ここは『キヴォトス』弱者に口なし 作:GAU-8
主人公の翼に関する描写を変更しました。
イチカくらいの大きさのものが肩の高さから生えてるイメージでお願いしますっす。
開戦
「なになに、なんの集まり?学校見学の予定なんてなかったはずだけどな〜。あ、もしかして転校希望者の団体さんだったり?」
突如として校門前に現れた武装集団の応対に、校舎の中から現れたのはたった一人だった。
自身に向けられた戦車砲にも、車載の機関砲にも、車から展開して銃を向けるヘルメット軍団にもまったく臆することはない。それどころか欠伸を噛み殺している余裕すらある。
アビドス高等学校を背にして立ちふさがるその人物は、我らがワラワラヘルメット団の団長にも負けず劣らずのロリなピンク。
アビドス高等学校、対策委員会委員長、小鳥遊ホシノその人である。
生ホシノだ〜。もうちょっと近くで見たいな〜。などと喜んでる場合ではない。敵である。どうしてこうなった?今からでもあっちにつけない?ていうかついちゃう?
でもなぁ、パイセンには一宿一飯の恩義があるしなぁ。それにヘルメット団と敵対すると勢い余ってヘイロー壊しちゃった、ごめんね☆とかやられるかもしれないしなぁ。その点アビドスを敵にしてもその心配はない……はず。
「お前そんなとこでなにやってんだ!こっちこい!」
「へい、パイセン」
降車してから戦車の真後ろに隠れて様子を伺っていたらパイセンに見咎められた。仕方ないのでパイセンの真後ろに移動してなりゆきを見守ることにした。
「……あたしのこと盾にしてねえか?」
「日除けにしてるだけっす」
なんてやってる内に、何故か先頭に立ったサブリーダーが拡声器でホシノに呼びかける。リーダーだと威圧感が足りないからかな?
「今日からその校舎はワラワラヘルメット団のアジトになる。5分やるから荷物をまとめて出ていけ!」
「え〜。それは困るなぁ。ここを追い出されたらおじさんたち行くとこ無くなっちゃうよ」
「知ったことか!」
「アジトにするならもうちょっと砂漠の方にいけば使われなくなった高層ビルもあるよ?そっちの方がいいんじゃない?」
「いいや!もうこの校舎に決めたんだ!」
「ど〜して〜?ここはなにをするにも不便だよ?周りなぁんにもないし……うへぇ、自分で言ってて悲しくなってきちゃった」
「……う、うう、うるさい!ここがいいったらいいんだ!黙ってさっさと立ち去れ!」
サブリーダーが言葉に詰まるのも無理はない。アビドス高校を攻撃する理由は十中八九天下のカイザーコーポレーション様から依頼を受けてのものであって、ワラワラヘルメット団自身は校舎になんの興味もないのだから。
「……嫌だって言ったら?」
「この戦力が見えないのか?怪我するだけだぞ、やめておけ」
「見かけによらず優しいんだね、おじさん泣いちゃいそう」
「弾がもったいないだけだ。お前達にとれる道は2つ。自分で歩いて出ていくか、あたしらが砂漠まで捨てに行くかだ」
「その言葉はそっくりそのままお返しするよ。回れ右して自分達の足で帰ってくれないかな?この暑いのにこれだけの人数捨てに行くのは重労働だよ」
「て、てめぇ!」
交渉決裂、開戦まったなし。ニイタカヤマノボレ。
団員達が一斉に殺気だって射撃の合図を待つ。
そういえばアビドスの他のメンバーが見当たらない。いったいどこに?パイセンの肩越しに居場所を探してみる。屋上からミニガンが狙ってるのはわかった。アヤネは前線にいないとして、あとの二人は……?
血迷って空を探してみればそこには雲一つない青空をゆうゆうと舞う、白いドローンが一機。撮影用。ロケット弾搭載……!
