メスガキすくな   作:やめちくり〜

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遅くなって悪いと思って


こぞーがモテるワケないじゃーん♡

 

「不合格だ」

 

 夜蛾は祖父の遺言のため、呪術を学びに来たと、他人の指図で呪いに立ち向かうというようなことを伝えた虎杖にそう言って切り捨てた。

 そして次の瞬間、夜蛾の横にいた呪骸が虎杖を襲う。その動きは凄まじく速く、背負っていたリュックで攻撃をギリギリ防いだ。が、あまりの威力、虎杖は衝撃を殺しきれずに後方へ飛ばされた。

 

「窮地にこそ、人間の本音は出るものだ。納得のいく答えが聞けるまで攻撃は続くぞ」

 

 夜蛾が言う通り、呪骸の攻撃は止まない。虎杖は動きを見切れずに、攻撃を受け続ける。

 呪いに殺された人、それを横目に呪いを祓う。呪術師とはそういう不快な仕事。イカれてないと勤まらない。それを虎杖は他人に言われたからここ(高専)に来たと言う。

 故に夜蛾は問う。自身が呪いに殺された時、祖父のせいにするのか、と。

 

「呪術師に悔いのない死などない。今のままだと大好きな祖父を呪うことになるかもしれんぞ。今一度問う」

 

――君は何しに呪術高専に来た?

 

 虎杖は問われた問いを自分なりに噛み砕く。自分がどうしたいのかと。

 

 そして自分の考えが纏まると同時に襲いかかってきた呪骸を全身で受け止めて拘束し、その反動で尻もちをつく。

 

「"宿儺を喰う" それは俺にしかできない」

 

 開いた口からは虎杖の想いが吐露される。

 使命から逃れたとしても、宿儺による被害が出る。自分には関係ないと逃げたくない。生き様で後悔したくない、と。

 

「それに、まだ宿儺がどんな奴かは五条先生からしか聞いてない。平安時代にたくさんの人を殺したって。でも、俺はまだ宿儺のこと知って少ししか経ってないけど、とてもそんなことする奴だとは思えない」

 

 虎杖は夜蛾との面談の前に宿儺から女に負けたのが悔しいから男であると言い伝えたということを聞いて、もしかしたら宿儺は人を殺してなんかいないんじゃないかと思った。校舎を一部破壊したのも、伏黒が殺そうとしたから抵抗しただけで、本当はそんなつもりはなかったのかも知れないと。

 

「もし殺していたとしても何かワケがあったんじゃないかって。そりゃあ、どんなワケがあっても殺すのはよくない。でもアイツさ、ガキっぽいんだよ。多分善悪の分別がついてないかも知れない。俺だって間違えることあるし、悪いこともする」

 

 パチンコ行ってるし、と心の中で付け加える。

 

「なら、俺が教えられることは教えてやろうってさ」

 

 虎杖は呪骸を抱えたまま、立ち上がる。

 

「だから俺は宿儺と仲を深めて、どんな奴かを知りたい。何も知らないまま死ぬなんて絶対後悔するから」

 

 真っ直ぐな瞳が夜蛾を捕らえる。そして思う。あの宿儺との仲を深めると言ってのける虎杖は間違いなくイカれている。

 

「悟、寮を案内してやれ。それから諸々の警備の説明もな」

「ん?」

 

――合格だ。ようこそ呪術高専へ。

 

 

 

 

 

 宿儺の生得領域にて。

 

「ぷぷっ、ワタシと仲良くなるって」

 

 ポニーテールをブンブンと揺らして、虎杖のあまりの滑稽さに吹き出す宿儺。

 

「も、もう笑わせなっ、キャハハハハハ!!!!」

 

 骨の山から一発抜き取り、それで床をバシバシ叩きながら大声で笑う。四つの瞳からは笑いすぎにより涙が流れ、腹が(よじ)れる。

 

 虎杖は今、宿儺のことを世間の常識を知らない子ども程度のものだと考えている。主に人を煽る際の言動などが。その言動は虎杖の通学路でよく見かける女子小学生(野生のメスガキ)のようであった。

 その女子小学生(メスガキ)は、サラリーマンを見つければ、『ねぇ、おじさん。今ウチらのことエッチな目で見てたでしょぉ♡』と挑発したり、通学路にいる交通誘導員の人を見れば、『そんな所に突っ立っててヒマなのぉ?』とバカにしている。とんでもないメスガキだ。誰かわからせてくれよ〜、頼むよ〜と嘆く者もいたが、現実は非情。メスガキに勝てる男など存在しなかった。もしかしたら、メスガキに怯える感情から生まれた呪霊がいるかもしれない。

 虎杖は五条との会話から宿儺があの時の女子小学生(メスガキ)みたいだったなぁ、と思ってしまった。

 しかし宿儺は蛆のように湧いているメスガキとは違い、目障りであるならば躊躇いもなく斬るし、美味しそうに女や一部を除いた子どもの肉を喰う。因みに男は食さない。宿儺曰く『汗くっさぁ〜い♡ こんなの食べられないよぉ♡ 『◾️ふ〜が♡』』とのこと。

