ここは『キヴォトス』弱者に口なし 作:GAU-8
「ここにいたんだね、羽付きちゃん」
「くっ……!」
まさかホシノが黒服に協力するなんて……結局黒服の言う通り最初から無駄な抵抗だったの?
……銃は再装填が必要、利き手は使えない、オートマタ一機の相手も怪しいこの状況、おまけに相手はホシノときた……大人しく捕まったほうが賢明だろう。
賢明だろうけど……賢明だったらホシノを倒すためのトレーニングなんかとっくの昔に止めてるじゃんね。この土壇場でなにもしないで諦めるなんてことある?あるわけない。たとえ一縷にも満たない微かな望みであったとしても……
いや、肉弾戦なら私に分があるかもしれない。キヴォトス最高の神秘でも筋肉を使うことは普通の人と同じだと思うからだ!……銃も構えずゆっくり歩みよってくるホシノが間合いに入ったところで立ち上がる。
「へっ?羽付きちゃん?なにする気?」
「おやおや……クックックッ」
「うぉおおおおお!!」
「ちょっと!は、羽付きちゃん!?」
渾身の左ストレートはホシノに難なく躱される。無論、想定内だ。振り向きざまに回し蹴りを……するつもりが足のふんばりが効かずに拳を空振りした勢いそのまま地面に倒れ伏す。
「も、もお〜。まともに動けないのになんで向かってくるかな〜?」
「うぐぐ……そ、そうだよ。こんな状態の私をこのままナブっても後味よくないでしょ?」
普段なら5発はぶち込まれるくらいの時間をかけてなんとか立ち上がってホシノに向き直るが、不思議なことにその間追撃がくることはなかった。
「そりゃそうだけどさぁ……そもそもおじさんは──」
……後味がよくない?その便所のネズミのクソにも匹敵するくだらない物の考え方が命取りよ。このキヴォトスにそれはない。勝利して支配する、それだけよ。それだけがルールよ!以下省略!
「うひゃっ!?」
右腕を無理矢理振り回して自分の血を飛ばす。これで目潰し……とまではいかなかった。かすりもしなかった。ただ、ホシノは服が汚れるのも避けようとしたのか大きく体勢を崩す。
「勝った!しねぇぇい!」
「い、いい加減にしてっ!」
「ひぎゃんっ!?」
私の蹴りはホシノを捉えるその寸前、本来の役目を忘れてただの鉄パイプになったショットガンによって叩き落とされた。
あ、あしが……ちくしょう、思いっきり脛ぶん殴りやがってぇ……もうどこが痛いのかもわからないくらい全身が痛い……た、立てない……
「ク、クク……ククク……クックックックッ!」
なに笑ってんだ黒服……!
「羽付きちゃん?」
「ひ、ひ、ひえええぇっ!!」
上から覗き込むように、視界いっぱいに広がるホシノの顔。抵抗できない状態で、そんな状態にした相手が笑顔で迫ってくる、こんなに恐ろしい場面はそうそうないだろう。
「もう……なんでこの状況で真っ先にすることがおじさんに攻撃なのさ?」
「黒服に雇われて私を捕まえに来たんだろ」
私を、売ったんだろ。悪魔が。反吐が出る。
「あのねぇ、おじさんがあんなのに協力すると思うの?そんな人に見える?」
「思います、見えます」
「……」
「な、なんちゃって──いたぁい!」
ホシノはまたにこりと笑うと、今度は頭に向かって重量3kgの射撃機能付鋼鉄鈍器、アイオブホルスを振り下ろした。
「羽付きちゃんとは後でお話するからちょっと大人しくしてて」
そう言ってホシノは黒服と対峙する……なんですか、助けてくれるんですか?助けてくれるならなんで殴るんですか?しばきますわよ?
「ご無沙汰しております、暁のホルス……いえ、小鳥遊ホシノさん、でしたね」
「そのまま一生ご無沙汰しててもよかったんだけどね。で?大人がこんな人目につかないところで女子高生相手になにしてるの?誘拐?」
「そんなところです。クックックッ」
「……あっさり認めるんだね。警察呼んだほうがいいかな?」
「構いませんが、それで事態が動くことはないでしょう。何度も捕まっているはずの彼女が、ここにいることからも明白ではありませんか?」
「……」
アスファルトおいち……え、なんでこっち見てるのホシノさん?私のことなら気にしないでいいよ。キヴォトスじゃ道路にチンピラが転がってるなんてありふれてるでしょ?石ころと大差ないじゃんね?
