ここは『キヴォトス』弱者に口なし   作:GAU-8

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その名は

「すごい……」

 

「へっ、へへっ!そうだろ?すげーんだよ、ワラワラヘルメット団は」

 

 パイセンに連れられやってきたワラワラヘルメット団のアジト。

 廃材やらゴミを重ねて作ったバリケードで廃墟と化したビル街の一角を封鎖し占拠している。入り口は鉄条網に、サーチライト、さらには重機関銃で固められている。

 見張りと挨拶を交わし一歩中に入れば所狭しと立ち並ぶ兵器達。非正規兵御用達の魔改造テクニカルにハンヴィー、1両とはいえM4シャーマン中戦車まである。バカでも乗れるくらい簡単に動かせて、バカでもわかるマニュアル付きのアレ。

 これではもはやスケバン女子高生の溜り場ではなくテロリストの駐屯地だ。これだけの戦力を有する連中の言う『デカい仕事』……手伝って大丈夫なやつ?国駄死国家転覆罪!ダメ!死刑!とか勘弁なんだが。

 

「ここにリーダーがいる、お前も覚えとけ」

 

「へい、パイセン」

 

 アジトイチバンタカイビルのイチバンウエノヘヤ。すぐ覚えられる。バカとなんとかは高い所が好きってやつだろうか。

 

「いいか、失礼のないようにな。怒るとこえーんだ、うちのリーダーは」

 

「へい、パイセン」

 

 おまけにすぐ怒る。と小声で追加情報が入る。数十人規模の不良集団をまとめあげるリーダー。いったいどんな人物なのだろう。

 

「失礼します!」

 

 リーダーの部屋は社長室といった趣きの部屋だった。正面にどでかいデスクが入口を向いてに据え付けられていて、その向こうには黒い皮張のいかにもな高級チェア、窓の方を向いていて座っている人物の姿はまだ確認できない。

 外の武器に加えてこの部屋全体から溢れる高級感、きっと部屋の主はとんでもない大物……いや、違った。よく見たら縫った跡やら汚れが目立つ。再利用してるだけだコレ。

 

「リーダー!この前抜けたリエの変わりの新入りを連れてきました。あたしの分隊に入れてよろしいでしょうか!?」

 

「そう。早かったのね」

 

 椅子がゆっくりと回転してワラワラヘルメット団のリーダーと対面する。その姿は……

 

「ちっさ」

 

「バ……!?おま……!?」

 

 金髪ショートのロリだ。座高が椅子の半分にも達してない。完全に椅子に負けてる。椅子に存在感が食われている。

 

「……」

 

 不意にドカンと音がして天井が目に入った。後頭部がじわじわと痛みだして自分がひっくり返ったのを理解する。

 続けて額を襲う鋭い痛み。

 

「いっっだぁっ!?」

 

 撃たれた!?全く見えなかった!?ていうかまたデコ!たんこぶ治ったばっかりなのに!

 

「ふーん、いい度胸してんじゃない。どこから拾ってきたのコイツ?」

 

「あっ……!?え、ええっと、ブラックマーケットで行き倒れてて」

 

「なにそれ?ホームレス?」

 

「はい!金もないみたいで、金さえやればなんでもやるはずです!」

 

 なんでもはしない。天井のシミを数える仕事とかは断固拒否だ。

 額を擦りながら起き上がる。リーダーはその体格に不釣り合いなどでかいリボルバーを手にしていた。大きさからしておそらくマグナムリボルバーだろう。

 あれで頭を撃たれて脳みそをぶち撒けずに済んでいるのはさすがの耐久だな、この体は。死ぬほど痛いけど。

 

「あ、あの、大変失礼致しました。本当に申し訳ございません」

 

「ふん!人を見た目で判断するやつはこの世界で長生きできないのよ!覚えておきなさい」

 

「へいっ!」

 

「それで、あんた名前は?」

 

「はい。佐藤健次郎と申します」

 

「は?」

 

 ……?あ、やっべ。つい前世?の名前言っちゃった。

 

「……変わったお名前ね。男みたい」

 

「へ、へへっ!よく言われますぅ」

 

 にっこりと二人で顔を見合わて笑いあった。そしてリーダーはまるでそうするのが当然とでもいうような自然な所作で再び銃口をこちらへ指向すると、命乞いの隙もくれずにぶっ放した。

