Fate/black flash   作:なんか変な色の翼

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どんな地獄になるのやら。




【分岐】信じたい偽善、絞首台までの旅路

 

 

.....そもそも選択の余地はない。

 

俺は知らない事が多すぎるし、魔術師としては士郎よりもド三流だ。一時的にせよ遠坂が手を貸してくれるというのなら、こんなに良い話は無いと思う。

 

 

「.....オーケー、遠坂。その話、乗った」

「決まりね。それじゃ、バーサーカーを倒すまでは────」

「でも、士郎も来いよ。どうせ組むなら、戦力は多い方が良いだろ」

 

 

握手しようとした遠坂を軽く制止し、士郎へと向き直る。やはり、士郎だけを置いていくなんてできない。さっき自分でも生存率がどうたらこうたら言っていたあたり、コイツも自分の未熟さを理解しているのだろう。それなら猶更、ここで結託した方がお互いのためでは無いだろうか。

 

 

「悠仁....俺、こういうのは軽く決めたら駄目だと思うんだよ。セイバーも────」

「ここでしか決められないんだから、さっさと決めちまうのが吉だろ。それに俺が遠坂に味方するって事は、巡り合わせ次第で士郎と戦うって事だろ?それは俺だって嫌だ」

「ぬぅ.....」

 

 

苦虫を嚙み潰したような顔をする士郎。自分を人質にとるような作戦で良い気分はしないが、これが一番手っ取り早い。遠坂も横で相槌を.....いや、なんでため息を吐いてんだ。甘ちゃんだって言いたいのかよ。

 

 

「.....分かった。今は共闘しよう」

「おおっ!」

「それじゃ、今度こそ契約成立ね。じゃ、これは手付け金って事で」

 

 

どこに隠し持っていたのか、遠坂はテーブルに一冊の本を持ち出した。見た目は古びた日記帳だが、普通のノートとは違って羊皮紙っぽい何かで出来ている。表紙は派手なワインレッド一色で、どこか遠坂っぽさを醸し出している。

 

 

「私の父さんの持ち物なんだけど、もう要らないからあげる。二人で有効活用して」

「それじゃ、少し失礼して.....」

 

 

ぺラペラと頁をめくるが、どこにも何も書かれていない。少し日に透かして見るも、インクが染み込んだ跡すらもない。なんだコレ、印刷ミスか?

 

 

「あのね、不良品を押し付けたわけじゃないから。一旦テーブルに戻しなさい」

「おう.....うおっ、何だこれ!?」

 

 

言われたとおりにテーブルへと戻すと、脳の中に謎の情報がぶち込まれる。七人の戦士の図に、パラメーターのようなグラフ表。そして、細かく書かれた解説。

 

 

「遠坂....なんだよ、これ?」

「各サーヴァントの能力表よ。聖杯戦争には決められたルールが有るってのは分かってるでしょ?それはサーヴァントにも当てはまってて....というか、ルールを守る事を強制させることで参加させてるってわけ」

「なるほど。悠仁、お前も見えてるか?」

 

 

応、とばかりに士郎に相槌で返す。しかしコレ、大丈夫か?俺の情報まで書かれてたら目も当てられない。急いで脳の中でページを変えまくり、俺の事が書かれてそうな部分を探すが.....

 

 

「.....良かった、無いな」

「はいそこ、無駄口叩かない。それで、ここに有るクラスは全部覚えておいて。大まかに分けると、剣士(セイバー)槍兵(ランサー)弓兵(アーチャー)の三騎士に、騎兵(ライダー)魔術師(キャスター)暗殺者(アサシン)、そして狂戦士(バーサーカー)を含んだ四騎士。ざっくりしてて簡単でしょ?」

 

 

.....すまん。歴史の授業は比較的得意だと思うが、そんな急には覚えきれない。だが、確か士郎のサーヴァントはセイバーで遠坂のサーヴァントがアーチャーだったっけ。槍を使う青い男に、バーサーカーにも昨日遭遇した。となると、俺の中身はそれ以外の三択になるわけか。

 

 

「それで、三騎士と四騎士の違いは?」

「まあ、具体的に言えば役割が違い過ぎるのよね。セイバーやランサー、アーチャーっていうのは直接の戦闘に関しては頭一つ抜けてるの。セイバーは最優だから、その三騎士の中でもダントツね」

「となると、四騎士の役割は.....暗殺?」

「部分的に当たり。具体的には調略や謀略って感じね。いくらステータスが強いサーヴァントでも、小手先の技術を二重三重にも積み重ねられたら逆転負けも有りうる。なんなら、アサシンみたいに不意打ちやマスター殺しを専門職にするサーヴァントもいるくらいだし」

 

 

.....物騒すぎる。そんな盤外戦法の塊みたいなのがいるなんて、ゆっくり夜も眠れないじゃないか。これからの精神衛生のためにも、俺の中身がアサシンである事を祈ろう。

 

 

「.....待て待て。それじゃ、なんでバーサーカーは四騎士なんだ?」

「確かに。ありゃ直接戦闘以外に方法がねーな」

「あのね、二人とも。アレは戦闘用だけど規模が大きすぎるでしょう?英霊ってのは核を破壊すればいいんだから、技術さえあれば魔力を込めた弓矢一本で倒せるのよ。それに対してバーサーカーは正しく規格外、羊皮紙一枚破るのに大型ドリルを持ってくるようなモンなんだから」

 

 

なるほど、大体言いたいことは分かった。セイバーやランサー、アーチャーが通常兵器を持って殺し合いをしてるところに、バーサーカーはドレッドノートを一隻丸ごと持ち込んでるような物なんだろう。要は、アレは人間サイズの相手を戦闘する事を前提とされてないも同然ってか。