「無駄は省きましょう。我々は彼女を雇用するつもりです。企業の所属として規律を学べば、これまでのような無法を働くことはなくなるでしょう。金輪際アビドスには関わらせないとお約束いたします。いかがでしょうか、小鳥遊ホシノさん。この場は引いていただけませんか?」
「……そういうわけにはいかないかな。後輩ちゃん達にも悪いことするな、なんて言っておいて誘拐現場を見なかったことにはできないよ」
「何故でしょう?あなたには彼女をかばう義理などないではありませんか。むしろ引き渡す理由ならいくらでもあるというのに」
「理屈なんてどうでもいいよ。大人が力づくで子供を好きにしようとしてるのが気に食わないだけだから。それで?どうするの黒服」
「……そうですか、致し方ありませんね。あなたと敵対するリスクを冒してまで欲するほどの方ではありません。渡里レイさんのことは諦めましょう……ですが、我々はいつでも優秀な人材を欲しております。以前したスカウトの件は現在も有効ですので、どうかご一考くださいね、小鳥遊ホシノさん」
「お断りだね」
黒服は苦笑いしながら、ホシノから私へと目線を移す。いや、どこが目でどこが口なのかもわからん顔してるけど、顔がなんとなくホシノと話してる時より下に向いてる気がする。
「あなたはどうでしょう、渡里レイさん。気が変わってご自身の意思で私の元へ来てくださるというのであればいつでも歓迎いたします。ご連絡をお待ちしておりますよ」
「お断りだね」
「クックックッ、残念です。それでは、お二方、またお会いしましょう」
黒服はその特徴的な笑いの残響を残しながら夕闇に溶けるように路地裏の向こうへと姿を消した。
「……」
「……なんか不服そうな顔してるね羽付きちゃん」
「……別に。タスケテイタダイテアリガトウゴザイマス」
ホシノがでてきた途端にあっさり引き下がるんだなって……私相手にはなりふり構わず好き放題やってきたくせに……やはり暴力か?暴力がすべてを解決するのか?
「いたいいたいいたい!しぬ!ころされる!だれかー!」
「そんなに騒いでも、こんなとこ誰も来ないよ」
「ひぇっ……」
黒服がいなくなると、ホシノも姿を消した。
動けないまま、なんだったんだと頭の中の大量の疑問符を処理していると、しばらくしてホシノが戻ってきた。
そのまま、足早に歩みよってきておもむろに私の右腕を鷲掴みにすると、なんと傷口を覗きこみ始めた。
なんですか!?キヴォトスでも銃創が珍しいのはわかるけど話悪趣味ですよ!?ていうか痛いんですけど、放して!
「う〜ん、弾は抜けてると思うけど……すぐに病院に行って診てもらった方が──」
「わ、わかったふうな口を……なんですかあなた医者ですか?医師免許見せてもらっていいですか?」
「そんなんじゃないけど……おじさんも昔はヤンチャしてたから、もしもの時のために勉強だけはしておいたんだ。まあ結局銃でこんな傷つけられるようなことは一度もなかったし、見るのも初めてかな……とんでもない無茶したみたいだね羽付きちゃん」
「じゃあ私とそう大差ないよね!このくらいツバつけときゃ治る、ほっといて!」
「中に弾の破片が残ってたら大変だよ?」
「病院はダメ……」
学生証が保険証の代わりになって便利?なんだそりゃ、学校にも保険にも入ってない人の気持ち考えたことあるんですか!?
「どうしてそんなに病院行きたくないの?」
「……オカネナイ」
「おじさんが立て替えといてあげるよ」
「ガクセイショウイエニワスレタ」
救急車を呼ぼうとしているのかスマホを取り出したホシノがピタリと手を止めて、こちらを怪訝な顔でこちら見る。なんだその顔、信じてないのか?
「……チューシャキライ。ビョウインイヤ」
「はぁ〜」
おい、コラ!なんで今のはそんな簡単に信じるんだ!?私をいくつだと思ってる、そんなわけないだろうが!
