Fate/black flash   作:なんか変な色の翼

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【お知らせ】

皆様が派手派手な選択肢ばかり選びやがったので
GOOD ENDの『brave light』が選択不可になりました。

これだとタイトル詐欺になって器物損壊罪で訴えられるので
TRUE ENDの『black flash』に改題しときます。
旧題もあらすじに書いとくので、ご了承ください。

では皆さん、TRUE目指して頑張ってね。




存在しない記憶

 

 

 

「────」

 

 

 


 

 

 

「.....ちゃん?お兄ちゃん、風邪引いちゃうよ?」

「んあ────うおっと、危ねぇ!!」

 

 

バサリと顔面に少年雑誌が落下した衝撃で目を覚ます。気づけば、居間でゴロゴロしている間に寝落ちしてしまったらしい。よほど深い眠りだったのだろうか、寝る前に何をしていたのかを思い出せない。

 

雑誌を退けて視界を確保すると、イリヤの姿が目に映った。いいよなぁ、お子様は。高校生の俺と違って朝も早いし、眠りに落ちるのも早い。こちとら悶々としてるというのに。

 

 

「そんなゴロゴロしてないで、ちょっと運動してみたら?せっかく運動神経も良くて、タイガからも剣道部あたりに入れって言われてるんでしょ?それに、ウチには道場まで有るんだし。少しは運命感じたりしないの?」

「疑問形のラッシュやめて!俺にはオカ研だけで十分なの!爺ちゃんの見舞いとか行かなきゃダメなの!」

「もー!もう少し青春を謳歌しろって言ってんの!カラオケ行ったり友達の家に泊まりに行ったり、彼女の一人や二人は作ってみなって言ってんの、この年増ァ!」

「はい名誉毀損!現行犯逮捕、書類送検、有罪(ギルティ)!」

 

 

年増ァ!に心をブッ刺され、心の中て吐血しつつも起き上がる。恋愛なんて気軽に言うが、どんな些細な始まりでも一生続く大イベントとなるかもしれないのだ。相手は身長に選びたい。

 

ああ、そういや士郎も大恋愛中.....いや、この間フラれたんだったか。確かマドンナの遠坂に告白したのはいいものの、その遠坂が美綴と付き合ってたんだっけ。あの時は凄い顔してたなぁ。

 

 

「ほら、支度支度!今日はキリツグが帰ってくるんだから!ちゃんと寝癖も直すって約束したでしょ?」

「ああ.....ん、誰だって?」

キリツグだって!まだ寝ぼけてるの?」

 

 

まだ寝ぼけてるのかもしれない。イリヤが言ってることが、なにか靄でもかかったように聞こえない。頭が理解するのを拒絶しているような感じがする。まるで、身体が無意識にウイルスを免疫で拒むように。そんな、頭に入れてはいけない事のような。

 

 

「あれ、お兄ちゃんどうしたの?汗すごいよ?」

「ははっ、何言って───ホントだ。なんでだろ?」

 

 

 

 


 

 

───場面が変わる。

 

 

 

「なんでさ......そこはもう少し、犬猿の仲の一成とか!なんで美綴なんだよ、遠坂.....」

「おーおー。今日は飲めって」

 

 

空になったコップに瓶コーラを注ぎ、絶賛傷心中の士郎に渡してやる。士郎がここまで感情を露わにするのは珍しい。玉砕したのがショックだったのか、フラれた理由が純情少年にはショッキング過ぎたのか。

 

もはや今日は晩飯を作れる気分でも無いようで、学校が終わると同時にラーメン屋に直行である。納得はしているがケリが付かないってところか、分かるぜ。

 

 

「ところで、なんて言われてフラれたんだよ」

「.....『綾子は美味しかったわ』って」

「ぶふっ.......お前、マジで!?」

「笑ってんじゃねぇ!クソッ、恋のABC通り越してZとかαの域に入ってるじゃねーか!というか、そんな事言えるなら少しは噂になっててくれよ.....」

 

 

女同士の友情は固い。そこに恋愛要素が入れば、まさに千年王国と言ったところか。間に男が挟まろうものなら、その凄まじい圧力で粉砕玉砕大喝采されてしまうだろう。

 

それにしても、士郎が真面目に恋愛をしようとするとは驚きだ。こう見えて自信が足りない人間だから、相当勇気を振り絞ったんだろうな。初めて出会った頃は───あれ?

