プロトマーリンに褒められたい男……スパイダーマッ!! 作:妖精狩りの男……スパイダーマッ!!
これも全部テストってやつの仕業なんだ。
あれから数年。
アーサーが結婚したり、円卓の騎士が作られた。
円卓の騎士の中には俺と誤解から戦ったランスロットもいたりする。
そのランスロット筆頭に円卓の騎士たちは化け物揃いだ。
ということでイカれたメンバーを紹介するぜ!!
木の棒で騎士たちを薙ぎ倒し、エクスカリバーに並ぶ聖剣アロンダイトの所有している
太陽の下、つまり昼頃になれば身体能力が3倍になる
真空の矢を飛ばす
上記3人のツッコミ役
人が嫌いな
いい子なんだけどいい子すぎて心配になるパーシヴァル。
アーサーが王になったおかげでちゃっかり円卓の騎士になったケイ。
以上
イカれたメンバーでした。
他にもいるにはいるのだが俺と関わりが薄いせいでよくわからない。それでもケイさん以外は全員化け物と言えるほどの実力を持っていることは確かだ。
え?ケイさんにも凄いところあるだろうって?確かに9日間呼吸を止めたり、乾燥機の代わりになったりと凄いのだが他が凄すぎるせいでどうしても薄れてしまう。
そんなこんなで国の統治に忙しい日々を送っていた。
いろんな奴らと闘ったり、権力争いに巻き込まれそうになったりと色々あったが大きな事件などは起きていない。強いてあげるとするならアーサーがカリバーンを折ったことぐらいだろう。
それもエクスカリバーに打ち直してもらったので問題はなかった。
そして俺もこの国の重鎮に………はなっていない。
俺の役割は緊急時に動かせる最速の戦力とアーサーの声をわかりやすく民に伝えたり、円卓内の雰囲気を良くしたりする。簡単に言うと道化師だ。
道化師といえばピエロなんかを思い浮かべるかもしれない。しかし俺は違う。鼻どころか顔まで……なんなら上半身全て赤い。
実を言うとスパイダーマンのスーツの着心地がかなり良いせいで寝る時以外は脱がずに生活していると民や騎士たちから
『謎の道化師』『実は裏で国を動かしている』『狂人』など言いたい放題だ。
これでも孤児院作りに協力したり、町のお助けをしたり、騎士たちの相談に乗ってあげたりなどして評価は高いはず……
まあ今はそんなことどうでもいい。
満月が街全体を照らし、火を持たずしても歩けるような今日、いつも仕事が忙しくて自分の睡眠を削っている
「じー」
そんなありきたりな効果音を口で言いながらアーサーの自室を覗く。
そこにはベッドの上ですやすやと子供のように寝ているアーサー。そして黒い服を着た女性が立っていた。
アーサーは女性を自室に連れ込んだの?ギネビィアさんという可愛らしい嫁さんがいるというのに……
それでももしかしたら勘違いかもしれないと考え観察を続ける。
銀髪の女性がにやりと笑う。手のひらをアーサーの上に置き、何かをブツブツと唱える。
何かヤバイと思った俺は木の窓をそっと開けて部屋の中に入り女性の肩をやさしく叩く。
「寝ている子を起こすなよ」
こちらに振り返った女性の胸倉を強引に掴み、無理やり窓の外へ放り投げた。
女性はすんなりと投げ飛ばされたが簡単すぎたので俺は違和感を感じた。
その嫌な予感が当たり、銀髪の女性は突如現れた鏡に映った虚像と同化するように消えてしまう。
「なっ……」
御伽話を目の当たりしたことに動揺していると本能が足元からの危険を脳に知らせる。
跳んで逃げ出そうとするがその判断は遅かった。魔術の沼に足を取られて身動きが取れなくなる。
どんどん沈んでいることに恐怖を感じながらなんとか打開策を探す。
腕のスパイダーリングを使って部屋の天井に粘着性の糸を引っ付けて攀じ登って抜け出そうとしたが足が抜けない。寝ているアーサーに助けを求めるがなぜか声が届かない。これも奴の魔術によるものなのだろうと考えて他の手段を探す。
冷静に状況を確認する。
物理的な手段での脱出は不可能。助けを求めることもできない。
体も膝上の辺りまで沈んでいる。
────終わった。ふざける暇があったのなら捕らえておくべきだった。
しかし意外と恐怖感は無い。マジの沼に沈んでいるというよりもドロドロの水に沈んでいるような経験したことのない感覚のせいで現実味がないからかもしれない。
「それにしても沈む速度が遅いな。アーサーは8徹明けで起きる気配もしないし暇だな。そういえばこの沼って殺害系なのか拘束系なのか……どっちか判らないが意外と温かいから拘束だったりしないかな。
ちょうどお風呂ぐらいの温度だな。でも俺的にはもう少し熱いのが好みなんだけど……もう少し上げてくれない?」
そんな冗談を呟くことで不安感をかき消しながら頭のてっぺんが沈み込むまで待ち続けた。
目が覚めると手足が動かなくなったおり、地下牢のような場所で寝かされていた。冷たい石の床に鉄格子といういかにもありきたりな牢屋だ。
陽の光も月の光も差し込まないこの部屋では時刻すらわからない。感覚的には1時間も寝ていないのだが魔術で眠らされている場合はわからない。
状況を理解する為に辺りを見回していると先ほど見た銀髪の女性がこちらにゆっくり歩いてくるのが鉄格子越しに見えてきた。
顔はマーリンクラスとは言わないがとても美人で街中を歩けば誰もが振り向くと言えるだろう。
しかしその目は冷徹であり、凍てつくような視線をこちらに向けてくる。
俺はこの女性にどこか既視感を覚えていた。
「目覚めましたか?それでは取引と行きましょう」
