ここは『キヴォトス』弱者に口なし   作:GAU-8

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アンケート結果が9:1だったのでこの話の後書きに主人公ちゃんのイメージを載せます。
イメージを固定されたくないよという方はこの話を読む間挿絵表示設定をオフに願います。


継続力

 生命の危機を感じるような大怪我でも半日と経たない内に身体はほとんど元通り。ただ足元もおぼつかなくなるような貧血の症状と全身に残った塞がった傷の跡だけが、意識を失う直前に見たあの悪夢のような光景が現実であったことを示していた。

 そんな一生残ると言われても納得してしまうような傷跡も3日もしないうちにキレイに消えていた。今ではもうどこが傷だったかわからないほどだ。改めて生徒の身体の耐久性には驚かされる。リーダーがくれた高そうなクリームのおかげもあるのかも。

 

「お礼なんていいわよ。その分は出撃のときにきっちり仕事してくれればいいから」 

 

「……はぁい」

 

 傷の跡から察するに相当にスプラッターな酷い状態だったのは間違いないはずなんだけど……弊ルメット団は重体になっても手厚い治療で1日も早いあなたの戦場復帰をサポートします。dv彼氏的優しさが身に沁みる。

 身体が治ったからといって今までどおり戦えるかは別問題では?人の上に立つものとしては心の健康にも気を配っていただきたいところではありまする……あ、そうだ!今こそスパイとしての使命を果たす時なのでは?

 

「もうアビドスなんてほっといていいんじゃないですか?」

 

「……あんたまでそんなことを言うの?」

 

 ウソです!ごめんなさい!

 喉までせり上がってきたそんな言葉をなんとか飲み込んでリーダーが発する殺気に立ち向かう。

 

「だ、誰のせいで私がこんな目に遭ったのかって話ですよ。クライアント様でしょう、カイザーPMCでしょ?しつこく刺客を差し向けてくるような連中に従ってるなんてバカバカしいと思いませんか?」

 

「……そうね。この落とし前はきっちりつけてもらうわ。でもアンタの給料だってカイザーPMCの資金提供の中から出てるのよ?契約を打ち切るのならアンタもそれ相応の待遇にしないといけなくなるけど、それでもいいの?」 

 

「えっ……いやぁ、そ、それは………で、でもこういうのってあんまりよくないかなぁって……思ったり……思わなかったり?」

 

 私の生活費が、もとを辿ればシロコ達が頑張ってかき集めた利息だと思ったらご飯の味がしなくなったりする……これって実質アビドスに養ってもらってるってことでは!?扶養生物には優しくして!dv反対!

 

「今さら何?アハトアハトが直撃して良心が目覚めちゃったわけ?」

 

「や、そういうわけでは……もういいです」

 

 かくして私は血溜まりに沈むほどの怪我をして、死なないどころか後遺症も全く無く再び日常たたかいに戻るのだった。リーダーの意志が固いからしょーがないね。

 

「そんなことよりそのアハトアハトはどうなったんです?」

 

「そんなことってアンタねぇ……まあいいわ。あいつらからもらったおみやげジャベリンで吹っ飛ばしてやったわよ。当分は再支給されるようなことはないとは思いたいけど……」

 

「結局犠牲者は私一人だけですか……」

 

「他にも何人かやられたけどね。一番酷かったのはアンタ……でもまあ、ホント、ヘイロー様様よね。あんなことになっても1週間と経たずに治っちゃうんだから」

 

 裏を返せばあの状態の私にさらに追撃を加えるくらいでないと生徒は死なないということ。すぐに銃をぶっ放す倫理観のキヴォトスで、外と同じかそれ以上に殺人が忌避される理由を垣間見た気がする。確固たる殺意と覚悟を持ち、微塵の良心も持たない人間でなければ殺人事件など起こしえない。不慮の事故なんてもう気にする必要ないじゃんね。

 

「ねえレイ……完治に3ヶ月以上かかる怪我なんてあると思う?」

 

「……え?えっと……さあ?手足がもげたりとか?」

 

「それはさすがに治らないわよ。他には?」

 

 あ、そう、生えてこないんだ、気をつけよ。

 他に……?完治に3ヶ月以上となると怪我の程度も今回の私以上のものになるだろう……どんな怪我だ?あの先なんて致命傷以外ないのでは?

