プロトマーリンに褒められたい男……スパイダーマッ!!   作:妖精狩りの男……スパイダーマッ!!

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サムレムやると一番えっちなのは宮本伊織ってことに気づくよね。
この浪人……すけべ過ぎる!!


夜の霧と蜘蛛

 

数日間色々なことがあった。

 

事件現場に行くたびに襲われてスパイダーマンに助けられる。魔術という未知の領域でさえもホームズと私は事件を解決しようと奔走する。

ホームズは何か考えているようだったが推理を終えてからしか話さない彼の考えていることは最後までわからない。

 

 

とある日の晩。私はスパイダーマンに聞いた。

 

「ねえ、スパイダーマン。君はどうして切り裂きジャックを探しているんだい?」

 

「………」

 

茶色いローブで姿を隠している彼は黙ってしまった。

 

「すまない、気を悪くさせてしまったね」

 

「……いや、確かに目的も聞かないで協力するなんて不安になるのも当然だ。……俺はこの殺人事件を止めたいんだ」

 

「それは正義感からかい?」

 

「…………少し恥ずかしい話になるが好きな人との約束を守るためだ」

 

この数日間で初めてスパイダーマンが人間らしい感情を見せてくれたことに私は口を開けて驚いた。

復讐や正義感、ヒーロー・シンドロームのような理由だと予想していたが外れてしまった。ホームズならわかっていたのかな?

 

「君にも好きな人がいるのかい?どんな人か教えてくれないか?」

 

「……彼女は花であり月だった。俺は花に誘われた虫のように、月に魅入られたオオカミのように彼女を追いかけていた」

 

「君も男なんだね。……その点に関してはホームズより人間らしいよ」

 

「………まだ人間らしくいられるなら安心だな。明日も早い、今日はもう寝るといい」

 

「それもそうだね」

 

私は屋根の上から部屋に戻ろうとハシゴを降りていく。スパイダーマンに手を振ると手を振りかえしてはくれないが少し頷いてくれた。

 

その日は何事もなく就寝してぐっすりと眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

今日は運のいいことに魔術師達の攻撃が激しく事件現場を手短に調べているとスパイダーマンがとあることを呟いた。

 

「やっぱり……どの事件現場の近くにも霊地がある」

 

「ミスタ・スパイダーマン、霊地とは?」

 

「俺も詳しくは知らないが……魔力が多く通っている土地だということは知っている。悪魔や霊などはこういう魔力の多い土地から現れる」

 

「ならば切り裂きジャックもその可能性が高い……」

 

私たちは走りながら会話していると突然スパイダーマンに投げ飛ばされた。突然のことに驚きながらもスパイダーマンの方を見ると辺り一帯が抉れていた。

 

スパイダーマンの姿が見当たらないが蜘蛛の糸を発射する音が聞こえて一安心する。

糸を張り巡らして戦場を整えているスパイダーマンは私たちに向かって言った。

 

「2人は逃げてくれ!」

 

その言葉に私とホームズは駆け出す。どこかで人混みに紛れることも考えたのだが何処にも人がいない。

足が痛くなり、肺が苦しくなるほど走り続けて逃げているといつものように白いローブの魔術師達が襲いかかってきた。

 

「ワトソン!こっちだ!」

 

ホームズに手を引かれて路地裏などを通りながら魔術師達の追跡を交わしていく。しかし追いつかれるのも時間の問題であった。

 

「はあ、はあ、どうするんだいホームズ」

 

「数人程度なら撃退できるかもしれないが、いかんせん数が多すぎる。それに気づいているかいワトソン、人がいないどころか街の地形すらも変わっている。まるで迷宮に迷い込んだ者を逃さんとするみたいに」

 

「なんだって!」

 

ならこのまま走り続けていても逃げることはできないということか。

だとしたらスパイダーマンが戻ってくるのを待つしか……あれ?

 

……そういえばホームズは何処へ向かって走っているんだ?

