『我々の窓が呪胎を確認したのが三時間前程。避難誘導九割の時点で現場の判断により、施設を閉鎖
『受刑在院者第二宿舎』。五名の在院者が現在もそこに呪胎と共に取り残されており、呪胎が変態を遂げるタイプの場合、特級に相当する呪霊になると予想されます』
「(そう言えば、現代の特級ってどんくらい強いんだろう。気になるなぁ)」
宿儺は現代の呪術レベルに多少の関心を抱いており、生得領域内で伊知地の話に耳を傾けている。
『四級が木製バットで余裕。三級は拳銃があればまあ安心。準二級、二級は散弾銃でギリ。準一級、一級は戦車でも心細い。特級はクラスター弾での絨毯爆撃でトントン』
「(へぇー、クラスター弾での絨毯爆撃でトントンねぇ……。こぞーがバカなせいでクラスター弾がどれくらいの威力か分からないから参考にならないケド。ホントつかえねー)」
つらつらと伊知地が述べるが、虎杖の知識が『ヤッベェじゃん』程度のため、詳しく分からなくて愚痴を溢す。
『本来、呪霊と同等級の術師が任務に当たるんだ。今日の場合だと五条先生とかな』
『で、その五条先生は?』
『出張中。そもそも高専でプラプラしてていい人材じゃないんだよ』
「(そう言えば、あの自称最強おじさんって特級だったっけ。ワタシには及ばないだろうけど、あの実力なら平安でもかなり上澄みだろうなぁ)」
宿儺は食事ほどではないが体を動かすのも大好きであるため、千年前に自身を一瞬でも
▽
「闇より出でて 闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え」
伊知地が帳を下ろし、辺りが夜のように黒くなる。
伏黒は『玉犬・白』を出し、三人は扉を開けて寮の中へと入る。
しかし、そこは本来の寮とは別の空間であった。伏黒がこの場が生得領域が展開されたものだと気づいた時にはもう扉がなくなっていた。幸い、玉犬が出口の匂いを覚えているおかげで、何とか脱出できるということで三人は安堵する。
そして移動中に呪霊によって殺された遺体を持ち帰るかどうかで言い争ったり、釘崎が呪霊に連れていかれたり、玉犬が破壊されたり、とハプニングが起こり……
「う あ゛あ あ あ!!」
……虎杖は突如現れた特級呪霊に力を振り絞って左手に持つ呪具を振るった。しかし、視認できない呪霊の攻撃により、左手が斬り落とされた。
「マジか……」
そんな呟きを漏らす伏黒。彼は今絶望の真っ只中で体が強張り、動かすことができない。
「おい宿儺! 力を貸してくれ!」
虎杖は腰に巻いてあるベルトで左腕に巻くようにして止血しながら、宿儺にお願いをする。
「俺が死んだらオマエも死ぬんだろ! まだオマエに聴きたいことがいっぱいあんだよ!」
虎杖の頬から口が浮かび上がる。
「う〜ん♡ どうしよっかなぁ〜♡ まだ切り分けられたワタシの魂は18もあるからなぁ〜♡ まー、別に貸してあげないこともないけどぉ♡」
「なら!」
「でもね、今ワタシに代わったら、この建物が全壊しちゃうよぉ〜♡ まだ力を制御できないからねぇ♡ それでもいいのぉ? そこにいるウニ頭のおにーさん、死んじゃうよぉ? もう一人、女がいたよねぇ? いいのぉ? ねぇ、いいのぉ? 大事なオトモダチが死んじゃっていいのぉ?」
「(コイツ、ちゃんとみんなの心配を……!!)」
虎杖は宿儺にはツンデレ気質があると(勝手に)思っているため、この発言もまた、照れ隠し的な何かだと思い、目頭が熱くなる。それならと、虎杖はこの状況を打破するため、思考する。
と、その時、呪霊が虎杖と伏黒の間に呪力の塊を飛ばす。その威力は凄まじく、地面を大きく抉った。
「伏黒!! 釘崎連れて
虎杖は動かないでいた伏黒を大声で呼ぶ。
「二人が領域を出るまで俺がコイツを食い止める。出たら何でもいいから合図してくれ。そしたら後は宿儺がやってくれる」
その提案に伏黒は待ったをかける。
「できるわけねぇだろ!! 特級相手に片腕で!!」
「よく見ろって。楽しんでる。完全にナメてんだよ、俺達のこと。時間稼ぎくらいなんとかなる」
虎杖はケタケタ嗤う呪霊を見て言った。
「駄目だ……!!」
「伏黒!!! 頼む!」
伏黒は虎杖の顔を見て断らずにその提案に乗ることにした。
虎杖は伏黒が去ることにより、一人で呪霊と対峙することになる。
「宿儺、ありがとな」
「なーに勘違いしてるのぉ? ワタシは貸してあげないこともないって言っただけなんだけどぉ〜♡ どうしても協力してほしいって言うならぁ♡ 後で一つ言うことを聞いてもらう必要があるなぁ♡ もちろん、他言無用だからね?」
「…俺が出来る範囲なら」
「バカなこぞーでも出来るから安心しな♡」
「うるせー」
虎杖は恐怖で震えていたが、宿儺と話して元気が出る。俺にはコイツがいる……と。
虎杖は呪霊を殴りにかかる。しかし、呪力の扱い方が分からない虎杖は呆気なく吹き飛ばされ、後方の壁に激突する。叩きつけられたことにより、壁は蜘蛛の巣状に割れ、瓦礫が飛び散る。
「あ゛っ……が……っ!」
虎杖は激痛を伴うが、呪霊は待ってくれない。一発目よりも広範囲高火力の呪力が虎杖を襲う。壁を突き抜けて、転がるも何とか受け身を取ることに成功した。しかし、更なる追撃が襲いかかる。
「う゛っ……!」
呪霊から発せられる呪力を両腕を突き出し、受け止めようとする。
「ぐ…う゛っ…!」
しかし体がその威力に耐え切れず、後方へと押し出され、受け止めている指が削れていく。
虎杖は指を拾わなければ、喰わなければ、嫌だ、逃げたい、死にたくない、と今までに感じたことない痛みから、ネガティブな思考が過る。
「あ゛あ あ あ !!!」
気合いで押し切ろうとするも、体が宙に浮いて吹き飛ばされてしまう。
「(俺はこんなに弱かったのか…!!)」
虎杖は己の弱さを痛感する。千年に一人の逸材と言われ、特別だと思っていた。しかし、特別なだけで全く強くもなかった。
「あ゛ーー!! 死にたくねぇ!! 嫌だ!! 嫌だぁ!!!」
あまりの辛さから泣き叫ぶ一人の青年。段階を吹っ飛ばしてでの特級呪霊との戦闘。否、戦闘なんてものではなく、一方的な蹂躙。
「(甘えてた…。宿儺がやってくれるからって。甘えてたんだ。俺は情けない。こんなんじゃ、宿儺に何も教えてやれねぇよ)」
流れ出る涙を拭き取り、構える。
「(甘ったれるな! ここで死んでも後悔はないって思える様に、全てを出し切る!)」
残り全ての呪力を拳に込めて眼前の呪霊に打ち込む。が、片手で軽々と受け止められてしまう。
「クソッ!!」
呪霊はバカにするようにニッと笑う。もうここまでか、と思った次の瞬間。
アオーーォォン!!
「(この…鳴き声は…伏黒の合図……!!)」
虎杖の意識は沈み――――
「面白いくらいおバカだね♡ こぞーは♡」
――――
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