ここは『キヴォトス』弱者に口なし   作:GAU-8

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身の丈に合わない目標

 あかつきのホルスがあらわれた!

 

  たたかう    ▶にげる 

  に げ る    に  げ  る

 

「おっとっと。まちなよ、おはなしするだけだってば」

 しかし、まわりこまれてしまった!

 

  たたかう     にげる 

 ▶に げ る    に  げ  る

 

「こらこら、もうかんねんしなって」

 しかし、まわりこまれてしまった!

 

  たたかう     にげる 

  に げ る   ▶に  げ  る

 

「むだだっていってるのに」

 しかし、まわりこまれてしまった!

 

 ▶たたかう     たたかう 

  たたかう     たたかう

 

「やろう、ぶっころしてやる!」

 

「ちょちょちょ!なんでそうなるの!?」

 

 

 

「いたぁい」

 

「こうなるってわかってたでしょ。学習能力ないのかな?まったくもう」

 

「勝てなくても黙って殺されるくらいなら戦って死ぬよね普通」  

 

 あとなんか顔見てたら腹が立ってきて……なにそのオッドアイ、ふざけてるよね。

 

「おじさんの知らない世界の普通だね。なんでそんな武士みたいな覚悟キメちゃったかな……ちょっと脅かしすぎた?心配しなくても命までは取らないよ」

 

 弾の節約のつもりなのか、畳んだままの盾でさんざんにしばかれて地面に倒された。向かっていくたびに同じようにされるので、もはや起きる気力も湧かなくなってそのまま手足を投げ出した。

 ホシノは地面に寝そべる私の目の前までくると、目線を近づけるようにしゃがみこんだ。安心せい峰打ちじゃとでも言わんばかりに、金属の塊で容赦なくブン殴ってきた人物とは思えないような笑顔であった。 

 

「キミ、ナンタラヘルメット団の羽付きちゃんだよね?昼間捕まえたばっかりなのに、なんでこんなところにいるの?ヴァルキューレは?」

 

「つーん」

 

「名前は?どこの学校の子?」

 

「けーん」

 

「……こんな時間にアビドスでなにをしていたの?」

 

「どーん」

 

「言え〜、言わぬとこれだぞよ〜」

 

 暁の下人さんはいきなり実包を抜き放つと、私の眼前へつきつけてくる。街灯の少ない薄明かりの中でも認識できるその緑色は、一撃の下に私の意識を奪い、こんな状態で撃ち込まれればヘイローが無事で済むか不安になるような威力の弾丸であることを示していた。

 

「チ、チェレンコフ高校、核拡散委員会の青井ヒカリです!ヴァルキューレからは罰として社会奉仕活動を命じられて解放されました!したがって、アビドス自治区のゴミ掃除に勤しんでいた次第であります!」

 

 刀どころかスラッグ弾をちらつかせる羅生門おじさんの卑劣な尋問に抗うことはできず、私はただ聞かれたことに正直に答えるしかなかった。

 

「ええ〜、なにそれ……どこからツッコんだらいいのやら。まずゴミ掃除なんてしてるようには見え……って、もしかしてそのゴミって漢字で悪党って書いたりする?」

 

「イエッサー!」

 

「な、なんかどっかで聞いたような勘違いしてるね……」

 

 アビドスのグループストーリーって先生が来る前の話だったの?信じて送り出した4人が依頼をバックレたあげくに賠償問題抱えて帰ってくるなんて……利子の返済だってまだ余裕ないのに、そりゃアヤネも総統閣下みたいな怒り方するわ、かわうそ。

 

「……おじさん達に勝てないからってアビドスの住民にちょっかいかけ始めたわけじゃないんだね?」

 

「そ、そんなまさか!むしろ助けてましたよ!見てたんですよね!?」

 

「どうだかね。理由つけてチンピラに暴力振るうのが目的にしか見えなかったよ?」

 

 あれ?ちょっかいかける相手が違うだけでやってることはホシノが言う通りなのでは……?

 

「なるほど確かに人を撃つのは悪いことかも知れぬ、さりとて、さりとて、えーと……あいつらワルイヤツ!カツアゲシテタ!ウタレテトウゼン!」

 

「じゃあおじさんが学校を襲う悪い奴を撃っても恨まないね?」

 

「は?恨むが?一族郎党にいたるまで全員に怨返しするが?末代まで祟るが?」

 

「うへ……もしかして数秒前に自分で何を言ってたのか覚えてないの?」

 

 それは私が撃つ側にいる時の理屈だろ。撃たれる時はどんな理屈であろうが知ったこっちゃないに決まってんだろ?