 

 

「なあ、三騎士の方が有利なんだろ?直接戦ったら強いんだから」

「通常のサーヴァントでも戦闘をすれば魔力を馬鹿にならないくらい消費するの。そういう意味では、戦闘でしか相手を倒せない三騎士というのは不利な立ち位置にいるのかもね」

「.....どうするんだよ。遠坂のサーヴァントも三騎士なんだろ?」

「私のはアーチャーだから狙撃とかも可能かもだけど.....こういう時のために、虎杖君がいるんじゃない?」

「俺?」

 

 

自分を指差すと、遠坂は満足げに微笑んでくる。

"あら、分かってるじゃない"って感じの、小悪魔というよりマジの悪魔みたいな目だ。

 

 

「バーサーカー相手に防戦が出来る貴方なら、今の状態でも戦闘向きじゃないサーヴァント相手でも多少はやりあえる筈。問題は大道芸みたいな魔力操作だけど、これは私がコーチして使い物になるようにしてあげる」

「大道芸!?お前、大道芸って言った!?」

「今のままじゃ使い物にならないって事よ。どうせ独学で覚えてきたんでしょ?」

 

 

ぬぬぬ、と歯ぎしりをするが事実なので言い返せない。そもそも俺の専門は魔術ではなく体術だ。そっち側の特訓を蔑ろにしてきた事は否定できないし、そもそも必要になるとすら思っていなかったので練度も粗いのは自覚している。

 

正直、俺が出来るのは魔力を固める事と、身体能力の強化だけだ。これは魔力自体の性質を使っているだけであって、遠坂のと比べれば魔術と呼ぶには乱暴すぎる。例えるなら、銃弾を銃を使わずに火打石で着火して飛ばしているようなモノなのだ。

 

 

「素の戦闘能力でサーヴァントと渡り合えても、向こうには宝具が有る。要は英霊を象徴する切り札なんだけど、それを切られたら人間である限り即死よ。だから、少しでもレベルアップして.....宝具を使うと判断するギリギリまで消耗させられるようになるのが、貴方の役割ってわけ」

「要は.....斥候とか、前哨?」

「セイバーと一緒に行動させてもいいんだけど、確実に殺しきるにはコレが一番ね。もしくは貴方とセイバーがサーヴァントを引き付ける間に、私と士郎が相手のマスターを叩くっていう手もあるけど。そうなったら令呪を使われるだろうし、なにより向こうのサーヴァントが何をして来るか分からない」

「.....つまり、奇襲するための隙を作れって話か」

「そういうこと。危険だけど、死ぬ前には助けに入ってあげるから。いい?」

 

 

なんというスリリングな戦法。要するに、俺は釣り餌になるわけだ。

 

本気を出せば倒しうる敵として奮闘し、本命のセイバーが奇襲に望める機会を作る。奇襲に成功したら、セイバーと一緒に宝具を使わせる前に全員で潰しきるって感じ。なるほど、ここの役は士郎や遠坂だと隙を作る前に殺されてしまうのだろう。

 

.....まあ、多少の危険は仕方ないよな。

 

 

「うし、引き受けた」

「え、ちょ.....そんな簡単に引き受けていいの?」

「いいよいいよ。魔術での援護とか空っきしだからな。それに、死ぬ前に助けてくれるんだろ?」

「それは────勿論、そうだけど」

 

 

自分で言ったくせに、なんで歯切れが悪いんだよ。

なんか俺が言い方をミスったみたいじゃないか。士郎も変な顔してるぞ。

 

 

「.....まあ、いいわ。それじゃ、私は一旦家に帰るから」

「お、おう」

「それと....虎杖君。少し付いてきてもらえる?これは強制じゃないんだけど」

 

 

遠坂が居間を出ようとした瞬間、そっぽを向かれたまま声をかけられる。一瞬面食らい、呼び止めようとした時には玄関の引き戸を開ける音が聞こえた。どうやら、マジで言うだけ言って出て行ってしまったらしい。

 

 

「......行っちまったな」

「悠仁、追っかけた方が良いんじゃないのか?」

「いや、そうなんだろうけど.....」

 

 

アイツ、家に帰るって言ってたしな。そしたら床を壊したのが確実にバレるじゃないか。それを聖杯戦争でマドンナ面の剥がれた小悪魔に見つかってみろ、絶対に面倒な事になる。

 

 

「何やらかしたかは知らないが、呼ばれた限りは行くべきだろ。遠坂だって子供じゃあるまいし、ちゃんと謝れば許してくれるさ」

「あの光景を見てソレを言えんのか。謝って許すタイプじゃないだろ、大人じゃあるまいし」

「うっ.....なんか否定できない」

 

 

ほれみろ、士郎にも心当たりが有るんじゃないか。

包帯でグルグル巻きにされた腹を抑えながら、なにやら冷や汗を流している。

 

 

「あれ、その傷......」

 

 

いつ怪我したんだろう。教会から帰ってくる最中、あんな傷は無かったはずだ。

となると、バーサーカー戦から家に帰ってくるまでで付けられた傷になる。

 

 

.....うむ、とても気になるが、これ以上やっていると遠坂に追いつけなくなる。

遠坂の用事か、士郎の話か。ここで優先する事を決めなければ。

 

 

ここは────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






登録者が全員高評価すれば日刊一位取れるんじゃね?
.....という冗談(願望)はさておき。

今回も、アンケートにご協力ください。


優先すべきは────

  • 士郎の怪我
  • 遠坂の用事
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