 

 

「うーん、裏梅のご飯を食べれるのは当分先かなぁ……。

 よしっ! せっかくだから、こぞーで遊ぶかぁ」

 

 宿儺は持っている骨を投げ捨て、立ち上がった。

 

 

 

 

 虎杖、伏黒、五条の三人は新入生の釘崎と原宿で合流した後、虎杖と釘崎の実地試験を行うためにとある廃ビルへ訪れていた。

 

 五条から受け取った呪具『屠坐魔』を手に廃ビルへ乗り込む。

 

 

「あ゛〜ダルっ。なんで東京来てまで呪いの相手なんか……」

 

 釘崎は廃ビル内の階段を登りながら、イライラを隠さずに愚痴を溢す。そんな釘崎に虎杖は呪いを祓いに来たんだろ、と至極真っ当な理由を言う。

 

「二手に分かれましょ。私は上から1Fずつ調べるから、アンタは下から。さっさと終わらせてザギンでシースーよ」

「ちょっと待てよ。もうちょっと真面目にいこーぜ。呪いって危ねーんだよ」

 

 呪術師なりたてホヤホヤの虎杖に言われてカッチーンと来た釘崎は虎杖を蹴り飛ばし、「だからアンタはモテないのよ」と理不尽な捨て台詞を置いて先に行ってしまった。

 

「なんで俺がモテねーの知ってんの!?」

 

 そう叫ぶと、虎杖の頬に口が浮かび上がる。

 

「当たり前じゃーん♡ こぞーはどっからどう見てもモテないと思うよぉ♡」

「うるせーよ宿儺! そう言うオマエはどうなんだよ!」

「あれれぇ〜、真面目に行こーぜとか言ってたのにぃ♡ 今関係ない話するんだぁ♡」

「いや話をそらすなよ」

 

 虎杖と宿儺は道中、言い合いをしながら進んでいると、頭上から両手が鎌状、脚が四本生えている呪霊が攻撃を仕掛けてきた。それを上手く躱し、逆に呪具を振るって片手を落とした。

 

「あぶねっ! 宿儺がうるさいから直前まで気づかなかったじゃねーか!」

「えぇ〜♡ 人のせいにしちゃうのぉ〜♡ だっさぁ♡」

 

 虎杖は宿儺を無視して真っ正面から突き進み、呪霊の脚と脚の間を上手くスライディングして背後に回り込む。そしてすぐさま、ジャンプして呪具で脳天に打撃を与える。その攻撃により呪霊が崩れ落ちる。

 

「ふぅ。うん、動けんね俺」

 

 虎杖は崩れ落ちた呪霊の上に座り込んで安心したように言う。しかし、そこでまた頬に浮かび上がっている口から声が発せられる。

 

「これくらいで動けてると思ってんのぉ? ざっこぉ〜♡」

「またかよ! オマエは少し黙ってろ! コッチは呪術師になって初めての戦闘なの!」

「……」

「あれ? 宿儺?」

「……」

「ちょ、悪かったって。少し言い方キツかった」

 

 虎杖は『呪いの王』だとか呼ばれているが、本当は簡単に傷ついてしまうどこにでもいる女の子(メスガキ)なんだなと思って、言い過ぎたことをシュンとしてしまった宿儺に謝る。

 

「ぷっ……」

「ぷ?」

「ぷっ、ハハハハハ!!!」

「は、はぁ!? なに笑ってんだよ!」

「ホントこぞーはバカで面白いなぁ♡ こんなバカな奴、平安にもいなかったよぉ♡」

「バカバカうるせーよ。もう行くぞ」

 

 虎杖はいちいち煽りを入れてくる宿儺に対して、へいへいとテキトーに返事をしながら釘崎の元へ向かう。そして途中、壁の向こうから呪霊の気配を感じ取り、虎杖は呪霊がいるであろう部分に手を当て、思いっきり壁をぶち抜いた。

 それから、ぶち抜いた壁を剥がして部屋に入り込む。虎杖は子どもを人質に取る呪霊が視界に入るとすぐに呪霊で上手いこと躱し、呪具で呪霊の腕を斬り落とす。腕が切れたことにより、虎杖は自由になった子どもを呪霊から奪い取って抱える。人質がなくなったことにより、釘崎が呪霊に攻撃することが可能になり、無事に祓うことに成功した。

 

 二人は外で待つ伏黒と五条と合流し、伏黒が出番がなかったことに拗ねているのを釘崎がバカにしたり、一緒に飯に行くことになったりと、親睦を深めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記録―二〇十八年七月

   

西東京市 英集少年院

     運動場上空

     特級仮想怨霊(名称未定)

     その呪胎を非術師数名の目視で確認

     緊急事態のため高専一年生三名が派遣され

        

        内一名 死亡 

         一名 重傷

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