プロトマーリンに褒められたい男……スパイダーマッ!! 作:妖精狩りの男……スパイダーマッ!!
リアルが忙してなかなか書けなかった男、スパイダーマッ!!
許して!!
ピーター、それが僕の親友の名前だ。
ピーターはいつだって僕の手を引いてくれた、悩みを晴らしてくれた、自分が閉じこもっている心の殻を破壊してくれた。
ふざけて怪我をしたり、一緒に変なものを食べて体調を崩したり、喧嘩して殴り合ったりなど何度も馬鹿なことを共にしてきた。
ピーターは僕よりも弱い。
力でも瞬発力でも技術的なものでも全て僕に負けている。しかしピーターは諦めることはしないし、あの手この手で僕に勝とうとしてくる。僕に並ぶというよりも僕の先を行こうとしてくるので僕も躍起にやって前へ進む。
その理由を一度だけ聞いたことがあるのだが
「追いかけ続けるよりも隣に立てる存在になりたいから、なんなら俺が前でもいい」
ピーターはそう言ってくれたんだ。だからこそ僕はピーターに対しては手加減することはせず勝ちに行くんだ。それに何度も何度も対抗して喰らい付いてくる。
僕は彼のそんなところが好きだ。大好きなんだ。
そこだけじゃない、彼の真っ直ぐなところも好きだし、遊びに全力なところも好き。精神が強そうに見えて実は弱いところもいい、その弱さを優しさに変えれるところが1番強いと思う。強がっているけど寂しがり屋なところもいい。彼と共有した喜ばしい事も悲しい事も今となってはいい思い出になった。僕が騎士になると言っていた時に付いてきてくれると言ってくれたのはすごく嬉しかった。でも僕が王になるかを迷っている時に言葉に出さずとも僕の内心を察して、殴ってでも僕の幸せを考えてくれたのはもっと嬉しかった。自分ですらわかっていなかった心の奥底を汲み取ってくれた時は心がポカポカする気持ちになった。
僕は彼の親友と言い張れるだけあって、彼のことを誰よりも知っている。花が好きなところ、自分に対して自信があまり無いところ、誕生日にいの1番に駆け付けて祝ってくれたところ、コップを持つ時に小指が立っているところ、子供には急激に優しくなるところ、僕にだけは平気で殴ってくるところ、ウィンクしようとして両目を閉じてしまうところ、カッコつけようとしていつも悲惨な目にあっているところ、怖いもの知らずのように見えておばけが苦手なところ、目の前に困っている人がいたら後先考えずに助けに行こうとするところ、寂しい時に手を握ってくるところ、空元気でも前に進もうとする。
そして
しかしそんな大好きな親友に対して一つ悩みがある。
今僕の隣にいるマーリンに恋をしてしまったことだ。
「どうしたんだいアーサー、何かを諦めたような目でこちらを見つめて?」
この見た目は完璧だが性格が絶望的に終わってるマーリンに恋をしたピーターはとてもじゃないが女の趣味が悪すぎると思う。
もしもピーターが普通の女性に恋をしたら僕も祝福するだろうがマーリンだけは違う。
「はあ、なんでマーリンなんかに恋してしまったんだろう……」
「ピーター君のことかい?彼はとても面白い人間だよ。僕に惚れるのもそうだけど蜘蛛に噛まれてからはアーサーみたいに夢の中を覗けないしね」
ここは僕の夢の中の世界だ。
マーリンは夢魔なので他人の夢に干渉することができ、僕はこの世界で戦い方や王になるために必要なことを学んでいる。それは旅の最中も同じだ。
「ピーターの夢が覗けないってどういうこと?」
「何か強力な力に阻まれて夢に入れないんだ。蜘蛛に噛まれる前はこんなことなかったんだけどな〜」
「ねえ、それって蜘蛛に噛まれる前は勝手に覗いてたってことだよね」
「………」
カリバーンの握りでマーリンを攻撃する。
夢の中でほとんど効果がないとはいえ夢魔であるマーリンは普通にダメージを負うはずだ。
「少し待って欲しい。彼が蜘蛛の力に気づけたのは僕がピーター君の夢を見ていたおかげなんだよ。彼が見ていた夢の中に蜘蛛の力を持った人間がいたんだ」
ピーターの夢でピーターと同じような人が?
確かにピーターは蜘蛛に噛まれた後、何かを察したように悲しんでいたけどピーター以外にも似たようなことになってしまった人間がいるのだろうか?
