宿儺腹ペコ世界線   作:サイドベント

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第7話

 

 

 

五条悟 Side

 

現代 杉沢第三高校

 

 

 

 

 

 

 

五条悟、現着。

 

 

 

口調は自然と軽薄に。内心は努めて平静に。

 

 

「やあ、これどういう状況?」

 

 

よしよし。僕、間に合ったかな。

 

特級呪物"宿儺の指"の一本が安置されていた場所には全身に呪印が刻まれた少年が一人、と。

どう考えてもアレ、受肉してるよねぇ。

 

 

(めぐみ)、アレ宿儺?」

 

「……だと思います。一般人が指を飲み込んでからああなりました。呪霊を瞬殺した後、動かないので様子見をしていましたが……いや、取り繕うのはやめます。アイツのプレッシャーで俺は全く動けなかった。先生が来てくれなかったらヤバかったです」

 

「おお、素直でよろしい。じゃあ後は頼れる先生にまっかせなさ〜い」

 

 

両眼を覆う黒布を指で押し上げると、更によく見える……怪しく激しく迸る呪力の奔流が。

 

これが宿儺。指一本分なのに大したもんだ。

ま、僕には全然及ばないけどね。

 

 

「やっほー、おはよう宿儺。千年ぶりのお目覚めの気分はいかが?」

 

「……六眼か。ちょうどいいな」

 

 

嫌だねぇ。

ガワの少年の情報ばっかりで肝心の宿儺の情報がなーんも読み取れない。

術式無し。正真正銘の一般人。わかるのはそれだけ。

 

じゃあ、指を飲み込んだのに死んでないのが謎だよね。

まあ千年越しの待望の"器"の可能性もあるんだけど……っていうより"檻"かな?

僕の六眼からガッチリ中身を守ってる。

 

しかし……特級呪物の安置された場所にたまたま適応できる少年が居て、しかもなんだか僕用の対策が施された特別製の予感。

 

きな臭いなぁ。この少年、もしかして"作られた器"なのかな?

 

っと。投石? 呪力も篭ってないただの石で何を……うわ、宿儺嬉しそう。怖いなーあの笑顔。

 

 

「六眼と無下限術式の抱き合わせ。そして俺の顕現に即対応し、最速かつ単騎で駆け付けた……となればお前がこの時代の頭なのだな。話が早い」

 

 

宿儺に早速目付けられちゃった。光栄だね。

でも残念、現代は力の強さだけでトップになれるほど単純じゃないんだよねぇ。

そういう意味では平安時代も羨ましいかも? なんてね。

 

 

「いや、別に僕はただの最強で最高な教師だけど? っていうか宿儺って随分とお喋りなんだね。てっきりすぐに暴力振るってくるのかと思ってたよ」

 

「……ケヒッ。俺の前で"最強"を名乗るとはな。まあよい。そんなことはどうでもいい」

 

「……?」

 

 

おっかしいなぁ。絶対挑発に乗ってくるタイプでしょ。

指一本なら余裕だし力量測っておきたかったんだけど……なんだ? この違和感。

 

本当に宿儺?

 

 

「俺が最強であることは揺るがぬ事実だ。そこに異を唱える者がいようと俺は意に介さぬ」

 

 

前言撤回、やっぱりコイツ宿儺だ。

眼中に無いってのは気に食わないけど……この大物感は本物にしか出せないだろうね。

 

 

「しかし仮にも最強を自称する者が時の権力者の小間使いなどと、哀れな話だ。リョウジも言っていたが……現代において呪術師が表立って天下を取っている事実は無い、か。改めて認識するとつまらんな」

 

 

言ってくれるねぇ。耳が痛いよ。本当にあの上層部ときたら……ね。

あと、リョウジって誰? 随分とこの時代に詳しい仲間がいるみたいだね?

 

 

「……先生、宿儺は先ほどもリョウジという名前を呼んでいました。おそらく呪物化する以前の仲間かと。ソイツと共にこの世を喰らい尽くす、とか……」

 

「ありがとう。恵、脂汗すごいよ? たかが指一本分の宿儺だ。そんなに怖がることないって。でも……なるほどなるほど。なーんかわかってきたね」

 

 

このタイミングでの宿儺の受肉には明らかに第三者による介入があった。これは事実。

 

でも、その協力者は素直に宿儺の言うことを聞いた訳じゃないみたいだね……結果として宿儺はリョウジって仲間を人質にでも取られてるのかな。

そもそも宿儺のこの感じだと対等な関係の何者かがいるとは思えないけど……何事も例外はあるか。

 

うーん……これは付け入る隙かな? それとも罠かな?

 

ま、飛び込んでみようかね。埒開かないし……それに僕、最強だし。

なんとかなるでしょ。

 

 

「宿儺。自己紹介が遅れたね。僕は五条悟。残念ながらイチバン偉い訳じゃないけど……話くらいは聞いてあげられるよ? 大事な大事なリョウジくんも見つけてあげられるかも〜」

 

「ケヒッ。安い挑発もこう繰り返されれば愛いものだ。ならばその道化振りに免じて言おう。まず、額に縫い目のある男……いや、女でもいい。ソイツを差し出せ。俺が直々に殺す」

 

 

おー、こわ。

それで……額に縫い目のあるやつなんて見たことも聞いたことも無いんだけど?