 

「ちょっと想像つかないですね。ないんじゃないですか?」

 

「……そうよね」

 

 リーダーはその答えを予想していたようだ。なんの意図でそんなことを聞くのか尋ねてみても反応はなく、話はそれきりリーダーは腕を組んでなにやら考えこみながらどこかへ行ってしまった。

 

 

 

 心的外傷とは頭で理解していても抗えないから心的外傷なのであって、ましてやあんな目に遭ってそれほど日にちも経っていないのでは爆発や銃声に身体が大げさに反応してしまうのは致し方ないことなのだ。別に後方でサボっていたわけではない。リーダーも多少は配慮してくれたのか何も言われなかった。

 問題は、敵方……アビドス生、特に砂狼シロコにはそんなこと知ったことじゃないということ。今日は何もしてないのに、しつこく攻撃され、追い回され、そうしてまたこの駐輪場に……なんだかデジャヴを感じるな……気のせいかな?

 

「ちょっと乱暴だったかな」

 

「……」

 

 これこの間もやらなかった?やったよね?

 

「下手に加減してたらこっちがやられる可能性だってあったから」

 

「あ、あの、つかぬことをお伺いますが、その、正気ですか……?」

 

「正気だよ。なんでそんなこと聞くの?」

 

 確認するまでもないだろうと、シロコは不満そうに眉を吊り上げて答えた。

 正気じゃない人はみんなそう言うんだよ。正気の人もみんなそう言うけど。つまり正気が疑われる人に直接質問することは無意味であり、二人きりでいる限り相手が正気であることの証明はできないのである。要するに、誰か助けて……

 

「あの、シロコちゃん?これはいったい……?」

 

 そんな願いが届いたのか校舎の中から現れるノノミ。助けてノノミ!

 そんなノノミのトレードマーク、ミニガンの銃口は地面に向いているが、私がおかしな真似をすればすぐに火を吹くだろう……もしかして状況が悪化しただけ?

 

「ノノミ……ノノミ、ちょうどいい手伝って」

 

「え、えっと、はい……何を?」

 

「わからないけど、とりあえずそこにいて。前はノノミが足りなかったから失敗した可能性も0ではないから」

 

「は、はぁ……」

 

 シロコが突拍子もないことをするのはアビドス生にとってはいつものことのはずだが、ノノミもシロコの意図はわかりかねているらしい。困惑の色が見て取れた。

 

「シ、シロコ先輩!なんでわざわざ羽付きをこんなとこ連れてきたりすんの!?」

 

 セリにゃん!この際セリにゃんでもいいから、なんとかして!

 

「セリカ……セリカ、ごめん。セリカは先に教室に戻ってて。羽付きのことはこっちでちゃんと処理しておくから」 

 

「えぇ!?でも……」

 

「いいから」

 

「な、なんなの……意味わかんない……」

 

 セリカは私がシロコに追い立てられてここに来るのを見ていたのか慌ててここへ走ってきたようだ。しかし、シロコににべもなくあしらわれ、肩を落としてトボトボと校舎へ帰っていった。

 シロコはそんな背中を見送ると改めて私に向き直る。

 

「さて……」 

 

「ひぃっ!?」

 

 “処理”される!?

 

「こほん……ちょっと乱暴だったかな。下手に加減してたらこっちがやられる可能性だってあったから」

 

「……?」

 

「……シロコちゃん?」

 

 なんなのこれ、なにかの儀式なの?ノノミもわかってなさそうじゃん!意味不明だよ!やめなよ!こわいよ!

 

「シ、シロコちゃん。これってまさか……」

 

 知っているのかノノミン……!?