「じゃあ、アビドス高校で応急処置だけでもしよっか。付いて来て」
「いや、ホントにそこまでしてもらう義理は……」
「せっかく助けたのにおじさんの知らないところで結局捕まったなんて後味悪いでしょ。シロコちゃんも心配してるし……嫌とは言わせないよ」
ゆ、誘拐だ!
「……なんでシロコさんが?」
「仮病使ったでしょ?家に行ってもいないし、モモトークも既読つかないって。なんでそんなことしちゃうかな?大事な後輩ちゃんにそんなことされたらおじさん悲しいよ。もうこ──」
「だ、だだ、だって未読40件とか怖くて開けないし……」
そもそも家教えてない……あっ、未読50件になってる……こわい……
「あ〜、それ多分ほとんどはスタンプだと思うよ。シロコちゃん、常習犯だから……ま、事情があったみたいだし仕方ないね。脅かしすぎたんじゃないかって心配してたから、そうじゃなくてよかったよ」
……途中、歩兵戦闘車含むカイザーの一個中隊が道路に転がっていたことも、チンピラみたいな態度だったし我が物顔で勝手に封鎖線なんか引いてたからつい、ね……うへへ。なんて言う照れ笑いサイコパスおじさんのことも見なかったことにしてアビドス高校へ連行された。
次の日はアビドス高校、保健室のベッドで午後までしっかり寝た。おかげで右腕の傷はバッチリ完治、とまではいかないが穴があいていた場所はすっかり塞がって若干へこんでいる程度だ。動かすのにも支障はない。
目覚めてからは、シロコに連れられて対策委員会の部室へ。ゲームのスチルがそのまま目の前に現れて感動した。それからセリにゃんに度胸を褒められた、ありがとう!
「ええっと、それで渡里レイさん。あなたはワラワラヘルメット団の羽付きさんで間違いありませんか?」
「……はい、間違いありません。ごめんなさい」
ホワイトボードの前に椅子を用意してもらったものの、さんざん撃ち合ってきた5人、いやアヤネは抜いて4人?から突き刺される視線にいたたまれなくなって床に正座することにした。
「シロコさん、黙っててごめんなさい」
「シロコちゃん、気づいてなかったの?」
「ん、気づいてたよ」
「えっ!?……い、いつから?」
「最初……じゃなくて、2回目に会ったときには。いつ正直に話してくれるのかとずっと待ってた」
「うぐぅ……ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……」
バレていないなどと、その気になっていた私の姿はお笑いだったぜ……
「もう二度とアビドス高校を襲ったりしません……私にできることならなんでもします……許してください……」
ジャパニーズソーリースタイル、ドゲザ。カイザーと手切れになった以上どの道アビドス襲撃なんて続ける理由はないけど二度と襲ったりしません!そして下げるだけで何故か価値が生まれる無料の頭!おまけにお手伝い券もつけちゃう!だから許してお願い!
「なんでも……なんだかわくわくしますね☆」
ノノミさん!?あの、なんでもとは申しましたが少しは、こう、手心というか……
「ん、ならアビドス高校の生徒になるべき」
うわ、きた……
「シロコ先輩なに言ってるの!?こいつらは私達に銃を撃ってきたのよ!それをわざわざ生徒にするなんて、絶対反対!」
そうだそうだ!そうなるだろ普通!なに考えてるんだシロコ先輩!
「私はいいと思いますよ。人手が多いに越したことはありませんし」
「ノノミ先輩まで……ほ、ホシノ先輩!ホシノ先輩は反対でしょ!?特にしつこくこいつに絡まれてたんだし!」
「うへぇ、おじさん?ん〜、まあ、みんながいいならいいんじゃないかな。あんなの野良猫がじゃれてきたようなもんだし、攻撃されたうちに入らないよ」
「なんだとコノヤロー……!」
「レイ、座って」
「ぴゃい……」
ホシノにじゃれてやろうかと立ち上がったところで、シロコが私の羽根を1枚摘む。体中を悪寒が駆け回って思わずシロコの命令に従ってしまった。
「飼い慣らされてる……」
「だ、誰が……!ひぃん」
「これなら悪い事する心配もない。いいでしょ、セリカ」
「うっ、だ、だからって……あ、アヤネちゃん……」
「わ、私は……そんな目で見ないでよセリカちゃん」
「アヤネ?」
対策委員会の視線がアヤネに集中する。これアヤネが賛成したらセリカが折れて全会一致になるやつ?私の意思は?関係ない?お詫びだから?
