アンケのご協力に感謝いたします。
人生って何だろう。
正しい死に方って何だろう。
俺が良しとし、忌避するモノはどう定義されているのだろう。
.....ダメだ、分からない。
分からないから、俺の中で定義するしかない。
きっと、俺の人生は絞首台へと歩く道程で
正しい死ってのは、理不尽のない、幸せな終わり方なんだろう。
罪の無い人には、ちゃんと真っ当な死に方をしてほしいし
間違った人間には、生きてる間に相応の裁きが下ってほしい。
絞首台に向かう俺の人生は、きっと間違った死で終わるんだろう。
それはいい。それはいいんだけど。
遠坂がこの終わり方をするのは、絶対に違う。
「そうか.....お覚悟を」
少女が走る。その体躯からは考えられないほど踏み込みは深く、僅か半歩で間合いを詰め、残った半歩で凶器を上段に構える。対して此方は受けの姿勢。僅かに体内に残留した魔力を両手に絞り込み、その凶器を唯一受け流せる手甲を作り出す。
両手で構えてはいるが、この間合いまで接近するのを見るに斧や槍といった武装ではあるまい。あの凶器は恐らく両手剣。となると、側面からの打撃で軌道は逸らせるはずだ。問題は刀身が見えない事だが....武器である以上、実体は存在しているはずだ。打てば必ず当たる。
「これで、終わりに────」
「舐めんじゃねぇ!!」
揺らめく剣の側面を裏拳で強打し、拳の届く範囲まで間合いを詰める。あの槍兵に比べ、誤差の範囲だが反応速度は遅い。この調子なら第二撃を入れられる前に三発は拳を叩き込める。ガラ空きの胴体に正拳突きを叩き込み、追撃を────
「馬鹿、早く離れて!」
「────!!」
遠坂からの掛け声で、目の前の異変を察知して後ろに飛ぶ。
先ほど殴った腹を見てみるが、全く効いている気配が無い。どうしたものか。あの槍使いと比べて頑強さが違うのか?それとも、また別の要因なのか?思い出せ、アイツの右腕を叩き割った時と、今の一撃。一体何が違う?
────いや、こういうのは聞いた方が早い。
「遠坂。コイツ、人間じゃないだろ」
「.....ソイツはサーヴァント。過去の英雄を使い魔にして現世に召喚したモノで、身体は血肉じゃなくて魔力で構築されてる。ダメージを与えるなら、魔力を使った打撃を使いなさい。サーヴァントは神秘の無い攻撃じゃ、核兵器を使ったって倒せない」
「ああ成程、ご忠告どうも────!!」
後ろに逃げたら剣の餌食だ、更に間合いを詰めていけ。コイツの一撃は早いが、それは直線上の話。さっきの一撃で確信した。あの風は、有り余る魔力をジェット機のエンジンみたいに噴射した余波だ。そんなブーストを縦横無尽にぶっ放してたら、確実に関節の稼働領域をオーバーするだろう。なら、超近接戦であればコッチに勝ちの目が有るはずだ。
「素早い....
「危ねぇ────なッ!!」
明らかに間合い外からの横薙ぎ。しかし、あの剣から迸る馬鹿にならない魔力を感じ取り、垂直に飛んで回避する。次の瞬間、俺が立っていた地点に魔力の暴風が吹きこんだ。マジで危ない、真正面から耐えようとガードしてたら、確実に全身がズタズタだ。
待て、アイツはどこに、
「
背後から声がした。あの風を踏んで跳躍したらしい。
マズい、空中じゃ回避はできないし、腹筋に力が入らない以上、防御も手薄だ。
せめて腕を一本もぎ取られるだけで済むよう、身体を捻って────
「
身体がグイっと地面へと引っ張られた。遠坂の魔術か。
少女が繰り出した必殺の一撃は薄皮一枚で俺を取り逃し、制服の背中側を裂くだけで終わった。もう数センチ奥にずれていたら、確実に脊髄を切断されていただろう。本当、殺意が高すぎるんだよ。
「悪い、助かった!」
「
「.....そうか、ありがとう!」
早く逃げろ、と言いたかったのを飲み込んでツーマンセルを受け入れる。
しょうがない、俺単独なら一分耐えられるかも怪しい。最高のコンディションで挑んだとしても、魔力で殴らないといけない限りスタミナより先に魔力切れで詰む。それなら、より長く時間を稼げる方が良い。何か勝利へと繋がる一手を見つけなければ、ここで共倒れだ。
「
「────ここ!」
遠坂の詠唱と共に、地を蹴って飛び込む。支援の魔術の効力だろう、身体が信じられないくらいに軽い。連戦による疲弊はあるが、このくらいであれば軽量による加速の方が上回る!
