輝く星になれたなら   作:ケジメファイア

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未来toFace
日常→変わる


 三冠を得て、日常は変わり始めているように思えた。

 私は何も変わっていないけれど、周囲の視線は東京ダービーからガラリと変わり、それは親友の2人だって例外じゃない。

 変わらないのは、ハニトー。あの子は学園に入ったばかりの模擬レースの時からおかしくなってたし。

 こんな私だから、取材なんて柄じゃない。

 

「これでインタビューは終わりです、ありがとうございましたー」

「ありがとうございました」

 

 生徒会室の応接エリアで頭を下げる記者さんの姿は、かれこれ今日で5回ぐらいは見ている。

 

「マンちゃん、次はどこ……何の誰さん……」

「えーと、あ、喜んで!次の人が今日は最後!」

「ゔぇ、また小一時間あるじゃん」

 

 自らスケジュールを取ってくれていたマンダリンヒーローは、すっかり私のマネージャーさんみたいになっている。

 記者さんを見送って、応接ソファに腰を落とした私の後ろに、2人が体を寄せた。

 

「相当絞られてますわね、わたくし三冠取れなくて良かったのでは」

「コ゛ー゛ル゛」

「失言でしたわ」

 

 余計なことを言い出したのは、ヒーロコール。

 2人の親友は、相変わらず傍に居てくれるけど。段々とニュアンスが変わってきたような気がする。

 以前は3人とも一緒、横一列!って感じだったのに、今は支えてくれている。

 それが嬉しいような、寂しいような。

 前みたいな関係に他人の前では、もうなれない。私が三冠ウマ娘になり、スピーディ会長が暗に私が次期会長になると記者さんに洩らしてからというもの、学園の中でもみんなが私に距離を置くようになってしまった。

 

「私、なれるのかな」

「いつまで弱気なこと言ってんのさ」

「そうですわ!貴女は中央をボッコボコのけちょんけちょんに叩きのめしたのですから!」

 

 なんだかコールのキャラが可笑しい気がしないでもないけど、前からこんな感じだったような気もする。

 

「ソトガケ居なかったじゃん。マンちゃんもそうだったけど、ケンタッキーの方が凄いレースなのは」

 

 世間ではデルマソトガケ不在のジャパンダートダービーは強さの尺度が測れないなんて思われていて。

 本命不在のダービーにはありがちだけれど、勝者や上位組が後にも結果を出さないと、すぐに最弱世代だの言われてしまう。

 掲示板という闇の文化の人たちがそういう謂れをつけている、とも聞いた。

 ならば、勝った私が第一線で、それこそ将来的には海外に行かねば、世代がソトガケさんを除けば弱いなんて言われる。

 ダートのダービーを勝った以上、ダービーウマ娘としての責務があるのだ。

 次はダービーグランプリ。地方の王者である、ということを各地のダービーウマ娘を従えることで表さなければいけない。

 

「流れでなった王様ってこんな気持ち、なのかな」

「大丈夫さ」

「わたくし達も、先輩や中央をけちょんけちょんにして」

 

 私たちは大井の三英傑なんて呼ばれている。

 私は、1人じゃない。

 

「頑張ろうね、マンちゃん。コール」

 

 ソファに背を預けて伸ばして右手に、2人の右手が重なって。

 

「「「えい、えい、おー!」」」

「盛り上がっているところ、失礼する」

「わっ?!」

「会長?」

「いつからそこに?」

 

 仰向けになっていた私の目の前に、会長の仏頂面がぬぅっと、出てきて、ソファがそのままひっくり返ったのは完全にスルーされた。

 1人で寂しくソファを戻して、3人の会話に耳をやる。

 

「コール、マンダリン。黒潮盃、ショウガタップリが出てくる」

「なんかすごく変な名前」

「金沢の石川ダービーウマ娘です。虎柄のメンコで」

 

 その子、ダービーグランプリにも勿論……出るつもりなんだろうな。遠征をするということは、プレップレース、腕試しとして。

 

「あと、ミック。君に会いたいってウマ娘がさっきそこに居たから連れてきた」

「うぇ……?」

 

 会長の指差した先の、ドアが少し音を立てて動く。

 

「えっと、どうぞ?」

「し、失礼します!」

 

 恐る恐る、ドアの影から出てきたのは門別……ホッカイドウトレセン学園の制服を着た青鹿毛のウマ娘。

 

「オレ、サントノーレって、言います!」

「えっと、転入の子、かな?」

 

 門別から転入にしても、まだ夏の最中だから早すぎるような気もするけれど、よっぽどの好成績を残して、早い段階で南関に来たのかもしれない。

 

「あ、それは、その……転入はしたいです。先生にも、まずは地元で重賞勝ってからって……」

 

 声はオドオドと尻すぼみだけど、目は真っ直ぐこちらを見ている。意志の強い目。まるで、私がレースの時にしているような目だった。それでいて、爛々と輝いている。

 

「オレ、来年からのダートクラシック三冠、取りたいんです!」

「おぉ……言い切ったねぇ」

「まるで入学式のミックさんですね」

 

 少し茶化すような2人の声に、今度は彼女も物怖じせずに語り続けた。

 

「ミックファイアさんの、三冠、番手好位につけてから捩じ伏せるような直線……オレ、あんなふうになれたら!」

 

 既に結構大柄な、いかにもダートで好成績残せそうな恵まれた身体の作りをしているサントノーレさん。

 彼女は、私のことを憧れに思ってくれている。

 きっと、彼女は夢を叶えて南関に転校してくるんだろう。

 

「オレ、なれますか?貴女のような、強い、かっこいい、みんなを照らしてくれる、三冠ウマ娘に……!」

 

 2人と会長に視線をやると頷きだけが返ってくる。伝えたいことは同じらしい。

 一歩、立って向かい合っていたサントノーレさんに小指を出してもらって、ゆびきりげんまん。

 それは、私がメテ姉にやってもらったように。言葉のおまじない。言葉は、形になる。言い続けていれば、叶うきっかけになる。

 

「そう思える気持ちがあれば、みんなゲートに立てる」

「あとは走って、掴み取ろう」

「待ってるよ、大井で」

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