元ポケモンレンジャー、知らない世界でポケモントレーナーをやり直す(仮)   作:黒兎可

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意外とはかどったので急遽続きます。区切りの関係でちょっと短め。


Page.5 伝説のきみどり

 

 

 

 

 

 

 ジジィからの許可は、すんなりとれた。……条件付きでだ。

 

「マッシュタウンに行った後、その足でまたここまで来るんじゃ。その時、わしとポケモンバトルをする、これが条件じゃ」

 

 そもそもトレーナーとしての許可ももらってないし、モンスターボールだって臨時だったはずなのに、いきなり何を言い出すんだこのジジィ。オレの祖父(ジジィ)ながら意味不明なことを言い出してるけど、別にボケたわけじゃない。ボケてるわけでもないのにいっつもこんな感じだから、クソジジィと言いたくもなるんだ。

 

 夕暮れ時。オフクロにからかわれてミルトさんに振られ(?)て家を飛びだしたあと、ついでだからとその足でジジィの家まで登った。

 トキモリの丘とか言われてるここは、そびえたつ崖の上にある小さな小屋。わざわざここまで電気を引いたりしていて、意外と生活環境は悪くない。

 

 そして、この小屋がジジィの住居だ。万年床な布団と、囲炉裏とかはなく電気こたつが部屋の中央におかれてる。その後方でリオルとピッピが座禅? を組んで瞑想してて、ルカリオが腕を組んで後ろを歩きながら調子をみていた。

 なお、しれっと家の窓から飛んでついてきたらしいネイティは、しれっとオレの隣で丸くなりながら「トゥートゥー」と小声でじっと修行の様子を見ている。だから感情がわからないんだって、リアクション薄いんだからお前さ……。

 

 まあ、そんなネイティから視線を外して。オレは正座しながらジジィを半眼で見て、ジジィはコタツに入りながらホッホッホと笑っている。

 

「正直な話の、お前の扱いについてはちと難儀しておるんじゃ。あのレベルのポケモン寄せはいかにわしのガリュウの息子とはいえ、ちと度が過ぎておる。多少鍛えた程度であのポケモンの群がりを拒絶できるだけの腕力は、すぐには身につくまい。

 じゃがあんまり旅立ちが年単位で長引くと、最近はやりのにぃと(ヽヽヽ)になってしまいかねぬしの。せいぜい十五歳くらいまでじゃろうて」

「いや、オレのせいじゃないしそれ……、いくら無理じゃないって頑張っても時間はかかるよ」

 

 ちなみにガリュウってのはオヤジの名前だ。……というより、やっぱりオヤジもポケモンが寄ってくる才能みたいなのがあったらしい。初耳だった。 

 

「だから、と言う訳じゃ。緊急事態につきモンスターボールを手渡したが、これも良い機会じゃろうて。少し外の世界を見て、わしとバトルして。それで何か新しいものが啓けるかもしれんからの」

「新しい刺激を受けてこいってこと?」

「そうじゃそうじゃ。例えば今日みたいに、カワイイ娘っ子に格好つけようなんて今までのリョウガからは考えられなかったし――――」

「その揶揄いマジでやめろよなっ! オフクロもそうだけど!」

「ホッホッホ! 図星か図星か、初じゃのぉ…………、これでは、わしはひ孫をいつになったら抱けるのやら」

「気が早い…………、くそが、いつか絶対ぶん殴ってやる……!」

 

 拳を握るオレに、余裕しゃくしゃくのジジィ。まかり間違ってもこの場で殴りかからないのは、例の「波動」の力ではじき返されて完封されるからだ。実は何度か襲い掛かって返り討ちに遭った経験があるので、少し慎重に動いている。

 絶対に勝てないかといえば無理じゃないだろうけど、それは理想的な状況が揃った場合だけだろう。

 そもそも地力が足りないし、オレ。

 

「とはいえ一人で行かせるのは忍びなかったがの、あの娘っ子が一緒にいってくれるのなら万々歳じゃろう。…………ついでに嫁にとって村の人口増やすんじゃ」

「早いし全然そんなじゃねーからッ! 年々子供も若者もどんどん減ってって危機感持ってるのはわかるんだけど!」

 

 田舎町あるあるの過疎化問題だ。やっぱり都会とかの方が制限も少ないから出稼ぎに行く人間も多いってのと、トレーナーとして旅立った先で定住しちゃうとかいうのもよくある話。

 トキモリタウンはジムもなければポケモンセンターもない小さな村なので、そこは推して知るべしだった。

 

 とにかくそんなんじゃないって話を言い聞かせた上で、やっぱりジジィのところからも走って帰る。どうしてこう、オフクロもジジィもああやってガキの異性事情を邪推して揶揄うのか……。子供や孫が可愛いってことなのかもしれないけど、ちょっとくらいデリカシー持ってほしいものだよ。

 実際、ミルトさんが好きなタイプなのは否定しないけど。容姿もスタイルもだけど声も可愛いし、性格も普通そうだし。聞く感じだとポケモンも詳しそうだしで、割と言うこと無しなのでは?

