食事を終えて、食器やフライパン等を聡子さんと一緒に片付けた後に、食後のお茶を三人で飲む。
『……』
「……」
「……」
少し熱いくらいのお茶をゆっくりと少しずつ飲む。……誰も喋らない。けど、食後のこのまったりした時間を味わうのも家族団欒の一つだと思う。
ちらりと、二人の様子を見る。聡子さんはにこにこしながらお腹を擦っているし、奏ちゃんは俯きながらスマホを弄っている。……うん、こんな時間も悪くない。
『……』
「……」
「……」
前言撤回。めっちゃ気まずい。なんで誰も喋らないんだよ! もう30分はこの状況なんですけど!?
ちらりちらりと助けを求めるように聡子さんを見るも、聡子さんはにこにこしながらこちらを見るだけでなにかする様子はない。
奏ちゃんにいたってはずっとスマホを弄っているだけ……いや、たまにこちらをちらちら見ている。
……もしかして俺待ち? 俺待ちなんですか? いやしかし俺はウィットに富んだ話なんて出来ないし、少女とパーフェクトコミュニケーションを取れるほどの人生経験はない……くっそ、どうしたら……!! ええい、ままよ!!
『あー……その』
「は~い?」
「……!」
なんだ二人してその待ってましたみたいな返事は。奏ちゃんに至ってはいそいそとスマホをしまっているじゃないか! ……うん、行儀が良くて大変よろしい。
俺は前の世界よりは遥かに性能が良い電脳を働かせる。……外に出掛けるのは無理。昼寝……はダメだ、せっかく二人との距離を縮めるチャンスを無駄にしたくない……なら、これしかない!
『良かったらシアタールームで映画を見ないか?』
デートの定番らしい映画! これなら最悪無言でも、気まずくならないはず!
「いいですよ~」
「……ん……」
二人は頷いて立ち上がってくれた。よかった、外さなかったらしい……って。
『そ、聡子さん?』
「ささ、まだ慣れないでしょうし連れていきますよ~」
俺の手を取り立たせたあと、腕を抱き締めてくる。ちょ、奏ちゃんの前でそれはまずいんじゃ……。
「……こっち……」
なんて心配したがどうも杞憂だったらしい。俺の服の裾を摘まんで引っ張ってくる。うーん可愛い。……聡子さん、笑みを深くして強く抱き締めるのは止めてください。張り合わないでぇ……。
腕を極められ、裾を引っ張られながらえっちらおっちらとシアタールームに向かった。
『さて、なんの映画見ようか?』
「でしたらこれなんていかがです~?」
シアタールームに入って備え付けのソファーに座りながら二人に話しかける。申し訳ないが、この世界の映画は全然わからないため二人に任せるしかない。
俺の意図を察してか、リモコンを操作して画面に映画一覧から一つ選んで表示させる。
『実写版マッチを売る幼女……? 俺はいいけど奏ちゃんはどう?』
「……や……」
「え~泣けるのに~」
おっと、流石に子供っぽすぎたのか拒否されてしまった。ふーむ、ならば……
『じゃあ、奏ちゃんはなにが見たいのかな?』
「……これ……」
聡子さんからリモコンを受け取って、同じように画面に表示させる。こ、これは……!
『
どう見ても七つの珠を集めるのがいつの間にかついでになってしまい、バトルがメインになってしまった超名作のアレだ。
「……めいさく……」
「たしかにそうだけど~……」
だけど正直、マッチを売る幼女よりはこっちが見たいかなって……まあ、ここはお互いの意見を聞いて、両方見ようじゃないか。
そう提案すると二人は素直に頷いてくれたので、まずは奏ちゃんおすすめの珠龍Zを見ることにする。
聡子さんが手慣れた様子でリモコンを操作すると、シアタールームが薄暗くなる。……おお、ほんとの映画館で見てるみたいだ。こっちの世界で見る初めての映画だしめっちゃわくわくする。
「……はじまる……」
「映画見るのも久しぶりだからわくわくするわ~」
……いつのまにか俺の手を両手で擦ったり、揉んだりしている聡子さんを努めて無視して、映画に集中する。……あれ、奏ちゃんさっきより距離近くない? さりげなく太ももに手を置いてない? 撫でてない?
[【略奪から始まる】母親が男連れてきたpart2【恋もあるよね】]
68:スレ主
パパと食後の映画鑑賞とかこれもう実質デートだよね
69:名無し
なに言ってんだこいつ
70:名無し
ママはどうしたママは。ええ?
71:スレ主
ママはパパの隣にいる
72:名無し
保護者同伴デートとかキッツッッッッ!!
73:名無し
やーいマザコーン
74:名無し
というか、保護者同伴じゃなくて子供連れてのデートなんだよな
75:名無し
優しい……しゅき
76:名無し
一人で留守番させるのは可哀想だからって、子供連れていくの提案してくれるんだよね……。
77:名無し
で、ちょっとだけ残念そうにしてたら耳元でこう囁かれるんだ
78:名無し
「夜は二人っきりで寝ような」
79:名無し
さすが私のパパだ
80:名無し
いや、私のパパなんだが?
81:スレ主
私のだよ!!
82:名無し
で、映画デート(笑)してるスレ主はなんでここにいるん?
83:スレ主
いや、暇だからスマホ触ってる
84:名無し
そういうとこほんと嫌われるぞお前
85:名無し
いるよな、興味ないのかずっとスマホ弄るやつ
86:名無し
家でも映画館でもマナー悪いからほんと気を付けろよ
87:スレ主
だって今見てる映画、実写版マッチを売る幼女だぞ?
88:名無し
うっわ
89:名無し
でたわね
90:名無し
なんでそれをチョイスした! 言え!!
91:名無し
キッツッッッッ!!