 放たれたマグナム弾が寸分違わずさっきと同じ場所に着弾する。

 

「いぎゃっ!?」

 

「そんなあからさまな偽名使って。馬鹿にしてるの?本当に度胸だけはあるみたいだけど、礼儀がなってないわね」

 

「んぎぃ……偽名じゃないのに」

 

「なに?聞こえない。それで、あんたの名前は?」

 

 名前、名前。なにかこう、女の子っぽくて、リーダーが納得するような名前……駄目だ。撃たれたせいでうまく頭が回らん。

 

「……そんなに悩むようなこと聞いてないわよね。名前聞いてるだけなんだけど?」

 

 ヒィィ!早く、早くなにか……そうだ!

 

「お、俺、全てを捨てて新しい人生を始めようと思ってて……こ、この際、名前も新しいのにしたいかなって……なんて、へ、へへへ」

 

「な、なに言ってやがんだこのバカ!お前このペースで撃たれまくってたら生きてこの部屋から出れねえぞ!」

 

 パイセンは慌てふためくが、リーダーは特に何も言わない。こちらを値踏みするような視線を送りながら、くるくるとリボルバーを回して何やら考え込んでいる。

 いつ回転を止めて発砲してくるかもわからない、怯えながら裁定を待っていると、そのうちにリーダーが口を開いた。

 

「ふぅん、おもしろそう。いいよ、じゃあ今この場で決めて」

 

「は、はい。じゃあ少し時間ください」

 

 いい機会だからキヴォトスで使う名前を決めてしまいたい。健次郎では毎回偽名呼ばわりされるのは目に見えている。とはいったもののゲームなんかじゃ大抵デフォルトネーム使うんだよな。どうしたものか。

 

「浮浪シアとかどうだ?」

 

 フロウシアー、浮浪者!?誰がそんな名前名乗るか!真面目に考えてくれよパイセンよぉ!

 

「真黒カラスは?」

 

 見たままじゃねえか。ただカラス由来は悪くないかも。少し捻ってほしかったかなリーダー。苗字がマグロなのもいただけない。なんでって、なんでもだよ。

 

「なによ、嫌なの?」

 

「い、いえっ!参考にさせていただきます!」

 

 カラス……クロウ……レイヴン!下の名前はレイヴ……レイにしよう。苗字はそうだな。C4……621、むつい……ハシブト?ハシボソ?ワタリ……渡里!

 

「……渡里レイ」

 

「えー!もっとかっこいいのにしようぜ!」

 

 浮浪者もじっただけのやつ提案しといてよく言う。

 

「めんどくさい。それで決定ね。ミユキ、あんたの分隊で面倒みなさい。ヘルメットと制服、支給してやって」

 

「はい!」

 

 ミユキってだれ?ああ、パイセンか。

 

「うちは成果主義なの。頑張ったらその分に返すし、役に立たないなら当然報酬も減らす。そのつもりでやって」

 

「……うっす」

 

 金で雇われたんだから独立傭兵と言ってもよいのでは?働き次第で名前が売れちゃったりするのでは?俄然やる気がでてきた。最低限法律に反しない仕事を選びつつ、自活できるくらいにならないとな。

 

「んじゃ行くか。失礼しました」

 

「あ、待った!リーダーの名前聞いてません!」

 

「私の名前は天城ユウよ。よろしく、渡里レイ。せいぜい頑張んなさい」

 

 

 

 それから2日。銃の基本的な扱いを習い、前金をくれなきゃ餓死するとパイセンを脅し、手に入れたお金でまともな飯を食って体力回復に努めた。

 ハンドガンの使い方もわからないと言ったときのパイセンは幼稚園児にも使えるものが何故使えない、今までどうやって生きてきたのだと大層驚いていた。だから死にかけてると返してやったときのパイセンの深いため息を忘れられない。だがおかしいのは俺じゃない。銃を扱える幼稚園児の方だ、この社会だ。

 そんなこんなで最低限弾除けくらいにはなるとパイセンからお墨付きをもらい、いよいよ今日から初仕事である。

 

 車の窓で反射した自分の姿を見る。羽以外はどこからどう見ても立派なヘルメット団員Aだ……おかしいな。顔も声も可愛い美少女にTS転生したはずなのに、なんでこんなモブモブしてるんだ。お胸が残念だからか?

