プロトマーリンに褒められたい男……スパイダーマッ!! 作:妖精狩りの男……スパイダーマッ!!
今回は少なめだったのでおまけを載せています
「早く堕ちなさい。貴方も死にたくはないでしょう」
モルガンは苛立ちを隠さずに子供みたいな脅しをする。
「死にたくはないけどマーリンと敵対もしたくない。それよりもご飯とか出してくれない?もうお腹ぺこぺこで殺される前に死にそうなんだけど」
冷たい床に寝そべりながら切実に懇願する。
あれから2週間。
暴言を吐くたびに腹を貫かれるので慣れきってしまい空腹を感じる余裕さえできた。
「食事が欲しいのなら私の仲間になると言いなさい」
「だから嫌だって。モルガンの味方になるのは嫌ではないけどマーリンの敵になるのが嫌なんだって」
「………ならマーリンの相手はしなくてもよい。我が愚弟と円卓の騎士達を相手にするというのはどうだ?」
なるほどそれは面白そうだ。
スパイダーマンになってからはアーサーと一度も勝負はしてないし、円卓の奴らも正々堂々殴れるなら奴らからのストレスも少しは晴れるだろう。
でもペディとパーさんとは戦いたくないな。あの2人は俺の胃を労ってくれ……いや、パーさんには苦しいほどの飯を盛られた仕返しをしてやらないと。
「本当にマーリンとは敵対しないよな?というかマーリンと連絡取ってからでいい?裏切ったとか思われたら俺がメンタル的に死んじゃうよ」
「それは許可できません。連絡を取って脱出を図るかもしれないので」
「……じゃあ捕まった時にはモルガンに子供を人質に取られたとか洗脳されてたとか言っていい?
というかなんでモルガンは俺のこと洗脳しないの?モルガンってマーリンと並ぶほどの魔術師だよね?」
「はぁ………何故か貴方には洗脳が効きませんでした。私の洗脳は負の感情を利用する物……つまり貴方には洗脳に利用できるだけの嫉妬や怒りと言った負の感情は存在していないのか……それとも耐性を持っているのか」
一回洗脳ってやつを受けてみたかったから残念だな。
「うーん……魔術の契約書って持ってない?確かセルフなんとかってやつ」
「
「…それで契約したら一回だけマーリンに会ってきてもいい?モルガンのことは話さないように……なんなら伝えれないように契約しておけばいいでしょ?」
これならマーリンと敵対することも無くアーサーと円卓達を殴れる。
我ながらに良いアイデア。
モルガンは謎の空間に手を伸ばし2枚の紙を取り出す。
その紙に空中に浮かぶペンで何かを書いた後に俺に見せてきた。
「この条件ならよろしいでしょう」
その紙には以下のことが書かれていた。
対象:
モルガン・ル・フェ
魔女の刻印が命ず。
各条件の成就を前提とし、制約は戒律となりて、例外無く対象を縛るものなり。
制約:
オークニーの国王、ロット王の妻たるモルガンに対し、
ピーターの安定した衣食住を保証し、花の魔術師マーリンとの一度限りの接触を許可しなければならない。
条件:
キャメロット攻略時においてモルガンに全面的な協力
当契約を故意に他者に漏洩しない
対象:
ピーター
ピーターの魔術回路が命ず。
各条件の成就を前提とし、制約は戒律となりて、例外無く対象を縛るものなり。
制約:
ブリテンの王、アーサーの友人たるピーターに対し、
モルガン・ル・フェを対象とした殺害・傷害の意図、及び行為を永久に禁則とする。
またキャメロット攻略においてモルガンと敵対することを禁則とする。
条件:
ピーターへの衣食住の保証
花の魔術師マーリンとの一度限りの接触の許可
「なんで2つも同じ契約を?」
「あの女に貴方にかかっている契約を解除されたとしても貴方自身が己にかけた制約は残り続けるもの」
そう当たり前のことを言わせないでとでも言いたげなモルガン。
とても用意周到……というよりも人を信じれていない人間って感じだな。
小さい文字でインチキされていないかを注意深く確認した後に親指を噛み、少し出た血を契約書のサイン欄のような場所に血印する。
