ここは『キヴォトス』弱者に口なし 作:GAU-8
「……羽付きちゃん?おじさんこの間なんて言ったっけ?」
「えへー?なんか言ってたっけ?忘れちまったなぁ、へへへ」
「そっかぁ。忘れちゃったかぁ。じゃあ…………忘れられないように身体で覚えてもらおっか」
やめて!私に乱暴する気でしょ!エロ同……いってぇ!や、やめ、やめてよおじさん!今の前振りからそっちの乱暴は話が違……いぎゃ!?やめ……ごめんなさ……た、助け……ア゜ァォ゛ッ!
「前が見えねェ」
「なんというか、ふっ、いつになく手酷くやられたわね」
なにわろてんねんリーダー……
「アンタあいつに恨まれるようなことでもしたの?」
「……なにも」
学校襲撃したことくらいかなぁ……
仕方ないじゃん!個人的に遊びにいってもお金にならないんだもん!私はおまんまのために仕方なくホシノと遊んであげてるだけで、一人で遊びにいくほどホシノのこと想ってるわけじゃないんだからね!勘違いしないでよね!ホントはこんなことしたかないけど仕方なくやってるだけなんだからね!道徳じゃお腹が満たせないんだからね!
「誰も助けてくれないし……最近みんなすぐ逃げるし……はぁ〜……」
一発でも多く弾を使わせるくらいの気概は見せてほしい!やる気ないならやめちまえ!まったく!んまぁったく!
「アンタが中途半端に強くなってるくせに、相も変わらず小鳥遊ホシノに手も足も出ずにぶちのめされてるせいでしょうが」
「はい!?私のせいになるんですか!?」
「そうよ。今のアンタならもうちょっとやれるはずでしょ?勝てなんて言わないけど、見てるみんなが怯えるような無様な負け方しないで」
キヴォトスに来た頃と比べれば相当な差がついてるはずなんだけどな……たぶん。ただホシノの強さは未だ底が見えない。こっちが成長してもそれを軽くさばける程度の力しか出さない、頑張れば越えられそうに見えなくもないのがたちが悪い。ゴールが見えているのに延々と離れていくマラソンのようなものだ。こうも手応えがないのはさすがにしんどくなってくる。
……もうヘルメット団にこだわる必要ないんじゃないか?賞金稼ぎとして独立してなんとかやっていけないかな。
「武器があってないんじゃないの?アンタみたいなトリガーハッピーに装弾数30発は少なすぎ……聞いてる?」
いや、学生証も口座もないんじゃいちいち誰かに協力してもらわないといけない。それに弾代だって自分で出さないといけなくなる……今だってリーダーが小言言ってくるくらいには浪費してるのに……下手したら赤字?
「……はぁ」
「……まあ、頑張って鍛えてるのはわかるし、怒ってばっかりも可哀想ね。ほら、これで──」
「お金!」
おもむろにリーダーが取り出したのは……金だ!万札だ!札束だ!ボーナス約束してたのにまだ一度も貰ってなかったから、てっきり適当な理由つけてくれる気ないのかと思った!
「……これでアンタ好みの銃でも買ったら?そっちの方は……やっぱり全くカスタムしないのね、いらないなら返して」
「ハイ!」
「いい、装備を買うのよ、他のことに使っちゃダメだからね」
「ハイ!」
「ホントにわかったの?」
「もちろんです!ありがとうございますリーダー!好きです!愛してます!抱いて!いいからはやくよこせ!太っ腹!一生ついていきます!」
「……買収されて裏切ったりしないかしらこの子。ちょろすぎて心配になるわ」
というわけでいざ銃砲店。入ってすぐに天井から吊り下げられた自動タレット2門がお出迎え、おかしな真似をすればあっという間に床の染みにされること請け合いだ。
グラセフの世界に来たみたいだぜ、テンションあがるな〜。違う?学園都市?透き通るような世界観?確かに……グラセフでも店に入った途端に銃を向けられるなんて滅多にないもんね。ほなキヴォトスか〜。
「いらっしゃいませ〜」
さらに店主らしきスーツのロボットと高額な商品は分厚い防弾ガラスの向こう側。お客様を狂犬病の犬と同じくらい信用しているのがありありと伝わってくるようだ。
このカスハラが問題になる昨今の日本人が見習うべき接客は、ここがブラックマーケットというのも関係しているかもしれない。というのも表の店では憎き学生証の提示を求められる可能性があるのではないかと思ったからだ。
「銃を買いたいんですが、学生証っていりますかね?」
「いえいえ、まさか。販売された銃がどこでどのような使われ方をされようが、当店には一切関わり合いのないことでございます」
いいね!さすがブラックマーケット!企業倫理のりの字もねえや!