どうしようかなぁ。

 

 

「あとはお前のその眼の力を貸せ。どうせリョウジのことだ。間抜けにも適当な人形にでも受肉させられているのだろう。であればオマエの目があれば探すのが楽になるからな」

 

「は?」

 

 

いや、おかしいでしょ。

縫い目の奴とやらに対する態度と違いすぎるよね。

 

謎の男、リョウジ。本当に宿儺の対等な仲間なのか……?

 

推定平安時代の術師だけど、現代についてなぜか詳しそうだし……未来予知の術式とか?

すごい良い術式じゃん。それなら宿儺も重宝するかな。

 

いや、そういうメリットとかを考える以前に目の前の唯我独尊男が『誰かを探すために人の力を借りる』ことをよしとする……これが異常だ。

 

別に宿儺は頭も下げてないし無駄に尊大な態度は変わらないよ?

だけど、間違いなく宿儺にとってこの行動が異常なことだってのは僕にもわかる。

 

だって僕もそうだから。基本的に誰かに頼る必要が無い。

僕は教師だから色々と他人に任せるけど、僕や宿儺みたいなタイプが真に強さを発揮できるのは一人の時だ。

 

これは……もしかしたら宿儺に対する認識を改めないといけないかもしれない。

もちろん、厄介な方にね。単体でも最強なのに徒党を組んでいるとか悪魔だよ、ほんと。

 

 

「……そりゃあね。気付いているだろうけどキミの器は随分と手が込んでる。こんなものを何個も用意はできないだろうし……リョウジとやらがどこにいるのか、そして何に受肉しているのか……それを探すのにこの眼が役立つのは間違いないよ」

 

 

それで、なにをしてくれるんだい?

史上最強、呪いの王と呼ばれた宿儺が、大事な仲間探しのために僕になにを提示してくれるのかな?

 

 

「引き換えは……そうだな。この体に入っている内は先ほどの指定した人間以外、俺は誰も殺さん。どうせ閉じ込められるのだろうしな。そして奴を殺し、リョウジを見つけ、この体から解放された暁にはオマエの気に入らない者を一人殺してやろう。対象はその時に決める。どうだ?」

 

 

嫌な笑顔。

そして殺すばっかりでやっぱり野蛮人で笑っちゃうな。

あとは……リョウジとやらのこと好き過ぎないか?

 

宿儺にここまで言わせる男。滅茶苦茶興味湧いてきたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反転術式も使えるか。安心したぞ。これで死なれてしまってはもし縛りを結んだとしても即座に破ってしまうところだったなぁ。お前が想定よりも弱過ぎず助かったぞ……礼を言う」

 

 

ニヤニヤと笑う宿儺は言葉を止めない。

 

 

「現代の術師もまだ食いではありそうだな。さて、先ほどの返事は後だ。よく考えて決めろ。そして……どうやらこの檻は随分性能が良いらしい。俺が誰かを傷付けたと見るや拘束を強めている。さあ、この檻ごとどこぞへと閉じ込めるがいい。縛りを結ぼうが結ぶまいが、オマエは必死に足を動かしてリョウジを見つけ、座して待つ俺の下へ連れてくることになる。ではな。また会おう。俺が居ない時代に生まれただけの凡夫」

 

「……やってくれるじゃないか。またね、宿儺」

 

 

全く見えなかった。傷は既に塞いだ。

でも、首筋から流れる血が久しく感じなかった『自分の命に手がかかる』感触を思い出させた。

 

悔しいから全力で探してやるよ。額に縫い目の人間とリョウジくんとやらをね。

 

そのあとは……手合わせでも願おうかな? 

宿儺。ぜってーその余裕面、崩してやるからな。

 

五条悟は不敵に笑った。

 

 

「あのー……俺、全然話わからなかったんだけど……」

 

「いや、先生。意味深に笑ってないで早くアイツ拘束しましょうよ」

 

「おお、そうだね。じゃあ少年。ちょーっと寝ててね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日。

 

 

宿儺の器となった虎杖悠仁は、厳重な封印を施した上で無期限の幽閉となることが決定。

 

なお、宿儺受肉の報を受けた上層部は『即刻の秘匿死刑』派と『幽閉派』に真っ二つに割れ、虎杖悠仁の当面の安全が確保できることを考慮した五条悟の加勢もあり、後者が採用されることとなった。

 

この際、五条悟は上層部が『秘匿死刑』派一色にならなかったことを訝しみ、何者かの干渉を感じ取ることになった。

ソレが宿儺の言う『額に縫い目のある人物』による可能性は高いと踏み、その人物に対する警戒感をより強めることにも繋がっている。

 

 

新たに創出された世界線は少しずつ本来の道筋から外れていく。

その未来が輝かしいものに傾くかは未だ誰にもわからない。

 

 

 

 








『ふんぬぬぬぬぬぬぬぬ!!!』

「だから無駄だって。でも君面白いね。宿儺のことがなかったら色々実験してみたかったんだけどねぇ……いやぁ残念残念」


リョウジはまだ頑張っていた。大変プリティーなぬいぐるみの姿で。
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