 

 でも流石に、出会ってから1日も経ってないお姉さん相手にそういう話はさぁ……。悶々としながら自宅まで帰ると、ちょうど日の入りだ。暗がりになりはじめの自宅は、入り口が応急処置とばかりに丸太数本引っ掛かってたり、鍵が閉められないからかイシツブテ三兄弟が見張りを代行してくれていた。「ナッサイ」とかよくわからない鳴き声をしてくるのに微妙に変な気分になってると、置き去りにしてきたネイティが「トゥートゥー」と鳴きながらオレの頭の上にとまった。

 

「あー、何か悪いな。結構オレ、勢いで行ったり来たりしてさ。お前のことボールに入れてないし」

「トゥートゥー」

「…………、ま、まあ、気にしないって言ってると思うよ、うん」

 

 都合の良い解釈だけど、ネイティは否定するとか攻撃するとかしてこないので、多分間違ってはいないはずだ、うん。

 状況的に無理にゲットしたような感じのネイティなんだけど、今のところは前世のポケモンのように反抗したりと言ったことなはいので、そこは何より。……何よりなんだけどオレの手持ちになった関係上、ミルトさんにキャプチャーしてもらって何考えてるか共有してもらったりは出来そうにないので、コミュニケーション手段を考えるのは必須だ。

 

 ポケモンは道具じゃなくて生き物で、オレたちと意志疎通が出来る相手なんだ。だからそういうのは重要なんだ。オヤジも昔「ヒトもポケモンも、感情あるすべての生き物は自由であるべきだ!」とか言っていたし。

 

 だからそんなことを考えながら、ぼうっとしていたのがいけなかったのかもしれない。

 晩御飯を作ってるオフクロにただいまと一言入れて、ビクティニが机の上ですやすや眠ってるのを確認もせずそのままいつもみたいに服を脱ぎ散らかして風呂場に入っていったせいで。

 

「…………え゛っ」

「…………ひゅ?」

 

 思わず濁点がついた声が漏れたけど、仕方ないと思う。

 

 だってほら、自宅のお風呂場の扉を開けたらいきなりシャワーの音が聞こえて、ここでようやく我に返ったオレが見たのがさ。長い髪を頭の後ろでまとめた状態でシャワーを浴びている、オレよりちょっと背が高い、明るい髪の、きょとんとしたお姉さんでさ。

 そりゃ、いきなりのことだったから冷静さを取り戻すためなのかオレの身体は目の前の相手をじっくり観察する訳でさ。足先から横向いてるお尻とか、腰とか、おへそとか、胸とか。しんぴのベールじゃないけど湯気につつまれてて、上手い具合に要所要所の局所は見えなかったけど。

 お互い数秒固まった後。

 

 

 

「い、いい、今時どんな直球のエロガキなのよ――――――――ッ!」

「ひでぶっ」

 

 

 

 そんな訳で、顔を真っ赤にしたミルトさんのゲンコツが、オレの頬を抉った。

 ……いや、まあ大して痛くはなかったんだけどさ。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「昨日のあれ、まあ言う事信じてあげなくもないけど、これに懲りたらちゃんとノックくらいするのよ? リョウガ。あんまり社会生活を営んでいなかったかもしれないけれど」

「はい…………、サーセン…………」

「ティニ?」

「何でもないよ、お前は寝てたしなーウン」

 

 ミルトがリョウガと出会ってから翌日のこと。

 二人は早朝にトキモリタウンを出て、南方のマッシュシティまで向かっていた。

 近隣の地理については多少なりとも知識があるリョウガだったが、そのマッシュタウンがいわゆる「はじまりのまち」、ポケモン博士のいる町だということは知らなかったらしい。

 町について色々と聞いていると、ミルトの語る情報によく「へぇ……」とたまげた様子だった。ついでにビクティニもリョウガの真似をしてるのか、彼の肩の上で「ティニ……」とたまげたポーズを取ってる。それを見て微笑ましそうに笑うミルトは、上を見て記憶を反芻した。

 