「
遠坂の投げた黒い宝石がセイバーに命中....する事はなく、難なく切り裂かれる。しかし、砕けた破片が振りぬいた右腕へと付着した。その破片は重力を帯びて肥大化し、セイバーの構えた剣の先端を僅かに下げる。
「この魔術は良いな、
「虎杖君、早く叩いて!」
今度は手甲ではなく、ボクシングのグローブを意識して魔力で両手を包み込む。遠坂の言っていた事が本当なら、これでダメージが通るはずだ。当たるかどうかは兎も角として、だが!
「分かってるって───の!!」
「....貴方も、悪くはない」
右腕で三連打、左腕で二連打。ワンツーのように交互には打たない。常に片腕を防御のためにとっておかなくては、離脱際を狩られてゲームセットだ。重圧によって剣での防御が間に合わないと判断したのか、巧みに身体を動かして回避される。
このやり取りで分かった。コイツと比べて、戦いのセンス自体は槍使いの方が上だ。ここで素手で攻めには回れないのを見るに、剣を封じれば俺にも相手できるだけの余地がある。これで漸く条件は五分。いや、三対七くらいまでには追い付けたか。
「こんのッ!!」
「だが、良くもない」
もう拘束が砕け始めた。三段蹴りを胴体に放ち、無理やりに距離を取る。魔力を入れて強化された蹴りは鎧を軋ませるも、やはり致命打には至らない。狙うなら頭、もしくは首か。急所に当てるのはハードルが高いが、そこしか狙いようがない。
「遠坂、もう一発頼めるか!?」
「拘束は品切れ!今のだって十年物の宝石よ!?あんな簡単に砕けるなんて────」
「判断が遅い」
暴風が再び舞い上がり、完全に自由となったセイバーが再び向かってくる。直線の突進だ、この程度なら避けられる。相手の剣の間合いに入った瞬間を狙って、カウンターを────
「グァ...ッ!?」
「せめて、手負いで無ければ少しは張り合えただろうに」
更に加速してショルダータックルをキメてきやがった。俺より二回りも小さい身体のくせして、衝撃はまるでダンプカーに撥ね飛ばされたかのようだ。確実に肋骨が数本はぶっ飛んだぞ、その鎧が重いのか、もしくは鎧の下にバキバキの
だが、反動で後ろに下がれば間合いの外に逃げられる。
一度引いて、もう一度援護を受けて攻め直せば────
「.....あ、れ?」
鮮血が、冬の冷たい空気の中を舞う。
そうか。刀身の先に魔力を伸ばして、付け焼き刃としてリーチを伸ばしたのか。
「....虎杖君!!」
「諦めなさい、アーチャーのマスター。貴方に下げる剣は有りません」
遠坂が駆け寄ろうとするも、セイバーに割って入られた。
傷は深い。今の袈裟斬り、内臓が外に飛び出るって程じゃないにしろ、大事な血管を切断された。胸元から馬鹿にならない量の血が出てる。何より槍使いに抜かれた血を合わせると、これ以上の戦闘は死と隣り合わせになる。俺が殺されるのが先か、出血多量で死ぬのが先かのチキンレースだ。
「ガ....ボッ、ハ、アァッ!!!」
「此方には、言っても仕方の無い事でしょうが」
口の中にせり上がってくる血を吐き捨てながら、セイバーと相対する。
死ぬ。何もできずに、何も果たせずに、何も守れずに死んでいく。
思い出せ。今までの人生。今までの鍛錬。今までの生活。
その中に、何か、俺の武器になるもの。コイツを倒しうる一撃は────
『死 ぬ ぞ』
────有るには有る。
これは、虎杖悠仁が使える唯一の魔術。
いや、魔術と呼んでいいのかも分からない。ただの技術かもしれないし、専門職から見れば子供騙しもいい所だろう。
だが、試していないのなら使うべきだ。
死んで元々。
それで、どういう結末に至ったとしても。
『それを使えば、死ぬぞ』
「ッ.....クソッ、考えるな。考えるな!」
いい加減にしろ。
今さらになって生存本能が耳障りなノイズを放ってくる。
もういい、必死に逃げろと。
判断能力の鈍った理性と一緒に語り掛けてくる。
『死ぬぞ。もう戻ってこれないぞ。お前は今から────』
「........うるせぇ!!黙ってろ!!!」
自惚れてた。
自分は強くて、今から多くの人を助けられるんだって。
あの日から贖罪が始まってたはずなのに、どこか人生に希望を見出してたんだ。
人並みの幸せ?正しい死?
なんだそりゃ、甘えんなよ。
そうだ。正義の味方には感情も、迷いも必要ない。
ただ盲目的な信念に沿って自壊しながら歩く、絡繰人形となっても構わない。
分かったなら動け。嬉々として死刑台へと向かえ。
俺が、俺を、
証明しろ、俺は────!!!!
