『あー……あの、天道さん?』
「や」
『いい加減、服をですね……』
「やー!!」
あれから一日中、それはもう
『これ以上したら壊れちゃいますよ……俺が』
「壊れても私が治すから!!」
『なんて力強い言葉……!』
さすがボディの制作者である。でも違う、そうじゃない。
「さあ、次はこの
櫓立ち、通称駅弁。正面から相手を抱き抱えてずぽずぽする体位だ。うーん、えっち! 俺の腰が唸るぜぇ……って違う。ヤりたい、すごくヤりたいが今は我慢だ。
全裸かつ蕩けた顔でタブレットを見せてくる天道さんの手から、それをぱっと取り上げる。
「わ……♡ もう、すぐしたいのかい? しょうがないなぁ……♡」
『違うって! これからの事を考えなきゃでしょー!!』
悲しいかな、天道さんは社会人で俺は商品なのだ。いつまでもこんな夢みたいな時間に、浸っているわけにはいけない。
「これから……ああ、もう大丈夫だ。君をもう手放したりしないよ……ずっと、ずっと一緒にいよう海君……」
『あーもうだから! それを今から二人で考えなきゃ……!!』
だめだ、完全に頭の中がドピンクになってやがる!!
どうすんだこの性欲モンスター! なんて頭を抱えようとした時、凛とした声が俺の耳元で囁かれた。
「だから大丈夫だ。その件はもう手は打ってある」
「え……?」
驚いて顔を見ると、天道さんはまるで氷のように冷たく、研ぎ澄まされた知性を宿した表情を浮かべていた。
「なにも二週間、私はただ暇を潰していた訳じゃあない。今後発生しうる問題の洗いだしとその解決をしていたのだよ」
例えば、会社から君の所有権をもぎ取るとかねと、なんて事のないように天道さんは呟く。
「まだ解決してない問題もあるが……それはもう手は打ってある」
『す……すごい……』
まさか俺のいない間に、問題解決に奔走してくれるなんて。……感動で涙が出そうだ。
「だから……もう少しだけ、もう少しだけ私を抱いてくれないか……? ご褒美頂戴……♡?」
耳元で熱い吐息を吹き掛け、俺の頭からうなじ、腰にかけてゆっくり手を滑らせて抱き締めてくる。……ならいっかぁ!! ようし俺頑張っちゃうぞー!!
また一日中ヤりまくった。後悔はしていない。
『あのー、天道さん……?』
「なんだい、海君」
『このボディはいったい……』
次の日、ヤり疲れて眠っていた天道さんを起こすと、めちゃくちゃ謝り倒されたあと電源を落とされた。二週間の間、何回も落とされて慣れたしまったがやっぱりこの思考能力が欠落していく感覚は気分の良いものでないなぁ……。
そして目を覚ましたら見慣れたボディではなく、なんというか……人形みたいな、ロボットみたいなボディになっていた。
「介護用アンドロイドのボディだよ。接続はシステム上問題ないようだが……どうだい、違和感はあるかい?」
『違和感しかないです……なんかもう、やばいです』
前のボディと比べると雲泥の差……例えるなら、デカイ着ぐるみを着たような感覚。五感がすごく鈍っている上、反応速度もワンテンポ遅い感じがする。
「そうか…そうだよな。すまない……さすがにあのボディを外に出すわけにはいかなくてな……許してくれ」
申し訳なさそうに目を伏せる天道さんの頭撫でる。しかし、なぜこのボディに変える必要があるんだろう?
「んう……さて、そろそろ行こうか」
『え、このボディで行くんですか? というかどこに……?』
「君の生まれ故郷……チュポン株式会社さ」
なんでこの世界の会社名はちょっと気持ち悪いんだろうか……。
「ここまででいい」
「わかりました」
『……』
俺と天道さんはタクシーから降りる。初めて研究所を出て、初めて外の世界を生で見て感動……しないなぁ。あんまりにも前の世界と変わらないオフィス街……。
「さて、ここから少し歩くが……海君?」
『……あ、すいません。ちょっと周りを見てました』
「周り……ふむ、なにか珍しいものでもあったかい?」
『いえ、前にいた世界とそんなに変わらないなと』
白シャツとカーキ色のパンツを身に纏った天道さんはそうなのかい? と不思議そうに周りを見ていた。うーん……改めて見ても天道さん可愛い……じゃなくて。
『そんなことより、目的地はどこなんです?』
「ああ、こっちだよ。ちょっと特殊な場所でね……」
そういって俺の手を引いて先導してくれる。なんかちょっと……デートみたいでドキドキする!