「伏せて!」
「はっ!?なに言ってやがる!お前も構えろ!」
「警告はしましたからね!」
一番手近な遮蔽物、戦車に向かって飛び込む。隣にいた黒ヘル2号を翼でラリアットするように意図せず巻き込んで、二人で戦車の影に転がった。
それとほぼ同時であった。
「撃っ……ぎゃあああぁぁ!?」
どこにそんなに積んでるんだとツッコミたくなる量のロケット弾が雨霰と降り注ぐ。
荷台に乱雑に積まれた砲弾が次々と誘爆し、ただのガソリンタンクと化した車両が周囲に並んでいた団員たちを巻き込んで豪快に爆発炎上する。
爆音と悲鳴の中、僅かな生き残りは毎分3000発の7.62mm弾の掃射を受けて一人また一人と鏖死悪棄されていった。
こうして戦場は静かになった。燃え盛る車から登る黒煙が太陽を遮り、辺りを暗く陰らせる。
「う、うわぁ……」
「み、みんなぁ!?な、なんでぇ!なんでこんなことに!?」
言葉を失うとはまさにこういうことを言うのだろう。目の前の光景は現実かどうかも疑うような惨状である。鮮やかな先制奇襲攻撃により、3分とかからずにヘルメット団は壊滅した。
戦車だけが健在で、機銃を景気よく撃ちまくっているものの……撃破されない内に撤退した方が賢明な気がする。
2号なんかは頭を抱えて今にも泣き出しそうな声で叫ぶばかりだ。怪我はしてないが、戦意は完全に喪失。なにかの拍子に逃げ出しかねない。どうしよう、俺もそうしたくなってきた。
「うっ……」
戦車の脇に倒れた死体が呻く。ありゃ、よく見たらパイセンだ。
「パイセン!?生きてますか!?」
「な、なんとか……ぐっはぁ!?」
頭を上げたパイセンはその瞬間にヘルメットを撃たれて地面と熱いキッスをかます。
「パイセンが殺されちゃった!」
「ひぃい!ひ、ひとでなし!」
「……勝手に殺すな」
パイセンは今度は迂闊に動かず、死んだふりをしたまま声だけで無事を伝えてきた。
「レイ、合図したら一気に引っ張ってくれ。いくぞ、せーの!」
「よい、しょっ!」
手を出した瞬間に銃声が響く。ヒュンヒュンと鳥肌が立つような風切り音、流れ弾が戦車の装甲を叩く甲高い音に悲鳴をあげたくなるのを必死に堪える。引け腰になりながらなんとかパイセンを引っぱりこむことができた。
「クソッ!足に一発貰った……ひぃっ!?」
先程までパイセンの頭があった場所にはきっちり1マガジン分の弾痕……殺意が、殺意が高すぎる!
「で、これからどうしやすパイセン!仕切り直しますか!?撤退しますか!?後ろに向かって突撃しますか!?」
「全部一緒じゃねえかバカ!やられっぱなしで帰れるか!まだコイツも、リーダーも残ってる!」
パイセンが戦車の尻を手で叩く。
「で、でもぉ、もう無理ですよ。あんなにたくさんいたのにもう私達しか残ってないんですよ?逃げましょうよぉ……」
「お前までなに弱気になってんだ!向こうは5人!こっちは8人!まだやれる!」
1号は……ああ、あんなところに。ヘイローも消えてるな。
「クソチビピンクがどっかいった!お前ら気をつけろ!」
クソチビブロンドの手下が戦車のハッチから頭だけだしてホシノを見失ったと俺達に警告してくる。その頭を目掛けて飛来するものがあった。銃弾、ならどんなに良かったか。そいつはヘルメットに当たってコーンと間抜けな音を立てて戦車の中へ落ちていった。
「……へ?」
「ま、まさか、グレ──」
「う、うわああああ!」
パニックを起こして逃げ出した2号は戦車の影から飛び出したところへ即座に集中砲火を浴びてやられてしまう。その様子を見せられたパイセンと俺は、戦車の爆発に備えてその場で伏せるしかなかった。
しかし、その予想された戦車の爆発は何秒待っても起きることはなかった。おそるおそる開けっ放しのハッチを見れば白い煙のようなものが戦闘室のなかから漏れ出ている。
「……な、なんだぁ?」
「毒ガス?」
「そんなわけないでしょ。ただのスモークだって」
俺の疑問に答えてくれたのは砲塔の上に突然現れたホシノだった。今この人上から降ってこなかった?気のせい?
事態を把握できない俺達をよそに、ホシノはまず正面にいた俺の頭をショットガンで一撃、そのまま反動を利用して流れるようにパイセンを一撃。あっという間に二人仲良く地面に転がされてしまう。ちくしょう!どいつもこいつも頭ばっか撃ちやがってよぉ!
「あれ?あたりどころが悪かったかな?」
なんて呑気に呟きながら間髪を入れずにお腹にもう一撃。胃液が口の中まであがってきて叫ぶこともできず、ただ丸くなって痛みにこらえることしかできなかった。
涙で歪んだ視界で信じ難いものを見た。ホシノはまだこっちに銃口を向けている。
「や、やだっ……も、やめ、て……」
「な、なにそれ。やり辛いなぁ。仕掛けてきたのはそっちでしょ?」
なんとか絞り出した声もホシノには響かない。鬼!悪魔!ホルス!パイセン、助けて!なぜ黙って見てるんです!
