プロトマーリンに褒められたい男……スパイダーマッ!!   作:妖精狩りの男……スパイダーマッ!!

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幸せなら夢から目覚めた男、スパイダーマン……

 

「マーリン……モルガンを助けたこと怒ってる?」

 

恐る恐るマーリンの顔色を窺いながら聞いた。

マーリンはいつものように笑顔で可愛いのだが今回の笑顔はなんとなく違う気がした。

 

「ボクは怒っていないよ」

「ほ、本当にですか?」

「本当だよ、信じて欲しいなぁ。それに君がモルガンと一緒にいることは最初から知っていたし、誰も死んでいないからね。

 それよりもモルガンが玉座ではなく君を欲するようになったのはボクも予想することができなかった。

 やっぱり君を観ていると飽きることは無さそうだ」

 

その言葉に安心した俺はキャメロットの屋根に腰を下ろして三日月を見上げる。

 

「君はどうして命を賭けてまでモルガンを助けようとしたんだい?特にモルガンに惚れている様子も無ければ利用価値があったわけでもない。

 友人だから助けたと言ってもそれだけが理由かい?」

「……うーん、マーリンのための英雄にはなりたくないからかな」

「どういうこと?」

「自分で言うのもなんだが俺がマーリンに惚れているのはマーリンも知っているだろ?そしてマーリンは英雄を求めている。

 なら英雄を目指すのが道理だ。でもマーリンは自分の理想する英雄を求めているのであって自分だけの英雄を求めていない。違うか?」

「何一つ違わないさ」

「なら俺は君のために英雄になるけど君だけの英雄にはならない。そう考えたからこそ目の前で困っている人がいたら助けるし、死にそうなら救うのが英雄だと思ったからな。

 まあ、いつまで経ってもアーサーに英雄として勝てる気はしないけどな」

 

マーリンが俺の隣に座る。

 

「君はボクに一目惚れした……それは視覚的な問題だ。

 この数年間でボクが人間の感性を持っていない『ろくでなし』なのは知っているのにどうしてボクに恋愛感情を向け続けることができるんだい?」

「確かに最初は一目惚れさ。でも今は違う。

 君に笑って欲しいと思ったから俺は英雄になりたいと願っているんだ」

「…ボクはいつも笑っているよ?」

「……俺はマーリンに本心で笑って欲しい。マーリンは一度も本心を……自分の感情を表に出すことはせずに誰かの感情を消費しているだけだからな。心から笑って欲しいと思ったんだ」

 

マーリンは驚きの表情……偽物かもしれない感情を表にした後俺に警告をする。

 

「その恋が永遠に叶わないものだとしても?」

「うん、叶わないとしても…」

「ボクに感情が無いものだとしても?」

「楽しいやつまらないと思えるなら笑顔にもなれる」

「死すらも救いとなる道を歩むことになったとしても?」

「俺はそれでもいい。好きになった人の為になら俺自身はどうなってもいいんだよ」

 

俺が即答するとマーリンも月を見上げながら言った。

 

「ボクは君のことがわからない」

「俺もマーリンのことはよく知らない。でも恋焦がれてしまったんだ」

 

ゆっくりと月に手を伸ばし握りしめるもそこには何も握られていない。

 

「月のように届かない物だとしても、届いたとして花のように枯れる物だとしても俺は………この思いを諦めることができないんだ」

 

手をゆっくりと下ろし、うっすらと開けた目でマーリンを見る。

まさに月下美人、国色天香……その言葉が相応しいほどの顔なのに少し寂しさを覚える。

 

立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花

 

花の魔術師であるマーリンにはピッタリだろう。しかしマーリンは花のように枯れることはなく、花のように弱くはない。

でも感情を持たないというところは花に似ているかもしれない。

 

「ボクの心も感情も全てが偽りで空虚な物だとしても……君はボクを愛せるのかい?………ピーター」

「心は人である為の枷。感情は人として生きる為の化粧。そのどちらも持たない空虚な獣だとしたら俺が枷になって君の素顔を隠そう。

 君が……マーリンが望む英雄を教えてくれ…その英雄となり、マーリンの心を開けるよ。……俺は」

 

静寂が流れる。冷たい風が肌に触れる。消えることのない星空に一筋の流星が流れた。

 