「────ァァァァァァッ!!!」
「....ッ、まだ動くか!その身体、一体────!?」
流麗な白刃が煌めき、獣のような俺の打撃を交わしていく。流石は騎士風の鎧を着込むだけある、害獣駆除はお手の物ってわけか。意表を突いた奇襲も、対応されてしまっては意味が無い。段々と攻撃のペースが落ち、やがて迎撃の太刀の手数が優勢になり始めた。
だが、漸く確信した。
お前、素の筋力は俺より弱いだろ。
「遠坂、援護ッ!!!」
「.....分かった!!」
後方から飛んできた魔力の弾丸が、セイバーの側頭部に命中する。迫撃砲でもぶっ放したような射撃音がしたというのに、全く意にも介されていない。さっきの拘束といい、きっとコイツに魔術は通用しないのだろう。ああ、逆に好都合だ。きっと
ここで振り絞れ。命を懸けろ。
憎悪も、恐怖も、後悔も、全ての未練も、ここで出し切れ!
拳にのせろ!!!
「────────!!!」
「ここまで、だ!!」
剣と拳が交差し、お互いの肉体に着弾する。
セイバーの剣は俺の肩を搔っ捌き、俺の拳はセイバーの心臓の真上に当たった。
────それで、俺は終わりだ。
どぷりと筋肉が削ぎ落とされる音がした。拳と剣では殺傷能力が違いすぎる。相討ちに持ち込みたいのなら、俺も刃物の一つは持ってこないと話になりやしない。後ろから悲鳴にも似た遠坂の声が聞こえる。ああ、俺は出血多量で間もなく死ぬんだろう。
だが、一人では死んでやらない。
「────逕、庭、拳」
「何......ッ!!?」
セイバーの胸から鎧が剥がれ落ち、数滴の血が滴り落ちたのが見えた。
逕庭拳。それは、一度の打撃で二度の
これを出すには体術の何たるかを忘れなきゃいけないくらい、"マジの本気"で殴らなきゃいけない。そりゃ大振りになるし、隙も大きい。正直言って普通に殴った方が早いし、こんなのを使わないといけなくなる時が来るなんて思いもしなかった。
セイバー。お前、身体能力を魔力でカバーしてんだろ。
だから癖で、攻めだけじゃなくて守りにも無意識で魔力を使ってるってわけだ。
だが、そんな防御は一瞬の守りに過ぎない。盾みたいに薄く伸ばした防御であれば可能かもしれないが、それなら俺の拳を躱す理由が無くなる。恐らく、魔力出力に限界が有るんだ。全ての有効打を帳消しにできるってわけじゃないんだろう。
だから、時間差を利用した。
打撃に遅れて、拳に乗せられた本命の魔力がやってくる二段技。
これなら、俺の身体と引き換えに、確実にダメージが入る。
上段に振り上げられた剣が降ろされる。
きっと、もう必要ないと感じ取ったのだろうか。
「遠坂。お前なら、こっから────」
「.......ごめんね」
「な、ンだよ。しャーねェ、もちッと、頑張ら────」
そう言ったところで、膝から崩れ落ちた。
.....そうだ。俺の身体はもう、三時間前に死んでいた。
それを気合いだけで動かしたのだから、こうなるのは当然だろう。
「ゥガッ────ハ、ァ.....ア、ァァ、ア」
必死に立ち上がろうとする。まるで敵に土下座でもしているような醜態。それでも身体中から聞こえるSOSのサインを全シカトし、まだ戦えるんだと自分を騙す。いや、騙すという言い方は良くないな。だって、まだ俺は負けてない。まだ俺は────
「─────終わりにしましょう」
無防備な首元に冷たいモノが当たる。
ああ、漫画で見たことある。
罪人が斬首刑になる時、こういう風に殺されるんだっけ。
今は腹も裂けてるし、正にハラキリだな、うん。
「......悪い。じゃあな、遠坂」
またな、と言えない事に寂しさを感じた。実に悲しい。
.....まあ、死に場所としては上々だ。
遠坂って、やっぱ綺麗で可愛いしな。うん、本当に満足だ。
意識が遠のく。
今度は赤くはならない。黒色に染まっていく。
眠りに落ちるように、俺の意識は落ちていく。
「..........悠、仁?」
そんな中で
どこか、懐かしい声を聞いたような気がした。
────活動限界に達し、意識が途切れる。
この眠りが死に行く眠りなのか、
再び苦しむ為に必要な、休息の眠りなのか。
それは、次の目覚めで分かる事だろう。
悠仁は二度死ぬ。
知ってるか?バーサーカー戦も有るんだぜ。
ちなみにルート確定選択肢は「あの少女を倒す」でした。
その場合は士郎ルートに直行です。やったね。
次回、「boy and girl (Ⅱ)」
【分岐関係なし】曇り度のアンケートです。
-
虎虐と聞いて(変態紳士)
-
呪術くらいは曇らせたい(変態)
-
救いは無いのですか!?(紳士)
-
周りを曇らせんだよ(反転術式)