 

そういや、俺らはいつ出会ったんだっけ。

 

 

「つーか、店暑くないか?気のせい?」

「ンな事は──悠仁、汗凄いぞ?上着脱げばどうだ?」

「いや、そんなんじゃないんだよ。なんか────」

 

 

 


 

 

 

───場面が変わる

 

 

 

「.....虎杖先輩?お鍋、沸いてますよ?」

「───あっ、いっけね!タオルタオル!」

 

 

吹きこぼれた水をタオルで拭き取りつつ、急いでガスコンロの火を止める。ここのキッチンにも、そろそろIHを導入するべきでは無かろうか。あのタイマー機能というものが凄く気になるぞ、俺は。

 

 

「悪い、ちょっとボーッとしてた」

「もう.....火を扱ってる時は集中してくださいね?もし火傷でもしたら大変ですし、服に引火したら手が付けられませんよ?」

「はは、冬場だしな.....肝に銘じるよ」

 

 

愛想笑いをしながら、プンスコと怒っている桜をなだめる。最近の桜はよく笑うようになったし、よく怒るようになった。俺が寝ぼけて砂糖と塩を間違えてても、指摘できなかった中学生の頃と比べたら大成長だな。

 

 

「ああでも、今は半袖だから大丈夫だよ。引火なんかしないって」

「......さては反省してませんね?」

「いやいや、そういうわけじゃ」

「もういいです!先輩は小さいんですから、配膳の時にでも手伝ってください!」

 

 

お玉を取り上げられてしまった。いやはや、ここまで強硬手段に出るほど怒らせたのは気が引ける。何か機嫌直しのお菓子でも買ってくるべきだろうか。

 

そうだ。実は桜が甘い物が好きだという事を俺は知っている。冷蔵庫の野菜室の中には捕食者(藤ねえ)から見つからぬよう、おやつを色々と入れてんだよな。そうとは知らず、中にあった板チョコを丸々一枚食べた事も有ったっけ。その時は気づかれない内に補充したので、このまま墓場まで持って行かせてください。

 

 

「ん.....小さい?俺が?」

「はい、先輩は私より小さいと思いますけど」

「いやいや、ンなわけないだろ。こないだだって、体重が八十超えてて.....」

 

 

ひょいっと桜の方を見返すと、そこに有ったのは桜の胸元。その顔は更に上で、だいたい三時過ぎの太陽くらいの位置にあった。いつも上目遣い気味の桜に見下ろされるのは、なんというか新鮮だな....じゃなくて!

 

 

「え、えーと、桜?俺たちって元々こんなんだっけ?」

「ええ。先輩は、いつもこのくらいだったと思いますけど」

「いや、明らかに違うだろ!というか大丈夫か、成長痛とか特に!」

「せ、成長痛!?新手の皮肉ですか!?結構体型管理頑張ってるのに─!」

 

 

畜生、怒りの沸点が分からねぇ。この桜も良いけど、初めて買った時のパソコンくらい操作方法が分からんから取説が欲しいぞ。というか、火元で暴れまわるんじゃない。鍋が有るのにそんな事をしたら──!!

 

 

「ギャアァァァァァァ!!!」

「あっ────せ、先輩!?」

 

 

さっき沸き立った鍋がひっくり返り、身長が縮まった俺は頭から熱湯を被った。

 

畜生、クソ熱い。というか、これは熱湯の熱さじゃねぇ!

なんというか、どこかデジャヴを感じるというか────

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

───場面が変わる

 

 

 

 

「────リヤ。ルールはこの間と同じでいいね?」

「うん!今日という今日は、お父さんには負けないんだから!」

「はは、僕だって勝ちを譲る気は無いよ?」

 

 

見知らぬ男が、冬の森を歩いている。

 

それを、雪のような少女が追いかける。

 

 

「そら、先取点だ。あそこに冬芽が有るだろう?」

「嘘だぁ!アレは冬芽じゃなくて枝の出っ張りだもん!」

「あれれ....本当だ。最近、視力が落ちてきたかな....」

 

 

知らない。俺はこんな景色を知らない。

 

この男も、この少女も、この冬の森も、知らないはずだ。

 

 

お父さん、大丈夫?そうそう、二ホンには何しに行ってたの?」

「いや、ちょっと野暮用でね....そうだ。イリヤに会わせたい子が二人もいるんだ」

「会わせたい人?」

「ああ。二人とも男の子だけど、イリヤならきっと仲良くなれる」

 

 

幸せそうに微笑む男。俺の知らない、アイツの顔。

 

全てが分からない。そもそも、俺は此処にはいない。

 

