ここは『キヴォトス』弱者に口なし   作:GAU-8

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始動

「……そうか、君か。私のなんかいみしんなわあど」

 

「君ならばしぬほどまわりくどいひょうげん……だが、君のおかげであの子の未来はせいあちゃんすらんぐ」

 

 ……声が?

 

「君はあの子をどこへ導くつもりなんだ?」

 

「……君がもたらすものが福音なのか、あるいは悪魔の甘言に過ぎないのか、慎重に見極めさせてもらうとしよう」

 

 ……誰?

 

「おや、聞こえていたのかい?すまない、驚かせるつもりはなかったんだ。私は──」

 

 ちょっと待った!当てる!当てるから!

 

「……それは不可能だよ、私には君との面識はない。だから──」

 

 その中身に反して知性の欠片も感じないドスケベ改造制服!

 

「……すまない、今なんと言った?どうやら響きはよく似ているようだが別の言語を話しているらしい、全く意味が理解できな──」

 

 キヴォトスの七つの古則その二、ケモ耳娘のケモ耳の大きさは性欲に比例するか?を体現するような大きなお耳!

 

「ち、違う!キヴォトスの古則はそんなものではない!い、いや、それよりも君は私を──」

 

 声帯が未実装なのに意思疎通できるその神秘!

 

(なにを言って……?こ、声が出ない!?何故だ!さっきまで普通に話していたじゃないか!まさか……君の認識に引っ張られているのか、やはり君は私を知っているな!?)

 

 あなた様は──

 

(ま、待て!まだ起きるな、君に聞きたいことが山程……私を置いて行くなぁ!)

 

 

 

「──セクシーセイアちゃん!」

 

「……は?」

 

「あ、あれ?リーダー?」

 

 気がつくと目の前には久方ぶりの暴君ロリがいて小さなお目目をまん丸にして私を見ていた。

 はて?なぜリーダーが?というかここはどこ?と畳に敷かれた布団に包まれていた上体を起こして辺りを見渡せば、頭が勝手に四畳半と見積もった生活感溢れる狭い部屋に無理矢理突っ込まれたベッドとベッドの下に足を突っ込んで用意された私の寝床。そして空いたスペースにある丸いちゃぶ台とその上に用意された2人分の朝食……リーダーは部屋を一周見渡してきた私と目が合うと微笑みを浮かべた。

 そうか、わかったぞ!カイザーに追われた私はリーダーと駆け落ちしてこの新築ボロアパートで享楽にふける退廃的な生活を──

 

「──痛ってぇ!?」

 

 リーダーは笑顔のままで、自慢のマグナムの銃身を掴むとグリップを私の頭に力いっぱい振り下ろした。

 

 

 

「目は覚めたかしら……?」

 

「……はい」

 

 和室のちゃぶ台を囲んでリーダーお手製68点くらいのブリティッシュな朝食をご馳走になりつつ、間違ったことを言えば即座に鉄槌を構えて間違っていると教えてくれるというありがたいお手伝いを受けながら状況を整理した。

 まずここはワラワラヘルメット団から足を洗ったリーダーの新しい潜伏先で間違いないが、私と一緒に逃亡した場所ではないし、私はここではなくトリニティの光も差さない地下で寂しい一人ぐらし……いや、かつては無数の人間だったカルシウムさん達と同居中。

 ここは賞金首ではなくナギサの個人的な依頼である大奥トオルが通うエイルル高校を探るのにちょうどいい位置にある。宿代を浮かすためにも仮拠点として使わせてもらえないかと聞いてみたところ受け入れてもらえたので早速泊まりに来てみたわけだが……

 

「もう一度聞くけど本当にセイア様のことは知らないのね?」

 

「はい!全く知りませんそんな奴!」

 

「あ?」

 

「愚かで不敬なことにも全く存じ上げておりませんです!はい!」

 

「そう。まあそういうことにしておいてあげる。けれど次にもし聞き間違いだろうが同じ言葉を耳にしたら……」

 

「……したら?」

 

「殺すわ」

 

 そう宣言するリーダーの目に光はなかった。殺るといったらあらゆる手段を講じて確実に殺る、そんな決意を感じた。

 

「き、肝に命じます!」

 

 リーダー曰く、私が起き抜けにセイアに対してリピートするのも憚られるようなとんでもなく侮辱的な言葉を叫んでいたと言うのだ。

 全く記憶にない!なぜ急にそんな言葉を口走ってしまったのかはわからんが……リーダーの聞き間違いということにした、というか実際その可能性の方が高い!だってセイアとは前世の知識以外に接点なんてないんだから!なんで私がなんの脈絡もなくセイアを侮辱すると言うのか!冤罪だ!