さっそく店内を物色する。といってもこちら側に置いてあるのは弾やらアタッチメントの類いだけのようだ。あとは10万以下のハンドガンと……AK47もこちら側か。さすが、モノによってはハンドガンの方が高いくらいだ。キヴォトスだとレッドウィンターあたりで「行方不明」になったものが大量に流通してるのかな?
どうやらお目当てのものはカウンターの向こうにあるようだ。ガラスの前に立って探しているとロボット店主が近寄ってきて声をかけてくる。
「なにかお探しですかお客様?」
「ん……んん?」
「どうかなさましたか?」
「い、いえ……」
気のせいかな?
「お客様、こちら側の商品は少々手が出にくいお値段かと存じますが、ご予算の方は?」
このロボット、トリニティ製か?さっきからおかしな副音声が聞こえてくるような気がする。
「ま、まぁ、こんなもんですかね?」
「これはこれは、大変失礼いたしました。気になる商品がございましたらお申し付けくださいませ」
……見栄を張りました……銃の相場がわからないけど、思ってたより高い!大量の銃が出回ってるキヴォトスならもっと安いかと思ってたのに全然そんなことない!メインとサブと揃えたらリーダーから貰ったお金と、この前の賞金まで全部とんじゃう!
拾ったM1911ちゃんともこの際にお別れするつもりだったけど、メインだけ買い換えるだけにしておくか。
「そっちのM249軽機関銃を」
「どうぞ。こちら7.62mm弾仕様となっておりますが、毎分1000発の発射レートを維持したカスタム品でございます。カイザーPMCからの横流し……コホン!信頼性はお墨付きです。改造による弊害の心配はございません。自信を持って保証いたします」
カイ……いったいどこのお墨付きなんだ。よくわからんが、信じてもいい気がする。
これまでのAKと比較すると発射レートアップ、装弾数アップ、威力もアップ?わかんね。あとは……
「ふむ、ふん」
「なにをなさっているのでしょう?」
「いや、ちょっと、振り回したときの感触を」
重量もアップだが取り回しに支障はない、重量の分運動エネルギーもアップ。いいね!
「はぁ……なるほど?銃は撃つものですよ、殴ってうれしい鈍器ではないのですが?」
知ってるわ!バカにしとんのか!?キヴォトスじゃ鈍器として使う場面も多いだろ……多い、よね?あれ?シロコやホシノが殴りかかってくるからそういう場面になりやすいだけ?あれ?
とにかく、総合的にこれは、ものすごいプラスになるやつ!ってことですね。
「これにします」
「ありがとうございます。他には?」
「いえ、お会計お願いします」
「……本当に、よろしいので?」
「はい?」
「他に欲しいものがあるのではございませんか、例えば──」
店主は壁にかけられた一丁の銃を取って、私の目の前に出してくる。同じように防弾ガラスの向こう側に並べられている銃より遥かに小さい。ハンドガンでありながら唯一、向こう側に並ぶことを許されたそれは男のロマンを具現化したような逸品。
「デザートイーグル。50口径弾仕様。そちらのお供としていかがでしょう?持っているだけでもリロードの間隙を突こうとする敵への牽制になるかと」
「う、うぐ……」
欲しい!ハンドキャノンと渾名される過大な威力も、反動も、重量もキヴォトス人パワーの前にはなんの問題にもならない!生徒を相手にするのに威力がありすぎるなんてこともない!なんならメインウェポンだって30mmガトリング砲を使いたいくらいだ!
でもお金が……見栄で言った賞金も合わせた予算でギリギリ。その賞金首を捕まえたのだってただ運がよかっただけ、このお金を使ってしまえば生活費はヘルメット団としての給与を当てにせざるを得なくなる……
「M249だけで……」
「よろしいのですか?後悔しませんか?家に帰ってからもきっとあなたはこの選択が本当にただしかったのかと──」
「あー!あー!きこえなーい!早く会計してください!ほら早く!」
「お客様、これは欲に負けるのではありません、よりよい未来への先行投資なのです。仮になにか目の前に不都合が生じたとしても、それはただ未来でするはずだった苦労を先んじてすることになるだけ。先を見通して行動できるあなたは素晴らしい御人で──」
「買いまぁす!」
「クックック、毎度あり。ではこちらでお会計を、さあ、ほら、早くしてくださいお客様」
この後アビドス自治区に試し撃ちゴミ掃除しに行っただけなのにホシノと鉢合わせになってめちゃめちゃ遊んでくれた……ちゃんといいつけ通り一人で行ったのに……どうして……どうして……
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