俺が此処にいるはずがない。だって、こんなに。こんなにも。

 

 

 

「────悠仁。君は、こっち()に来れないんだね」

 

 

 

 


 

 

 

───場面が変わる

 

 

いや、正確には戻ったというべきか。

 

 

 

 

「────こんなにも、暑い」

 

 

 

どうしようもない道を歩いている。

 

道行く人の大勢は焼けてて、たまに潰されてて

 

倒れていない人は、骨ごと黒焦げになっていて

 

黒焦げになってない人は、放っておいても全員死ぬような人で

 

でも、確かに数分前には、皆はここで生きていて。

 

 

 

全員が救われるべきだと思った。

 

全員が助かるべきだと思った。

 

全員を助けるべきだと思った。

 

 

できなかった

 

死にたくなった。

 

 

 

だから、せめて理不尽を受け持とうとした。

 

彼らが死んだ事に、意味を与えようと思った。

 

 

彼らの死が

 

虎杖悠仁を作ったと

 

 

彼らの死が

 

虎杖悠仁(正義の味方)を生んだんだと

 

 

彼らの死が

 

セイギのミカタを────

 

 

 

 

そうだ。あの時、俺は確かに死んでいた。

 

そして、選んだのだ。永久に、この地獄に取り残される事を。

 

自分から、虎杖悠仁(一人の人間)である事を、やめたのだ。

 

 

一度背負った現実は、もう二度と搔き消せない。

 

冬になってしまえば、もう秋に戻ることが無いように。

 

心の隙間に何かが埋め込まれたなら、そこは二度と空にできない。

 

 

 

ならば、役目を果たせ。

 

クソみたいな現実と、自分で背負った罪を直視しろ。

 

 

 

それ(幸福)は捨てたろ。

 

こんな反吐の出る、存在しない記憶(都合の良い人生)は────!!

 

 

 

 


 

 

 

「────」

 

 

できなかった。何がとは言わんが、俺はそれを果たせなかった。

酷い話だ。今頃になって、地獄に捨てた心が燃えカスになって帰ってきた。

 

 

「.....最低だ、俺って」

 

 

彼女を絞め殺さんと伸ばした両腕は、いつしか彼女を抱き留めていた。

モズの巣のように伸びた腕の中で、イリヤは雛鳥のように眠っている。

 

 

「んん.....背骨、治ったな。こういう時は都合が良い」

 

 

バーサーカーの気配は.....すぐ近くだが、どうも動いている反応が無い。俺が害を為す存在でないのを悟ったからか、はたまた主人が近くにいるから暴れられないのか。まあ、これ以上ここにいる事の安全が確約されたわけではない。バキバキになってた左腕も直ってきている。さっさと退散するのが吉だろう。

 

 

「あの景色は....畜生、頭が(いて)ェ.....!」

 

 

頭に流れ込んだ存在しない記憶を振り払いながら、口の中に淀み溜まった血反吐をペッと吐き捨てる。どうやら土塊か何かが混ざっていたらしく、ベチョリと粘っこい音を立ててドス黒い血痰が地面に広がった。

 

身体は勿論、制服はボロボロ。こんなんでは、月曜から学校に行くことさえ躊躇われる。まだ替えの制服は有るには有るが.....学校に行く最中で襲われた時のことも考えて、もう数着くらい買っておいた方が良いだろう。もしくは、言峰に頑丈な服でも差し入れてもらうか。

 

 

「イリヤ。お前は、一体────?」

 

 

先ほどまで首を絞められていたとも思えないほど、安らかに眠る少女を一瞥する。首元に赤い痣を携えつつ、やはり変わらない人形のような顔をした、幼い子供。身長は140もいかないだろう。こんな聖杯戦争が無ければ、普通の人生を送っていたのだろうか。

 

.....いや、それは俺も同じか。

 

 

東の空が朱く染まり、夜を染め返す払暁。

どこかで聞いた虫の音を背に、俺は少女に背を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ────っつ!!やっぱ腕痛ぇ!」

 

 

玄関の壁を擦るようにもたれながら、なんとか居間に辿り着いた。

 

ここまで最悪な日曜日というのはなかなか無いだろうな。いつもであれば作り置きの飯を各々で食べたり、藤ねえのいない隙に色々とやれたりするのだが────

 

 

「あっ....悠仁!?」

「......おはよう、虎杖君。生きてたのね」

 

 

虎の代わりに別のがいた。これまた随分と馴染んでるな、遠坂。俺の座布団に勝手に座ってやがるくせして、まるで一家の大黒柱みたいな貫録を出してやがる。

 