俺はマーリンが好きなんだ。マーリンを見ていると胸が苦しくなって、心臓がうるさく鼓動して、マーリンのことしか考えれなくなる。

同時に悲しくなって、寂しくなって、胸が痛む。

 

ああ……こうして話している今も恋焦がれている自分がいる。手を伸ばそうと必死になろうとする自分がいる。この夜が永遠に続いて欲しいと思ってしまう自分がいる。

それでも世界は進み続け、取り残されないように走る。俺に出来ることはそれだけなのだ。

だから俺は大きな望みは言わない。

 

君に笑って欲しい。

君に楽しんで欲しい。

君に認められたい。

君に会いたい。

 

君に『褒められたい』……ただそれだけなんだ。

 

 

「………ピーター……ボクはね、終わることのない英雄を望んでいるんだ」

 

その言葉を最後に俺の意識は暗い暗い闇の中へ落ちて行き、懐かしい楽しくも悲しい思い出の夢から、とても醜いながらも美しく残酷な現実へと戻ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて長くて懐かしい夢なのだろうか……今の俺をアーサーやモルガンが見たら失望するかな……ごめんな、みんな…」

 

とある男はボロ小屋で目を覚まし、笑顔を無理やり作って自分を保つ。

その幸せな夢は過去を思い出せる安心と現状との乖離が男の心を苦しめた。

『幸』という文字から一文字取ると『辛』になるように幸せとは一瞬で崩れ去り、残っていくのは辛さだけであった。

 

「今日も……誰かを…助けないとな。………いつまで経っても全員を助けれたことは……」

 

男は独り言を呟きながらボロボロになったスパイダースーツを着用して外へ飛び出す。

体の内側で2つの大きな力がぶつかり合い、激痛が走り続けているが気にする様子もない。男は痛みには耐え続けていた。

 

そんな痛みを我慢しながら男は元いた世界とは別の世界、俗に言う並行世界で人々を助けていた。

理不尽に殺される人々を助け、戦争に巻き込まれた一般人を助け、強盗や無差別殺人などの犯罪から人々を助け、魔術師に誘拐された人々を助けた。

 

幾度となく並行世界を渡り歩き、数多の世界で悪を倒し、人を救った。

 

誰もが彼に感謝をした。誰もが彼を恨んだ。

安らぎを捨てて命を賭けてまで戦い続ける彼を誰もが恐怖した。だから彼は助けた人々に裏切られ、何度も処刑されそうになった。

きららと光る怒りの目で悪を探し、探り、空を駆けて追いかけてくる彼を悪人達は恐怖した。だから罠にかけ、何度も殺そうとした。

 

男は不老であって不死ではない。

腹は減り、酸素を欲し、水を求める。

剣を突き立てれば血は流れ、弓で射れば体は命令を聞かなくなり、首を刎ねれば簡単に死ぬ。

 

でも彼は死ななかった、死にたくなかった。

それは生物としての生への欲求ではない。己の命が誰かの屍の上に立っているのを理解していたからだ。

 

今日も壊れた心を無理やり稼働して忌々しい蜘蛛の力を使い街の中を高速で進む。

子供を誘拐した魔術師の家に飛び込み、子供達を救出した。そこでその家の魔術師が帰ってくる。

 

「誰だお前は!?私の素材をどこにやった!?」

 

男は己の心を……人としてではなく、ヒーローとしての心に切り替えて、自分が壊れてしまわないように、自分に言い聞かせるように叫んだ。

 

「地獄からの使者、スパイダーマン……」

 

愛してやまないあの人から貰った腕輪から糸を発射して魔術師の男に巻きつけた。

その一連の動作は機械のように正確に何百、何千と同じ行為をしてきた彼だからこそだった。

 

男は捕えた魔術師を殺すことはせず、痛めつけることもしない。

 

「次は殺す

 

魔術師は心の底、魔術師として、人間として、生物として恐怖した。

悍ましくドス黒い悪意を人間として恐怖する。生物を超越した気配に生物として恐怖する。

人間では理解してはいけない2つの蜘蛛がただ1人の人間の中で渦巻いていることに魔術師として恐怖した。

 

深い緑色だった髪の毛はストレスで真っ白に変わり、全身の毛穴から尋常ではないほどの汗が流れ出し、糞尿を漏らしていることさえも気にせずに魔術師はただひたすらに泣いた。