 

「夜のアビドスが砂に加えてゴミだらけになってるのが忍びないから掃除してやってたんですよ。あーあー、せっかくこれから改心して善行を積んでいこうと思ってたのに、なんですかこの扱い。ハナから私が悪者みたいに見られるんだもんなー、やる気なくなっちゃったなー」

 

「こらこら、小学生みたいなこと言わない」

 

「だいたい、アビドスの責任者はこんな状態放置してなにをしているのやら。まったく、顔を見てやりたいもんですね、まったくまったく!」

 

「……うん?アビドスの現状が、キミにいったいどういう関係があるのかな?」

 

 好きなだけ見ろとでも言わんばかりに距離を詰めてくる副生徒会長閣下。先程から笑顔なのは変わりないのに、目が全く笑ってない。なんだか悪寒がしてきた。

 

「あ、いや、あの、アビビ、アビドスの皆様方に大変な迷惑をおかけしたお詫びに治安維持活動の一助となれましたらと思い至った次第でありまして……」

 

「……」

 

「ご、ごご、ゴミがゴミ掃除してくれるなんて便利ですよね〜?その気になればいつでも片付けられるんだからしばらく泳がせておいた方が得じゃないですか?な、なんて……へ、へへへ」

 

「……」

 

「えへへへぇ……」

 

 ホシノ、夜だからなのか、他のアビドス生がいないからなのか、なんだか一段とプレッシャーがヤバいというか。無言で見られてるだけなのにチビリそう……助けて。

 

「そんなに怖がるくらいだったら最初っから襲ってこなきゃいいのに」

 

 そう言ってホシノは呆れたようにため息をつくと、殺気を引っ込めていつものだらりとした雰囲気に戻る。

 

「んまぁ〜、たしかにアビドスはいくら掃除してもキリがないからね〜。手伝ってくれるっていうならありがたいけどさ、あれは明らかにやりすぎだよ」

 

「どの口がどの口がどの口がどの口が……」

 

「なにかいった?」

 

「いえ、なにも」

 

 そうだね、逃げようとする相手の背中を撃つなんて品性の欠片もない行為だね。反省しないとね。

 

「あとで仕返しされても知らないよ?」

 

 仕返し?自分達が悪いことをしたからああいう目に遭うのであって、奴らに少しでも知能があれば自らの行いを反省こそすれども仕返ししてやろうなんて考えには至らないはずだが……

 

「わかりました!次から気をつけます!さようなら!」

 

 この手のお節介おじさんの言う事は適当に受け入れておくのが一番。ありがたいアドバイスをくれたおじさんにお礼をして、立ち去る。

 つもりだったが、頭を手で押さえつけられて立ち上がることもできなかった。

 

「ちょっとちょっと、まだ話は終わってな──」

 

「あー!見つけた!こんなところにいやがったな!」

 

 ホシノの言葉を遮るように怒号が響く。ホシノは私の頭に置いていた手を離すと、素早く立ち上がり声のした方へ銃を向けた。

 私もさっきホシノにしばかれた時に落としたライフルを拾いホシノへ──と一瞬考えたけど、目線がしっかりこっちへ向けられていることに気づいて銃口は地面に向けて下げたままにして立ち上がる。

 住宅街の道の角からゾロゾロワラワラとヘルメット団が出てきて、通りを埋め尽くしていく。その数……30くらいだろうか。

 

「なにかよう?」

 

「お前に用はねえ、どっかに消えな!あたしらが用があるのはソイツだ!」

 

 ホシノの問いかけに、先頭の赤ヘルメットが失礼にも私の方を指で差す。あまり友好的な用ではなさそうだ。

 

「すみません、どちら様、何ヘルメット団さまで?」

 

「はぁ〜!?あたしらはモチョモチョヘルメット団だ!見てわかんねえか!?覚えとけっつったよなあ!?」

 

 そんなこと言われても。悪党共が逃げるときに吐き捨てていくお決まりの捨て台詞なんていちいち相手にしてないし、パイセン達みたいにヘルメットで見分けられるわけでもなし。まあたぶん以前の射撃練習で的役として手伝ってくれた親切な方達のどれかだろう。

 

「そんで?今日は人数集めて仕返しにきたってわけ?」

 

「ああ!?そうだよ、随分余裕そうじゃねえか、ああん!?」

 

「……言わんこっちゃない。ていうか、今日が初めてじゃなかったんだね」

 

 隣でホシノがやれやれとため息をつく。

 

「30人いれば勝てると思ったのか?」

 

「なに?」

 

 私一人なら30人もいらない、存分にボコボコにできていただろうな。もっともその時は私もノータイムで逃亡を選択させてもらうが。だが、今はタイミングが悪かったな!

