ここは『キヴォトス』弱者に口なし   作:GAU-8

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アビドスブートキャンプ

「ずっと騙してたんだ」

 

「うぐっ……だ、騙すだなんてそんな、人聞きの悪い。聞かれなかったからわざわざこちらから申し上げなかったというだけでございまして……」

 

「言い訳しないで」

 

 砂漠のアスファルトで焼き土下座をしていると、頭の上からピシャリと冷たい声が降ってくる。シロコがどんな表情をしているのか恐ろしくて顔もあげられない、というか以前のように顔を上げていいとも言ってくれないのでそのままでお喋りをする。

 

「……で、でも、ほら、羽とかわかりやすい方でしょ、私。てっきりとっくにバレてるものだとばかり……」

 

「そうなの?周りに羽がある子がいないからわからなかった」

 

 どういうこと?それならなおさらわかりやすいのでは?ホシノなんか羽で認識してたっぽいし。

 

「バレてると思ってたのならなんで……そっか、なるほど。顔を上げてレイ、そういうことなら私に任せて」

 

 なんだかよくわからないが、勝手に納得してくれたシロコに言われるがまま顔を上げる。すると、眼前にシロコの愛銃、サプレッサー付きのライフルの銃口が現れた。

 思わずのけ反った分と同じだけ銃口が近寄ってきて結局また眉間につきつけられる。

 

「し、死刑はさすがに重すぎませんか!?」

 

「そんなことしないって言ってるのに……でも今日からはペースが落ちたら当てるつもりで撃つから」

 

 それが罰?今度は軽すぎやしない?

 

「それって今までと何も変わりないんじゃないですか?」

 

 当てるつもりじゃなくてもさんざん当ててきたのだから。なんなら当てるつもりで照準を合わせたら逆に当たらなくなるのでは?

 

「そんなこと……そうかも。でも今度は狙って当てるから命中率は上がるはず。嫌ならサボらないでちゃんと走って」

 

 サボる?ヘルメット団だったことがバレて怒ってるわけじゃない?まだトレーニングに協力してくれるつもりみたいだから、やっぱりバレてはない?でも、今までシロコとトレーニングしている時に手を抜いたことなんて無いのだが。

 

「サボりなんてしてな──」

 

「今更とぼけるの?いいよ、そっちがその気なら──」

 

「ひぃい!ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

 引き金にかかったシロコの指ににわかに力が入った気がして、咄嗟に土下座、期せずして頭が射線から外れたことに気づく。無意識にこんな完璧な対応ができるなんて自分が恐ろしい!

 

「……レイが自分で決めて、自分のためにやってることなんでしょ?私もたまにキツくて途中で切り上げたくなるような時もあるからわかる、でもそれを乗り越えてこそのトレーニングだから。大丈夫、足が止まりそうになるたびに痛い目に遭うって身体に覚えさせれば、そんな気も起こらなくなる。一緒に頑張ろう」

 

 そう言って微笑みを浮かべて手を差し伸べてくるシロコ。やっぱりヘルメット団関連じゃなかった。だが、サボってるなんてどっからでてきたんだ?

 

「あ、あの、えっと……ハイ、ガンバリマス。でもいくら尻を叩かれても肉体的な限界があるといいますか、なんといいますか。サボってたりはしていませんよ?」

 

 足が止まるのは本当に体力がなくなった時だから、いくら背中を蜂の巣にされようがそれ以上は走れない。シロコだってついこの前そう言ってただろうに。 

 

「じゃあなんに対して謝ってたの?」

 

「エッ、ソ、ソレハ……」

 

「まだなにか隠して──」

 

「ない!……くもないかもしれない可能性があるかもしれないと思わないでもないですけど、人間誰しも人に言えないことの一つや二つあるでしょ?ね!?」

 

「うーん……」

 

 いかん。やぶ蛇だ。ヘルメット団だと知られたら死ぬまで撃たれかねない。サボりってことにしてしまおう。そっちの方がまだマシなはずだ。

 

「ちょこっと、ほんのちょこっとだけ、そう自覚しないで手を抜いたりしたかもなぁ、って。で、でも!いくら撃たれても無理なものは無理です!」

 

「嘘。レイはまだ余計なことする体力残してる」

 

「余計なこと……?」

 

「……余計なことは余計なことだよ。最初に言ったはず、指一本動かせなくなるまで体力使い果たしてもらうって」

 

「ひ、比喩かなにかでなく?」

 

「ん」

 

 ん、殺す気?

 

「ほら、早く行って。3秒以内にスタートしないと撃つ。321ん、時間切れ」

 

「痛ってぇ!絶対3秒も経って──イタタタ!わ、わかりました!いきます!いきますからぁ!あだだ!や、やめ!」

 

 その日、私は知ることになる。今までシロコは初心者を優しく指導しているつもりでやっていたことを。そして、体力おばけがやるスパルタトレーニングの恐怖を。 

 

 

 

「ヒュッ……ヒュッ……ヒュッ……」

 

「ん。お疲れ様。また明日」

 

「ア、アシタ?」

 

「うん。毎日やってるんでしょ?隠しても無駄、タイムでわかるよ。これからは私もできるだけ付き合う」

 

「……ム、ムリィ。タスケテ」

 

「無理を乗り越えてこそのトレーニングだから。遠慮しなくていいよ。じゃあ、また明日。絶対に来てね。逃げたら……ううん。逃げられるなんて思わない方がいい」

 

「……アッ、アッ」

 

 

 

「……で?トレーニングでフラフラになって、肝心な実戦では小鳥遊ホシノに秒殺された、と」

 

「……はい」

 

「バカじゃないの?」

 

「……返す言葉もございません」

 

 次の出撃はそれはもう酷いものだった。トラックに乗り込んだところまでで記憶が飛んで、次に目覚めたのはリス地、もといアジトの死体安……救護所だった。

 過去一の醜態を晒した私はリーダーに部屋に呼びつけられ、地べたに正座させられて反省会である。ここに座ってると無駄にデカい机に隠れてリーダーの姿が見えないんだけど、やめたらそこ座るの。自分が豆粒ドチビだって自覚しな?

 

「……もし、こんなザマが続くようであれば減給だから」

 

「そ、そんな!」

 

「当たり前でしょう。アンタがなんのためにトレーニングしてるか忘れたわけじゃないでしょうね?」

 

「……あん畜生の左目を引っこ抜いてリーダーの部屋に飾るため?」

 

「ち、違うわよ!」

 

「頭蓋骨と脊髄を一緒に引っこ抜いてリーダーの部屋に飾るため?」

 

「なんでそんな気持ち悪い物ばっかり寄越そうとするのよ!?小鳥遊ホシノを倒せばそれで十分だから!」

 

 チンピラは戦士と認めた相手のトロフィーを部屋に飾る習性があると思ったけど違ったのか。

 

「ま、アイツにはそのくらいの気概で挑むくらいでちょうどいいのかもね。鍛えるのはいいけど考えてやりなさいよ、今回みたいのはこれっきりにして、いいわね」

 

「はぁい」

 

 ……どうしよ。200km行軍は、やめさせてもらえそうもない。もはやシロコに過労死させられるのが早いか、ホシノを倒すのが早いか、だな。




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 週一くらいで更新できたらと思っているのですが!プロットもなしに進めてきたツケががが……
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