「私は──「お願いします、神様仏様アヤネ様!アビドスのためならなんでもします!強盗でも放火でも殺人でも!」──あっ、反対です……」
よし。
「レイ?」
「ひぃぃぃ!羽根引っ張るのやめてください!ぬ、抜かないでぇ!」
「ん……でも3対2。多数決で可決」
「いやぁ、この人数だから全会一致でいきたいよね。なにより本人が嫌がってるのに、無理矢理ってのは良くないよシロコちゃん。今の学校に友達だっているだろうし……」
「……レイは学校通ってない。住む家もない」
「えっ!?」
なんでそんなこと知ってるの!?
「そ、そんなことないですよ!江戸──」
「そんな学校ない」
「え、えと、ごめんなさい。本当はチェ──」
「ん、アヤネに調べて貰う。もしまた存在しない学校だったらその時は……」
シロコは摘んだ羽根を見せつけるようにゆっくりと引っ張る。伸びきってピンと張ったところで手を止めた。次の私の台詞如何であの羽根の運命が決まるだろう。
「が、学校は……通ってま……ま……しぇん」
無理ぃ……こわいぃ……
「そんなの、どうせ退学になっただけでしょ?」
「レイ。生まれはどこなの?小学校の名前は?中学校は?家族は何人?姉妹はいる?」
「あっ、えっ、そ、そんな一度にいろいろ聞かないでください!」
「ホシノ先輩これって……」
「そっか、それでシロコちゃんが……」
「えっ、お二人はなにか知ってるんですか?」
「ちょっと、答えられないの!?まさか記憶喪失なんて言いだすんじゃないでしょうね!?」
「レイ。大丈夫だから正直に答えて、正直に。もしこの期に及んでまだ出鱈目言うようなら……わかってるよね?」
「わ、わ……わァ……ァ……」
隅でなにやら訳知り顔なノノミとホシノ。そんな二人の様子が気になるアヤネ。右から左からガンガン詰めてくるセリカとシロコ。ここからアビドスに頼らず、この場を切り抜けて、今までしてきたことを清算する方法は、ええと、ええっと……
「そうだとしてもこれ以上アビドスには迷惑かけられません!」
ほぼ処理落ちした私の脳みそが発した言葉で、主に私の周囲50cmくらいで墳丘していた場は静まり返った。
「迷惑なんかじゃない。気にしなくていい」
「それはシロコさんだけでしょ?」
「そんなことないよ。だから、ね?」
なんて言いながら羽根に手を伸ばすシロコ。
「そ、それやれば私がなんでも言うこと聞くなんて思わないでください!」
「行く当てはあるの?」
羽根にかかったシロコの手をそっと放したのは、普段より2割くらいふにゃふにゃ度合いが減ってなんとなく真面目な顔をしたホシノだった。
さてどうするかと3人の眼前黙りこくっているうちにスマホに着信があった。
「ちょっと失礼」
「ん、失礼させない」
「で、電話!電話してくるだけですから!」
今日は事あるごとに羽根に手を伸ばすシロコの手を逃れて廊下に出る。電話の主はリーダーだった。
「もしもし」
『良かった。まだ無事だったのね』
「なんとか」
『今どこにいるの?』
「アビドスに……」
『アビドス!?カイザーの庭みたいなとこじゃない!なんでそんなとこに逃げてるのよ、すぐに離れて!』
カイザーのことはもう大丈夫だ、と思いたいが、なにせ諦めるなんて言ったのはあのファッキン黒服だ。すごく信用できる。今後もカイザーの追っ手は警戒すべきだろう。
「はい……そのことなんですけど、カイザーの影響が弱くて治安が良くて廃墟が多い場所知りませんかリーダー?あ、あと賞金首が多い場所がいいです!」
『注文が多い……でもそうね、それならトリニティ自治区がいいわ。あそこならカイザーは大きな顔はできない、こそこそ動こうとすれば却ってティーパーティーの目を引く。他の学区より遥かに動きにくいはずよ』
「トリニティ……成る程。でも住む場所が……廃墟なんてありますかね?」
『カタコンベがあるわ。大昔の共同地下墓……住宅が、あるわ。うん、見ようによっては住宅よね。あそこは迷路みたいになっててトリニティですら全容は把握できてないの。カイザーなんてまず入ってこれない、安全なはずよ。ちょっと、その、居心地はあれかもしれないけど贅沢言ってる場合じゃないもの、でしょ?』
「はい、もう、雨風しのげるならどこでもいいです」
かたこんべ?共同地下住宅?遺跡かなにか?なんでもいいや、住めば都って言うからね!