 心臓を捧げるポーズで心にもなくありもしない罪を二度と犯さないと肝に命じるフリをする私を見ると、リーダーはいつの間に注いだのか自分の分だけ用意した紅茶を一口。そして小さなため息をついた。

 

「……ま、相変わらずで何よりだわ。どう?トリニティの暮らしは?」

 

「順風満帆です!」

 

 いまのところカイザーからの追手もない。ちょっとしたアクシデントからペロキt──ヒフミマイフレンドとの取引を禁じられたのは痛いが、ナギサに教えてもらった賞金首を全部取っ捕まえれば当面の間金銭問題からは解放されるだろう。

 

「順風満帆?早速正義実現委員会と揉めたらしいじゃない。しかもツルギ委員長に直々にぶちのめされたとか」

 

「ど、どどど、どこからそんな話!?」

 

「ふふ!私だってトリニティ生の端くれよ?このくらいの程度の情報収集は朝めし前よ」

 

 したり顔でない胸を張るリーダーに朝めし済みましたけど。とか言ったらまた殴られそうなので黙っておいた。この人今までゲヘナ生らしさしか見せてこなかったけど本当にトリニティ生なんだなぁ……怖。

 

「なんにせよ、アビドスにいた頃のようには行かないわよ。くれぐれも慎重に立ち回ることね」

 

「……はい」 

 

 ……あれはただの交通事故みたいなもんだから……私まだ何も悪いことしてない。

 

「……それで……その……どこに住んでるの?」

 

「どこって?もちろんリーダーが勧めてくれた地下集合住宅のカタコンベですけど?」

 

「そ、そう……不便はない?」

 

 リーダーは不思議なことにどことなくバツが悪そうだ。不思議なことに。

 

「住めば都と言いますからね!不便どころか便利ですよ!その気になればトリニティの端から端まで誰にも見られずに移動できますし!」

 

「……本当に?なにかに使えそうね、地図を作ってくれないかしら?」

 

「そりゃ無理です。ちょくちょく構造が変わってるみたいですし」

 

 朝通った通路が夕方には全く別の場所に通じてるなんてザラだ。なんなら通路そのものが無くなっていることすらある。

 

「……冗談でしょ?」

 

「いえ、本当です」

 

 地下墓所じゃなくてホグワーツ的魔法学校の跡なんじゃなかろうか。物理法則仕事して。

 

「あんたそんなとこに住んでて大丈夫なの?そのうちに出てこられらなくなって行方不明とかやめてよね」

 

「大丈夫です!私、絶対に道には迷わないので!」

 

「……大した自信ね」

 

「そういう体質?特殊能力?……みたいな?行きたい場所には絶対たどり着くんですよ私」

 

 思い返してみればキヴォトスに来てからずっとそうだった。ブラックマーケットでも、D.Uでもアビドスでも、土地勘のない場所であろうがただの一度も迷子にはなったことはない。

 はっきりと自覚できたのはカタコンベで暮らし始めてからだ。気の向くままに歩いていけばトリニティ各地に点在する最適な出入り口につく。もうそういう能力があるとしか説明がつかなかった。

 ありがたい……ありがたいけど……なんというか、しょっぱい。どうせならピンク髪の人間を第三宇宙速度で発射できる能力とかがよかった……

 

「……」

 

 リーダーは口をぽかんと空けて唖然としていた。

 しまった。キヴォトスにはパンケーキに命を吹き込んだり怪我人のところに虚空から現れたりする特殊能力がある生徒は確かにいるが、それがキヴォトスにいる生徒にどの程度認知されているのかわからない。急にこんなこと言い出しても正気が疑われるだけなのでは?

 

「え、えっと──」

 

 リーダーはちゃぶ台の反対側から身を乗り出して、慌てて取り繕おうとした私の両手を包むように力強く握る。そして鼻が当たるほど顔を近づけて興奮気味にこんなことを言った。

 

「私をセイア様を襲った犯人のところへ連れて行って!」

 

 

 

「え、えっと……そういうのは……無理……です……」

 

 試したことないけど。仮にできたとしてどっちに行くんだろう?どちらにせよ連れて行くわけにはいかないが……

 リーダーは私の答えに力が抜けたようにへなへなとちゃぶ台の向こうへ戻っていった。そしてぽつりと一言……

 

「……あっそう……使えないのね」

 

 はあ〜!?別に能力関係なしに連れていこうと思えば連れていけますけど!?知ってるがお前の態度が気に入らない!余計なこと言うからチャンス逃したね!あーあー!




書けねええええ!……はい。大変長らくお待たせいたちまちた。

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