「これで契約はなされました」
「……これって契約を破った場合はどうなるの?」
「無論死にます」
「え?」
死ぬの?痛いぐらいなら不意打ちするつもりだったのに……流石に死にたくないな。不意打ちはやめておこう。
モルガンが鉄格子に杖を振りかざすと鉄格子はドロドロに溶けて牢屋としての機能を失う。
それと同時に俺の手足に着けられていた魔術の枷も無くなり、体が自由になる。
2週間ぶりに体を動かすので少しぎこちないのでラジオ体操をでもして体をほぐそうかな。
「それではついていらっしゃい。色々と準備があるので」
少し機嫌の良くなったようで笑顔を見せて歩いていく。
「ちょっと待って!足が痺れて動けない!流石に2週間も身動き取れずに監禁されてたら歩けないよ!」
モルガンが少し静止した後に俺の体が浮かび上がりモルガンに引き寄せられる。
石の階段を登り、シンプルな石の廊下を浮いて移動するとモルガンが何もない石の壁にそっと触れる。
すると壁の一部が光って扉が出現する。
隠蔽の魔術かなと思いながらその部屋に上げさせてもらった。
その部屋はいかにもな魔術工房……見たこともない鉱石や大釜、そして培養カプセルのようなものに入っている1人の赤ちゃん。
「………… アイエエエ!?アカチャン!?アカチャンナンデ!?」
「黙りなさい。うるさいですよ」
培養カプセルをペタペタと触りながら中に入っている赤ちゃんを見る。
というかどこかで既視感あるなと思ったけどゾンビゲームとかで見るタイプだ。
「こんな教育に悪そうな場所に赤ちゃんがいたら驚くでしょ。というか産んだの?モルガンってママだったの!?」
「これでも子供は何人も産んでいますよ。まあどれも出来損ないばかりでしたが」
「そんなこと言ってやるなよ……子供達が可哀想じゃないか」
「私を裏切り愚弟の味方についた者を出来損ないと呼ばずしてなんと呼ぶ?」
「つまりはキャメロットの騎士になってるのか……なんて名前なの?」
「ガウェインとアグラヴェインです」
うんうん、ガウェインとアグラヴェインか…………あいつらのママ上なの?
「マジで?」
「マジですが」
「あのゴリラと厨二病のママ?」
「そうだと言っているでしょう」
あまりの衝撃的真実に腰を抜かしてしまう。
ガウェインとアグラヴェインを産んだとは到底思えない程に見た目が若い。
おそらく誰もこの人の子供とは思わないだろう。
「ちなみにこの子も?」
「その子供は私とアーサーの子供です」
「?????????????」
何を言っているのか理解できない。
近親相姦ということだろうか。つまりアーサーは浮気した?え?もう何がなんだかわからない。
「貴方が考えているようなことはしていませんよ。この子は私とアーサーの細胞を元に創り出したホムンクルスです」
「ほむんくるす?」
「セルフ・ギア・スクロールは知っていたのにホムンクルスは知らないのですか……まあいいでしょう。
ホムンクルスとは人の性液を材料として人工的に作り出されたヒトです。製作には魔術の一つである錬金術を使用する必要があります。
ホムンクルスは通常の人類よりも寿命が少ない代わりに生まれながらにして戦闘の知識を持たせて戦闘用の傀儡として運用したり、大量の魔術回路を持たせた魔力タンクとしての運用などが一般的ですね。
つまりは使い捨てとして利用されます。
もちろん敵がただの兵士ならその方法での活用でもいいのでしょうが私の敵はアーサーと円卓の騎士、それに並ぶほどの手駒を用意する必要があります。
なので私が作るホムンクルスは一騎当千の戦略として考えています。しかし今作っているこのホムンクルスは襲撃に失敗した時の保険。
なのでキャメロット襲撃時にはホムンクルス無しで行ってもらいます」
長い…………自分の成果を褒めてもらいたい子供かな?
なんか孤児院の子供達を思い出すな……頭撫でたらキレるかな?