「詳しいですね、リーダー。もしかしてトリニティの生徒だったりとか?」
『……そうだけど、だからなに?』
「えっ!?」
『なによその、えっ、って?なにか文句でもあるの?』
「い、いえ……てっきりリーダーはゲヘ──」
『……ゲヘ?なにかしら?まさか私がそのゲヘなんとかの生徒だと──』
「そ、そんなことより!そっちは大丈夫なんですか!?私を捕まえるように命令されたんですよね!?」
『……ええ。ワラワラヘルメット団は解散することになったわ』
「へぇ……はい!?」
なんで!?私のせい!?どうしよ、団員に恨まれない?やられる前にやっとくか?特にパイセンとか……
『リーダーはクーデターにあって失脚、話も聞かないリーダーが消えたワラワラヘルメット団はカタカタヘルメット団に吸収合併。もともとカタカタはそのつもりだったらしいから、ま、筋書きとしてはこんなところかしら。カイザーもいちいち団員一人一人まで把握してるわけないでしょうし、この件はこれで消滅』
「それってリーダーだけが失業ってことですか?そんな……」
『いいのよ。街のチンピラをいくらかき集めたところで私の目標は達成できないってわかったから……いい?私が今までに築いてきたもの全部捨ててアンタ一人に投資するんだから、後悔させないでよね』
「……は、はい!」
『……弾薬と、少しだけど餞別用意したから座標を送るわ。見られないように持っていって』
リ、リーダー……リーダーの敵は私の敵です!たとえ刺し違えてでもぶっ殺してみせましょう!
『また連絡するわ、じゃあね』
「待ってください!リーダーの倒して欲しい相手って誰なんですか!?」
『……聖園ミカ』
……コンクリートの壁に生卵をぶつけて木っ端微塵になる様を愉しむ趣味でもあるんですか?
「行く当てあります!」
部室に帰って対策委員会の面々の前でそう宣言する。席を立って羽根を掴もうとするシロコから逃げながら話を続ける。
「ト、トリニッ、トリニティです!あそこなら白昼堂々私を捕まえられるほどの戦力は運用できま、せんっ!し、しつこ……隠れてなにかしようとすればティーパーティーにぃッ……警戒されまひゅ」
ついにシロコに捕まって床に崩れ落ちた。ホシノが一言注意するとシロコは渋々といった様子で手を離して帰っていった。
「それに住めそうな廃墟もあてがあります!」
「廃墟ってなに?廃墟に住んでるの、嘘でしょ……?」
あ、やべ。これは言わなくてよかったやつ。セリカにドン引きされてる……
「……そんなにアビドス高校に入るのが嫌なの?」
「そ、そういうわけでは……ただ追われてる身なので、今は絶対に無理です。シロコさんの気持ちは本当にありがたいですけど、他の皆さんのこともありますし……」
「セリカ……」
「うぇっ!?わ、私!?」
「このままだとレイがどこかで野垂れ死にするかも……」
「うっ。わ、私だってそんなことになって平気なほど恨んでるわけじゃないけど……でもこっちだって借き、じゃなくて!この人に構ってる余裕なんて……」
「まーまー、シロコちゃん。羽……レイちゃんにもちゃんと考えがあるみたいだし、やっぱり無理矢理ってのは良くないよ、ね?」
「むぅ……」
シロコは席を立ってこちらへ向かってくる。すわ、また羽根かと身構えたが、手が届く間合いに入る前に立ち止まった。
「毎日定時に生存報告して」
「は、はい」
「途絶えたらなにかあったと判断して捜索に入る」
「それは、えぇと……はい。お願いします?」
「ドローンも直ったから今回みたいにギリギリになることはないから安心して」
「空から探してくれるってことですか?」
「ううん、GPS信号を傍受するの。ライディングに使うときの応用」
ちょっと待て……ちょっと待て!教えてないはずの家に行ったのも、百鬼夜行で現れたのも、深夜に貯水塔の上にたまたま現れたのも全部……ジィーピィーエス!?