 

「人数が足りてないんじゃないかって言ってんだよ……ねっ、おじさん」

 

「うへぇ!?まさかおじさんを巻き込むつもり!?」

 

「えぇっ!?手伝ってくれないんですか!?」

 

 あんな人数私一人で相手させるつもり!?死んじゃうよ!?

 

「自分で撒いた種でしょ、自分でなんとかしなよ」

 

「なんだとこの……ゴミがどれだけ集まったところで所詮はゴミ。ねっ、おじさん」

 

「なにを!言ってくれるじゃねえか!?」

 

「……言ったのおじさんじゃないでしょ。ねえ、キミたちなんでおじさんの方睨んでるの?」

 

「全員まとめて一息にぶっ飛ばしてやるよ……ネオジサン」

 

「ネオジサンってなに?ちょっと、おじさん手伝わな──」

 

「上等だ!てめえから血祭りにあげてやる!やっちまえ!」

 

「だから、私は……あー、もう!めんどくさ!いいよ、みんなまとめてかかってきなよ!」

 

 

 

「いたぁい。なんで私まで撃つの……バカァ……」

 

「30人に袋にされるよりマシでしょ。これに懲りて反省しなよ……うへぇ、つかれたぁ」

 

 ホシノは昼間は見せないような飛んだり跳ねたりの大立ち回りでものの数分にしてヘルメット団は全滅させてしまった。余勢をもって唖然とする私に散弾を一発。30人と誤射された善良な一般市民1人がアビドスの大地に転がることになった。

 

「おじさん、まだまだ本気じゃないよ。キミたちのヘルメット団がどれだけ人数を増やしても、兵器を増やしても同じ。帰ったらリーダーのおチビちゃんにそう伝えて……わかった?」

 

「わかりましたぁ」

 

「どう、自分で歩ける?アビドスの外まで連れていってあげようか?」

 

「結構ですぅ」

 

「そっか。じゃあ、よろしくね。じゃあね〜」

 

 

 

 

 今までずっと勘違いをしていた。銃の撃ち方だとか、体力をつけて長時間重装備で行動できるようにしたりだとか、そういう現実的な軍隊がやるような訓練は、アプリで名前がなかったようないわゆるモブを相手にするには十分だろう。ただ、それではいつまでたってもホシノのようなネームドには手も足も出ないのだ。

 キヴォトス人の超人的な膂力から発揮される機動力と、戦車と同等、あるいはそれ以上にもなる耐久力。見た目は人間と大差なくても常にパワードスーツを着込んでいるようなものだ、たとえプロの歩兵並の練度になったところで敵うわけがない。

 12時間以内の200kmマラソンはゴールなんかじゃない、そこがやっとスタート地点だ。

 

「ふふふ……やってやるよ。待ってろよ小鳥遊ホシノ、コノヤロー。うふふふふ」

 

 幸いこの体は努力すればするだけ応えてくれる。ブルアカのストーリーでさんざん匂わされてきたが、ついに見ることができなかったホシノの具体的な強さの一端を直にこの目で見たというだけのこと。

 やる気を削ぐつもりでいつもよりちょっと本気出したようだが逆効果だったなぁ!ホシノちゃんよお!

 

「……あれ?」

 

 いつの間にか、つい、いつもの癖でシロコとの合流地点に来てしまった。さすがにあの態度はもうバレてると思っていいだろう。見つかってブチのめされる前に早くここから離れ──

 

「おはよう」

 

「お、おひゃよ、ごじゃましゅ……」

 

 背後からcv小倉唯の素敵なご挨拶。なんかいつもより声が低いね?もしかしなくても怒ってる?

 なにはともあれ、一秒でも早くアイサツだ!アイサツは大事!

 

「う、撃たないでください!」

 

 振り向きながら流れるように土下座。キヴォトスでは自分より強い相手にはこうやってアイサツする、連邦生徒会規則にもそう書いてある。

 

「ん」

 

 ん?

 

「撃つよ」

 

 ん?




更新遅れてすみません。言い訳はしません。クソ配牌ばっかり掴んでくる陸八魔アルが全部悪(無情の一撃の音)
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