 

「全員乗車!」

 

 サブリーダーの号令でヘルメットの群れが分隊ごとに割り当てられた車両に乗り込んでいく。総勢40名、武装してたりしてなかったりする非装甲車両10台、それとリーダーが乗る戦車が1両。

 我々ミユキパイセン分隊もそれに習うが、何故かパイセン分隊長はドアに手をかけたまま固まった。

 

「パイセン?」

 

「なぁ、レイ。お前運転できるか?」

 

「はぁ……オートマなら一応」

 

「マジ!?今までドライバーはリエだったんだよ、だからどうしよっかと……良かったぁ。お前にも取り柄があったんだな」

 

 おい、どういう意味だ。体力がないのは懐事情からくる食事制限のせいだ。マスケット並みだとお褒め頂いた射撃精度も45口径フォーティーファイブが初心者向けじゃないせいだぞ。俺は悪くない。

 

「じゃあ運転はお前に頼むわ」

 

「……若葉マークありますか?」

 

「……戦車の後ろを走れ。絶対に前に出るなよ」

 

「わかりました!任しといてください!」

 

 なんて話をしているとその戦車の上部ハッチからリーダーが顔を出す。車の全ての窓を開け、指示を待つ。

 

「いい、みんな!今日一日で全部片付けて帰るわよ!ワラワラヘルメット団の力を見せつけてやりなさい!出撃!」

 

 その檄を合図に錚々たる車列を形成したヘルメット団が一斉に走り出した。

 

「こんなの並みの相手なら見ただけで降伏しちまいますよ」

 

「ああ、一日もいらねえ、昼飯までには帰れるだろうよ」

 

 それ絶対帰れないやつ。

 

 

 車を走らせることうん十分。後ろの座席でパイセンと黒ヘル1号が談笑しているのとは対照的に前二人は静かなものだ。黒ヘル2号が未だに俺が人喰いじゃないかと怯えているせいだ。パイセン以外の分隊員は見分けもつかないから名前も覚えてない。確かぐりとぐらとかそんな名前だったはず。

 

「おい、レイ!お前らに今回の仕事内容伝えたよな!」

 

 後ろのパイセンから声がかかった。今回の仕事内容?知らん。何かしらと派手にやりあうのはわかる。

 

「いえ、聞いてないです」

 

「ほらぁ、やっぱ誰も聞いてないじゃないっすか」

 

「あ、あれぇ?」

 

「戦車まで持ち出してますし……グニャグニャヘルメット団のアジトぶっ叩くとか?銀行襲うとか?」

 

「標的はな、学校だよ」

 

「学校ォ!?学校相手じゃこれでも足りなくないっすか!?大丈夫なんすか!?」

 

「いや、リーダーがいうには借金かかえててろくな兵器も持ってないらしい」

 

 ふーん。アビドスみたいな学校が他にもあるんだな。

 

「兵器がないったって……それでも頭数がいるだけでも厄介ですよ」

 

「いや、リーダーがいうには全校生徒で5人しかいないらしい」

 

「5人!?それもう学校として機能してないでしょ!?」 

 

 ますますアビドスみたいな学校だな。メインストーリーでアビドスもヘルメット団に攻撃されてたみたいだけど……何ヘルメット団だったか?ワラワラじゃないのは確かだ。ワラワラヘルメット団なんてブルアカで見た覚えはない、だから大丈夫。大丈夫だよな?

 

「ああ、だから風紀委員会みたいな治安維持組織もねえ。楽勝だよ」

 

 あれれー?なんかいつの間にやらまわりの景色が砂っぽいぞー?ふしぎー。

 

「パ、パイセン?まさかと思いますがその学校アビドスなんて名前じゃないですよね?」

 

「ん?ああ」

 

 そうだよね。良かった。いや、良くないわ、学校襲撃なんて。だがこれも明日のご飯のためなのだ。許せ。

 

「よく知ってるな。そうだ。あたしらはこれからアビドス高等学校を占領しにいく」

 

「……ゑ?」




設定だけ考えてたらブルアカに名前が同じ生徒が登場しちゃったんで急いで書き始めました!
ノリと勢いだけでここまで書いてきましたが次から章ごとでちゃんとお話作ってから投稿していきたいと思います。
次は投稿が遅れますがよろしければお付き合いよろしくお願いいたします。

次回から対対策委員会編に入ります。
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