元ポケモンレンジャー、知らない世界でポケモントレーナーをやり直す(仮)   作:黒兎可

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続きです。


Page.4 試される情緒

 

 

 

 

 

 ……リョウガのバトルは、初めてにしては妙に手馴れていた。

 イシツブテ次男から引き継ぐ形でバトンタッチしたリョウガは、すぐさまゲットしたばかりのネイティを出してそのままヌイコグマ相手にバトルをする。

 タイプ的にはノーマル/かくとうなヌイコグマと、ひこう/エスパーなネイティ。相性で言えばネイティ有利だけど、技だけでいうとプルリルをリバーストしたヌイコグマはゴーストタイプの技も使えるので、一概に有利とも言えない。お互いがお互いの弱点を持っている状態。

 

 そんな状況で、リョウガは迷わずかげぶんしんを指示した。定石と言えば定石だけど、GG団のトレーナーはそのままバブル光線を雑に放つ。……さっきのすなあらしの時もそうだけど、回避方法なんていくらでもあるのにそういう指示を出さないあたり、トレーナーとしてはそんなに強くないわよね。

 イシツブテ三兄弟でも不覚をとったのって、私への直接攻撃をあの子たちが予想していなかったからだし。

 

「ヌイコグマ、バブルこうせん!」「ヌィィ……」

「ネイティ、避けながらあやしいひかり!」「トゥートゥー」

 

 ……やっぱり鳴き声が変よね、あの子。

 

 いやそれはまあいいんだけど。リョウガの様子を伺わないでそのままバブルこうせんを放ったヌイコグマは一歩遅れて、ネイティの放った微妙な色合いの光の弾が直撃。そのままぐるぐると目を回してるわね、可愛い……。私のチラーミィの方が可愛いけど。

 

「くそが……、ヌイコグマ! 私の言う通りに攻撃するんだ、聞いているのかヌイコグマ! この役立たず!」

「ヌィ…………?」

「ええい、いうことを聞けと言っているだろう! そっちじゃない! そっちに進めば転ぶと言っているだろうが、何をやっている!」

 

「なんか……、あれ駄目だな。キャプチャーしなくても気持ちがわかるぜ」

「トゥートゥー」

  

 ……うん、私もそう思う。イシツブテ三兄弟も「ラッサイ?」って微妙な顔してヌイコグマを見ていた。

 混乱したり目をくらまされたりしたポケモンが、どれだけトレーナーの言うことを聞いてくれるか。ミスだって当然するけど、その割合は「生きているもの」である以上、トレーナーとの関係性が重要。そんなこと、レンジャーだって判ってることだと思うのに。

 それでもGG団のトレーナーは、頭ごなしに言うことを聞かせようとしている。

 一方のリョウガは、ネイティを呼び寄せて何か確認しているみたい。

 

「やっぱりお前もどこかのトレーナーのポケモンだったのか……?

 まあいいや。ネイティ、サイコキネシス!」

「トゥートゥー」

  

 あー、使える技の確認していたのかしら。とりあえず、という感じでサイコキネシスを放つネイティ。じっと睨むように技を使って、そのままトレーナーめがけてヌイコグマを放り投げた!

 ぶつかって倒れたGG団のトレーナーと、ぐるぐる目を回すヌイコグマ。ついでにリバーストされたプルリルも目を回してて、なんというかポケモンの方は可愛い空間よね。

 

 それにしても何と言うか……。初バトルにしては妙に安定していたわね、リョウガ。

 トレーナーとしては初心者にしてはまあまあって感じだけど。そのあたりは、むしろビクティニがなついていたのもふまえてレンジャー向きかしら。

 

「ティニ! ティニ!」

「はいはい……、ちょっと待って、じゃあ一緒にいきましょう?」

「ティニ!」

 

 腕の中で喜んで飛び跳ねそうなビクティニ。この子を宥め乍ら私は、ギリギリまで出すか出すまいか迷っていたバルジーナのモンスターボールから手を放し、リョウガの方へと走っていった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 この年になってジュンサーさんを人生で初めて見た件。

 いやまあそれはリョウガとしての人生であって、ポケモンレンジャーをやっていた前世のではないんだけど、始めてるこの地方のジュンサーさんは刑事ドラマに出てきそうなスーツ姿で、中々サマになっていたというか、タイトスカート姿のままGG団のトレーナーを縛り上げる姿が非常に様になっていた。

 

 ともかく、刑事っぽいジュンサーさんと後輩っぽいジュンサーさん数人で(やっぱり同じ顔してる……)GG団のトレーナーを連行していくと、特に事情聴取もされなかった。何でだろうと思って聞いてみると、ミルトさんが作成した任務レポートを踏まえた上で、後で警察と連絡を取り合って調整することになるかららしい。