「おいおい、話が高跳びしてるよ。そもそも誰よ?」
なんとか余裕を見せながら情報を集めるために質問を問いかける。俺は何も知らない状態は危険だと知っているので少しでも情報を集めた方が逃げ出す時に役に立ちそうだと考える。
「そうでした自己紹介がまだでしたね。私の名前は モルガン・ル・フェ。オークニーの王であるロット王の妻であり─────アーサーの異母姉です」
「────えっ?」
アーサーのお姉ちゃん……だと…
たしかになんとなく似ているような気がしなくもない。王族特有の高貴な雰囲気も持っている。
「そ、それでアーサーのお姉さまが俺なんかにどのような取引をするおつもりで?」
「単刀直入に言います。アーサーを裏切り、私に付きなさい」
「嫌です。というかなんで俺なんかを仲間にしたいんですか?実力的にいえば俺よりも円卓の騎士のランスロットやガウェインの方が何倍も強いぞ」
「すでに何度もあらゆる手段で勧誘を試みているのですが赤い男が妨害してくるので」
「なんてひどい奴なんでしょうね。トリスタンを懲らしめるのなら手伝いますよ」
「あなたのことですよ、ピーター。それと貴方を選んだのは愚弟の親友という点です」
あれれ?おかしいぞー??俺とモルガンは今日が初対面で狙ってやった妨害なんて……めちゃくちゃ心当たりがあるわ。
スパイダーセンスに引っかかったカラスを捕まえたり、呪いがあるものはすぐさま捨てたもんな。
なんなら女性関係の仲介人とかもしてたもんな。よく頑張ったな俺。
円卓の奴らはどいつもこいつも女性関係がゴミすぎてな……特にランスロット周りの説得には骨が折れたよ。物理的な意味で。
「そういえば仲間についた時の報酬を話していませんでしたね。金、地位、女何でも差し上げましょう。なんなら私自身が報酬というのもよろしいですよ」
寝ている状態から壁に寄りかかる状態になり、ごくりと唾を飲み込む。
「自分を安売りするのは感心しないな。どんな報酬だろうと断るぞ」
「ほう、私はこれでも美しい自覚があります。そんな私を手に入れたいとは思わないのですか?」
時代を考えれば美しい女性に命をかけるような人間がゴロゴロといる時代だし美人局みたいな事例も多い。
「うん、モルガンは綺麗だとは思うよ。でも俺はマーリンが好きだから」
だからこそここは素直に言うことにした。変に理由を並べるよりも本心を話す方が早いと思い話すことにした。
するとモルガンは俺の方に手を向けて何かをしてくる。
「魅了にもかかっていない、嘘もついていない…………あの女は辞めておきなさい。自分の人生を棒に振ることになりますよ」
「それは知っているよ。マーリンの目線の先には必ずアーサーがいることもな。それでも俺はマーリンが好きなんだよ」
自分の淡い恋心を伝えると同情するような目を向けられる。
「というか自分を報酬にしてたけどロット王のことはいいの?」
「あの男など私の目的の為に利用しているにすぎません」
「可哀想……というか俺にそんな価値はないと思うけどな。あっ…でも研究対象としての利用価値ならアーサーにも負けない自信があります!」
「貴方に求めているのは研究などではありませんよ。私の全てを奪った愚弟から貴方という親友を奪い私の物にする。それが貴方を勧誘する理由です」
「すべて奪われた?何かあったの?」
純粋に気になったので聞いてみる。
モルガンは少し苛立ちながら俺の質問に答えてくれる。
「あの男が座っている玉座は元々私の物です。元はと言えばウーサーとマーリンの謀によって作られたと言えど、私の物になる筈だった玉座も支配も栄誉も何もかもを奪っていったのがアーサー・ペンドラゴンです」
「えっと……つまり逆恨み?」
目の前に現れた謎の空間から黒い槍が飛び出してきたので、俺は首を無理やり動かしその攻撃を避ける。
槍は壁にヒビを入れながら突き刺さっており俺の頬にはさらっとした血が流れて冷や汗が溢れ出る。
「ごめんなさい」
「次は当てますよ」
ヤバイ、言葉を選ばないと殺されそうだ。
「今日のところはそこで反省しなさい」
「え?」
モルガンは不機嫌そうに去っていく。
もっとベッドとか食事とか用意して欲しいんだけど……
「チッ………そんなんだから王様に選ばれ……うっ!!」
そんな悪態をついていると突然腹部が熱くなり、ゆっくりと首を下に向けて確認する。
そこには槍のような何かが突き刺さっており、ドロドロと赤い液体が流れ出ていた。
口からも血が吐き出される。おそらく胃に傷をつけられたのだろう。じわじわと痛みを実感していく。
酸素を取り込む為に呼吸するたびに痛みが走り、動くことすら難しくなる。
異物が入ってきたという感覚はしっかりあった。
皮膚の中を硬く冷たい槍が通る感覚は全身が凍りつくような寒気がした。防衛反応なのか、だんだんと痛覚がほぼ無くなって、槍が貫通しているという事だけ生々しくはっきりわかる。局所麻酔を受けているかのような、気持ち悪い感覚がある。
何が起こったのかが理解できない。酸欠で全身の感覚が本当なのか幻覚なのかわからなくなる。
熱いのに寒い。
そんな正反対の感覚が全身に襲う。
冷たい石の床に作られた血の池に自分の顔が映り出される。
とても醜い顔だ。自らの苦しむ顔なんて見る機会は初めてだ。
だんだん気分が楽になっていく。
余分な血がどんどん抜けてスッキリしていく。意識がクラクラして夢心地のようだ。
視界が暗くなっていく。体温が下がっているような気がする。
薄れゆく意識の中で俺は………