横で大の字に倒れているパイセンはヘイローが消えていた。さっきの一撃でおねんねしてしまったらしい。羨ましい。
「ま、いいや。その様子じゃ当分動けなさそうだし……」
そう言ってホシノはおもむろにハッチから顔を出して咳き込む乗員へ散弾をぶち込む。動かなくなったそいつをハッチから引っこ抜いて投げ捨て、空いたハッチへ銃口を突っ込んで連射、連射連射連射。そして満足気に一言……
「よ〜し、こんなもんかなぁ〜」
キヴォトス人怖いよぉ!もうやだ、帰りたい!
ホシノはハッチから腕を突っ込んで、気絶した乗員を引っ張り出しては意識がないのを確認してポイポイ捨てていく。
「いち、に〜、さん、よん……あれ、1人足りない?どこ〜?怖くないから出ておいで〜」
あの中にいたら発狂ものだなと、頭まで突っ込んで最後の乗員を探すホシノを眺めながら他人事のように思った。
「捕まえた!」
「きゃあっ!」
「えっ!?な、なにこの子……」
ホシノが最後に引きずり出したのは、我らがワラワラヘルメット団のリーダー、天城ユウ。いつの間にかヘルメットも脱いでやがる上に制服も変わってやがるけど敵だぞ。そんな見てくれだがまごうことなき高校生だぞ。同類だろうが、騙されるなホシノ。
「ふえぇぇん!こわかったよお!」
は?キッツ!キッッッショ!気持ち悪!なにやってんだよ団長!
「どういうこと……?」
「し、知らない!」
ホシノはわけがわからないといいたげに俺を睨む。視線を外したその瞬間に金髪幼女の口角が吊り上がったことにも気付かずに。
「……ッ!?」
「遅い!」
フルオートかと聞き間違うような連続した銃声がキッチリ6発分。ゼロ距離でマグナムを叩き込まれたホシノの上体が大きくのけぞり、そのまま後ろへ倒れる……ことはなく途中で持ち直して顔を抑えた。
「いっ……たぁ~い。あ、鼻血でちゃった」
「は、鼻血?は、ははは……なによそれ。そんなんで済むわけないでしょ。あんた一体どうなってんのよバケモノ」
「……ひどいこと言うね。ちょっと傷ついちゃった」
マグナム6発のお返しは散弾が2発と相成った。ヘイローの消えたリーダーの体が力なく崩れ落ちる。
「ふぅ。これで全部……ああ、まだキミがいたっけ」
猛禽類を思わせるような青く鋭い瞳が俺を射抜く。本能的な恐怖に体の震えが止まらない。気がつけば反射的に両手を空に掲げていた。
「なにそれ?」
「こ、こうさん……」
「え〜。どうしよっかなぁ……」
軽い足取りで戦車から飛び降りてきたホシノが、そのまま目の前まで歩み寄ってきてお腹に銃口を押し付けてくる。さっきリーダーから騙し討ち食らったばっかりだもん、それはそうか。じゃあもう甘んじて受け入れるしかない。
けどやっぱ怖い!どうせやるなら一思いにやって欲しい!なんで固まってるんです!?そんな風に焦らしてビビらせて楽しいですか、おじさん!?
「う、うぅ……う、ぐっ!」
「はぁ〜。もう、わかったよ。ほら、行っていいよ」
「……あ、ありがとうございます」
ホシノとアビドスに背を向けて歩き出す。なんかもう、情けないにもほどがある。ああ、クソッ!
手に持っていたはずのガバメントがない。慌てて探してみれば幸い、少し離れた地面に落ちていてすぐに見つけることができた。撃たれた拍子に手から離れてしまったようだ。それを拾って……
「そんなことだろうと思った」
「ひっ!?が、ぁっ……」
真後ろから先生には決して向けられることはなかった酷く冷たいホシノの声がした。背中に強い衝撃を食らって吹き飛ばされる。
「ち、違……やめ……」
「ありゃ、まだ足りなかったか。ごめんね、すぐ楽にして上げるからね」
……あれは嘘だと言わんばかりに気を失うまで散々撃たれてようやく楽になった。ありがとう、ホシノ。
このお礼は絶対にするからね。