ここは『キヴォトス』弱者に口なし 作:GAU-8
「ワラワラヘルメット団の諸君!諸君は今日から我々カタカタ──」
「撃て」
「ヘぎゃあああ!?い、いきなり、なにす……や、やめてぇぇ!」
いつものようにアビドス生に蹴散らされ、アジトへ逃げ帰って休んでいるところへやってきたお客様、カタカタヘギャアアアルメット団。
兵力を見せつけたかったのかゲートの前にお行儀よく整列したところを、シロコのドローンのせいでアジトでいつもお留守番をさせられているM4ちゃんが鬱憤を晴らすかのように射ちまくる主砲でまとめて吹き飛ばされて壊滅。密集陣形の末路を示すお手本のような屍を晒すこととなった。
アビドスをしょっちゅう襲撃している我々だが、このように逆に襲撃されることもわりとある。だからおあいこ。異論があれば30分以内に国際司法裁判所へ直接出向いて申し立てるように。
アジトにやってくる相手はヘルメット団をはじめ、傭兵、チンピラなどなど様々だ。今回はヘルメット団のカタカタ……カタカタ?どこかで聞いたような……どこだったかな……ま、いっか!
「カタカタか……面倒な連中がでてきたな」
「知っているのかパイセン」
念の為ゲートの上で待機していたものの出番のなかったパイセン分隊は、目の前の惨状を肴に雑談タイムに入る。
「ああ、頭数だけは多いやつらだ。今回だけで諦めてくれるとは思えねえな。当分はこいつらとやり合うことになるかもな」
何度来ても無駄だってわからないもんかね、まったく。
「ま、戦車がある限りは敵はいねえ。ここを攻略したけりゃアハトアハトでも持って来いってんだ!」
「そんなこといって、ホントに持ってきたらどうするんですか?」
「バーカ!ヘルメット団なんかがそんなもん持ってたら、それだけで連邦生徒会に目をつけられちまうよ!あるわけがねえ!」
「じゃあ守りの方は盤石ってことですね」
「おう!守ってる限りはあたし達は無敵だ!」
……さすがにアビドスがアジトを潰しにきたらひとたまりもないだろうけど黙っておこう。
「アンタ達!そんなとこで駄弁ってないでこいつら片付けて!」
リーダーに怒られたので、アジトの外へ出て倒した敵の後片付けに参加する。
「こいつらどうします?」
「どうするって、いつもどうりに──」
「わかりました!裸にひん剥いて電柱に吊るしておきます!」
「い、いつもしてなかったでしょ!そんなこと!」
「間違えました!全員串刺しにしてゲートの前の道路に植えておくんでしたっけ!?」
「違うって言ってるでしょ!」
「でもそうしておけばアジトを攻撃しようなんてやついなくなると思うんですよ」
「代わりにヴァルキューレが血相変えて潰しにくるわよ!ふざけたこと言ってないで早く手伝いなさい!」
「へ〜い」
意識がないJKが地面に転がってたらやること、みんなはわかるかな?そうだね、ファッk──
お財布の中身をちょびっとだけちょろまかして、後は自然に起きて逃げ帰るまで一箇所にまとめておくだけだけである。生殺与奪権を握っているのだから武器をとりあげて売り飛ばすくらいのことはしてもいいと思うのだが、しないらしい。アビドスもそう、何度やられても武器はちゃんと返ってくる、意外とみんなお行儀がいい。
……あれ、もしかして私の倫理観ってキヴォトス人以下……いやいや、まさか。
「ん?」
こいつ、身動ぎひとつしないが、まだヘイローが出ている。死んだふりか?生徒がそんなことして引っかかるやついる?わざとか?お望みどおりデザートイーグルちゃんの錆にしてくれる。
「ぎゃああああ!」
「な、なにしてんのよ!?」
「いや、こいつ死んだふりしてたんで……」
「あ、そう。驚かさないで……」
他になんだと?この私が気絶してる相手に理由もなく追撃するような外道だとでも思っていらっしゃる?
