メスガキすくな   作:やめちくり〜

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おにーさん、ざーこ♡

 

 二〇一八年六月 宮城県仙台市 相沢第三高校

 

 伏黒恵は特級呪物の回収のため訪れていた。

 だが、その特級呪物は彼の担任教師である五条悟に聞かされていた場所になく、ひと仕事増えてしまった。

 

 そしてその特級呪物をやっと回収できたと思えば、呪霊の急襲により、彼に付いてきていた青年──虎杖悠仁の手に渡る。

 

「呪いは呪いでしか祓えない」

「はやく言ってくんない?」

「何度も逃げろっつったろ」

 

 呪霊の攻撃により、吹き飛ばされた虎杖に言う。そんな伏黒に横たわりながら言い返す。

 

「呪力がねぇオマエがいても意味ねーんだよ」

 

 伏黒は虎杖に端で呪霊により気絶した彼の先輩を連れて逃げるように提案する。だがその提案に、「はい、そうですか」と頷ける人間ではない。虎杖は死んででも逃そうとする伏黒を助けるために思案する。

 

「なあ、なんで呪いはあの指狙ってんだ?」

「喰ってより強い呪力を得るためだ」

 

 伏黒の返答を聞いて、この状況を打破できる案が思い浮かんだ。虎杖はズボンのポケットにしまっていた特級呪物『両面宿儺』、その指を取り出して口元へ近づける。その光景を見た伏黒は止めるように言うが、既に手遅れ。指は虎杖の口の中へ入り込んだ。

 

 音を立てて虎杖へ迫り来る呪霊。しかしその攻撃は彼に届く前に消え去る──他ならぬ虎杖、いや宿儺の手によって。

 

「ぷぷっ」

 

 宿儺の口から漏れる甘い笑い声。

 

「キャハハハハハハハハハ!!!!!!!」

 

 夜の学校に少女の笑い声が響き渡る。

 

「久しぶりのお外だぁ♡」

 

 宿儺は甘ったるい、イラっとくる声で歩きながら辺りを見渡すと呪霊によって頭から血が流れていた伏黒が視界に入る。すると、宿儺はニヤっと口角を上げる。

 

「ねぇねぇ、おにーさん。もしかしてあの虫に負けちゃったの?」

 

 伏黒は馬鹿にするような口調の宿儺への苛立ちより困惑が勝つ。

 

 両面宿儺。それは呪術全盛の平安時代に、当時の呪術師たちが総力を挙げて討伐しようとしたが、誰も敵わず敗れたとされている。 己の快・不快のみが生きる指針としている、紛うことなき呪いの王。そして伝承では男と言い伝えられている宿儺。しかし、いま伏黒の眼前にいるのは──

 

「おにーさん、よっわ〜♡ ざーこ♡ ざーこ♡」

 

──紛うことなきメスガキであった。

 

「情けないね♡ 恥ずかしくないのぉ♡」

 

 理解が追いつかない。

 男の肉体を持つ者からは信じられないほどに甘ったるい声を発する眼前の人物が宿儺? いやいやそんなわけない。

 

「ねぇ、そこのよっわ〜いおにーさん♡ わたし、久しぶりのお外で気分がいいの。相手してくれる?」

 

 相手にならないだろうけど♡ と付け加えて伏黒を煽る。そんな彼は勝利する(わからせる)ことができるんじゃないか? と一瞬思ったが、宿儺から発せられる禍々しい呪力に当てられて、即座にその思考を破棄する。

 

 伏黒は自死を覚悟で術式を使用する──寸前に宿儺の腕が自身の首をガッと絞める。

 

「えぇ?」

 

 驚きで声が漏れる宿儺。

 

「人の体で何してんだよ、返せ」

 

 宿儺の甘い声と変わって男の──虎杖の声に変わる。

 

「え? なんで動けるのぉ?」

「? いや俺の体だし」

「なにそれぇ。 意味わかんなーい」

 

 一人の体から青年と少女の声が出るという不思議な現象を目の当たりにし、思考が停止していた伏黒は、すぐに切り替えてもう一度術式発動の準備をする。

 

「動くな、オマエはもう人間じゃない」

「は?」

 

「呪術規定に基づき、虎杖悠仁、オマエを──"呪い"として祓う(殺す)

 

 伏黒はそう宣告する。

 

「いやなんともねーって。それより俺も伏黒もボロボロじゃん。早く病院行こうぜ」

 

 しかし虎杖は何事もないことをアピールするように両手を上げる。伏黒はそんな彼を見て、声質的に明らかに宿儺ではなく虎杖であると分かるが、史上最強と恐れられている呪いの王であるならば、声を意図的に変えることもできるのではないか? と思い、確信を得られない。

 そんな時、伏黒の背後から声がした。

 

「今、どういう状況?」

「なっ、五条先生!!」

 

 現れたのは伏黒の担任であり、現代最強の術師――五条悟。

 

「どうしてここに?」

「来る気なかったんだけどさ。さすがに特級呪物が行方不明となると上が五月蝿くてね。観光がてら馳せ参じたってわけ。

 で、見つかった?」

「……」

 

 五条の問いに無言になる伏黒。そんな中、虎杖があのー、と声をあげて割り込む。

 

「ごめん、俺、それ食べちゃった」

「……」

 

 その衝撃的発言に五条は困惑して一瞬、声がでなくなる。そして事実か確認を取ると、二人揃って肯定する。

 五条は一応、自分の眼で虎杖を確認する。

 

「ははっ、本当だ。混じってるよ。

 体に異常は?」

「特に……」

「宿儺と代われるかい?」

「スクナ?」

「君が喰った呪いだよ」

「あぁ、うん。多分できるけど」

 

 代われることが分かった五条は十秒間宿儺と代わってくれ、とお願いして、ここに来る前に購入した『喜久福』を伏黒に預ける。

 

「でも……」 

 

 最初渋る虎杖であったが、

 

「大丈夫、僕 最強だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 始まった五条(クソガキ)宿儺(メスガキ)の戦闘。

 

 宿儺は攻撃は避けられ、余裕な顔している五条を見て地団駄を踏む。そしてその間に五条に吹き飛ばされた。

 

「(ちょっと、速すぎ! ……いや、違う?)」

 

 宿儺は異様な速度で動く五条に疑問を持ち、思考する。

 

「ホント、呪術師ってめんどくさ〜い」

 

 宿儺は体勢を低くして、地を蹴り上げ、思いっきり攻撃する。それにより、五条のいたところに瓦礫が飛び散り、煙が立ち込める。

 

「あはは!! よゆーな顔してて負けるなんてだっさ〜い♡」

 

 高笑いする宿儺であるが、五条は何事もなかったように棒立ちでいた。

 

「7、8、9…そろそろかな」

 

 宿儺は突如、意識が抑え込まれる感覚に襲われる。体を動かそうにも上手くいかない。

 

「(えぇ!? 乗っ取れないんだけど!! 虎杖とかいう、こぞー! ぜっ〜たいに、ゆるさない……!!)」

 

 宿儺はキィー!! と高い声で叫びながら虎杖と肉体の主導権を交代させられた。

 

 

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