「あそこのマッシュタウンで、私も最初のポケモンをもらったの。……まあ代替わりして、今は当時助手だった人が博士になったんだけどね。

 博士だったひとは別な地方に行ったって、お姉ちゃんから手紙がきてたわね」

「ミルトさんもトレーナーだったんだ、ふぅん……。どれくらいジム、攻略したの?」

「けっこう良いセンいってたわよ? でもまー、一年ちょっとでやめちゃった。

 私、最初からポケモンレンジャーになりたかったわけだし。トレーナーはポケモンとふれあう時間を少しでも増やすため……、って、ジェイク先輩に言われてたからね」

「ジェイク先輩?」

「うん。私のポケモンレンジャーとしての先輩!」

 

 写真みるー? と言いながら、どこか嬉しそうに「イヤン♡ イヤン♡」と身体をくねらせるミルト。えぇ……、と半眼になりながらも、リョウガはミルトの手元の写真を見る。

 そこに映っていたのは、ミルトのまとうポケモンレンジャーのジャケットと同じものをまとった、パンツルックスの青年。青い髪に整った顔立ち、どこか陰のある微笑みはなるほど、確かに格好良い。

 …………そしてその写真に一緒に映っている、ミルトらしきセミロングの髪をした少女が印象的だった。

 

「これ、昔の写真?」

「うん! 私がジェイク先輩に初めて会った時、初めて助けてもらった時の!

 結構な大事故だったんだけど、この時のジェイク先輩と、一緒に助けてくれたケンホロウがきっかけで、私はポケモンレンジャーになる! って思ったの」

 

 ミルトの年齢が十七に対して、彼女が幼児の時のジェイクが十代中ごろか。年の差的な話から異性としての憧れか恋愛感情的な憬れか定かではないものの、リョウガはミルトの話を聞くごとに若干笑顔が強張っていた。おそらく自分の前世、ポケモンレンジャーになった理由が「トレーナーからの逃げ」であるのに対し、ミルトがポジティブに最初からレンジャーになりたかったからなった、という話を聞いたせいだろう。罪悪感といえば妙だが、座りが悪いことに違いはない。

 そんなリョウガの様子に気づいていないのか、ジェイクや自分の話を続けるミルト。リョウガもある程度までは聞けていたが、限界が来たのか「は、話かわるけどさ」と話題を逸らす。

 

「マッシュタウンに、ミルトさんのお姉ちゃんいるんだ。……出身は違うよね? 写真的に」

「うん、もっと都心の方。

 マッシュタウンも引っ越したわけじゃなくって、セオリーだからわざわざマッシュタウンまで行ってから旅をはじめたって流れかしら。割と形から入るタイプの女の子なの、私」

「で、お姉さんは何を…………?」

「それは……、私もよくわかんない」

「は、はぁ……?」

「もともとカントーとかジョウトのワタルチャンプにあこがれて、ドラゴンポケモン専門のトレーナーやってたんだけど、何年か前に気が付いたらマッシュタウンに住み着いてたっていうか生息していたっていうか」

「言い方アレじゃない? ミルトさん」

「いや、お姉ちゃんって機械音痴で……。ポリゴンフォンでメール打つのも一時間くらいかかるから全然やらないし、電話もよくかけ間違えてたのがトラウマになって『もうかけない!』って泣いてたし」

「個性的なお姉ちゃんだ…………」

 

 とはいえそういうリョウガはポリゴンフォンどころかロトムスマホやずかんすら持って居ないので、あまりどうこう言う話でもなかった。

 

 そして、そうこう平和に話していたのもつかの間…………。

 

「い、一体何なのよこれ~~~~~~~~!? 絶対リョウガのせいでしょ! 普通ココロモリこんなに群れないもの! ダメダメじゃないこの状況!」

「いや、ダメじゃない! なんとか、む、む、無理じゃない! 頑張ればマッシュタウンまで無傷でたどり着けるッ」

「私の目を見て言える訳!?」

「ティニー!!?」

 

「ココッロ」「ココロモッ」「ココロモ」「ココロォ」「ココロモッリ!」

 

 いつの間にやら気が付けば、周囲をココロモリの大群に囲まれており。害意はあまりなさそうだが、ニタァと目を細めたココロモリたちに、追われるリョウガとミルトであった。

 流石に肩や頭に乗せておけず、ビクティニをかかえて走るリョウガ。そんなリョウガに合わせて息絶え絶えに走るミルトである。流石にバトルに制限のあるポケモンレンジャーと新米似非トレーナー、群れバトルのような状況にさらされる余裕はない。全力疾走もやむなしといったところだが、ミルトの方が辛そうである。

 昨日の傷については「きずぐすり」の猛烈な効果で回復こそしているが、体力的には疲労が抜けていない。加えてリョウガ自身自覚はないが、彼のフィジカルは人間の中でも比較的上振れている方だ。流石に人力で「いあいぎり」「かいりき」「たきのぼり」「なみのり」を果たす程ではないが、ピカチュウの10万ボルト程度では気絶もしないだろう。