 

「こういうとき、トレーナーよりレンジャーの方が融通が利くかもね。まあトレーナーでも拘束時間は一日かからないんだけど」

 

 ともかく、ビクティニはバトルが終わるとすぐさま頭によじ登って来たのでそのままにしつつ、オレは自宅の半壊した入り口の扉とかそういうのをどかす作業をしていた。イシツブテ三兄弟も気を利かせて一緒にやってくれていて、ミルトさんは若干手持無沙汰だ。オレはともかく、ミルトさんは普通に怪我があるからあんまり無茶しない方がいいと思うし。

 そのせいか雑談をふってくるんだけど……、まあオレもオレで気分転換になるし、いいか。

 

「さっきのあのお爺さんって、リョウガの……」

「ジジィ」

「こら。いけないわよ、自分のお祖父ちゃんをそんな風に呼んだら」

「でもジジィはジジィだし…………、クソジジィだし……」

 

 そもそも例の儀式を村で率先して取り仕切っているのが、ウチのジジィなのだ。ポケモン仙人とか自称してるし、訳がわからないったらありゃしない。普段は飄々としてオレの文句とかもかわしてるし、性格もクソジジィだと思う(私怨込)。

 とはいえ仙人を自称しているだけあって、なんか無駄に強い。…………というか波動使い(ヽヽヽヽ)だ。手持ちのルカリオから習ったとか言ってたけど、さっきオレに投げてよこしたモンスターボールの時みたいに、日常のちょっとした動きとかの補助に波動を使いまくってるので、あのヨボヨボっぽい見た目に反して異様に健康だし。

 

 ちなみにそんな話をミルトさんにすると、案の定目が点になってた。そりゃそうだ。

 

「そんな、勇者アーロンの漫画じゃないんだから…………」

「あれってどこかの地方の伝説とか元にしてたし、ルカリオだってちゃんとフツーにいるポケモンだし、人間でも使えるやつはいて不思議じゃないとオレ思う。

 まっそれがウチのジジィだから全然釈然としないんだけど…………」

「……それで、その風習っていうのでリョウガは中々旅立てないって言ってたわよね。今回は緊急事態だから、モンスターボールを渡してくれたけど。……ってことはトレーナーIDも登録されてないし、本当にポケモントレーナーじゃなかったのね」

 

 すごい不可解なものを見るような見られてるけど、ほっとけ! って感じだ。

 

 とりあえず扉の木の破片とかを取り除き終わって、崩れた壁も多少ならしたあと、オフクロに声をかける。眠ってはいないし、けがもしていなさそうだ。ただ頭痛はしているんだろう、後頭部を押さえながら「まったくもう」と言い、オレを抱きしめる。

 

「ティニ……」

 

 押しつぶされているビクティニ、すまん。ちょっと待っててくれ。

 

「お義父さんの声が聞こえたから無事だとは思ったけど、危ないことをして……。あなたまで何かあったら、私…………」

「…………悪ぃ、オフクロ」

 

「…………」

「ラッシャイ」「ラッシャイ」「ィラッシャイ」

 

 ミルトさんが何とも言えない目でオレとオフクロを見てる。なーんかこう、いたたまれない感じっつーか。

 

 あの感じだと「私のせいよね」って居心地悪くて暗くなっちゃいそうだし、でも心配してくれるオフクロの手を振りほどくのもアレだし……。そう思っていると、バトルの後すぐ屋根の上でどこか遠くを見つめていたネイティが、窓から入ってくる。「トゥートゥー」って相変わらず微妙な鳴き声だ。

 それを見て「あらまあ」とオフクロはびっくりした顔をする。ばさばさと羽ばたいたネイティに引いたカアちゃん。ようやく解放されたビクティニは、バランスを崩してオレの腹のあたりでふんばっていたのから無理やり上って頭の上に。さらにその上にネイティが止まった。

 

 なんとなく腕を両側に広げて適当なポーズ。ビクティニはよくわかってないなりに頭を傾げて、ネイティは空気を読んだのか横を向く。ちょっとしたトーテムポールが完成した。変な一発ギャグみたいになってしまったけど、それを見たオフクロは噴き出した。

 

「……ぷっ、何それリョウガ。フフフ…………」

「どっかの神様」

「フフフフ……!? どっかってどこのよ、あははっ」

 

 よし、これで少しは元気になってくれたかな。

 横をチラ見すると、ミルトさんが「何やってんのよ」と苦笑いしてるし、イシツブテ三兄弟も負けじと三段重ねになって「「「ィラッシャイ!」」」ってドヤ顔してる。いや何でやねん。

 

