞ヲ食ウコトデ傷ハ」

 

ふぉーーうぅ!!

 

「完プキャ」

 

 廃ホテルの同胞を食らったのであろうハゲの魔物もどきだが、哀れ、腹ペコの吸血鬼の前ではただの餌に変わりなかった。

所詮もどき、本物で上位の存在である吸血鬼が相手では戦うという土俵に立つことも許されない。

 

「………まっず。修学旅行先で飲み物全部混ぜたかのようなノリのゲロまずさ、一周回って冷静になったわ」

 

 ただ、もどきでも街でゲリラ血祭りの開催を中止することが出来たのである意味では人類の救済に役に立った。地獄行きは変わらないが。

 

「はあ……やっぱり先のことを考えると早いとこ引き籠らないといつかやらかすな。もう異世界で散々やらかしたのに、故郷を血の海になんかしたくねえぞったく。クソがよ」

 

 自身の生まれを恨みながらミンチを眺めると、ボコボコと音を立てて大きくなっていた。

 

「めんどくさ、魔力無いくせに一丁前に超回復持ってんのかよ。この分だとバ◯オ2のラスボスのような肉塊で、しかもかなりのサイズになるな」

 

 はぁーーーー(クソデカ溜め息)

 

 魔法少女が何処までやれるか分からん。

 ていうか分からんことだらけだな、引き籠る前に情報を集めて最適な引きニート生活を築き上げねば。

 

「…今回のようなトラブルに巻き込まれることがこの先ないとは言い切れない。ならば1秒でも早くそのトラブルを叩き潰すか、ある程度対処して魔法少女に押し付けられるように実力が必要だ」

 

 現代の日本が平和だったらこんな事しないのに、思ったよりも闇深いし引き篭もるには色々と問題がある。

 

「今回はこのまま俺がやろう。ちょうど試したいことがあるしな」

 

 背中から身の丈を越える大きな蝙蝠の翼を生やして、現在進行形で大きくなっている肉塊を掴んで街を広く見渡せるほど上空に運ぶ。

 

「さて、この際だ。この肉塊ならスケープゴートになるし『魔力隠蔽』を解いて、盛大にやろうか!」

 

 魔力隠蔽完全解除。

 1ヶ月と数日と抑え込み続けていた魔力が一気に放出された。

 

「はっ、解放しただけで街中大騒ぎだな。すぐに魔法少女が来るだろうからさっさと結界を貼るか。『血荊棘(オビズート)』!」

 

 両手首を爪で斬りつけ、噴き出した血が吸血鬼の言葉により極太の赤い茨に変わり、すでに吸血鬼が持ち上げられないほど巨大になった肉塊を縛りつける。

 落ちないように翼を全力で羽ばたかせる。肉塊は茨を振り解こうともがくが、動けば動くほど茨が食い込み、傷つき悶えて血の雨を降らすことしかできない。

 

「結界『血繭(ウテルス)』」

 

 放出した魔力が肉塊を覆うように赤い結界が形成されていき、内部は赤一色で何処からか不気味に心音が鳴り続ける。

肉塊は中央にサンドバッグのように吊り下げられている。

 

「効果は……瞬殺するから要らないな。まずはスライムのコアに魔力を食わせて久しぶりに真っ黒くろ◯けになるか」

 

 取り込んだコアに魔力を集中させて、そのコアから分泌された黒い液体を汗腺から出して全身を繭のように包み込む。

 

「はあッ━━━!が、くぅぅうぅ〜〜!」

 

 恍惚とした声を上げて繭を突き破って出てきたのは漆黒の衣装を纏った吸血鬼。吸血鬼は目を開ける。その目は瞳以外にも白い部分(強膜)も黒に変わっている。

 全身を確認してくるりんと一回転する。

 

「なんで毎度産み出す衣装がゴスロリ一択なんだよ。慣れたからいいが」

 

 実に7〜800年振りの黒バージョン。

以前のやつは聖騎士団長に右眼球以外を全部、消し飛ばされて欠けらも残らなかったんだよな。

 これを纏うと纏わないではかなり違いがある。というかこれが無いとあの吸血鬼絶対殺すマンの聖騎士と正面から戦うなんて無理。

 

 多くの死肉やアンデッドを喰らって真っ黒に変色したスライムのコアにより、アンデッドである俺の基礎スペックの向上や弱点に耐性も付く。

今ならあの青いのにハグされても大丈夫だろう、まあ10分もやられると焦げるけど。

 

「さて、小手調べだ。吸血鬼と言えば蝙蝠『濃縮蝙蝠(ウザ・バット)』!」

 