 

「突き当たりにある壁に向かって走るんだ」

 

何を言ってるんだホームズ!と言おうと思ったが何か考えがあるのかもしれないと思い、壁に向かって走ると壁をすり抜けてしまった。

 

私が驚いているとホームズ私に言った。

 

「鏡越しに見ると消えた道や壁が姿を表す。鏡は古来より真実を映し出すと言い伝えに残っているぐらいだ。

私たちは偽物の迷路に迷い込んでいただけ。

しかし迷路を抜けた先にはこれほどの敵とは……私たちは罠にかけられたようだ」

 

ざっと数えて30名を超える魔術師達が待ち構えていた。

私とホームズはこれまでにない危機に陥っていると確信した。

前にも後ろにも魔術師がいて最悪な状況……打開する方法を考えても恐怖と焦りのせいで何も出てこない。

 

「待ちなさい」

 

威圧感と共に可愛らしい少女の声が魔術達の動きを止めた。

恐る恐る声のした方を見てみるとそこには紫色の髪をした可愛らしい少女が立っていた。

 

「久しぶりねミスタ・ホームズ、ミスタ・ワトソン」

 

「まさか君が来るとは思っていなかったよブラヴァツキー夫人」

 

「ブラヴァツキー夫人だって!?」

 

彼女は50歳を超えていたはずなのにどうしてこのような若い姿で…

 

「彼らは私の友人よ。彼らに手を出すというのなら容赦はしないわ」

 

そう言うと今までしつこかった魔術師達は何も言わずに去っていった。

 

「さて、スパイダーマンは何処かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時の魔術師か……おそらく典位」

 

 

典位は時計塔という世界最大の魔術師組織の上から数えて3番目に当てはまる階位。

そんな魔術師に対抗するためにスパイダーマンはホームズ達を逃した後誰もいなくなった街中に糸を張り巡らし撃退の準備をする。

 

 

「人払いの結界を張っているので安心するといいスパイダーマン」

 

「つまりここでは本気を出していいのか……」

 

 

その瞬間前回と同じように壁を走りながらスパイダーマンは魔術師に接近する。

 

 

「馬鹿の一つ覚えに同じ攻撃とは……地獄の蜘蛛とは低脳であったか」

 

 

魔術師は余裕そうに後ろで腕を組んだ。同じ攻撃なら同じ魔術で防げるだろうと考えていたからだ。

しかしその余裕、慢心が彼の敗因に繋がった。

 

スパイダーマンの飛び蹴りは魔術障壁を簡単にぶち破り、ダンプカーに衝突したような威力で顔面に衝突した。

 

あまりの威力に水切りのように道路を跳ねながら建物にぶつかり、白目を剥いて気絶してしまう。

 

 

「………油断は禁物だ……死にたくないのならな」

 

 

「お見事ですね地獄の蜘蛛……スパイダーマン」

 

パチパチと両手を叩いている修道服を着た高身長の女性が背後に立っていた。

 

「お前は……」

 

「お初にお目にかかります。埋葬機関所属のしがない代行者ですよ」

 

 

その言葉を聞いた瞬間にスパイダーマンは警戒度を上げる。

なぜなら埋葬機関の代行者というのは全員が化け物であり上位勢に関しては円卓の騎士とも渡り合えるレベルの実力者が揃っているからである。

 

代行者が軽く地面を蹴るとスパイダーマンの視界から消えた。スパイダーマンは何処にいるのわからないがスパイダーセンスが危険と判断した方向とは逆方向へ回転して代行者の槍の一撃を避けた。

 

 

「流石の勘ですね。本当に蜘蛛のように危機を察知して避ける。人間技ではありませんね」

 

「………」

 

「私も縮地に近いことをしてみたのですが貴方には通用しませんでした。それにしても随分とお優しいですね。私がお喋りをしている間に逃げることも襲うこともできたというのに……」

 

 

彼女はそう言いながら地面に突き刺さった白銀の槍を引き抜き、遊んでいるようにぐるぐると右手の指を巧みに使い回転させる。

 

 

「霊は死んだ、悪魔は堕ちた、人は生きた。

 作るための腕を、歩むための足を、考えるための脳を。

 人は人から道を踏み外し獣へと変わるのならば私が殺そう。

 夢のままで終われるのなら私が終わらせる。終わらない夜があるのなら私が終わらせる。

 神に捧げる演奏は愛そう、悪魔へ捧げる演奏は壊そう。

 生を忘れず、思考を捨てず、夢のあり方を形とするがいい。

 ただ一点、終わりなき正常をここに約束するだろう」

 

 

代行者の女は先ほどとは違い真っ直ぐ一直線に走ってきた。

その速度は人間には到底出せるものではない。人の形をしたジェット機が近づいてくるようなものだった。

 

スパイダーマンはスパイダーセンスによってその攻撃が来ることはわかっていた。しかし未来がわかっていたとしてもそれを回避する手段が彼にはなかった。

 

白銀の槍がスパイダーマンの胸に突き刺さり、ポタポタと血が流れる。

しかし心臓を刺されたわけではない。呼吸に混じる血の匂いと肉体が酸素を求めている感覚から肺を貫かれたのだと察した。

 