というかそんな子供のようなことを言いながらキャメロットに俺単騎で突撃してこいって普通に言ったな。
一旦落ち着くためにその辺にあった木の椅子に座る。すると対面にモルガンが座り優雅に水飲む。ただの水なのに高い酒のように見えるのはモルガンの雰囲気や仕草からくるものだろう。
「今はこの話は置いておきましょう。マーリンとの会う機会はキャメロット襲撃前に作っておくので今からは作戦会議……と言いたいところですが、その前に確認したいことがあるので貴方にこの魔術礼装を渡しておきましょう」
モルガンが部屋の奥から持ってきた魔術礼装はどこかで見覚えがあった。
しかし俺がよく知っている上半身と下半身が赤と青で分かれていて、胸に黒い蜘蛛のマークがあるスーツではない。
全身が真っ黒であり胸の蜘蛛は大きく白くなっていた。
まさにブラックスパイダーマンと言ったところだろう。
「貴方から回収した魔術礼装を参考に私が作り上げた新しい魔術礼装です。元のスーツと比べると防御性が落ちており攻撃性が上がっています。貴方にはこのスーツを着てキャメロットを襲撃してもらいます」
「………腕輪は?アレがないと糸が出せないんだけど……」
「アレですか?糸を出すだけならスーツに搭載していますよ」
つまり原作スパイダーマンみたいな感じか?
俺はスパイダーマッからスパイダーマンへ進化した!!
「今からこのスーツを着て性能テストをしてもらいます。強さを知らずして作戦は立てられないので」
「それはいいんだけどさ……先にご飯をください」
なんだよその目は……なんだよその空気読めよみたいな目は!
お腹減って死にそうなんだよ。2週間監禁されてたんだぞ!
俺悪くないよね?俺の言ってることって正しいよね?
「仕方ありません、先に食事にしましょうか。今から給仕に用意させますので待っていなさい」
「そういえば女王様でしたね。でも給仕をこの部屋に入れてもいいの?」
「もちろんただの給仕に用意させませんよ。私が給仕達に紛れさせている傀儡を使うので」
……ロット王が可哀想だな。
でも今はそんなことはどうでもいい。何が食べられるかな?美味いものは求めてないからガッツリとしたものが食べたいな……
やっぱりお肉か魚がいいよな。
ウキウキで待っていると部屋の扉が開き、虚ろな目をした給仕が食事を持ってきた。
「待ってました!」
蓋のついた皿をすぐさま開けて食べようとするのだが、そこに固形物はなくドロドロの液体しかなかった。
「あのーモルガンさん……これは?」
「麦粥ですよ。固形物を食べるのは胃に悪いですよ」
……………俺はみっともなく泣いた。
おまけ
円卓の騎士達やその他からピーターへの反応
ガウェイン
我が王の謎の親友。模擬戦では見たことのない手段で戦ってくるので練習相手としてすごく楽しい。
ランスロット
あの日合間見た謎の男。自分の女性関係の厄介ごとを解決してくれたので頭が上がらない。息子のギャラハッドが自分よりピーターに懐いてて少し嫉妬している。
トリスタン
我が王と仲のいい道化師。イゾルデのことを相談してみたら殴ってきた相手。
ベディヴィエール
素顔を見せない同僚?緊急時は円卓をまとめたりしているのに上司なのか部下なのかわからない人。
アグラヴェイン
自由闊達な狂人。人嫌いな自分を煽ってくるたびに斬ろうとするのに全て避けられる面倒な相手。
パーシヴァル
すごくいい人。危ない時はすぐに止めてくれるし安全な時はこちらを尊重してくれる優しい人。
ケイ
ずっとマスクを外さない馬鹿。この前久しぶりに素顔を見た時に一瞬だけ誰だかわからなかった。
もう1人の弟ぐらいの感覚で接している。
アーサー
大切な親友。
モルガンにピーターが拐われてからの2週間死んだ目をしていた。
マーリン
アーサーの次に面白いオモチャ。モルガンに拐われたことを知っているが彼なら面白いことをしてくれると期待している。
恋愛感情は一切無い。
ギネヴィア
夫の親友。夫婦仲が良いのはこの人のおかげだとわかっているので感謝している。それはそうと……
モルガン
愚弟の友人。2週間毎日関わっていると扱いに慣れてきた。腹に何度も穴を開けても恐怖してこないので逆に困惑した。