結局、おままごとは中止になってしまい、大人しく二人でテレビを見ることになった。
うーん、飽き性なのかねえ……と隣に座り、くっついて離れない奏を見ながら思い悩んでいるとテレビを見ている奏に声をかけられた。
「ねえパパ」
『ん? なんだい』
テレビの中でトークを繰り広げている女芸人達から目を離さず、独り言のように奏は呟いた。
「ママのどこを好きになったの?」
『おっふ……』
来ちゃった、ついに来ちゃったよ! そりゃ気になるよな、男が希少な世界かつ美醜が逆転している世界で、世間一般ではかなり不細工な母親が男を連れてくるんだから。
『あー……それはだな』
「うん」
たしか聡子さんと決めた
『世界で一番、俺を愛してくれると確信したからかな?』
「確信?」
『そうだよ』
俺の脳内で必死になって作り出したラブストーリーではそういう事になった。よし、無難かつ深い理由……のはず!
「どういうとこで確信したの?」
あとで聡子さんと口裏会わせないとな……などと思っていると、またもや奏から質問が。
『聡子さんはね、毎日俺に会いに来てくれて毎日告白してくれたんだ。……その熱意に絆されちゃった』
「ふうん……」
あれ、この理由じゃ不満ですが!? なんだか釈然としない様子で足をぷらぷらさせている奏に、俺は内心焦りながらも感づかれないようにテレビから視線を動かさないようにする。
「ママはさ」
『うん』
「不細工だよね」
『奏』
「悪口じゃないよ、客観的に見た事実ってやつ」
反射的に奏の顔を見てしまうも、そこには初めて会ったときのような、世界がひどくつまらなそうな目をした奏がテレビを見続けていた。
ーーそこには、俺からみたら普通に綺麗な女性が、
「私も不細工だってちゃんと自覚してる。ママだってそう」
『それは……』
「事実だから気にしないで。それなのに、ママがパパみたいな人と結婚できるのが不思議なの」
あまりに重い話に、俺はつい黙ってしまう。これは軽く流していい話ではない。
『……もしかして、さっきのおままごとで色々考えちゃった?』
「……」
……図星か。恐らく、
『……正直に言うと、パパは見た目は大事だと思う』
「……うん」
『人は見た目じゃないとか、中身が大事だって言う人はいるけど、それでも見た目が大事だと思ってるよ。だって、初めて得るその人の情報は見た目だからね』
これは前の世界でも今の世界でも変わらないと思う。目で見て耳で聞いて手で触れることで、その人の事がだんだんわかっていくのだから。
『でも、それはその人の入り口……玄関を見ているだけでしかないんだよ』
「玄関?」
『そう。奏は家の玄関をみてこの家がどんな家かわかるかい?』
「ううん、わかんない」
傍目から見たら綺麗な家でも、中に入ったらゴミ屋敷なんてよくある話だ。
奏はついに視線がテレビから外し、俺の顔を見ている。
『だからこそ、中に入って家の中を見なきゃいけないんだ』
「それだったら見た目が悪い……玄関が汚い家なんて中身すら見たくないんじゃないの?」
『そうだね。でも、頑張って綺麗にしてるなとわかる家なら?』
「うーん……わかんない……」
いまいちピンと来ていないようで、奏は首を傾げている。……ごめん、説明が下手でごめん……。
『つまり、玄関が汚いけど綺麗になるように努力してる人の家なら、中を見てみたいと思えるんだよ』
「……」
不細工なのはしかたない、しかたないからといって努力もしない人は中身に興味すら抱かれない……という話なんだが、伝わったかな? 伝わってくれ!
『聡子さんはね、努力して身だしなみを整えてお化粧もして少しでも綺麗になるように努力してた。だから俺も興味を持ったんだよ』
「……なんとなく、わかったかも」
どうやら伝わったらしい……よかったよかった。
俺はほっと一息ついて、奏の頭を撫でる。
『だからね、奏も自分が不細工だからって努力を怠らず頑張って自分磨きをするんだよ?』
「ん……じゃあ、私も自分磨きしたらパパと結婚できる?」
くすぐったそうに頭を撫でられている奏が遠慮がちに聞いてくる。
『はっはっはっ、そうだなあ……俺がママを好きになったのは見た目だけじゃないからなぁ』
「じゃあ、どこを好きになったの? おっぱい?」
ずいぶん突っ込んで聞いてくるじゃないか……。ま、まあ、たしかにあのおっぱいは魅力的だ。すごく魅力的だけども。
『いやいや、おっぱいだけで決めたんじゃないよ。奏もママの良いとこ知ってるだろ?』
……正直、まだ会ったばかりで聡子さんの良いところは数えるところしか知らない……故に! あえて娘である奏ちゃんに言わせてそれに同調する作戦! 完璧だぁ……。
「お金持ち」
『そう、お金持ちだから……って違う違う、金目当てじゃないよ!?』
「社長」
『ほとんど同じ意味だよね!? 奏? ママのいいとこ他に一杯あるよね!?』
あかん、作戦失敗……!! これに同調したらただの金目当ての下衆野郎じゃないか……!
「……優しいところ?」
『そうそれ! 聡子さんは優しかったんだよ! そういうところにも惹かれたんだ!』
ようやく出てきたそれらしい回答に全力で同調する俺。いいじゃないか、優しいのは大事なポイントだ。
「あとは……私を一杯愛してくれる」
『おお……』
少しだけはにかんで答える奏に、俺はつい感動してしまう。子供に
「パパも一杯愛された?」
『そうだね、一杯愛されたから俺も聡子さんを愛するようになったかな』
……言っててなんか恥ずかしいな、俺。ああ、本気で俺を愛してくれる人は……天道さん、かな。
天道さんの笑った顔をつい思い出してしまい、頬が熱くなるのを感じる。天道さん……早く会いたいなぁ。
それを見た奏が、恐らく聡子さんの事と勘違いしたのだろう腕に抱きつきながら色々聞いてくる。
「ねえねえ、ママからのプロポーズはどんなのだった?」
『ぷ、プロポーズの言葉!? そ、それはママに聞いてほしいなぁ』
あかん、これ以上深堀されたら絶対ぼろが出る! 俺は慌てて聡子さんに聞くように促すも奏は止まらない。
「いいじゃん教えてよー。初デートの場所は? どんな出会いだったの?」
『あばば……』
俺がしどろもどろになっていると、トーク番組がいきなりニュースに切り替わった。おや、緊急ニュース?
【緊急ニュースです! 先程、株式会社男魂製作所より新世代セクサロイドが開発されたと発表がありました!】
「ママの友達が働いてるとこだ」
『そうなのかい?』
『うん。天道さんって人』
「ほ、ほーん……」
天道さんと知り合いだったんか奏。……やばいな、下手に名前を出したら不味いことになりそ……ちょっと待て、新世代セクサロイド?
俺があっと思う前に、ニュースキャスターがある動画を画面一杯に表示させた。
そしてーー
【いやあ、リアルですよね!表情も実に滑らかで本物の男性みたいです。えー、番組の予定を変更して新世代セクサロイドについての情報をお伝えします】
ーー画面一杯に、
「パ……パ……?」
先程まで笑顔で俺を質問攻めにしていた奏は、呆然とした表情で俺を見上げていた。
今回は文字数少な目ですいません。
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