 

「早く『あの魔術』を使った方が死なずに済むと思いますが……」

 

「………人に……つ…かうものじゃ……ない」

 

 

スパイダーマンは人間を超越した筋力で自分に突き刺さった槍を握り、体から無理矢理引き抜いた後、その腕力で槍をバラバラに潰した。

穴が空いた肺に素早く糸で縫い、肺から酸素が出ていくのを防いだ。しかし痛みは尋常ではなく常人ならば失神してしまうほどだろう。

スパイダーマンは慣れたているように何事もなく執行者の女を睨みつけていた。

 

 

「……貴方は本当に優しい。私の頭を潰そうとしたのなら確実に潰せた。しかし貴方は自己の治癒を優先した。

その理由は貴方が誰も殺したくないと思っているからですね?」

 

 

図星だった。スパイダーマンがこれまで1人を除いて人を殺したことは無かった。

彼は誰にも死んで欲しくない、誰もが生きていてほしいと願っていた。

 

 

「2週間近く貴方を監視していましたが貴方のような心優しき怪物が人を助けるために戦うのは何故ですか?

殺したくないのなら一般人として過ごす未来もあったはずです」

 

「…………」

 

「英雄になりたいのなら別の道もありました。……貴方は己の起源に縛られているのでは?」

 

 

起源とは万物が持っている己を成す根幹。多くの人間はその起源にも気づかないが起源覚醒者は違う。

起源覚醒者とは、文字通り起源に覚醒した者のことである。その肉体には強大な力が備わるが、元々あった人格は異常を来たす。

それはたかだか人として生きる間しか持続しない「人格」など、原初の始まりより生じたその存在自体の方向性の前には容易く塗りつぶされるからである。

つまり起源に覚醒した物は人生を起源によって縛られてしまうのだ。

 

例えばシャーロット・ホームズの起源は【解明】

謎を解き明かし、白日の下に晒す事。真実を探し出す事。

探偵として事件を解決することは彼の起源による探究心などが動かされることによって行われていた。

 

とある少女の起源は【禁忌】

動植物のどれに生まれようと、その群れにおける道徳から外れた存在になる。

律から外れようとする衝動。血の繋がった兄に対する愛情。近親相姦という社会的に「禁忌」とされている事を望む姿勢。

本人曰く、するなと言われたモノを無性にしたくなるらしい。

 

そんな多種多様な形で表れる起源は生まれつきのものが変質する場合もある。

 

とある少年はアーサー王の鞘アヴァロンを入れられたことによってその起源を【剣】へと変質させた。

 

スパイダーマンもその少年と同じであの瞬間、運命の出会いを果たしたと言っても過言ではないあの瞬間に彼の起源は変わった。

 

 

「貴方の起源……それこそ【蜘蛛】ですか」

 

 

蜘蛛を起源とするだけでは戦う理由にはならない。彼のイメージ……蜘蛛に力を与えられた人間というイメージによって起源が方向性を変えてしまった。

 

 

執行者が屋根の上に飛び上がり、スパイダーマンを見下ろす。夜の月が姿を見せず霧が立ち込める。

 

スパイダーマンは腕輪から出した糸を建物にくっつけて弧を描きながら代行者に近づく。

代行者はそんな甘えた行動は許さず懐から取り出したピストルを発砲した。ピストルから放たれた銀の弾丸はスパイダーマンの頭に当たった。

 

しかし血が流れることもなくスパイダーマンは勢いのまま代行者の首根っこを掴み、空中で体を捻り回転することで紐付きの砲丸投げのように速度をつけて家の屋根と同じ高さから下の地面へと叩きつけた。

 

「………そのような魔術を使うとは……資料には無かったので少し驚きましたね」

 

代行者はゆっくりと立ち上がり土埃を手で払う。

 

 

「……貴方も埋葬機関に入りませんか?私は貴方を殺したいと思えませんし貴方も私を殺したいと思っていません。

その力があれば代行者として立派……とは言いませんが働けますよ」

 

「断る」

 

「即答ですか……困ったものですね。ならせめて例の魔術を使わせるとしましょうか」

 

代行者はピストルを投げ捨て武術の構えを取った。スパイダーマンも腰を低く落として臨戦態勢を整えた。

お互いを睨み合い仕掛けるタイミングを計っていると三つの人影が飛び出した。

 

「ミスタ・スパイダーマン!今から3分後に切り裂きジャックが現れる!」

 

 

名探偵シャーロック・ホームズが謎を解いたようだ。

 

 

 

 

 

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