 

「……その制服、初めて見ました〜☆」

 

 ノノミさん!?何を言い出すんです、そんなわけないでしょ、なんの変哲もないヘルメット団の制服でしょ!?やっぱりヘルメット団って人間じゃなくて路傍のゴミくらいにしか認識されてないの!?

 

「うん。それにそんな格好じゃ寒い……よ」

 

 寒いわけあるか!むしろ誰かさんから必死で逃げ回ってたおかげで暑いよ!汗びっしょりでしょ、見えてないの!?

 なによりシロコ自身が、無理があると自覚しているのか歯切れの悪い言い方になっていた。 

 

「寒いよね?」

 

「寒いですよね〜?」

 

「はい、しゃむいれす……」

 

 言われてみれば目の前の2人と同じ言語を介しているはずなのに全くコミュニケーションをとれていないし、とれる気もしないせいで寒気がしてきた。

 

「シロコちゃん、なにしてるのさ……ノノミちゃんまで……」

 

 ホ、ホシノ!よく来てくれた!この2人なんとかし……てくれるわけないよな。ホシノだもんな。取り込み中なんだからあっちいっててよおじさん。

 

「シロコちゃんに頼まれちゃいまして〜」

 

「……ダメ?」

 

「ダメってわけじゃないけどさ〜」

 

「……ちゃんと面倒みるから」

 

「そんな野良犬じゃないんだから……」

 

「羽付きは犬なんかじゃないよ、ホシノ先輩」

 

 キッパリと動物扱いを否定してくれたシロコに胸が高鳴った……りはしなかった。

 

「犬ならもうちょっと聞き分けがいい。だから羽付きは犬じゃなくて猫」

 

「いや、タチですけど」

 

「うへ……そういう関係だったの?」

 

「……?タチってなに?どういう生き物?」

 

「タチっていうのは──」

 

「羽付きちゃん?シロコちゃんに余計なこと吹き込んだら口を縫い合わすよ?」

 

「は、はひ」

 

「そういえばどうして羽付きちゃんなんですか、シロコちゃん?新しい生徒を捕獲するのは賛成ですけど、羽付きちゃんなのはなにか理由があるんですか?」

 

 新しい生徒を……捕獲?今までの流れってそういう儀式だったの?そういえばノノミもわりとそっち側の人間だったっけ……孤立無援のアヤネの胃が危ぶまれる。

 

「羽付きは……昔の私と同じだから」

 

「シロコちゃん……」

 

 どういう意味だろう?昔の、シロコ?知らない!もしかしてメインストーリーのネタバレですか、やめてください!

 

「そんなに自分を卑下しなくてもいいんだよシロコちゃん」

 

「そうですよ!シロコちゃんは出会った時から素直な良い子でした!」

 

 おい……おい!

 

「ん、そうじゃなくて……まあいいや。あとは羽付きは身の程知らずな目標ばっかり立ててめげずに頑張っちゃう子だから。それが羽付きのいいところでもあるけど、放っておいたらそのうちきっとホントに手に負えない相手に喧嘩を売ってヒドイ目に遭わされる」

 

 そんなことは……ない?ないでしょ?ないよね?

 

「……そっか。でもねシロコちゃん、羽付きちゃんは似てるっていってもあの時のシロコちゃんじゃないし、シロコちゃんもおじさんじゃない。だからおじさんのやり方を再現したってうまくいくわけないよ」

 

「……ん」

 

「なにより、あの時のおじさんも褒められたやり方じゃなかったからね〜。もっと上手くあの場を納めるやり方があったはずなんだよ。だから、シロコちゃんはシロコちゃんのやり方でやった方が上手くいくはずだよ。大丈夫、シロコちゃんはおじさんなんかより優しくて器用だから、きっと上手くやれるよ」

 

「私のやり方……ん、わかった。やってみる」

 

「うんうん☆私もお手伝いしますよ、シロコちゃ……シロコ、ちゃん?どうして銃を構えるんですか?」

 