91:スレ主
私じゃねえよ、母親のチョイスだよ
92:名無し
お前の母親のセンスどうなってんだよ……
93:名無し
なにその映画?
94:名無し
説明しよう!! 実写版マッチを売る幼女とは!!
毒親から寒空の下、マッチを売ることを強要された幼女が優しい青年に助けられて、一つ屋根の下で幸せに暮らすお話である!!
95:名無し
悪くなさそうじゃん。普通に見てみたい
96:名無し
開始2分で幼女は毒親から解放されて青年の家に行くがな!
97:名無し
は?
98:名無し
以降118分はずっと幼女が青年に、ずっと甘やかされる日常風景が垂れ流されるだけ! 山も谷もない!
99:名無し
まあ、刺さる人にはめっちゃ刺さるらしいけど……
100:名無し
おにろり界隈でも賛否が別れたらしいぞ
101:名無し
まあ、家族で見るものじゃないわな
102:名無し
実写版マッチを売る少女は名作だるぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
103:名無し
↑母親のレス
104:名無し
これはスマホ弄るのもやむ無し
105:名無し
しかたないね
105:スレ主
でしょー? パパも死んだ目で見てるしね
106:名無し
お前それでいいんか?
107:名無し
可哀想に……
108:スレ主
その点、私が選んだ映画は楽しそうに見てた辺り、やっぱパパは私と結ばれるべきなんだよね
109:名無し
……
110:名無し
……
111:スレ主
なんだよ
112:名無し
いや、実写版マッチを売る幼女を選ぶ母親の娘が選ぶ映画とか……ねえ?
113:名無し
実写版ヒツジ少年とかな
114:名無し
それ調教モノAV!!
115:名無し
もはや映画ですらねえwww
116:名無し
でも名作だよな。よくお世話になったわ
117:スレ主
ちげえよ! 珠龍Zだよ!!
118:名無し
なんでだよ!!
119:名無し
そこはふたりはプリンスだろうが!!
120:名無し
ただでさえ女が珠龍見てるのきついっつうのに……
121:名無し
これだから陰キャオタクは
122:名無し
自分の娘が男児用アニメ見てるとかいやぁきついっす
123:スレ主
でもめっちゃ楽しそうに見てたぞ。戦闘シーンとか食い入るように見てたし、ラウクが最終形態になった時の口許がカシャシャッって隠れるシーンは興奮してかっけー! って言ってたし
124:名無し
まじかよ……
125:名無し
オタクに理解ある
126:名無し
さあ、はじめようか!! のシーンだよな。あそこ好きとかパパさんセンスあるじゃん
127:名無し
やばい、まじでそんな男いたんだ……パパさんと結婚してえ……
128:名無し
オタク趣味に理解あるパートナーっていいよね……
129:スレ主
そんなパパは私の耳元で他にもあるなら、またママがいないときにでも見ようなって言ってくれたんだ……
130:名無し
いいなー
131:名無し
いいなあ。私の旦那は子供生まれる前に全部処分しろよって言ってきたわ
132:名無し
ざまあ
133:名無し
ざまあ
134:名無し
趣味位は許してほしいよな……
135:名無し
やっぱ二次元しか勝たん
136:名無し
いや、セクサロイドしか勝たん
137:スレ主
パパの太もも撫でてたら、めってされてスマホ弄り怒られた。じゃあなお前ら
138:名無し
なにしてんだおまえ!!
139:名無し
私のパパだぞ!?
140:名無し
ちょっと私の旦那様にセクハラしないでくださる?
141:名無し
私の息子ちゃんになにしてるのかしら?
142:名無し
くっそ、私も太ももとか尻撫でて、めってされてえよぉ
143:名無し
めっ
144:名無し
≫143氏ね
いやあ、もうこんな時間か……時間が過ぎるのはあっという間だなぁ。……嘘です。最後の二時間は10分が1時間に感じられましたわ……なんだよあの映画……。
珠龍Zは正直めっちゃ面白かったし、俺の好きなキャラに似たのがいたからかなり楽しめた。まだまだ劇場版の作品はあるみたいだし、今度奏ちゃんと一緒に見よう。
『さて、そろそろ良い時間だし……二人ともご飯にする? それともお風呂?』
とりあえず二人が勧めてきた映画は見れたし、時刻はもう6時くらいだ。さっさと食事や風呂を済ませて奏ちゃんを寝かせないと……。
「じゃ、じゃ海さんで~」
「!?」
なに言ってんだ聡子さん……奏ちゃんがびっくりして二度見してるぞ……。
『はいはい、俺はご飯でもお風呂でもないので却下』
「え~…」
『バカ言ってないで夕飯どうするか決めるぞー。どうせなら豪勢に寿司とかどうだ?』
「却下」
「だめ」
即答!? え、夕飯も俺が作るの!? そんなレパートリーないよ!?
『や、野菜炒めとかになるぞ……寿司とかの方がよくないかー……?』
「わ~! 私、野菜炒め大好物なんですよ~! 海さんの野菜炒め楽しみ~!」
「野菜ましまし」
『絶対嘘だろ……あと、奏ちゃんそれは違うよ?』
……まあ、手料理を喜んで食べてくれるから、作り甲斐あるからいいんだけどね。しゃあない、また頑張りますか!
俺はまた二人を喜ばせるために腕捲りしながらキッチンに向かうのであった。
『……なにか言うことは』
「……」
「……」
ーー二時間後、そこには半裸の俺に説教される、身体にタオルを巻いただけの姿で正座した聡子さんと奏ちゃんの姿があった。
誤字脱字報告ありがとうございます!本当に助かりました!
平日はどうしても投稿が2日か3日に1回のペースまで落ちてしまいます……申し訳ありませんがご了承ください。
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