「トレーニングもサボっちゃダメだからね。筋肉というものには鮮度があるんだよ。トレーニングをサボればサボるほど筋肉とは死んでいくものなの。真の筋肉とは──」
「も、も、もちろんです!お世話になりました!このお礼はいずれ必ずいたします!暗くなる前にトリニティに入りたいので!さようなら!」
飛び出してから気づく、お詫びになんでもするって話で、ではなにをするかということが議題ではなかったのかと……まあいいか。
「……どこまで付いてくる気ですか?」
「うへぇ、まさか気づかれるとは。でもまあその調子なら大丈夫そうだね」
「うわっ、ホントにいた……きしょっ」
「……ねぇ、なんかおじさんにだけ当たり強くない?恩を着せるんじゃないけど一応恩人だよね?」
「モチロン。カンシャシテル。サンキュー!」
「うへ……」
高校を去ってからなんとなく気配を感じるような……感じないような……どうせ周りに人いないし、外れてもいいや。と独り言を言ってみれば姿を現したストーカー、名をば小鳥遊ホシノとなむ言いける。
「トリニティまで送っていくよ。黒服はあんなこと言ってたけどまだまだ用心しといた方がいいからね」
「……ワカッテマスヨ」
「ほんと?じゃあ良かった。心配することもなかったかな?」
隣にいるとわかる。ホシノはそんな風にのほほんと喋りながらもすれ違う人や死角、物音、周囲のありとあらゆるものをチェックして安全を確認しながら歩いている。
こんな職業軍人みたいな生徒、いったいどこに隙があるというのか?どれだけ経験や訓練を積み重ねたらホシノの足元に及べるのか……はぁ。
「……ごめんね。本当はアビドスに置いてあげたいけど、今いる後輩ちゃんを守るだけで手一杯なんだ」
「はぁ〜!?なにを私が追い出されたみたいに言ってんの!?私の方から拒否したんですけど!?」
「うへへ……そうだっけ?ありがとね」
なんのありがとうだ?喧嘩売ってんのか?
「アビドスなんかこっちから願い下げなんですけど!」
「そこまで言わなくてもいいんじゃない?聞き捨てならないな……」
「ご、ごめんなさい……」
助けるのか始末するのかどっちかにしてくだち……
「落ち着いたらまたアビドスに来なよ。鍛えてあげるよ、一人でキヴォトスに放り出すにはまだまだ心配だからね」
「それは、どうも……あ、そうだ!諸々のお礼とお詫びに助けが必要になったら呼んで!絶対助けになるから!」
「え……うん。どしたの急に?」
勝確イベントに首を突っ込んでカイザーにお礼参りする!ついでにアビドスへの借りもそれで返す!完璧だ!あったまいー!
「ふふふ……私には未来が見えるのだよ。一つ予言をあげよう。これからアビドスにはいろいろあるだろうけど最後はすべて丸く収まるから、どんな状況になってもハッピーエンドが待ってると信じたまえよ!はっーはっはっ!」
「銃創よりも昨日おじさんが叩いた所の方が重傷だったのかな……?」
くぅ~疲れましたw……はい。こんな行き当たりばったりな小説のようななにかにこんなところまでお付き合いいただきありがとうございました。ここまで続けてこられたのも全て読者の皆様方のおかげです。
話数は最初の考えていた倍かかって、内容は半分くらい削ったってマジ?主に一瞬で消えた阿慈谷さんとかヒフミさんとかファウストさんとか見通しが甘すぎます!
次章はタイツリーを完走して、civ7に飽きて、ワイルズに飽きて、章の流れを最後まで作って、ある程度書き溜めてから始めますのでお待ちください!
次章、墓暮らしのトリニッティ。
タイトルは予告なく変更されるます。
主人公にはどれくらい強くなって欲しいですか?
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野生の無自覚ノンポリ戦術核弾頭
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荒事で戦力として期待できる武闘派生徒
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キヴォトス基準で普通のネームド一般生徒
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モブ以上ネームド未満レベル
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床ペロ大好き床ペロソムリエ