ここは『キヴォトス』弱者に口なし   作:GAU-8

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 息抜きで、練習作的なナニカですがヨロシクオネガイイタシシマス


あまねくあれやこれやのプロローグ

 寒い。

 覚醒しかかった脳が布団をかけ直そうと手を動かす。

 だが、いつまでたっても目当てのものを掴むことは叶わず、手は空を切るばかり。やがて、布団を探すことに集中し始めた意識が眠気を完全に消しさっていく。

 なんだか足がスースーする。これズボンちゃんと履いてる?ベッドもやけに硬い、というか、これはまるで……床?

 

「……は?へ?」

 

 目を開けると、自分が剥き出しのコンクリに体を横たえていることに気づく。立ち上がって周りをみれば、家具の一つもないだだっ広い部屋。窓ガラスがところどころが割れて、破片が床に散乱している。そう、一言で表現するなら廃墟だ、他に言い様がない。

 自分の部屋で寝ていたはずなのに、なにがどうなってこんなところに?夢遊病か?

 

「……うわ」

 

 身体を確認したところ、いつもの部屋着ではなかった。紺のブレザーに、チェックのスカート、靴はローファー。ザ・JKって感じの服になっている。

 男子高校生を女装させて喜ぶ変態に誘拐された?もっと似合う奴いただろ。なんで俺なんかにこんな格好を?

 それにしても……光の加減だろうか?スカートから伸びる自分の足が白く見える。おまけにいつもより細い、ような?

 

「ンダトテメー!モッペンッテミッコラー!」

 

「スッゾコラー!」

 

「……ひっ!?」

 

 外から響く怒号に反射的に足が竦む。窓からなるべく顔を出さないように恐る恐る下を確認してみた。

 路地裏ではヘルメットにど派手な色の改造制服、いかにもな不良達が4対4で睨み合っている。声からするに女の子っぽい。ついでに俺がいる場所がビルで、ついでに3階、ということがわかった。ついでについでに隣のビルも廃墟。

 家の近所にこんな場所はない。帰るのには苦労しそうだ。

 

 なんて考えながら声をかけようかと様子を伺う。耳が腐ってなければきのこだのたけのこだの言い合ってるように聞こえるんだが?実にくだらない争いで熱くなっている……やはりきのこ派は異常者の集まり。心底うんざりさせられる。

 結末の見えた勝負だが、収まりは見せない。それどころか徐々にヒートアップした集団が互いに銃を……銃!?モデルガン、だよな?

 などという淡い期待は強烈な破裂音と共に撃ち砕かれた。

 先頭の角つきヘルメットのショットガンから硝煙が立ち昇り、撃たれた不良は力なく吹き飛ばされて地面に倒れ伏す。

 

「な、なに、嘘でしょ?」

 

「やりやがったな!ぶっ殺してやる!」

 

 呆然と目の前の光景を処理できないまま眺めている俺をよそに、撃たれた側の集団が即反撃に転じて、狭い路地裏は弾丸が飛び交う戦場と化した。

 ゲームや映画でしか聞いたことのない風切り音、跳弾の音、銃声…悲鳴。力が抜けて立っていられなくなる。ただ耳をふさいで、小さくなって騒ぎが収まるのを待った。

 

 

 遮蔽物もほとんど存在しない、ノーガードで殴り合うような頭のいかれた路地裏の殺し合いはすぐに終わった。

 スプラッターな血の海を覚悟して下を見る。

 幸いそこに血の海は無かった。生き残りはたった一人。不幸にも倒した死体を椅子にして空を仰ぐサイコ野郎と目があった……かな?わかんない、すぐ隠れたし大丈夫、のはず。

 

「オイ!テメェ!顔出せコラ!」

 

 駄目でした。

 

「……3!2!」

 

 なんのカウント!?

 

「ま、待って!撃たないで!」

 

 両手を挙げて窓から身を乗り出す。ヘルメットのバイザーとショットガンの銃口が仲良くこっちを見上げていた。

 

「お前、どっち派だ?」

 

「……はい?」

 

「きのこか?たけのこか?」

 

 体が震える。ここで答えを間違えれば顔面が無くなる気がする。たかがお菓子にそんな……

 どうする?正解は2分の1。

 いや、ショットガンで届くのか、この距離。どうせ命を賭けるなら運に任せるより自分の能力に賭けて、窓から即引っ込んで逃げた方がマシでは……

 

「オイ!答えろ!」

 

 よし、逃げよう。

 

「俺は!」

 

「お?」

 

「……ふっ!」

 

 全力で後ろに飛んだ。

 つもりが勢い余って床にひっくり返っていた。

 体に力が入らない。

 銃声の残響がビルの間にこだまする。

 

「いっ、ぎ……ぁああああ!」

 

「アハハハハハ」

 

 遅れて額が焼けるような痛みに襲われる。頭の中まで響くような不快な笑い声と苦しみにただのたうち回るしかできなかった。

 

 

 

「……はぁ、はぁ」

 

 どれだけそうしていただろうか。撃たれた?額が未だにジンジンと痛む。なんとか身体を動かせる程度にはなった。

 頭を撃たれて即死しない。派手に撃ち合って原型を留めている。すぐに銃をぶっ放すイカれた倫理観。そうだ、やっとわかった。

 

 建物を歩き回ってトイレだったらしき部屋を見つけた。洗面台にあった鏡を見る。

 

 見慣れた俺の顔は映っていなかった。

 変わりに見たのは、端正な顔立ち、背中の中程まで伸びた長い黒髪の少女。何より目を引くのは肩甲骨のあたりから生えた大きな黒い翼、そして…頭上に浮かんだ淡い黄色に光る、天使の輪。否、こういうべきだろう、ヘイロー。

 

 家には帰れそうもないな。そう悟った。

 

 

 

 拝啓、お父様、お母様。

 先立つ不幸をお許しください。息子はキヴォトスで娘になりました。なにを書いてるのかわからねーと思うが、俺もなにが起きたのかわからねー、頭が(以下略




主人公のヘイローはこんなイメージでお願いします。

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