 ゴスロリの衣装から漆黒の塊が射出された。

 漆黒の塊をよく見ると、ひとつひとつが小さい蝙蝠。主な使い方は撹乱や死角からの質量爆弾。

 

 射出された塊は竜の頭部に激突すると同時にもう一度『希釈蝙蝠(ウザ・バット)』を唱えると蝙蝠は肉塊全体にちらばり血を啜り始めた。竜の頭部は原型をとどめていなかったので質量爆弾としての威力も十分だろう。

 

「まずまずだ!次は、『血飛沫(ブラッドスプラッシュ)』+『獄炎(グザファン)』!」

 

 指先の血液を弾丸のように飛ばす。これ自体大した威力はない(人体に有毒)メインは血液を通して対象を焼き尽くす。

なお対象を間違えると自分を内側から燃やして灰にする。なった(26敗)

 

 弾丸のように飛んだ血液は肉塊に撃ち込まれ、内側から業火が噴き出す。肉塊は複数の口から炎や溶けた肉を吐き出す。

 

「最後ォ!締めに相応しいのはこれダルオォォ!!『鉄の処女(アイアンメイデン)』!!!」

 

 とっておきの技を使おうとした瞬間、全身が割れるような激痛が走るとゴスロリの衣装が爆散した。

あれだ、普段まったく運動していないのにマラソンしてマーライオンするようなもんだ。

 

(……600年の引きニートが調子に乗りすぎた、か)

 

 結界が割れる前に黒蝙蝠を回収して最低限の魔力補給をして肉塊の上に飛び乗る。

全身虚脱感に襲われ、魔力隠蔽を使わずとも他者から魔力を探知されないほど弱体化したが、久々に魔力をふんだんに使ったので少し楽しかった。

 

 このままだと肉塊が街にドボンするから、残りカスの魔力を絞って『浮遊』を肉塊に付与して跳び降りる。

 

 ドゴォン!!!

 

 ガチャ

 

「………?」

 

 おう、猫耳どうした?そんな口をあんぐり開けて。

 

 しばし口を開けていたが、気を取り直した猫耳が吸血鬼をまっすぐ見る。

 

「あの、妹を助けていただき感謝します」

 

 猫耳が吸血鬼に深く頭を下げた。

 

「気にすんな、こっちも色々と試せて楽しかったしな」

 

 分かっていたけど全盛期よりも圧倒的に弱体化している。これは使いどころを間違えると死ねるな。

うん?まだ何かあるのか?

 

「折り入ってお願いがあります。拒否してくれても構いません」

 

 猫耳からさっきの人体実験をする奴らの本拠地を叩き潰しに行くのと協力をお願いされた。

 

 ハァーーーー(クソデカ以下略)

 人間さぁ、どうしてすぐに人の道を外れたがるの?馬鹿か?馬鹿なのか、異世界でも頭のいい奴がことごとく魔物もどきになって惨めな最期を迎えるのに。

 

 あー↑もう!芋蔓式に問題が沸いてくるな!

 だったらいっそのこと根っこを吹き飛ばせばニート生活の近道になるだろ。

 

「あの……ぁっ」

 

「分かった、協力するよ。あくまで俺自身のために」

 

 ほんと、いつになったらかつてのニート生活が手に入るのやら。

 

 吸血鬼は猫耳と握手した。

 

「ありがとうございます。では」

 

「ああでも、行く前に暴れすぎたから少しだけ寝たいんだけど」

 

「早速行きましょう!アイツらを1秒でも早く地獄に叩き堕とす!」

 

「だからお前は!!人の話を聞けえええええええ!!!?」

 

 吸血鬼の悲鳴が夜の街に響き渡る。

 




 名も無き一般吸血鬼(黒カラー)

 容姿は通常の真っ白と真逆の真っ黒。

・吸血鬼がガチで戦闘する時の姿。
・7〜800年前が全盛期だが、当時の聖騎士団長との相打ちにより右眼球以外を喪失して著しく弱体化。
・現在は弱体化+600年の引き篭もりにより30分が限界。
・さらに強力な魔法を使うたびに早く限界を迎える。
・限界を超えると強制解除による大ダメージと魔力が空っぽになる。
・今は短期決戦用に限定。

 メリット
・基礎スペックの向上。
・弱点の耐性を獲得。
・『希釈・濃縮 蝙蝠』の撹乱と質量爆弾が使用可能。

 デメリット
・魔力が大きいので、街に出かけるだけで警報が鳴る。
・向上した魔力を隠せないので『魔力隠蔽』『姿隠し』『音殺』が使用不可。
・魔力の消費が激しいので渇きやすい。
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