ヘイローが消えるまでに要した弾数は3発。ゲームなんかでは至近距離だとライフル以上の威力があるように描かれることもあるデザートイーグルちゃん、私はそれを信じていた。ところが使ってみたらそこらのチンピラさえ1撃では倒せないではないか。調べてみたらなんと、エネルギーで比較すれば5.56mmライフル弾と同じかそれ以下……騙された。この大きさでライフルと同じ威力なら褒めるべきだろうけど、7発って少なくない?もう一丁欲しい。
「……アンタって弾丸の威力は他の子達と変わらないのよね」
「……当たり前では?」
「耐久力があるやつってだいたい一発の威力も段違いに強いからアンタもそうだと思ってたんだけど……ちゃんと撃つときに力込めて撃ってるの?」
「はい?引き金を強く引けば弾が速くなると?弓矢じゃないんですから」
「違う!筋力の話なんてしてない!その……なんて言ったら……あれよ、体を通して出る力?みたいな?」
「体を通して出る力?そんなもので敵が倒せるものですか」
「……もういいわ。アンタがなんにも知らないのはよくわかった。ホントにその年までどうやって生きてきたのよ。今の今までアンタの周りで教えてくれる奴は一人もいなかったわけ?」
リーダーは心底呆れたようにため息をつく。カタカタヘルメット団の後始末を終えると、アジトの中の射撃場へと連れてこられた……あの、リーダー、なんで私は的と同じ方に立たされたんですか?まさかその身をもって体感しろなんて言わないですよね?
「私もあんまり得意じゃないけど……まあ、見てて」
そう言ってリーダーは2発発砲した。44マグナム弾は薄い金属板の的を容易く貫通し、均等に並んだ穴を空けた。
「1発目はなにもしないで撃った。2発目は力を込めて撃った。比べてみて」
「はあ……」
言われてみれば2発目の弾丸は薄っすらと光っていたような、そうでもなかったような。弾道にそってほんの一瞬残光が走っていたような、見間違いのような……
穴の大きさを比べてみれば……こっちもわからん。どっちが2発目の穴か聞かれれば10人中6人くらいは正解できるかもと思うくらい程度の差しかない。
「誤差ですね……」
「……やっぱり直接ぶち込んでどっちが痛いか比べてもらったほうが早──」
「すごい!こんなに違うなんて!銃に力を込めるって大事なんですね、よくわかりました!」
「……そ。これも鍛錬よりも才能の世界よ。的を木っ端微塵にするくらい威力が変わる人もいるから、絶対身につけたほうがいいわよ」
「で、どうやってやればいいんですか?」
「どうやって……感覚的なものだから教えてあげられないわ。多分自分で感覚を掴むのが一番だと思う。私はね、言葉だけで教えようとする先生と感覚だけで教えようとする先生に挟まれてそれで……それで、うっ。なんで……なんで頼んでもないのに首を突っ込むの……あんなんじゃ混乱するだけなのに……わざと?嫌がらせ?」
頭を抱えてうなだれるリーダー。その様子だけでリーダーの相当な苦労が伝わってくるようだった。感覚的なものを教えるって大変だよね、わかる。私も二足歩行のやり方を説明しろと言われても無理なのは容易に想像できる。
「練習あるのみじゃないかしら、あとは……銃に装飾をしてみるとか……こんな感じで」
「そのエングレーブにはなんのタクティカルアドバンテージもな──」
「あるわよ」
「アッハイ」
「手に馴染むっていうのかしら?力を込めやすくなるのよ。アンタも自分が思うようにいじったら?面倒なら教会で洗礼してもらうだけでもいいと思う。なんにせよ小鳥遊ホシノに勝つなら習得しなきゃ話にならない技術ね、絶対にできるようになって」
リーダーが言ってるのはたぶん、神秘のことだろう。銃に込めたりするものなのか?電卓叩いてシールド発生させたり、どこからともなく隕石落としたりってゲーム上の演出じゃないの?まさかマジであんな風に戦ってる?