「……っと、それはともかく。ミルトさんどうする? なんか追われてたみたいだけど、あのなんか、GG団だっけ?」

「……グレート・ガベル団。世界に大いなる審判をもたらすことを目的とした、ポケモンの力を悪用する組織…………、とか聞いてるわ。

 あのリバーストもその一つよ」

「ポケモンの力を悪用か…………」

 

 大体どの地方も、そういうポケモンマフィア的なやつって、組織が大掛かりなことを始めた後の第何期かの新米トレーナーが解決に導いたり、そのトレーナーが後に殿堂入りしたりとかそういうのが「ならわし」っていうかアレなんだけど。そこのところ、この世界でも図書館とかで調べた限りはそんな感じだ。

 つまりこの地方――――デスク地方とかいうこのエリアは、まだそういう「殿堂入りトレーナー」がはじまりの町から出て来てないって事なのか?

 

 そんなことを考えてると、やっぱりというべきか、ミルトさんが頭を下げてくる。

 

「ごめんなさい。連中、ある程度撃退したからもう追ってこないと思っていたの。少し強いポケモンに協力してもらって、けちょんけちょんにして追い返して逃げて来たから」

「あー、えっと、オフクロ?」

「…………ミルトさんもわざとじゃなかったんでしょうし、その感じだと任務のようですね? だったら、仕方ないと諦めます。

 入口は、もうちょっと何とかならなかったのかと思わなくもないですが……」

「すみません! すみません! その、えっと……、お、お金! お金だけはいっぱいあるんで、修理費後で支払います……」

 

 ちょっとオフクロ!? 思わず言っちゃったんだろうけど、なんか色々いっぱいいっぱいな感じがするから、ミルトさん目を回しちゃってんじゃん!

 慌ててなだめ? ごまかし? に入るオレと、そんなオレの頭上から動こうとせずしがみつくビクティニ、ついでにネイティオ。そうこうわたわたやってると「あらあら……」とオフクロは少しだけ微笑ましそうな声で笑った。

 

「……そのポケモンちゃん、ミルトさんのポケモンちゃんかしら」

「い、いえ、その、任務で現在護送中のポケモンで…………、南の方のマッシュタウンまで向かうつもりで」

「そうなの。だったら、離すのは忍びないわね」

「えっ?」

 

 そう言うと、オフクロはネイティともどもビクティニを俺の頭の上からとり、じっと目を見つめる。

 ネイティオが空気を読んで離れると、そのままオレの周囲を飛び回る。止まり木代わりに左腕を出すと「トゥートゥー」と軽い感じで乗った。

 

 そして、ビクティニを抱きしめても拒否されないオフクロを見て、ミルトさんは「うそ……」とまた目を真ん丸にした。

 

「リョウガだけじゃなく、リョウガのお母さんにまで……」

「私は元ポケモンブリーダーだから、少しは心得があるの。だけどリョウガは……、いえ、リョウガに懐いたから、とっかかりが出来たってところかしら。

 この子、心の底ですごい怯えていいたもの。そんなこの子がリョウガを相手に安心できたってなると、このままミルトさん、任務だからってリョウガと離れ離れにしちゃうのも、この子が可哀想じゃない」

「ティニ…………」

「フフ、本当にうちのリョウガが大好きになってるのね。このポケモン寄せみたいな体質、一体誰に似たのかしら」

「いや、誰とか言われてもさ?」

 

 そんなものオヤジかオフクロかどっちかしかねーだろと思って適当に返すと、くすくす笑ってオフクロはビクティニを俺の頭の上に乗せ直す。ビクティニは両腕を上げて「ティニトリー!」とか変な声を上げてテンションが上がっていた。

 

「……もしリョウガとミルトさんさえ良ければ、マッシュタウンまで。マッシュタウンまでなら、リョウガもお出かけして構わないわ?」

 

「オフクロ!?」「そ、それは本当ですか!?」

 

 オレとミルトさんのびっくりした反応に、オフクロは「ええ」と少し寂し気に頷く。

 

「トレーナーとして旅立つのは、お義父さんがお許しにはならないでしょうけれど。おつかいくらいだったら、多少は融通が利くと思うの。

 でも心配だから、一応は山の方のお義父さんに断りを入れてから、ね?」

 

 そしていきなり上がった難易度に、思わずすってんころりん。リョウガ!? とびっくりするミルトさんと、頭から振り落とされて転がるビクティニだった。

 

「…………またあのクソジジィに会いに行かないといけないのかよ……」

「クソとかいわないの」

「でも、結局ジジィが許可しないからオレ、ポケモントレーナーになれないじゃん? トレーナーIDを役所に登録しないと、正規のポケモントレーナーにはなれないから、ジムとかだって出来ないし、買い物だって身分証必要な場合に全然使えないし。つーか配達の兄ちゃんの対応くらいしかさせてもらってないじゃん、オレ。町に出たことなんてないし」