「彼が魔術礼装を作る時にその人を意識して作ったみたいだよ」
「……聞き間違えかな?マーリン、今なんて言ったんだ?」
「彼が魔術礼装を作った」
「ピーターが魔術礼装を作った?ピーターの魔術回路は2本じゃなかった?どうしてピーターが……」
「ボクはピーター君に魔術礼装の見た目、つまり服装を自分で作って欲しいと頼んだんだ。するとピーター君は慣れたような手つきで一つの服を縫いあげた。
ここまでならただの服作りが得意なだけだろう。しかしピーター君が作り上げた服はボクが礼装化する前から既に魔術礼装になっていたんだ。
おそらく魔術に対するイメージというよりも服に対するイメージでその効果を付与したのだろうけどアレは規格外と言っていいほどの代物だったよ。
だからこそピーター君が要望していた機能はついていないけどね。思い込みだけで平衡感覚が良くなっている気になっているだけさ」
「……それも蜘蛛の能力なんだね」
「おそらくね。彼自身は気づいていないようだったからボクが礼装化したことにした。流石にあそこまで強い礼装を幾つも作られては抑止力に引っかかりそうだからね。無自覚のままにさせておくのが1番さ。
だから彼にあげた腕輪は彼の要望通りに見えて抑止力への隠蔽も兼ねた魔術礼装になっているんだ。ちなみに自動洗浄は腕輪の方に付けておいたよ」
夢の中ですら嫌な汗が流れる。
すごく嫌な予感がする。抑止力に引っかかりそうな力を持ったピーターをマーリンはどうするんだろう。
「もしも…もしもピーターが抑止力に感知された場合、マーリンはどうするつもりなんだい?」
僕の問いにマーリンは何も答えずにっこりと不敵に笑う。
まるで「今は秘密」と言いたげな感じだ。
不安を覚える。
もしもマーリンとピーターが敵対した時、ピーターは大丈夫だろうか?その時の僕がそばにいるだろうか……本当に心配だ。
「そういえばピーター君の夢で思い出したのだけど…ピーター君は「別の世界から来た……そう言いたいんだろう?」…さすがアーサーだ。撫でてあげよう」
「いらないよ。僕は16年間ピーターと一緒にいるんだ、それくらいとっくに気づいてるさ。
僕はマーリンから勉強を教えてもらうことで知識をつけてきた。平民であるピーターが僕が知らない言葉や計算法などを使っていたら違和感ぐらいは覚えるさ。
それにピーターはブリテン……いやこの世界に馴染めていない。
そんなピーターは僕に気づかれていないと思っているようだけどね。だから僕から問い詰めることはしない。ピーターが自分の口から言ってくれることを待つことにしてるんだ。
それにピーターが何者であろうとも僕の親友であることには変わらないよ」
マーリンは微笑む。
その微笑みの意味はわからないが嫌な予感はしないので悪いことにはならないだろう。
そうこうしているとだんだんと視界が狭まっていく。
これは夢から覚める瞬間の合図だ。
「現実世界でまた会おう」
マーリンがそう言うと僕の視界は完全に無くなり、次に目を開けると野営していた森の中で目覚める。
「起きたかアーサー、マーリンの奴はピーターが今何をしているって言っていた?」
夜営していたケイ兄さんが少し眠そうな顔で聞いてきた。
「力の詳細を知るために海を渡って湖の精霊に会いに行かせると言っていたよ。ピーターは能力のせいで僕たちに迷惑をかけないか心配なんだって」
「そうか……迷惑なんて既に何回もかけられてるのに今更気にする馬鹿は帰ってきたら怒らないとな」
少し安心した様子でいつものように悪態をつく。
ケイ兄さんはマーリンのことをあまり信頼していない。なのでピーターのことがとても心配だったようだ。
「それでだアーサー、今日行く村はおそらく……」
「大丈夫だよケイ兄さん。それも覚悟の上だよ」
「そうか……」
朝食を取った後、野営の跡を消して、馬にも餌をやり、荷物を整理して次の村へ向かう。
村に近づいて行くにつれて吐き気を催すほどの腐敗臭が鼻を刺激する。
村へ着くと既に村は崩壊しており、そこらじゅうに腐っている死体や食い散らかされた死体、黒焦げになり限界がわからない死体、湧いた蛆虫に現在進行形で食われている死体。
そんな悲惨で残酷ながら今のブリテンを表すような光景が広がっていた。
今回のは見たところ魔獣に村を襲われたと見える。
地面に爪痕が残っていたり、焼け焦げた死体には縛られていた形跡が見えない。これも王の不在により兵を動かせないせいだろう。
こんな村は何度も見てきた。
それに魔獣に襲われた村だけじゃない。王の不在に不安を覚えた民衆が盗みや掠奪を働き、他の村を襲うところを一度目撃した。
そして僕はその時に初めて人を殺してしまった。
騎士になっても王になっても誰かを守るためには誰かを殺す必要があることはわかっている。しかし昨日殺した男の顔と声が思い出してしまい、斬った時の感触も記憶してしまっている。
ケイ兄さんとマーリンが王になる前にブリテンをその目で見ておくべきだと言っていた理由が今となってわかる。
ピーターが昔言っていた言葉、100回聞くよりも1回見た方が得れるものは多い。というのは本当だった。
マーリンから今のブリテンを100回聞いてもここまでの理解はできなかったはずだ。
そうして色々な感情が渦巻きながらも次の村へ向かうために馬を走らせる。
次の村まではとても遠くて1日では移動できないのでどこかで野営することになった。
この旅もあと数日で終わる。
栄えた町、滅びた村、活気ある人々、すでに動かなくなっていた人々、たくさんの作物が育っている畑、種さえも植えられていない畑、貴族の権力を表す巨大な城、掠奪により燃やされた結果崩れ落ちた家。
様々なものを見てきた。
この現状を変えるのが僕の使命でやるべき義務なのだと改めて実感しているとケイ兄さんが馬を止めたので僕も馬を止める。
「今日はここで野営するぞ」
そう言ったので馬をその辺に止めて薪を拾いに行く。
少し草の生い茂った森の中で程よく乾燥した木の枝を拾っていると何処かから何者かが水面に上がる音が耳に入る。
拾っていた木の枝を捨てて走り出す。確信も根拠もないのに僕には誰が現れたのかがすぐにわかった。
木々の間を通り抜け、少し大きな湖の近くに立っている赤い見た目をした奇妙な人間を見つける。
ああ……会いたかったよ……ピーター!!
なんかアーサーからの重力が重くなってしまった……