 おもむろにライフルを向けてくるシロコ。うん、違うよね?私には事情はわからないけど、少なくとも銃を使う流れじゃなかったことだけはわか──

 

「いぎゃあ!?……い、いたい……や、やめ……撃たないで……」

 

 シロコはなんの躊躇もなく引き金を引いた。逃げ場はないことはわかっていても足が勝手にシロコから距離を離そうともがく。すぐに背中が壁に当たって、それ以上退がることはできなくなった。

 

「今日は随分と大袈裟なんだね、なにかあった?まあいいや、好都合。これ以上撃たれたくなかったら──」

 

「シ、シシ、シロコちゃん!ストップ!ストップ!」

 

 一瞬呆けていたが、我に返ったホシノが銃口を逸らす。シロコはホシノと顔を見合わせて首を傾げた。

 

「……ダメ?」

 

「ダメだよ!?」

 

「ダメかぁ……」

 

「うん……言われなくてもわかってて欲しかったかな……」

 

 シロコは頷いてライフルをホシノに預けると指を鳴らしながら歩み寄ってくる。

 

「じゃあ、レイ。脱いで」

 

 ……ぬ?…………ぬげ!?

 

「えっ、えっと、む、無理です!嫌です!」

 

「……じゃあ、仕方ない。脱がすね」

 

「な、ななな、やめ!近寄らないで!こ、ここ、心の準備が……あっ」

 

 

 

 服……ではなく靴を奪われた。靴下は残された。こうすることで前のように裸足に素手が触れるよりも、布の滑らかな感覚により効果的になる。足の裏をくすぐる感覚が、ね。

 くすぐりなんて可愛いものと、この身体になる前は高を括っていたが、弱い人からすればそんなことはない。息ができない状態が長時間になればそれはもはや首をしめてるのと変わらない。立派な拷問である。

 

「はぁ……はぁ……も……やめ……」

 

「シロコちゃん、さすがにやりすぎだよ。そろそろ──」

 

「ん、もうちょっと。前頭葉が酸欠になれば……」

 

「ホントになにする気!?」

 

「ぁぁぁ……ゲホッ……い、ぎ……」

 

 ほんとにしんじゃう……やめて、たすけてぇ……

 

「歪んだ人格は一度リセットするべき。すべてを0に戻して、教育し直す」

 

「はは……あははは……むりだよそんなの……のうみそも、からだも……ぜんぶいれかわっても、なおらなかったのに……なおせるわけがないじゃん……いまさら……ふふ、ふふふ」

 

「……シロコちゃん。ここまでだよ」

 

「ん……」

 

「しかたないでしょ……いちばんさいしょにおもいうかぶのは、そういうかんがえばっかり…………うっ」

 

 

 

 目が覚めるともはや見慣れたアジトにある救護所の天井が目に映った。

 なんだか意識が朦朧としてとんでもないことを口走ったような気が……やめよう、気のせいだ。せん妄だ。そういうことにしておこう。思い出す度に枕に顔を埋めてのたうち回るハメになってしまう。

 身支度をして救護所から出るとリーダーの部屋へと向かう。

 

「ああ、レイ。おはよ……」

 

「リーダー!」

 

「な、なに……?」

 

「もうダメです!無理です!やめましょうこんなこと!」

 

 襲撃なんか続けてたらそのうち手違いで殺られちまうよ!黒服に協力してホシノ一人をどうこうしたところで確実にシロコにぶっ殺される!ただでさえくすぐり酸欠ロボトミーしようとするくらい容赦ないのに!アビドス生に傷なんてつけた日には……お、恐ろしい。楽に死ねたらラッキーだろう。

 

「ちょっ……なんなの、待ちなさいよ。アビドスの連中になにされたのか知らないけどそんな簡単に辞められるわけじゃ──」

 

「私にいい考えがある!」




渡里レイちゃんのイメージです。最初はイチカそのものになっちゃったのでアホ毛とかアフォ毛とかアッヒョwww毛とかで差別化を図ってます。
名もなき女の子メーカー様にて作成しました。

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