 

「ええっ!?」

 

 本気で驚いた様子のミルトさん。悪いがこればっかりはマジだ。他の友達に差を付けられたような感じになっているけど、このトキモリタウンでは試練(試験)を突破しないと村から外に出ることすら許可されない。山とかは例外として、人里に出ることが出来ないんだ。

 というか、行こうとしたらジジィに連れ戻されるし。

 あれは卑怯だろ、両手組み合わせてはどうだん撃ってくるのはさぁ……。

 

 だからどうせ今回も許可されないだろうと思っているオレ。このネイティのボールは本当に緊急事態だからOK出したとかで、どうせ行ったら没収される気がするし。

 そういう絶望感を吐露すると、オフクロはオレのわきの下に手を入れて、猫みたいに持ち上げて立ち上がらせながら、耳元で言う。

 

「トレーナーは無理だけど、おつかいくらいなら今回は許可してもらえると思うわ」

「何で?」

「うふふ…………、上手くやりなさい♪」

 

 ウインクしてオレと、ついでにミルトさんを見るオフクロ。ぼそっと呟いた「上手くやりなさい♪」なその一言で、思わずミルトさんの方を見て、顔とか胸とか腰とか脚とか一通り一気に見て、心臓がバクバク言い出した。

 

「ち、違…………、そんなんじゃねーしっ!」

「照れない照れない、こういう所はあの人より私に似てるのかしら。ちょっと意地っ張りで、ちょっと期待していて――――」

「だから違うってのー!」

 

 わめくオレを全力でからかうオフクロ。きゅ~とあっちで目を回しているビクティニはともかく、しれっと飛び去って巻き込まれなかったネイティは何も言わずミルトさんを見ていて。

 

 

 

「あ、あはは…………。まあ、さっきのバトルの時はちょっとカッコよかったけど、流石に年齢(トシ)がね」

 

 

 

 思いっきり生暖かい苦笑いで、それすらも可愛いせいでオレの情緒は正直どうにかなりそうで、思わずオフクロの腕を振り払ってその場から全力疾走して逃げた。

 くそーっ! オフクロのおバカめ! 子供のそういうセインシティブなところを何と心得てやがんだっ! 中身何だろうと肉体に引っ張られてこうなってんだから関係ないんだぞーっ!

 

 

 

 

 


【ガバセウスの世界観メモ】

 

・トレーナー持ちだったっぽいネイティ

 今回使った技はかげぶんしん、あやしいひかり、サイコキネシス。だけど実はもう一つレベル技でない技を覚えているのをリョウガが確認してるので、おそらく人の手が加わってるだろうと判断してる。

 ちなみに本作ポケモンの鳴き声はアニポケ準拠がベースなので、ネイティが「トゥートゥー」と鳴くのは珍しい。

 

・混乱などの時に試されるポケモンとの絆

 ゲームはともかく実際のポケモンバトルと考えた時、トレーナーの声を識別できるくらいの混乱状態だったら、どれくらいトレーナーとの信頼関係が築かれてるかで指示を聞くかが左右するだろうという判断での本作描写です。

 

・ジュンサーさん

 お約束。アニポケ準拠のイメージですが、この地方では刑事風コス。

 

・デスク地方

 本作の舞台。名前は原作者→シナリオ作者より。地理的にはMAP描けないのでざっくり言ってしまうと、ノースカロライナ州周辺をモデルとしていく予定です。

 

・ポケモン仙人

 詳細は次回。なんか謎のパワーとか使えるが、服装は普通のお祖父ちゃんといった感じ。

 原作のリョウガの祖父は別に特別な要素は何もなかったけど、本作ではちょっと盛る。

 

 

  

Q.リョウガのバトルがスムーズすぎない?

A.単純に相手がそんなに強くなかった。ミルトも、例えばイシツブテではなく手持ちのポケモンを使えば勝てるくらいなので、実は初戦には悪くないパワーバランス。とはいえポケモンレンジャーとしての制限が大きいので、本編はあんな塩梅。

 

Q.オフクロの気振り具合

A.田舎町なのでお嫁さん候補を見つけたら、それとなく唆かして旗を立てて行かないと過疎化していくため。ポケモン世界は十歳以上はもう大人扱いなので、気振り方はこれでも実は容赦してる方。

 

Q.ミルトとフラグ立った?

A.まだ。原作の謎フラグはテコ入れを超えたテコ入れだと思ってる。

 

 

 

ポケモントレーナーのリョウガ:

・スキル:ポケモン寄せA+

・手持ち:ネイティ(Lv19)

 

 

 




次回は週末以降になるかもです?
とりあえず本連載打たねば…
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