「……なあ、海君」
『はい、なんですか?』
俺は負担にならないように歩幅を揃えるのに苦労していると、こちらを見ずに天道さんは声をかけてきた。
「君を開発……したプログラマーなんだが、チュポン株式会社の代表取締役でね」
『偉い人なんですね……任せてください。AIのフリはもうプロ級ですよ!』
「いや、無断ですまないが、君の事はもう説明してあるんだ」
『あ、そうなんです? ……俺、分解されたり実験材料にしないですよね……?』
「ああ、その辺りは大丈夫。君に危害を加えないようちゃんと言い含めているし、数少ないこの世界でも信用に足る人物だ」
それなら俺から言うことはない。しかし、この世界で信用できる人少ないんですか天道さん……?
「ただ……」
『ただ?』
前を歩く天道さんの足が止まる。握っていた手も先程より強く握られているが……どうしたのだろうか。
「見た目が……」
『見た目が?』
「私と同じくらい……その……」
……ああ、つまりこの世界で言う不細工なんだろう。しかしそれは俺には全く問題ない。むしろ大歓迎なのだが……それは天道さんも知っているはずなんだがどうしたのだろう?
『大丈夫ですよ。むしろ大歓迎です、目の保養になりますから!』
安心させるためにそう伝えると、天道さんはいきおいよく振り返って俺を睨んできた。
「それが問題なんだ!! もし、もし君があいつを好きになってしまったら……わ、私は……!!」
『うお、びっくりした! はっはっはっ、なんだそんな事を心配してたんですか?』
俺に笑われて、顔を真っ赤にして上目使いで睨んでくる。……やっべ、めっちゃぞくぞくする……!
「だ、だって君は! ……わ、私の……その、見た目に一目惚れ……したと……だったら……その……」
言ってて恥ずかしくなってきたのか、徐々に声が小さくなってもじもじし始める天道さん。……ふむ、ここで茶化すのは違うな。しっかり俺の気持ちを伝えねば。
『天道さん。たしかに俺はあなたの見た目に一目惚れしましたが、それだけじゃないんですよ。ちゃんとあなたと話し、その人間性に触れて惚れ込んだんです』
「……ほんと?」
『ええ、だから心配無用ですよ。俺を信じてください』
そういって俺からも天道さんの手を握り返す。この体では微笑む事はできないので、少しだけ身を屈ませて目を合わすことも忘れない。
「……っ♡ うん、信じてるよ海君……疑ってごめんね……?」
よし、天道さんの瞳にハートマークが浮かんだ! これでよし! ……あーやば、思った以上に恥ずかしいな……。
手を握るだけでなく、指まで絡めて少し強めに握り合った手。なんだか気恥ずかしく、目的地に着くまで無言になってしまったが道中は心地良かった。
目的地のビルに入ると、天道さんは受付の人を無視してずんずんと奥に進んでいく。特になにも言われないため、俺も黙ってついていくとあっという間に最上階に着いてしまった。
「
「は~い。どうぞ~?」
ノックもせず部屋の外から声をかけると、両開きの扉が勝手に開いた。なんか凄い。
そのまま入っていく天道さんについて、俺も中に入る。ーー大きなデスクに向こうに、その人はいた。
「連れてきたぞ。いいか、くれぐれも失礼のないように……」
「わかってるよ~。あなたが海君ね? 初めまして、私は百地
ーー肩甲骨辺りまで伸びた少しだけウェーブの掛かった薄茶色の髪。目は少し垂れ気味で、優しげな雰囲気を醸し出しているが目尻のほくろが実にエロい。そして頬は化粧で薄く色づき、唇はグロスで艶やかで瑞々しい。では体はどうか? 両手を広げることで歓迎の意を表しているのだろうが、俺は広げた瞬間たゆんっと揺れたのを見逃さなかった。それはつまり天道さん以上のーー。
「……あら~? 海君、どうしたの? 緊張してるの~?」
「……海君? どうしたんだ?」
『く』
「く?」
「く~?」
『くっそエロい……』
「海君!?」
「あらあら~?」
こんなんしゃーないじゃん……俺悪くないじゃん……。
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