キヴォトス最高の神秘暁のホルスさんは手を抜きまくってるだろうし、そういう神秘的な攻撃をされた覚えはない。シロコは……銃弾の浪費を嫌ってか、殴りにくるし首を絞めにくる。神秘の欠片も感じない筋肉による圧倒的暴力、コワイ。
うん。まるで参考にならない……神秘か。ブルアカの生徒の中には神様がモチーフになっている子達がいるとか聞く。暁のホルスさんとか暁のホルスさんとか暁のホルスさんとか……
リーダーは教会で銃を洗礼してもらえとかって言ってたか?となると神秘とやらは宗教的でスピリチュアルななにかと結びついている?
教会はクリスマスくらいしかご縁が無いから却下。お寺にお世話になるのはお亡くなりになったあと。
……そうだ、神社に行こう。困った時は神頼み。八百万も神様がいるなら私のような敬虔な無節操つまみ食い教徒を助けてくれるところもあるだろう。ショール様、マーラ様、ディベラ様、キナレス様、アカトシュ様、とにかく神様お助けぇ!
そうと決まれば百鬼夜行自治区へお出かけしてぶらり神社ハシゴ旅。久々の日本らしい町並みにテンションがあがりつつ、適当に歩き回って見つけた神社を手当たり次第に参拝していく。売店には交通安全や学業成就といったスタンダードな御守りから、おそらくキヴォトスにしかないであろう、RPM向上やら弾道特性向上やら、百発百中やら実に即物的な御札が売っていたので思うがままにペタペタとM249に貼り付けた。
……なんか、思ってたのよりだいぶ禍々しい仕上がりになっちゃった。もうこの辺にしておくか。
「こんにちは」
「こんにちは〜」
鳥居をでた所ですれ違った背の高い黒スーツの人とご挨拶。誰かと思えば先生大好きクラブの黒服さんじゃないっすか、チッスチッス。頭からなんか漏れてますよ大丈夫です、か──!?
く、黒服!こんなところでなにしてんだ!?さも一般市民ですよ見たいなツラして出歩いてるんじゃないよ!
動揺を気取られないよう無視して歩き続ける。5分ほど進んだところで振り返るも黒服の姿はなかった。神社とも百鬼夜行とも無縁そうなのに、なにをしていたのやら。
百鬼夜行組の生徒には一人も会えないのに、よりにもよって黒服とは……はぁ。もういいや、帰ろ。
「ん。こんにちはレイ。奇遇だね」
「……ここって実はアビドスだったりします?」
「違うよ。この辺は百鬼夜行自治区のはず」
謎の徒労感に襲われながら家路につく途中で第二原作キャラ発見、砂狼シロコだ。いつもの制服ではなくライディングウェアに身を包んで自転車に乗っている。まさかアビドスからここまで自転車で来たの?ウソでしょ……私と一緒にトレーニングしてて、まだそんな元気が?
「今日はライディングですか?」
「うん。休憩にしようかと思ってたんだけど、近くにどこかいいところはない?」
「え……あ、さっき、あっちにお洒落なカフェが──」
「カフェって気分じゃない。それと100km圏内なら近くの範疇になる。どこかいいとこない?」
100km圏内は普通は自転車でも近くって言わないんだよ、シロコさん。
「ええっと、そう言われましても……」
「レイの家とか……」
なんで!?あ、そうか、百鬼夜行の近くってシロコに言ったからか。
「わ、私の家はちょっと……人をお迎えするには……ちょっとアレなので」
「平気、私は廃墟みたいな家でも全然気にしない。案内して」
「私が気にするので……」
「嫌なの……?」
ぐっ!上目遣いなんかされても存在しない場所には案内できないの!
「ご、ごめんなさい。どうしても……こ、心の準備が……」
「ん……そっか。じゃあ心の準備ができたらにする。こっちこそごめんね」
「い、いえ……」
「じゃあ」
シロコは現れた時と同じく嵐のように去っていった……なんだったんだ……
お気に入り登録2400件達成いたしました!たくs……あれ、これ前話でもやって……あれ、でも前話の時は2000……怖 ありがとうございます!日間ランキングのちからってスゲー!
私用のため、次の更新は9月に入ってからになります!すみません!