 

誰かが助けに来れるようにその場に放置して街の中へ光となって消えていく。

 

 

「ここは……19世紀のイギリスか………」

 

世界を渡った男は鉛よりも重い足を動かして酸性の霧の中を進む。すると男は落ちていたボロボロの新聞を広い上げる。

 

「無差別連続殺人……この時代だと切り裂きジャックか……止めないと俺は英雄に近づけない」

 

硬く冷たい石レンガの道路を強く蹴り、街中を飛び回り切り裂きジャックの情報を集め始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

おまけ

 

主人公から見たアーサーや円卓達

 

【ガウェイン】

太陽ゴリラ。じゃがいもはもう飽きた。

またガウェインの作ったマッシュポテトが食べたい

 

【ランスロット】

変に真面目な後輩。魔術で無理やり子作りさせられてブチギレている時に殴って子供に責任はないことを教えてやった。

ギャラハッドを救えなかったことを謝りたい

 

【トリスタン】

仲のいい同僚。ノリがいいので2人で漫才になることも多い。

それはそうと空気の矢を放てるのは変態だと思っている。

また一緒に居眠りをして怒られたい

 

【ベディヴィエール】

円卓内でアーサーの次に信頼している同僚。

片腕が無いことで円卓にいていいのだろうか?と悩んでいる時に相談に乗ってあげ、マーリンに頼んで銀色の義手を作ってもらうように頼んだ。

素材集めに3ヶ月一緒に旅をしたのはいい思い出。

円卓内で唯一救えた、そして残してしまったことを謝りたい

 

【アグラヴェイン】

頑固だけど優秀な同僚。明らかに自分は嫌われているんだろうなと思っている。

またいつものように不満を言って欲しい

 

【パーシヴァル】

円卓内の癒し。よく昼食を一緒にする。弟みたいに思っていて相談したり相談に乗ったりしている。

あの時に自分を守ってくれたことに感謝を伝えたい

 

【ケイ】

兄貴分。自分やアーサーよりも弱いのになんだか勝てる気がしない人。

実は役職的には上司。

またアーサーと3人で遊びたい

 

【アーサー】

親友。

また会いたい

 

【ギネヴィア】

俺とアーサーのBLは辞めてください死んでしまいます。

約束を守れなくてごめん

 

【モルガン】

玉座を狙わなくなったのはいいけど誘拐するのはやめてください。

彼女から残された物は全て壊れた。

 

 

【マーリン】

 

マーリン!マーリン!マーリン!マーリンンンううわぁああああああああああああああああああああああん!!!

あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!マーリンマーリンマーリンぅううぁわぁああああ!!!

あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん

んはぁっ!マーリンの白色の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!

間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!

アーサーにイタズラする時のマーリンたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!

アーサーが王に決まって良かったねマーリンたん!あぁあああああ!かわいい!マーリンたん!かわいい!あっああぁああ!

俺なんかと会話してくれて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!

ぐあああああああああああ!!!マーリンの笑顔なんて偽物じゃない!!!!あ…恥ずかしがる顔もイタズラを考える顔もよく考えたら…

マーリンち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!

そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ブリテンぁああああ!!

この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?アヴァロンのマーリンちゃんが俺を見てる?

アヴァロンのマーリンちゃんが俺を見てるぞ!マーリンちゃんが俺を見てるぞ!アヴァロンのマーリンちゃんが俺を見てるぞ!!

現世のマーリンちゃんが俺に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!

いやっほぉおおおおおおお!!!俺にはマーリンちゃんがいる!!やったよパロミデス!!ひとりでできるもん!!!

あ、笑顔のマーリンちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!

あっあんああっああんあアーサーぁあ!!セ、セイバー!!黒吉田ぁああああああ!!! ウェールズ王妃ぁあああ!!

ううっうぅうう!!俺の想いよマーリンへ届け!!アヴァロンのマーリンへ届け!俺は実はサイト萌えなんだっ!!

 

一度だけでいい、「頑張ったね」と褒めてもらいたい。願ったのはそれだけ。

 

 





ヴォーディガーンやモードレッドに関してはFGOに入ってから回想シーンとして書きます。どう言う地獄を辿ったか想像して見てみると面白いと思いますよ。

おまけに透明文字が隠れているので考察の材料になると思います。
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