んで、気になるのは士郎だ。何やら腹に包帯がぐるぐる巻きにされてるし、腹を開いた後の重症患者みたいだ。しかも、やけに落ち込んでるようなムード。加えて空気が凍ってるし、ここは俺から何か言った方が良いのか。

 

 

「し、士郎。何故に正座を────」

「衛宮君は随分と寝ぼけてので、目が覚めるまで座禅させる事にしました。一緒にどう?」

「遠慮します.....」

 

 

士郎に聞いたのだが、瞬時に遠坂に口を挟まれる。どうやら、この家の主導権は遠坂に持っていかれてしまったらしい。士郎、もうちょいお前は亭主関白を身につけた方が良いぞ。女の子をリードどころか、いつの間にか首にリードを付けられてそうだ。

 

 

「それで....無事に帰ってこられたんだから。貴方も話に混ぜざるを得ないわね」

「混ぜるって、何の話だよ。怪しい勧誘とかだったらお断りだからな」

「本当に馬鹿ね。こういう時に、貴方みたいな馬鹿話をするわけ無いじゃない」

「.....いや、俺みたいな馬鹿話ってなんだよ」

 

 

じゃあ士郎は真面目な理由で正座させられてんだよな、などと聞き返したかったが、今は遠坂の話を遮らないでおこう。言峰から聞くに、遠坂は聖杯戦争に意図して参加したプレイヤー。自分から見れば、魔術使いとしては先輩に当たる存在。そして何より、二度も命を救ってくれた恩人なのだ。性格はアレだけど。

 

 

 

「それで、真面目な話に戻すんだけど。虎杖君、私と組まない?」

「────ええ?」

「始めは半信半疑だったけど、バーサーカーから生還できるくらいの実力が有るならアーチャーの代わりは七割くらいは務まるし。簡単に死なないように戦うためにも、私が管理した方がいいかなって」

「管理って、お前.....」

 

 

.....俺、駒か何かだと思われてないだろうか。

 

なんか口調が妙に優しいが、その裏で何か有るような気がしてたまらない。向こうに行った途端に賠償金とか....ああ、そういや脱出する時に床ぶち抜いたんだったな。バレてなきゃいいんだけど。

 

 

「というか、士郎も何か言ってくれよ。このままだとホルマリン漬けだぞ」

「誰がマッドサイエンティストよ.....でも、衛宮君は不参加よ。さっき断られたもの」

 

 

マジか、と士郎の方を向くと"マジです"と言わんばかりに相槌を打たれた。士郎には俺と違って目に見えるサーヴァントがいるはずだ。となると、関係は管理というより同盟になるはず。そうなると、利害を考えて同盟するのが常道だと思うのだが。

 

 

「すまん、悠仁。先に決めちまって」

「いやいや。それより、何で.....」

「────ちょっと、あの子の事で引っ掛かることが有ってな」

 

 

あの子.....というと、イリヤの事だろう。

 

遠坂がため息をついているが、まさか士郎に限って幼女趣味という事もあるまい。士郎も俺と同じく、あの子に何か違和感を持ったのだろうか?

 

 

「だけど、悠仁が遠坂の所に行っても文句は言わない。多分生存率の事を考えたら、俺と一緒にいるより遠坂の方が上手く悠仁を扱ってくれると思う」

「士郎.....」

「それに、何より俺は悠仁と組む気はない。悠仁を戦わす暇が有るなら、セイバーに頼んででも教会に叩き込んでやりたいくらいだからな」

 

 

.....そういう反応するよなぁ、士郎は。

 

 

これ以上話すことはない、とばかりに沈黙し、俺の反応を待つ二人。

同盟に了承すれば士郎の敵になるし、了承しなければ別の意味で都合が悪くなる。

 

ダメだな、こういう両方にデメリットしかない選択ってのは苦手なんだよ。

 

 

悩みに悩んだ結果、俺は────────

 

 

 

 

 

 

 

 






今のところ迎えそうなENDは

・士郎END(メリーバッド含む)
・遠坂END(TRUEのみ)
・イリヤEND(メリーバッド含む)
・部品END(最有力。もちろんBAD) 
って感じかな。今回のアンケはルート確定成分多め。

投票の参加と高評価、よろしくお願いいたします。



悩みに悩んで────

  • 同盟を組もう。それしかない
  • 悪いが、組めない。
  • 遠坂と組んで、士郎を説得しよう
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