 

 とはいえそんな彼も、ミルトを抱え走りながら逃げ切れるだけの余裕はない。抱えて運ぶのは問題ないが、今の状況で逃げ切れる自信まではなかった。かと言って腕力で捌けるかといえど厳しいものがあり、たとえ相手がバトルではなく遊ぶ目的で蒸れてきているにしても、危ないことに変わりはない。

 そんなリョウガがとった手段は…………。

 

 モンスターボールからネイティを呼び出してネイティを呼び出すと、リョウガはビクティニをミルトにボールをパスするように投げ。びっくりしながら捕まえたミルトを、そのままお姫様抱っこした。

 

「えっ!? えっ!!? ちょ、ちょっと待って何するつもり!!? というか昨日の今日でどんな度胸してるのっ」

「自意識過剰……とは言い難いけど、えっと、ネイティ! おいかぜ!」

 

「トゥートゥー」

 

 リョウガの指示を受けたネイティは、空中で一回転すると大きな羽ばたきを起こす。それと同時にネイティよりも前方、リョウガの背中が追い風で押され、ミルトを抱えた上でなお速度が上昇した。

 

「た、確かに、おいかぜを使うとスピード2倍になるけど、それってポケモンバトルの話じゃないの!?」

「無理じゃなかった、結果オーライってことで、行くぜ! うおおおおおおおおお――――――――!」

 

 そのまま走ってる途中、町並が見え始めたリョウガたち。しかし敵もさるものひっかくもの、ココロモリたちはココロモリたちで途中であきらめることなく、しつこくリョウガたちを追跡してくる。距離は離されたが、おいかぜの効果が切れる瞬間がおそらく命取りだ。再度おいかぜをかけるにしても、その一瞬で追いつかれてしまうだろう。

 

「どどどどど、どうするのよ、りょうがぁ……!」

「泣きべそかかないで可愛いなぁこの人もう…………。ってそうじゃなくって、ミルトさんキャプチャーできないんですか!?」

「あんなにたいりょうにきたら、ぐす……、できないわよぉ…………、れんしゅうじゃ、いったいいったいだし、はしってないしぃ………!」

 

 本格的にピンチである。リョウガ単体ならまだ問題はないが、主にミルトが。

 ミルトの手元でビクティニが「ティニ…………」と少し気まずげな表情をしているが、そんなビクティニに構う余裕もない二人は気付きもしない。

 かくして追い風が切れたその瞬間、ココロモリたちが円を描き、リョウガたちが逃げられないように囲ったうえで、徐々に徐々に接近してくるのを――――――――。

 

 

 

「――――きみどり(ヽヽヽヽ)、ほうでんだ!」

『いや、マジカルシャインの方がいいだろ』

「えっ何故ッ!?」

『我が伝説の威光にひれ伏せ、こうもりもどき!』

 

 

 

 どこか雄々しいというか、ナルシストのような気障ったらしい男の声と、それを小ばかにした偉そうな態度の少女の声が響き。

 ココロモリたちはいっせいに光に包まれて、その場でひっくり返った。

 

「……って眩しッ!?」

「ちょ、ちょっと手を放さないで!? 私落ちちゃうから! かわりに隠してあげ…………って、私も眩しいっ!」

「ティニー!」

 

 ……ついでにリョウガたちも巻き込まれているため、直撃は避けたものの閃光の余波はしっかりと受けたらしい。そんな彼らに、お前らだらしがないぞと「フワフワ浮かんだ」「黄緑色の髪の幼女が」、偉そうに呆れていた。

 

 

 

 

 


【ガバセウスの世界観メモ】

 

Q.意外とすんなり許可が下りた?

A.ポケモン仙人たるお祖父ちゃんが言っている通りの理由。いつまでも縛り付けておくのも良くないが、だからといって全く未経験のまま合格するまで待つのもどうかという判断(下手すればにぃとまっしぐら)。

 

Q.テコ入れはなかったんじゃないの?(ラッキースケベ)

A.テコ入れじゃなく当初予定通りなのでセーフ(えー)。おそらく週刊少年誌で求められていたポケモン漫画は電ピカの類だと思てる(暴論)。

 

Q.ミルトの姉?

A.原作では家族どころかジェイク先輩の描写すらないので当然本作設定。詳細は次回。

 

Q.ミルトがポケモンレンジャーを志した理由

A.詳細は連載続けられればそのうち予定。現在はとりあえずフレーバー程度の基礎情報ということで。

 

Q.最後に出て来た謎の幼女イズ何?

A.デン説のリュウかもしれない…………、というかクロスオーバータグ大体の理由。こっちも詳細は次回。

 

 

 

 

 




明日こそは多分本連載…
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